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10.愛ってなんだ
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鍵穴に鍵を差し込む。
がちゃり、と鍵穴の回る音がして、私の口角は自然と上がった。
やっぱりね、この鍵だと思ったのよ。
ゆっくりと扉を開けて、部屋の中に滑り込んだ。
真っ暗闇の中、手探りで電気のスイッチを探す。
ぱち、と小さな音。
そして明るくなる室内。
いきなりの照明に、私の目は追いつかず、しぱしぱと数回瞬かせた。
そうして、ようやく部屋の明るさにも慣れた頃、私は室内を見渡した。
その部屋は、一言で言うならば、書斎のような部屋だった。
大きな本棚と立派な勉強机が部屋の大半を占めている。
そして、その机の上にはノートパソコンがぽつりと置かれていた。
まるで生活を感じさせないこの部屋は、一体何の為にあるのかしら。
市川のノートパソコンを見られれば一番早いのでしょうけれど、パスワードがかかっていることは明白だし、私が思い当たるパスワードなんてたかが知れている。
だから、そんなややこしいものは後回しにすることにして、私は本棚に近付いた。
本の背を一つずつ眺めながら、ふと気になった一冊を手に取った。
それは、私の中学校の卒業アルバムだった。
ただし、その年度は私の卒業する二年前のものであった。
「……どうしてこんなものがここに……」
二年前の卒業生というと、現在は高校三年生、つまり市川の同級生になるはずだ。
しかし、市川は私と同じ中学校の出身ではない。
珍しい白髪に、端正な顔立ちの先輩がいれば、例え一年間しか同じ学校にいなかったとしても、相当な噂になっているはずだ。
しかし、私の中学時代の記憶の中に市川のような人物がいたという情報はない。
がちゃり、と鍵穴の回る音がして、私の口角は自然と上がった。
やっぱりね、この鍵だと思ったのよ。
ゆっくりと扉を開けて、部屋の中に滑り込んだ。
真っ暗闇の中、手探りで電気のスイッチを探す。
ぱち、と小さな音。
そして明るくなる室内。
いきなりの照明に、私の目は追いつかず、しぱしぱと数回瞬かせた。
そうして、ようやく部屋の明るさにも慣れた頃、私は室内を見渡した。
その部屋は、一言で言うならば、書斎のような部屋だった。
大きな本棚と立派な勉強机が部屋の大半を占めている。
そして、その机の上にはノートパソコンがぽつりと置かれていた。
まるで生活を感じさせないこの部屋は、一体何の為にあるのかしら。
市川のノートパソコンを見られれば一番早いのでしょうけれど、パスワードがかかっていることは明白だし、私が思い当たるパスワードなんてたかが知れている。
だから、そんなややこしいものは後回しにすることにして、私は本棚に近付いた。
本の背を一つずつ眺めながら、ふと気になった一冊を手に取った。
それは、私の中学校の卒業アルバムだった。
ただし、その年度は私の卒業する二年前のものであった。
「……どうしてこんなものがここに……」
二年前の卒業生というと、現在は高校三年生、つまり市川の同級生になるはずだ。
しかし、市川は私と同じ中学校の出身ではない。
珍しい白髪に、端正な顔立ちの先輩がいれば、例え一年間しか同じ学校にいなかったとしても、相当な噂になっているはずだ。
しかし、私の中学時代の記憶の中に市川のような人物がいたという情報はない。
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