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8.嵐の中の夏休み
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……なんてこと。
私の背中に恐怖の汗が一粒流れた。
だっておかしいでしょう?
日常生活を切り抜いたかのような、有り触れた平凡な一つの部屋に、年頃の女の子三人が椅子に縛られているのよ。
どこまでも、異常だ。
ここが真っ白いだけの何もない部屋だったのなら、あるいは如何にもな拷問部屋や牢屋だったのなら、そこまで異常性を感じなかったのかもしれないのに。
……とにかく、何か良くないことが起きていることだけは確かね。
恐怖に打ち震える私たちの前に、青い扉が一つある。
真後ろは見えないが、恐らく出入口はあそこだけなのだろう。
現に、その扉の前を誰かが通る度、一花とユマさんは肩を揺らして怯えている。
どのくらい経ったのだろうか。
時間間隔が無くなって、一花とユマさんが憔悴し切った頃。
その目の前の青い扉が開かれた。
項垂れていた私たちは、はっと顔を上げ、何が出てくるのかと身構えた。
「目が覚めたんだね」
そう言って入ってきたのは、白い豹の仮面を被った人物だ。
そしてその後ろに続いて、真っ黒いだけの仮面を被った人物も部屋に入る。
背格好や声から、白い豹の仮面を被った人物は男だと推測出来る。
そして、何が目的なのかも。
薄々分かってはいたけど、まさか本当にそうだとは、ね。
ごくり。
一花かユマさん、どちらかの生唾を呑み込む音がした。
ごくごく平凡な部屋の一室に、場違いな緊張感がもたらされた。
ぴん、と張り詰めた空気に、豹の仮面の男は薄笑いを一つ漏らすと、再び口を開いた。
「どうやらそっちの女の子は気付いているみたいだけど、僕は白豹のリーダー。そして、君たちにとっての誘拐犯ってところかな」
私の背中に恐怖の汗が一粒流れた。
だっておかしいでしょう?
日常生活を切り抜いたかのような、有り触れた平凡な一つの部屋に、年頃の女の子三人が椅子に縛られているのよ。
どこまでも、異常だ。
ここが真っ白いだけの何もない部屋だったのなら、あるいは如何にもな拷問部屋や牢屋だったのなら、そこまで異常性を感じなかったのかもしれないのに。
……とにかく、何か良くないことが起きていることだけは確かね。
恐怖に打ち震える私たちの前に、青い扉が一つある。
真後ろは見えないが、恐らく出入口はあそこだけなのだろう。
現に、その扉の前を誰かが通る度、一花とユマさんは肩を揺らして怯えている。
どのくらい経ったのだろうか。
時間間隔が無くなって、一花とユマさんが憔悴し切った頃。
その目の前の青い扉が開かれた。
項垂れていた私たちは、はっと顔を上げ、何が出てくるのかと身構えた。
「目が覚めたんだね」
そう言って入ってきたのは、白い豹の仮面を被った人物だ。
そしてその後ろに続いて、真っ黒いだけの仮面を被った人物も部屋に入る。
背格好や声から、白い豹の仮面を被った人物は男だと推測出来る。
そして、何が目的なのかも。
薄々分かってはいたけど、まさか本当にそうだとは、ね。
ごくり。
一花かユマさん、どちらかの生唾を呑み込む音がした。
ごくごく平凡な部屋の一室に、場違いな緊張感がもたらされた。
ぴん、と張り詰めた空気に、豹の仮面の男は薄笑いを一つ漏らすと、再び口を開いた。
「どうやらそっちの女の子は気付いているみたいだけど、僕は白豹のリーダー。そして、君たちにとっての誘拐犯ってところかな」
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