その女、女狐につき。

高殿アカリ

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6.不穏

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 実際問題、二人とも一花より私の方を見ていることが多くなった。



 そして、ケイはタイシを、タイシはケイを、事あるごとに威嚇するようになった。



 私の送り迎えをどちらがするかで喧嘩したり。



 どちらか一方と二人きりになった後は、必ず反対のもう一人が私の側に寄り、探りを入れてくるのだ。



「何を話していたんですか?」

「何の話してたん?」



 とね。



 そんな出来事がある度、二人の興味と好意が次第に一花から私に向かっていることを感じた。



 幸せだった。



 来るべき最終章に向けての準備としては、信じられないくらいに順調だったから。



 いじめはいつの間にか終わったことにした。



「飽きたんだと思います」



 そう伝えた私の言葉はどう考えても白々しかった。



 だけど、ケイとタイシはそんなこと全く気が付かないし。



 その二人と一花にも同じことを言われれば、フウガだって必要以上に疑うことをしなくなった。




 そんな日々の中、その日は珍しく生徒会がお休みだった。



 いつものように私と一花を迎えに来たベンツの前で、



「ちょっと体調が悪いから倉庫に行くのは遠慮しておきます」



 わざとらしく、乾いた咳をする私を心配そうに見つめる四つの瞳。



 もちろん、一花とケイ。

(今日はケイがタイシに勝ったらしい)



 大丈夫だから、とベンツに乗ることを嫌がる私を無視して、黒い高級車は走り出す。



 到着先は、私の家。

 私は、ちゃんと家に入るまでみんなに見守られていた。



 まぁ、良いんだけどね。

 一回、家に帰って着替えようと思っていたところだったし。
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