その女、女狐につき。

高殿アカリ

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3.仕組まれたリンチ事件

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 これで誰も、何も疑わないんだから、不思議なものだ。



 奴ら、おつむが弱いのかもしれないわ。



 なんて大変失礼なことを考えたところで、忌まわしき生徒会長様のお声がかかりましたのよ。



 いやぁね、奥様。

 本当ですわ、奥様。



「では、この件に関してはこちらで調べます。天野さん、今日はもう早退して病院にでも行ってください」



 やや強引にこの場を治めようとする市川。



 みんなも納得したようで、一花の身体を支えてフウガは保健室を出ようと扉を開けた。



 その時、一花とフウガにたくさんの紙切れが降り注いだ。



 何事か、とその紙切れの一枚を手に取ったタイシ。



「な、何やこれ‼」



 静かにメガネの奥を光らせたケイ。



「これは……。どういうことか説明してもらいましょうか」



 フウガの手にあるその紙を見て、呆然とする一花。



 私はゆっくりとした動作で紙切れを拾う。



 紙切れかと思われたそれは、一枚の現像された写真であった。



 そう、一花を助け起こそうと彼女の身体に腕を回した山田先輩の写真。



 証拠、出てきちゃったね。

 ……一花ちゃん。



 私は一人、溢れ出る笑みを押さえていた。



 もちろん、生徒会役員たちの証言もあるし、山田先輩や一花も必死で否定するだろう。



 だから、彼らが好き合っているという勘違いまではしないはずだ。



 ……でもね。

 あなたたちが良い雰囲気だったって私は伝えたのよ。



 果たして、それを否定することが一花には出来るのかしら?

 無理よね、あなたには。



 だって、良い雰囲気の二人であることを否定する唯一の方法は、相手を憎み嫌うこと、なんだもの。



 良い子ちゃんのあなたは、そんなことしない。

 例え、嘘であったとしても。絶対にね。



 そうでしょう? 一花。

 私のこと、裏切らないで頂戴ね。
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