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第1章 嘘つきの始まり
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しおりを挟む彼には純真潔白のまま、穢れのないまま、ただ健やかな穏やかな日々が訪れていて欲しいのです。
私の意図を理解した彼は、くしゃりと顔を歪めています。
「そんな、イヴリン。……僕は君と一緒にどこまでも堕ちていく覚悟は出来ているよ」
「いいえ、ケヴィン様。こんなにも貴方様に愛されて、私はもう既に幸せなのです。……だから、地獄に堕ちるのは私ひとりだけで良いのですわ」
「そんな……」
ケヴィン様はがくりと膝を落とされました。
それでも、私の決意が変わることはありません。
それを察したのか、ケヴィン様はもう何も言うことなく、徐に立ち上がり、私にその手を差し出しました。
私は差し出された彼の手に自らの手を添え、私たちは共に部屋から退出したのです。
私はフラメル家の長女イヴリン・フラメルであり、前世は御門華という少女でもありました。
誰にもバレてはいけない秘密を抱え、私は生きてゆくしかないのです。
愛するケヴィン様との幸福な日々を願って……。
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