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 だが、どうやら神様は俺の願いを聞き入れてはくれなかったようだ。



「ねぇ、どうして無視するわけ?」



 視線を逸らす俺たちに、ぐいとレナは顔を近付ける。



 あ……良い匂い。

 って、ことじゃなくて。



 思わずくんかくんかと変態じみたことをしそうになった自分を叱咤する。



 平常心を保つために、決して綺麗とは言い難い二人の友人の顔を見ることにした。



 二人もまた、俺の方を見ている。

 三人の視線がかち合い、俺たちは心を一つにした。



(((美少女の破壊力、ぱねぇぇぇぇぇぇ!!!!)))



 特に鼻呼吸による香りの暴力はやばいので、俺は口呼吸へと移行した。



 いや、しかし待て。

 口呼吸にしたは良いもの、次はまた違った問題が浮上してくることに気が付いた。



 おいおい、俺の口、臭くねぇか??



 慌てて口を閉じると、今度は素敵なおなごの匂いが……。



 鼻呼吸は駄目だ。

 口呼吸も危ない。



 ……よし、両方を閉じよう。

 そして、今、俺は魚になる。



 エラ呼吸を手に入れるんだ!!



 いつの間にか、目まで閉じていた俺は全く気付かなかった。



 俺の様子を不審に思ったレナが、空気をぱんぱんに含んだ俺の頬を指でつつこうとしていたことに。



 細く綺麗な指が俺の頬に触れ、驚いた俺はそのまま口から大量の空気を出した。
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