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第3章

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雪は大吾たちの入った部屋の前で一瞬躊躇した。
ここに入ったということは、そういうことなのだ。

いくら仲の良い幼馴染みであっても、いくら大吾が兄のように慕ってくれていても、この扉を開けることは許されないのではないか。

このとき、雪の心によぎったのは、道徳心でも正義感でもなく、大吾に嫌われたくないという気持ちだけだった。

それでも、雪はその扉を開けた。
雪は自分に言い聞かせた。

これは幼馴染みとしての役目だ、と。
それに大吾も僕のことに気付いていたんだ、と。

その奥底に眠る黒く塗り潰された歪んだ恋慕には気付かずに。

扉を開けると、女の声が微かに耳に聞こえてくる。
一定のリズムを刻むその声は、艶めかしく雪の耳にまとわりついた。

部屋の中は薄暗く、故に二人の睦み合う音が、香りが、気配が、雪にのしかかる。
まるで自分が犯されているみたいな感覚に、雪の身体は火照り始める。

「だいっご、くっ」

女の声が耳障りだ。

「呼ぶなっ」

「んはぁっ」

大吾のたくましい身体が大きく動いたかと思ったら、女が激しくよがった。

「ここがっ、良いんだろ」

「んやぁ、大吾く、」

大吾の名前を呼ぼうとする女の唇を大吾のそれが覆った。
いつの間にか、雪は手を握りしめており、手の内側の皮膚は自らの爪によって傷つけられていた。


大吾は目の前で快楽に溺れる堀江のことを冷たい眼差しで見つめながら、絶頂に追いやった。

違う、俺はこんな声が聞きたいんじゃない。
そう思いながらも、大吾は興奮を収められなかった。

扉の向こう側から雪が見つめている。
雪の気配を感じる。
たったそれだけで、大吾はイってしまいそうになる。

醜くよがる目の前の堀江のことなど大吾には眼中に無い。
背中でピリピリと感じる雪からの視線に大吾は勃起していた。

雪は今、どんな顔をしている?
悲しそうな顔?
悔しそうな顔?
怒っている顔?
それとも、俺たちを見て興奮でもしている?

雪、俺はお前にぶち込んでやりたい。
快楽に溺れさせてやりたい。

堀江の上に雪を重ねて、大吾は腰を振った。
幻の雪は、どこまでも淫らで卑猥だった。

その真っ白な身体をくねらせて彼は呼んだ。

「っ大吾くん!」

「ふん、ざまあねぇな」

大吾はその言葉と共に、堀江の中に全てを吐き出した。

「んぁぁ!」

ぎゅっと大吾の男根が締めつけられる。
雪の中もこんなに気持ちいいのだろうか、乱れた呼吸を整えながら大吾はふとそんなことを思った。

荒い息が室内にこだまする。
汗と精子の匂いが充満する。

雪には、目の前の裏切り行為に、怒りたいとも泣きたいとも違う、全く新しい欲望が生まれていた。

そのとき、堀江が言葉を紡いだ。
これが全てを狂わしたのかもしれない。

「大吾くん、初めての割にはやるじゃん」

その声は、雪には嫌に響いていたように聞こえた。
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