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第一章 再会は突然に
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『こいまほ』の世界には転移者と呼ばれる存在が稀に迷い込むことがあるそうで、不良くんもまたその一人だと王国側は正式に発表した。
そして、どういうわけか、転移者にこの世界の魔法は一切合切効かないらしい。
……てか、なんだそれ。
それなら私も矢賀麗美として転移する可能性もあったということ?
『こいまほ』オタクとしてはパトリシア・ロイドのことも観察対象だったんですけど!
もしもあの時、トラックに轢かれてもなお生きていたなら、不良くんと同じ転移者になれたんじゃないのか⁉
パトリシアの美しい御脚を怒りに任せて叩くわけにもいかず、高級寝具に俯せになって叫んだとしても仕方がなかったと思う。
淑女の行動ではなかったにしろ、寧ろこれだけで悔しさを紛らわせたことに感謝して欲しいくらいだ。
マシュー・パウリーは保護観察対象とし、魔法師団に引き取られていった。
魔力制御が出来るようになり次第、ノエルの側近として王族が採用するらしい。
良かったわね、将来安泰じゃん。
『こいまほ』の流れも壊さなかったし、私の責務は可能な限り果たしたと言える。
うんうん、最終的に落ち着くべきところに落ち着けたわよね。
大団円だ! もういいよ。これで終わろう。
……とは問屋も卸さないわけでして。
不良くんは他国にも秘密にしなければならない存在らしく、王城ではなく宰相の邸宅で保護することになったらしい。
宰相の、つまりはロイド公爵邸にて。
「お嬢様、すごい音がしましたけど大丈夫っすか?」
それも私の護衛というカモフラージュの役を与えられて。
ひょっこりと顔を覗かせた不良くん、もとい當原翔梧を私は恨みがましく睨み付けたのであった。
あーーーーー。
ずるいよーーーーーーーー。
大人げなくても構わないのだ。
だって今世の私は十歳のパトリシア・ロイドなのだから。
そして、どういうわけか、転移者にこの世界の魔法は一切合切効かないらしい。
……てか、なんだそれ。
それなら私も矢賀麗美として転移する可能性もあったということ?
『こいまほ』オタクとしてはパトリシア・ロイドのことも観察対象だったんですけど!
もしもあの時、トラックに轢かれてもなお生きていたなら、不良くんと同じ転移者になれたんじゃないのか⁉
パトリシアの美しい御脚を怒りに任せて叩くわけにもいかず、高級寝具に俯せになって叫んだとしても仕方がなかったと思う。
淑女の行動ではなかったにしろ、寧ろこれだけで悔しさを紛らわせたことに感謝して欲しいくらいだ。
マシュー・パウリーは保護観察対象とし、魔法師団に引き取られていった。
魔力制御が出来るようになり次第、ノエルの側近として王族が採用するらしい。
良かったわね、将来安泰じゃん。
『こいまほ』の流れも壊さなかったし、私の責務は可能な限り果たしたと言える。
うんうん、最終的に落ち着くべきところに落ち着けたわよね。
大団円だ! もういいよ。これで終わろう。
……とは問屋も卸さないわけでして。
不良くんは他国にも秘密にしなければならない存在らしく、王城ではなく宰相の邸宅で保護することになったらしい。
宰相の、つまりはロイド公爵邸にて。
「お嬢様、すごい音がしましたけど大丈夫っすか?」
それも私の護衛というカモフラージュの役を与えられて。
ひょっこりと顔を覗かせた不良くん、もとい當原翔梧を私は恨みがましく睨み付けたのであった。
あーーーーー。
ずるいよーーーーーーーー。
大人げなくても構わないのだ。
だって今世の私は十歳のパトリシア・ロイドなのだから。
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