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1章
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翌朝、セレナはこの日もよく眠れないまま目を覚ました。
うつらうつらする世界の中。
唯一はっきりと感じるのは、炎の闇。
迫り来る熱い炎をセレナはどうすることも出来ないでいた。
そして、気が付くと呻き声の沼に沈められているのだ。
苦しそうで、辛そうで。
こんなところにいたくない、ともがいで沼から這い出そうとするセレナ。
しかし、その足首を誰かが掴む。
それはこの前の強盗であったり、あるいはメンドラーおばさんを傷付けた者であったりした。
焼け爛れた彼らの顔がセレナに向けられる。
言葉にならない声がセレナを責め立てる。
「やめて!」
夢の中で叫んだ自分の声を耳にし、セレナははっと飛び起きた。
うたた寝をしていただけであるのに、セレナの背中は汗でぐっしょりと濡れていた。
呼吸を整えて、セレナは朝の支度を済ませる。
もう絶対に二度寝はしない、と心に誓い、セレナは朝日を眺めていた。
まだティラーは起きていないかしら。
どうにも不安な思いが募り、セレナはそわそわと部屋を行ったり来たりする。
何故なら彼女は明日、魔法学校に入学するのだから。
どんな場所なのだろうか。
人と上手く接することが出来るだろうか。
上向きになってしまう自分の感情をセレナは忌み嫌った。
いいえ、落ち着いて。
私はアランドを追い出されて、魔法学校ハザールに行かされるのよ。
普通に入学出来るとでも思っているの?
入学式の間でさえ、誰も傷付けないと自信を持って言えもしないのに?
きっと私は隔離されるんだわ。
だって、あそこは将来有望な子どもたちが集まる学校なんですもの。
魔法使いはもちろん国の力になるし、魔法使いにならない子たちだって、魔法職人や魔法学者になるのよ。
そんな場所でどうやってやっていけると言うのかしら。
新しい門出には持ってこいの清々しい朝なのにも関わらず、セレナが悲観的なことばかりを考えていると、部屋の扉がノックされる音がした。
セレナの耳は、ピクリと動き、足早に扉へと向かう。
勢いよく扉を開けた先には、ティラーの姿があった。
セレナはほっと息をついた後、慌てて手櫛で髪の毛を整える。
その様子にティラーは笑い、
「何、今すぐに入学式というわけではないのだから、そんなに慌てるでない」
「あ、はい。......すみませんでした、マスターティラー」
しょんぼりと項垂れるセレナの頭をティラーは優しく撫ぜた後、
「では、行こうか」
うつらうつらする世界の中。
唯一はっきりと感じるのは、炎の闇。
迫り来る熱い炎をセレナはどうすることも出来ないでいた。
そして、気が付くと呻き声の沼に沈められているのだ。
苦しそうで、辛そうで。
こんなところにいたくない、ともがいで沼から這い出そうとするセレナ。
しかし、その足首を誰かが掴む。
それはこの前の強盗であったり、あるいはメンドラーおばさんを傷付けた者であったりした。
焼け爛れた彼らの顔がセレナに向けられる。
言葉にならない声がセレナを責め立てる。
「やめて!」
夢の中で叫んだ自分の声を耳にし、セレナははっと飛び起きた。
うたた寝をしていただけであるのに、セレナの背中は汗でぐっしょりと濡れていた。
呼吸を整えて、セレナは朝の支度を済ませる。
もう絶対に二度寝はしない、と心に誓い、セレナは朝日を眺めていた。
まだティラーは起きていないかしら。
どうにも不安な思いが募り、セレナはそわそわと部屋を行ったり来たりする。
何故なら彼女は明日、魔法学校に入学するのだから。
どんな場所なのだろうか。
人と上手く接することが出来るだろうか。
上向きになってしまう自分の感情をセレナは忌み嫌った。
いいえ、落ち着いて。
私はアランドを追い出されて、魔法学校ハザールに行かされるのよ。
普通に入学出来るとでも思っているの?
入学式の間でさえ、誰も傷付けないと自信を持って言えもしないのに?
きっと私は隔離されるんだわ。
だって、あそこは将来有望な子どもたちが集まる学校なんですもの。
魔法使いはもちろん国の力になるし、魔法使いにならない子たちだって、魔法職人や魔法学者になるのよ。
そんな場所でどうやってやっていけると言うのかしら。
新しい門出には持ってこいの清々しい朝なのにも関わらず、セレナが悲観的なことばかりを考えていると、部屋の扉がノックされる音がした。
セレナの耳は、ピクリと動き、足早に扉へと向かう。
勢いよく扉を開けた先には、ティラーの姿があった。
セレナはほっと息をついた後、慌てて手櫛で髪の毛を整える。
その様子にティラーは笑い、
「何、今すぐに入学式というわけではないのだから、そんなに慌てるでない」
「あ、はい。......すみませんでした、マスターティラー」
しょんぼりと項垂れるセレナの頭をティラーは優しく撫ぜた後、
「では、行こうか」
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