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もしかしたら、世界にはまるで物語のような幸せな結末を迎える人もいるのかもしれない。
仲の悪かった孫娘とようやく思いが通じ合って、幸せな死を得る祖母もいるだろう。
知恵の輪みたいな雁字搦めの恋をして、傷付いて傷付けられて、そうやって貫いた先に得られる真実の愛もあるのかもしない。
だけど、それは選ばれたごく一部の人にだけ与えられる特典みたいなもので、私のような人間が美味しい思いをするなんてことは神様が許してはいないだろう。
そんな私の前にお母さんが一通の手紙を差し出したのは、葬式も無事に終わり、お婆ちゃんの遺骨がお墓に運び込まれた後だった。
「みなみ、これね、お婆ちゃんが私に送ってきたものなの。みなみには見せたくないとお婆ちゃんは思っているだろうけど」
お母さんは私に手紙を渡すとき、そう言って悪戯っ子のような笑みを浮かべた。
さっきまでわんわん泣いていた人とは思えないような清々しい笑顔だった。
だからだろうか、素直に手紙を受け取ってしまったのは。
だからだろうか、その手紙を読むために一人で海辺へと向かっているのは。
暫く、一人で浜辺を歩き回る。
手紙を開ける勇気がでないからだ。
貝殻を意味もなく手に取ったり、その貝殻を海の向こう側へと投げてみたり、どうしてこう幾つになっても私は意気地なしのままなのだろう。
丁度よい大きさの流木を見付けて、私はそこに腰かけた。
手紙を開ける前に、一度だけ息を大きく吸いこんで水平線を臨んだ。
真っ赤な夕陽が世界を彩っていた。
水面がキラキラと輝いていて、私は不覚にも涙が零れそうになった。
こんな手紙をあんたに送るなんて、遂に私も気弱になってしまったもんだ。
手紙の一文目には、そう書かれていた。
仲の悪かった孫娘とようやく思いが通じ合って、幸せな死を得る祖母もいるだろう。
知恵の輪みたいな雁字搦めの恋をして、傷付いて傷付けられて、そうやって貫いた先に得られる真実の愛もあるのかもしない。
だけど、それは選ばれたごく一部の人にだけ与えられる特典みたいなもので、私のような人間が美味しい思いをするなんてことは神様が許してはいないだろう。
そんな私の前にお母さんが一通の手紙を差し出したのは、葬式も無事に終わり、お婆ちゃんの遺骨がお墓に運び込まれた後だった。
「みなみ、これね、お婆ちゃんが私に送ってきたものなの。みなみには見せたくないとお婆ちゃんは思っているだろうけど」
お母さんは私に手紙を渡すとき、そう言って悪戯っ子のような笑みを浮かべた。
さっきまでわんわん泣いていた人とは思えないような清々しい笑顔だった。
だからだろうか、素直に手紙を受け取ってしまったのは。
だからだろうか、その手紙を読むために一人で海辺へと向かっているのは。
暫く、一人で浜辺を歩き回る。
手紙を開ける勇気がでないからだ。
貝殻を意味もなく手に取ったり、その貝殻を海の向こう側へと投げてみたり、どうしてこう幾つになっても私は意気地なしのままなのだろう。
丁度よい大きさの流木を見付けて、私はそこに腰かけた。
手紙を開ける前に、一度だけ息を大きく吸いこんで水平線を臨んだ。
真っ赤な夕陽が世界を彩っていた。
水面がキラキラと輝いていて、私は不覚にも涙が零れそうになった。
こんな手紙をあんたに送るなんて、遂に私も気弱になってしまったもんだ。
手紙の一文目には、そう書かれていた。
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