海辺の町で

高殿アカリ

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 夏休みの間中、結局私たちは顔を合わすこともなければ、連絡を取ることもなかった。



 それは夏休みが終わり、二学期に入っても変わらなかった。

 会話の一つさえもしなくなった。



 あの日を境に私たちは決別したのだと思う。

 

 陽太も心のどこかで気が付いていたんだろう。

 夕花の私に対する思いを。



 もしかしたら、陽太が夕花を好きになったときには既に、知っていたのかもしれない。

 そんな彼が私と夕花の間に流れている異質な空気の原因に思い至らないはずがないのだ。

 

 そして、時は無情に流れ、私たちはばらばらになったまま卒業を迎えた。

 高校を出た後、私は東京の大学に進学し、そのまま東京で就職した。



 陽太と夕花がどんな日々を送っているのかを知らないまま、私は大人になった。

 お婆ちゃんが亡くなったという知らせを受けて、私がもう一度あの街に戻ったのは、あの日から十年後の夏だった。

 

 奇しくも、私の二十六歳の誕生日のことだった。



 各駅停車の電車に揺られながら、私は窓の外に広がる景色を眺めていた。



 打ち寄せる青い波に白の砂浜。

 あの日と同じ海辺だ。



 窓に頭をもたれさせながら、私はあの日のことをぼんやりと思い返す。

 潮の香りが窓越しにも伝わってきそうだ。



 そういえば、あの日以降、結局お婆ちゃんとも仲直りしないままだったなぁ。

 そもそも、仲直りするような間柄でもなかったか。



 そんなことを考えて自嘲気味に笑った。



 所詮、人生なんてそんなものなのだ。



 何を考えているのか分からないあの人と私が分かりあう、なんてことは決してない。

 今までも、そしてこれからも。
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