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しおりを挟むにっこりと微笑して、私は陽太を見やる。
今こそ、彼に溢れんばかりの感謝を返す時なのではないだろうか。
そんなことを思った。
「……きっと、大丈夫。二人はお似合いだもの」
私のその言葉に、陽太は少しだけ恥ずかしそうに、頭を掻いて、
「そうか、あ、ありがとう。……なんか、普段無口のみなみに言われると、重みが増すから、不思議だよな」
何て言うから。
私は結局、口を噤むしかなかった。
友達でさえ、陽太と夕花が初めての私に、恋慕の気持ちが理解できる訳がなかったのだ。
もちろん、二人がお似合いだと言った言葉には何の嘘も含んではいない。
けれど、じゃあ、二人が互いに互いを特別な存在として見ているか、と聞かれれば、私は首を傾げるしかない、というのも事実なのだ。
海辺ではしゃぐ夕花を見やって、私は何を口にすればよいのか分からなかった。
あぁ、そうか。
私は口数が少ないのではない。
伝える術を知らないのだ。
突如としてその事実に気が付くと、今まで不愛想だと思っていた自分の言動にも納得がいく。
本当は、私が誰よりも一番、他者と交わりたくて仕方がなかったのだ。
そして、誰よりも一番に、そういった交流を築くことのできる人間を羨んでいたのだ。
悲しいかな。
だから、私は鳴き出したかったのだ。
恋慕の思いを知っている陽太が、そしてその彼の特別な存在となった夕花が、私は羨ましくて、だからこそ、浅ましいものだと思いたかったのだ。
そしてその私が憧れて止まない愚かな感情が私たちの間に存在してほしくなかったのだ。
上手に処理できる自信が私にはなかったから。
受け入れる余裕なんかなかったから。
そんなことをぐだぐだと考えていたからだろうか。
はっと我に返ると、目の前に夕花がいた。
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