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通い慣れたクラブの前に立って、私は深呼吸をする。
扉を潜れば、たちまち私は「薔薇キノコ」になる。麗しい薔薇の毒キノコだ。
扉を開け、一歩を踏み出す。爆音が耳に響いて、薄暗い部屋にミラーボールだけが変に眩しい。
人々は狂気に歓喜している。
夜の夢がネオン色に染まって、彼らの中に浸透してゆく。
ここほど、生の全てが詰まっている場所を私は知らない。
カラフルな爆音たちがあちらこちらに飛び跳ねて、人々の中を突き抜ける。
酸いも甘いも全部を忘れて、人は踊る。廻る。生きる。――うたう。
ふと視線を感じて顔を上げると、ダイゴローがこちらを見ていた。
静かに、深く、全てを見透かすその瞳に呑まれて、私は過去へと沈んでいく。
マイクを握り締め、声に言葉を乗せ、必死に現在にしがみつこうとする。だけどそれを上回る力で引き戻されていく。
どんどん潜っていって、気がつけば私はあの頃の彼に共鳴していた。
扉を潜れば、たちまち私は「薔薇キノコ」になる。麗しい薔薇の毒キノコだ。
扉を開け、一歩を踏み出す。爆音が耳に響いて、薄暗い部屋にミラーボールだけが変に眩しい。
人々は狂気に歓喜している。
夜の夢がネオン色に染まって、彼らの中に浸透してゆく。
ここほど、生の全てが詰まっている場所を私は知らない。
カラフルな爆音たちがあちらこちらに飛び跳ねて、人々の中を突き抜ける。
酸いも甘いも全部を忘れて、人は踊る。廻る。生きる。――うたう。
ふと視線を感じて顔を上げると、ダイゴローがこちらを見ていた。
静かに、深く、全てを見透かすその瞳に呑まれて、私は過去へと沈んでいく。
マイクを握り締め、声に言葉を乗せ、必死に現在にしがみつこうとする。だけどそれを上回る力で引き戻されていく。
どんどん潜っていって、気がつけば私はあの頃の彼に共鳴していた。
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