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第2章 夏空の少女

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そんな夏の晴れ渡った空みたいな、からっと乾いた空気がよく似合う自己中心的なミナミが、毎度の如く、家にやって来たのだった。
ただ、毎度の如くとは違い、その日は家にポチがいた。

ポチもミナミももちろん予想外のことだっただろう。
しかし、僕にとってもまた予想外のことであったのだ。

もしも、ミナミが来ると知っていたなら、ポチと再開したその日に、マグカップについて問われたその時に、僕はきっとミナミのことを話していたのだから。

タイミングが悪い人間なのだ、僕という奴は。

栗色の短髪を煌びやかに振り回して、ミナミは彼女らしい明るい笑顔を見せながら、僕の家へと足を踏み入れた。

「玉木! また、あたしを泊めて!!」

そんな彼女の顔がリビングにいる僕とポチを交互に見て、それから首を傾げた。
そして、開口一番にこう告げた。

「どうしてあんたがあたしのマグカップを使っているの?」

純粋無垢に彼女は問うた。

嫌味のない夏の入道雲みたいな顔をして。
本人は真っ白に罪深く、そのあと地上に降り注ぐ大量の雨のことなど知らんぷりで。

それがどういう意味を持つのか、なんてミナミは一切考えもしない。

その無邪気で残酷な性質は時に僕を苛立たせる。
そして、大抵は羨望の気持ちへと変わっていく。

僕はミナミに憧れていた。
僕を蔑ろにするばかりのミナミを。

そんな無神経極まりないミナミだったからこそ、僕は彼女をそばに置くことができたのだとも思う。
それはとても、悔しいことではあるけれども。

男女の間違いなんて起きるはずもなかったし、彼女は僕の歌を欲しやしなかったのだから。

ミナミとポチの声域が驚くほどにそっくりなことに気がついた僕は、ミナミにも歌を贈ったことがあった。

一度だけ、聴いてみたかったのだ。
ポチとそっくりな声をしたミナミが歌うとどうなるんだろう、と。

だけど、彼女は失笑した。
玉木の歌なんて歌えるわけがないでしょう、なんて言って。
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