上 下
202 / 224
皇女アルミラの楽しい世界征服

激突! その7

しおりを挟む
「世界が一つになって、魔界と戦う…」
「そうです、それは貴殿も望む事でしょう?」
差し出された手に、俺は手を伸ばす。

ーパシィーーンっ!ー
闘技場にフラジミルの手を払う音が響く。
フラジミルは払われた自分の手をしげしげと見つめ、
「交渉決裂…か」
「ああ、そうだな」
フラジミルは少し残念そうな顔をしている。どうやら俺と組みたいってのは本心のようだ。

「そんな悲しそうな顔すんなよ。すぐに肩を並べて戦えるようにしてやるよ」
「?どういう…?」
「お前をぶっ飛ばして、帝国に王国との平和条約を結ばせる。
そしたら俺とお前は、魔界と一緒に戦う仲間だろ?」
俺はフラジミルの目をまっすぐ見据え、拳を握りなおす。

ーギンッ!カィンッ!ガギンッ!ー
闘技場に剣戟の音が響く。
フラジミルが振う剣を、俺は拳で弾き返す。

「シッ!」
俺は短く息を吐き、ローキックを走らせる。
「はっ」
それをフラジミルは脛で受ける。
コイツ、ローのカットも出来るのかっ!?

ーボッ!ー
「うわっ?!」
驚く俺を嘲笑うように、フラジミルはカットした脚でそのまま前蹴りを放ってくる。
俺は上体を半身に捻り前蹴りを躱して蹴り脚をキャッチすると、
「おりゃあぁぁぁっ!」
抱えたフラジミルの足首を極めながら、きりもみ状に体を回しながら倒れ込む。

プロレス技のドラゴンスクリューだ。
この技は足首を極めているので、足を取られた相手も飛ばないと靭帯を損傷してしまう危険な技だ。
『これは対応できないだろっ?!』

だがフラジミルは俺の回転に合わせてジャンプしている!
その上いつの間に持ち替えたのか、逆手に持ち替えた剣を俺の喉元へ突き付けていた。
「ちょっ?!」
このまま地面に倒れ込めば、喉に剣が突き刺さる!
俺は慌てて瞬間移動で視線の先、フラジミルから離れた場所に飛ぶ。

「瞬間移動…厄介な魔法だな」
フラジミルが砂を掃いながら立ち上がる。
「厄介なのはお前だよ…。飛んで躱すだけならまだしも…」
今のは危なかった…俺は首を擦り無事を確認する。
「…邪魔だな」
一言呟くとフラジミルは鎧を脱ぎ始めた。スピードを上げるつもりか?
今攻撃してもいいが…やっぱりここは待つべきだよな?

「待っててくれるとは…お人よしだな」
脱ぎ終わるのを黙って待っていた俺に、フラジミルが笑いかける。
大きな口から綺麗な歯がのぞく。ゴツイ男のイイ笑顔、こーゆーのに弱い女性も多いんだろうな。

「さっきより速くなったんだろ?」
「せっかく待ってもらったんだ、期待に応えるとしようかっ!」
言い終わるが早いか、フラジミルが突進してくる。

『速いっ!』
確かに今までより倍は速いっ!
だが、全然追えない速さじゃないし、ウチのメイド達はもっと速いぞ!
馬鹿正直に真っすぐ突っ込んでくるフラジミルを俺は視界にしっかり捕らえる。

だが、
ーフッー
「なっ?!」
突然、フラジミルの巨体が視界から消えた。
「下ぁっ!」
それはさっき見た!俺は地面すれすれを這うフラジミルの巨体を眼下に視認する。
フラジミルは俺の足首を掴もうと手を伸ばすが、俺は後ろに飛びずさって逃げる。

「まだまだぁっ!」
ーブンッ!ー
フラジミルの巨体の下に隠されていた剣が、横薙ぎに振り抜かれる。
が、俺は既にそこに居らず、フラジミルの剣は空を切る。
俺は再度瞬間移動で視線の先へと移動済みだ。

「本当に厄介な魔法だな…っ」
フラジミルは忌々しそうに吐き捨てる。
「誇っていいぞ…。こう何度も瞬間移動を使わされたのは、お前が初めてだ」
余裕ぶってはみたが、俺は背中を冷たい汗が伝うのを感じる。
『強いとは思っていたがこれ程とは…。』
戦い慣れているのだろう、やはり歴戦の戦士と言うのは侮れない。

「戦い方を変えようか…」
そう呟くと、フラジミルが腰だめに剣を構えたまま、じりじりと距離を詰めて来た。
俺の懐に飛び込んで来るのは止め、剣の間合いになった瞬間振り抜く気か。
『ヤツの剣の振り始めに飛び込んで、剣の柄を前蹴りで止める。ソコを足場にして飛び上がって顎にヒザ叩き込んでやるっ』

ージャリ…ザリ…ー
すり足で俺ににじり寄って来るフラジミルを俺は待ち構える。
『間合いまであと5歩…4歩…3歩…2歩…あと1歩っ』

ーブワッー
「うわっ?!」
間合いまであと1歩となった瞬間、顔めがけて砂が飛んで来た!
フラジミルが逆袈裟で剣を振り上げ、剣先で砂をすくい上げたのだ。
巻き上げられた砂は俺の目に入り、視界を奪われる。
「くっそ!子供のケンカみたいな事しやがって!」
俺は無理やり目を開けるが、涙で滲んでよく見えない。

「見えなければ飛べないんだろ?」
「お前気付いぐぁっ?!」
フラジミルの声が聞こえた瞬間、脇腹から体中に衝撃が走る。
どうやらヤツの膝が脇腹に突き刺さったようだ。
「かっ、くはっ?」
あまりの衝撃に息がうまく吸えないっ!

ーガッ!ゴッ!ドゴッ!ー
右左、上下、あらゆる方向から突きや蹴りが俺を襲う。
「はははははっ!ほらっ!どうしたっ!自慢の瞬間移動で飛んで見せろっ!」
「っく!」
俺は痛む目を開こうとするが、
ーゴンッ!ー
「っつぁ!?」
目を目がけて突きが飛んで来る。コイツ、俺の視界を奪う気かっ!

ーガンッ!ー
「一思いに斬り捨てたいがそうもいかんっ!」
ーゴガッ!ー
「代わりに散々手こずらせてくれた礼とっ!」
ーゴンッ!ゴンッ!ゴガッ!ー
「貴様に殺された帝国兵達の恨みも晴らさんとなぁっ!!」
ードボッ!ー
「ぐぁっ!」
フラジミルの前蹴りが下腹部に突き刺さり、たたらを踏んだ俺はついに膝を突くー。

つづく
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...