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私を水の都へ連れてって

別離ーわかれー その2

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「いやぁ、高原からの眺め、最高だったな!」
「ねっ!街が一望出来たもんねっ!
でも、庭園もとってもキレイで素敵だったなぁ。」
今日も一日、ミュール市内を観光していた。

馬車で移動中、道祖と神前、2人とも楽しそうだった。
宿に帰って来てからも、2人は未だ興奮気味だ。
道祖…いや、飛鳥はウットリしている。
庭園の咲き誇る花々を思い出しているのだろう、

「良かったですねぇ、2人ともご機嫌で。」
「ああ、そうだな。」
カシネの言葉に素直に頷く俺だが、
正直俺は、お前の事も気になってるんだぞ?

あの日以来、表面上は今まで通り接してくるが…。
前よりは話しかけてこない気がする。
よそよそしいと言うか…。
この旅で夜伽をさせるように、と言われて来たが…。
もう出来る気がしないんだけど?

「今朝はぁ、どうなる事かと思いましたよぉ~。」
「そ、そうだな、とりあえず機嫌はイイみたいで良かったよ。」
どうしたものかと思案していると、
今度はスエンが話しかけてきた。

「そんな顔ぉ、カシネさんの前でぇ、しないでくださぁい。」
スエンがこそっと耳打ちしてくる。
俺はあわてて顔を作る。

カシネの顔をじっと見ていたのがバレたのだろう。
そんなに思いつめた顔してたかな?
メイドに心配させるとは、主人として失格か?

「あ、タカミクラ様っ!おかえりなさいませっ!」
宿のに帰って来た俺達に、
料理長が声を掛けてくる。

「ああ、ただいー…。」
「本日の夕餉も、腕によりをかけお作りいたしますので、
ぜひご堪能くださいっ!」
料理長が食い気味に夕食をアピールしてくる。

「その事なんだが、量をもう少しー…。」
「これは申し訳ございませんっ!
当代随一の勇者様のお食事があの程度で足りるワケないですねっ!
大変失礼いたしましたっ!
ではっ、昨日よりも品数を増やしてご用意いたしますっ!
楽しみにしていてくださいっ!」
深々と頭を下げると、料理長は厨房へと走って行った。

「いや…量を減らして欲しい…。」
俺は料理長の消えた厨房に向かって声を掛けるが返事はない。

「あれより増えるのか…。」
昨日の多すぎる夕食を思い出し、
俺は少しだけ気が重くなった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

昨夜に続いて…いや、昨夜よりも多過ぎた夕食も終わり、各々部屋に引き上げる。

「料理長…張り切り過ぎだろ…うぷっ。」
はち切れそうに膨れた腹をさすりながら、俺はソファへ倒れ込み、
そのまま眠ってしまったー。

ーコンコンー
部屋の扉をノックする音で目が覚める。

部屋に戻ってから、どれ位経ったのだろう?
「眠ってたのか…。
誰だ?正直動きたくないぞ…。」
ソファに倒れ込んでいた俺は、重い腰を上げる。

まだ重い腹をさすりながら扉へ向かう。
今夜もスエンが…いや、神前の可能性も…?
いや、もしかすると…。

「はぁい。」
俺は淡い期待を胸に、自室の扉を開けたー。

つづく
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