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私を水の都へ連れてって
水の大聖堂と水の精霊帝 その1
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「はっくしょんっ!」
「うわっ!兄ちゃんっ、汚ぇなぁっ!
商品に唾がとぶじゃねぇかっ!」
「す、すまん…。」
俺は店の親父に謝りながら、鼻をすする。
「大丈夫ですかぁ、ハヤト様ぁ~?」
スエンが心配そうにハンカチを渡してくる。
「いや、誰かが俺の噂でもしてるんだろう?」
「?なんで誰かがハヤト様の噂をするとくしゃみが出るんですか?」
カシネが不思議そうに尋ねる。
そらそうだよな、俺も理屈はわからない。
「俺の世界での言い伝えみたいなもんだよ。」
「へ~、面白いですね。」
俺の背後にピタリと張り付いたロッテンは興味深そうだ。
それより、その小振りな御胸が腕に時々触れるんですけど、偶然ですよね?
「…ここも高いな…。」
「そうですねぇ~。我々の領地よりかなり割高でぇ、その割に質も悪いですしぃ~…。」
「店先に並んだ量も少ないな…。」
店員に睨まれないよう、スエンと小声で話す。
「ここ商店街は終わりか…。」
俺達は白亜の巨大な大理石の壁に突き当たる。
どうやら商店街の端、大聖堂の壁まで来たようだ。
「端まで来たようだな。」
先に端まで来ていた神前たちと合流する。
「少し戻って大通りに出て、大聖堂へ参りましょう。」
ロッテンが少し戻った先の、大通りへ出る道を指さす。
「大聖堂…。」
道祖の顔が期待と不安にこわばる。
「ボクにも…精霊帝は見えますかねぇ?」
「私もだよ…。」
「「…水の魔法剣…。」」
うん、そこハモるのか。流石戦闘狂。
小道を抜け、大通りに戻ると、大聖堂の入り口はスグだった。
観光客がちらほら、入って行く。
俺達も、今朝馬車から見た巨大なステンドグラスをくぐり、
両脇に精巧な彫刻があしらわれた柱を見ながら、長い石畳を進む。
朝には閉まっていた大きな扉は開かれていた。
聖堂内には参拝者用(礼拝用か?)に多くの椅子、
正面奥に入口同様、いやそれ以上のサイズのステンドグラスが。
そこから差し込む光が祭壇を華麗に、荘厳に照らす。
それはまさに、一枚の絵画、宗教画のようでー。
「外観もスゴかったけど、中もスゴいね…。」
「私も初めて見ましたけどぉ…圧倒されますねぇ~。」
「確かにスゴいが…私はもう少し質素な方が落ち着くかな?」
「あぁ、ボクもそうかもですね。」
皆口々に感想を言い合う。
肯定派2、否定派2の同点か?
カシネは少し意外だな。あれか?俺の屋敷がそこまで装飾してないから、
装飾が多すぎると落ち着かないのか?
「人の聖堂に難癖をつけるとは、無礼な者どもよな?」
「!こ、これは失礼をっ!」
司教様とかに聞かれたかっ?
俺は反射的に謝り、声の方へ振り返る。
水色の髪の女性がそこには立っていた。
威圧するわけでもなく、ただそこに立っているだけだが、
他を圧倒するその存在感は、見る者に畏怖と尊敬の念を自然と抱かせる。
「まあもっとも、我もこうゴテゴテした装飾はあまり好まぬが…。
普請してくれた者への非礼は看過できんしな。」
彼女の姿を見て、俺は慌ててその場に跪く。
「えぇ?ハヤト様ぁ~?」
スエンは突然跪いた俺に戸惑っている。
「エイク、息災でしたか?」
水色の髪の女性は跪く俺を一瞥すると横を通り過ぎ、後ろにいたエイクに話しかける。
「はい、ウンディーヌ様も息災なご様子。」
エイクも頭を下げ、応える。
「して、この者が勇者か?」
「はい、ハヤト・アルレンスー…。」
「異世界からオスル王国で召喚されました、ハヤト・タカミクラと申します。
ハヤトとお呼びくださいっ!」
エイクが紹介してくれるが、俺が遮る。
ここは自分で自己紹介したい。
「おい、高御座、飛鳥…。」
「ハヤト様…この方は…まさか?」
神前とカシネがうろたえている。
そうか、お前達も見えるのかっ。
「ふむ、我の名はウンディーヌ。水の精霊帝である。」
つづく
「うわっ!兄ちゃんっ、汚ぇなぁっ!
商品に唾がとぶじゃねぇかっ!」
「す、すまん…。」
俺は店の親父に謝りながら、鼻をすする。
「大丈夫ですかぁ、ハヤト様ぁ~?」
スエンが心配そうにハンカチを渡してくる。
「いや、誰かが俺の噂でもしてるんだろう?」
「?なんで誰かがハヤト様の噂をするとくしゃみが出るんですか?」
カシネが不思議そうに尋ねる。
そらそうだよな、俺も理屈はわからない。
「俺の世界での言い伝えみたいなもんだよ。」
「へ~、面白いですね。」
俺の背後にピタリと張り付いたロッテンは興味深そうだ。
それより、その小振りな御胸が腕に時々触れるんですけど、偶然ですよね?
「…ここも高いな…。」
「そうですねぇ~。我々の領地よりかなり割高でぇ、その割に質も悪いですしぃ~…。」
「店先に並んだ量も少ないな…。」
店員に睨まれないよう、スエンと小声で話す。
「ここ商店街は終わりか…。」
俺達は白亜の巨大な大理石の壁に突き当たる。
どうやら商店街の端、大聖堂の壁まで来たようだ。
「端まで来たようだな。」
先に端まで来ていた神前たちと合流する。
「少し戻って大通りに出て、大聖堂へ参りましょう。」
ロッテンが少し戻った先の、大通りへ出る道を指さす。
「大聖堂…。」
道祖の顔が期待と不安にこわばる。
「ボクにも…精霊帝は見えますかねぇ?」
「私もだよ…。」
「「…水の魔法剣…。」」
うん、そこハモるのか。流石戦闘狂。
小道を抜け、大通りに戻ると、大聖堂の入り口はスグだった。
観光客がちらほら、入って行く。
俺達も、今朝馬車から見た巨大なステンドグラスをくぐり、
両脇に精巧な彫刻があしらわれた柱を見ながら、長い石畳を進む。
朝には閉まっていた大きな扉は開かれていた。
聖堂内には参拝者用(礼拝用か?)に多くの椅子、
正面奥に入口同様、いやそれ以上のサイズのステンドグラスが。
そこから差し込む光が祭壇を華麗に、荘厳に照らす。
それはまさに、一枚の絵画、宗教画のようでー。
「外観もスゴかったけど、中もスゴいね…。」
「私も初めて見ましたけどぉ…圧倒されますねぇ~。」
「確かにスゴいが…私はもう少し質素な方が落ち着くかな?」
「あぁ、ボクもそうかもですね。」
皆口々に感想を言い合う。
肯定派2、否定派2の同点か?
カシネは少し意外だな。あれか?俺の屋敷がそこまで装飾してないから、
装飾が多すぎると落ち着かないのか?
「人の聖堂に難癖をつけるとは、無礼な者どもよな?」
「!こ、これは失礼をっ!」
司教様とかに聞かれたかっ?
俺は反射的に謝り、声の方へ振り返る。
水色の髪の女性がそこには立っていた。
威圧するわけでもなく、ただそこに立っているだけだが、
他を圧倒するその存在感は、見る者に畏怖と尊敬の念を自然と抱かせる。
「まあもっとも、我もこうゴテゴテした装飾はあまり好まぬが…。
普請してくれた者への非礼は看過できんしな。」
彼女の姿を見て、俺は慌ててその場に跪く。
「えぇ?ハヤト様ぁ~?」
スエンは突然跪いた俺に戸惑っている。
「エイク、息災でしたか?」
水色の髪の女性は跪く俺を一瞥すると横を通り過ぎ、後ろにいたエイクに話しかける。
「はい、ウンディーヌ様も息災なご様子。」
エイクも頭を下げ、応える。
「して、この者が勇者か?」
「はい、ハヤト・アルレンスー…。」
「異世界からオスル王国で召喚されました、ハヤト・タカミクラと申します。
ハヤトとお呼びくださいっ!」
エイクが紹介してくれるが、俺が遮る。
ここは自分で自己紹介したい。
「おい、高御座、飛鳥…。」
「ハヤト様…この方は…まさか?」
神前とカシネがうろたえている。
そうか、お前達も見えるのかっ。
「ふむ、我の名はウンディーヌ。水の精霊帝である。」
つづく
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