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私を水の都へ連れてって
旅行は向かってる時が一番楽しい その9(ちょっと修羅場編
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「ふん、アンタが勝手に来たんだろう。」
「ふふ、異世界人は辛辣ですね。」
森から出てきたエイクは、
神前のイヤミをさらりと流す。
「うわっ?!」
突然神前が悲鳴を上げ飛びずさり、俺の背後へ隠れる。
「どうした、神前?」
「アイツ!な、なんかっ!持ってる!」
「ん?」
怯える神前の指さす方、エイクの腰を見ると、
ウサギのような動物と、
小型のキジのような鳥が括り付けられている。
どうやら、森で捕まえた獲物の様だ。
「それはポルフォと…アテト鳥か?」
「正解ですっ!ハヤト様は動物にもお詳しいんですねっ!」
「ははは、これ位常識だよ、常識っ。」
エイクは驚いて褒めてくれるが、
これは旅行前に読んでいたガイドブックの知識だ。
ウサギのような動物はボルフォ、鳥の方がアテト鳥、
どちらもこの辺りの名物でよく獲れるらしい。
「運良く、森に入ってすぐに見つけました。
旬にはまだ早いんですが、これ位の脂の乗りの頃も、
肉の旨味が強くて通には人気なんですっ。」
エイクは腰に結わえていたポルフォを手に取り、
地元の名物を誇らしげに俺達の方にずいっと突き出す。
獲れたてのためか、目もまだ濁っておらず、
それが陽の光を反射してギラリと光る。
「ひっ!」
神前がその目の光にさらに身を縮こませる。
「?リンさんはお肉は苦手ですか?」
「ちょっ!こっちに向けるなっ!」
「すまないエイク。
俺達の世界では、あまり動物の死骸に接する事がないんだ。」
俺は怯える神前を庇ってエイクに説明する。
「え?でもお料理の準備されてましたよ?干し肉も見えましたし…?」
「そうだな、干し肉は美味しいし、神前も食べるな。」
「あ、じゃあポルフォが苦手ってことですか?」
「違う違う、そうじゃないんだ…。
あー、どう言えばいいんだ…?」
困った俺は、腕組みして首をひねる。
エイクには食用に加工された[肉]と、
獲ってきた獲物の[肉]の違いがわからない。
本来2つに違いはなく同じモノなんだから、
エイクの考えは正しい。
だが、神前にとっては、ウサギに見える動物の死骸だ。
これは考え方というより、感じ方の問題だ。
論理と倫理の違い…か?
首をひねりすぎて、首がねじ切れそうなった俺は、
「…捌いてない獲物が苦手なんだ…うん。」
「ああ、動物が御嫌いなんですねっ。
それならわかります、私も虫とか苦手ですしっ!」
違う、そうじゃない。
が、もう面倒なのでそういう事にしておこう。
しかし神前も神前だ。
俺は俺の背中に隠れ、
縮こまっている神前を見る。
ダール平原での戦い(戦場の男たち、神前という女の章を参照)は平気で、
ポルフォはダメって、コイツの倫理観もどうなってんだ?
俺はこの女が少し怖くなった。
「それでは、私も準備にかかりますね。」
「ではでは私はぁ、採点をぉ~…。」
「採点?ふふ、お手柔らかに。」
エイクとスエンは料理のために馬車の方へ。
並んで歩く二人の背に向かい、
神前がアッカンベーしている。
「お前は料理、もういいのか?」
「…もう出来た。」
「出来たって、野菜ちぎっただけじゃねぇか。」
「…サラダ。」
「そうか…。」
何も言えねぇ…。
「大体っ、なんでお前を巡って料理対決!
みたいになってんだ!
飛鳥は別として、私は関係ないだろっ!」
神前が突然怒り出す。なんだよ、情緒不安定かよ。
しかも俺が始めたんじゃないし…。
あれ?
「おい、道祖は別としてって、どーゆー…。」
「あっ!…べ、別にあの女とお前がどうなろうと、
私の知ったことじゃないっ!」
神前は一瞬しまった!という顔をしたように見えたが…?
「なんだ、ヤキモチ焼いてくれないのか?」
「誰がっ!お、お前とはその、し、シっちゃたがなっ、
お前の事がす、すすっ好きだからとかじゃないぞっ!」
「じゃあなんだよ?」
「せ…セフレ?」
わあ、同級生のセフレが出来たよ?
目の前の美少女がセフレだと思うと、
今までよりエロい目で見てしまう。
俺の視線がイヤラしく変化したのに気付いたのか、
「なんだ、その視線は?」
「いや、普通に付き合ってるってより、
セフレの方がエロいな…って。」
「死ねっ///」
「ぐおっ?!」
俺に強烈なボディーブローを食らわすと、
神前は道祖が料理している元へ走って行った。
「強烈な一撃でしたね。」
「ああ、体重差のせいかダメージはそこまでないが…。」
「「スピードが…。」」
俺とカシネ、二人の神前の何気ないツッコミへの感想が被り、
俺達は顔を見合わせる。
「ボク、今度ヤッたら負けちゃうかも?」
「はは、それはないだろうが…。」
ないだろうが…、もしかしたら?とは思ってしまう。
あれ程の手練れが味方なのは心強い。
しばらくすると、馬車の方から美味しそうな匂いがしてきた。
「どれ、エイクの料理も見ておくか。」
俺とカシネはエイクが料理している焚火に近づく。
「ふん、やはり所詮はお嬢様。
私達の敵ではなかったぞ。」
馬車に戻ってきた俺に、
神前が勝ち誇った顔で話しかけてくる。
「なんだ、自身満々だな。」
「そりゃそうだろう。
あの女、鍋に森で拾ってきた草は入れるは、
その辺の草をフライパンで炒めるは、もうメチャクチャだ。
あんなモノを食わされるお前に、少しだけ同情するぞっ。」
神前の話を聞き、俺は自分の耳を疑った。
え?
今鍋に草入れた?
え?
今フライパンに草入れた?
…どんな料理バトルになるんだ…。
つづく
「ふふ、異世界人は辛辣ですね。」
森から出てきたエイクは、
神前のイヤミをさらりと流す。
「うわっ?!」
突然神前が悲鳴を上げ飛びずさり、俺の背後へ隠れる。
「どうした、神前?」
「アイツ!な、なんかっ!持ってる!」
「ん?」
怯える神前の指さす方、エイクの腰を見ると、
ウサギのような動物と、
小型のキジのような鳥が括り付けられている。
どうやら、森で捕まえた獲物の様だ。
「それはポルフォと…アテト鳥か?」
「正解ですっ!ハヤト様は動物にもお詳しいんですねっ!」
「ははは、これ位常識だよ、常識っ。」
エイクは驚いて褒めてくれるが、
これは旅行前に読んでいたガイドブックの知識だ。
ウサギのような動物はボルフォ、鳥の方がアテト鳥、
どちらもこの辺りの名物でよく獲れるらしい。
「運良く、森に入ってすぐに見つけました。
旬にはまだ早いんですが、これ位の脂の乗りの頃も、
肉の旨味が強くて通には人気なんですっ。」
エイクは腰に結わえていたポルフォを手に取り、
地元の名物を誇らしげに俺達の方にずいっと突き出す。
獲れたてのためか、目もまだ濁っておらず、
それが陽の光を反射してギラリと光る。
「ひっ!」
神前がその目の光にさらに身を縮こませる。
「?リンさんはお肉は苦手ですか?」
「ちょっ!こっちに向けるなっ!」
「すまないエイク。
俺達の世界では、あまり動物の死骸に接する事がないんだ。」
俺は怯える神前を庇ってエイクに説明する。
「え?でもお料理の準備されてましたよ?干し肉も見えましたし…?」
「そうだな、干し肉は美味しいし、神前も食べるな。」
「あ、じゃあポルフォが苦手ってことですか?」
「違う違う、そうじゃないんだ…。
あー、どう言えばいいんだ…?」
困った俺は、腕組みして首をひねる。
エイクには食用に加工された[肉]と、
獲ってきた獲物の[肉]の違いがわからない。
本来2つに違いはなく同じモノなんだから、
エイクの考えは正しい。
だが、神前にとっては、ウサギに見える動物の死骸だ。
これは考え方というより、感じ方の問題だ。
論理と倫理の違い…か?
首をひねりすぎて、首がねじ切れそうなった俺は、
「…捌いてない獲物が苦手なんだ…うん。」
「ああ、動物が御嫌いなんですねっ。
それならわかります、私も虫とか苦手ですしっ!」
違う、そうじゃない。
が、もう面倒なのでそういう事にしておこう。
しかし神前も神前だ。
俺は俺の背中に隠れ、
縮こまっている神前を見る。
ダール平原での戦い(戦場の男たち、神前という女の章を参照)は平気で、
ポルフォはダメって、コイツの倫理観もどうなってんだ?
俺はこの女が少し怖くなった。
「それでは、私も準備にかかりますね。」
「ではでは私はぁ、採点をぉ~…。」
「採点?ふふ、お手柔らかに。」
エイクとスエンは料理のために馬車の方へ。
並んで歩く二人の背に向かい、
神前がアッカンベーしている。
「お前は料理、もういいのか?」
「…もう出来た。」
「出来たって、野菜ちぎっただけじゃねぇか。」
「…サラダ。」
「そうか…。」
何も言えねぇ…。
「大体っ、なんでお前を巡って料理対決!
みたいになってんだ!
飛鳥は別として、私は関係ないだろっ!」
神前が突然怒り出す。なんだよ、情緒不安定かよ。
しかも俺が始めたんじゃないし…。
あれ?
「おい、道祖は別としてって、どーゆー…。」
「あっ!…べ、別にあの女とお前がどうなろうと、
私の知ったことじゃないっ!」
神前は一瞬しまった!という顔をしたように見えたが…?
「なんだ、ヤキモチ焼いてくれないのか?」
「誰がっ!お、お前とはその、し、シっちゃたがなっ、
お前の事がす、すすっ好きだからとかじゃないぞっ!」
「じゃあなんだよ?」
「せ…セフレ?」
わあ、同級生のセフレが出来たよ?
目の前の美少女がセフレだと思うと、
今までよりエロい目で見てしまう。
俺の視線がイヤラしく変化したのに気付いたのか、
「なんだ、その視線は?」
「いや、普通に付き合ってるってより、
セフレの方がエロいな…って。」
「死ねっ///」
「ぐおっ?!」
俺に強烈なボディーブローを食らわすと、
神前は道祖が料理している元へ走って行った。
「強烈な一撃でしたね。」
「ああ、体重差のせいかダメージはそこまでないが…。」
「「スピードが…。」」
俺とカシネ、二人の神前の何気ないツッコミへの感想が被り、
俺達は顔を見合わせる。
「ボク、今度ヤッたら負けちゃうかも?」
「はは、それはないだろうが…。」
ないだろうが…、もしかしたら?とは思ってしまう。
あれ程の手練れが味方なのは心強い。
しばらくすると、馬車の方から美味しそうな匂いがしてきた。
「どれ、エイクの料理も見ておくか。」
俺とカシネはエイクが料理している焚火に近づく。
「ふん、やはり所詮はお嬢様。
私達の敵ではなかったぞ。」
馬車に戻ってきた俺に、
神前が勝ち誇った顔で話しかけてくる。
「なんだ、自身満々だな。」
「そりゃそうだろう。
あの女、鍋に森で拾ってきた草は入れるは、
その辺の草をフライパンで炒めるは、もうメチャクチャだ。
あんなモノを食わされるお前に、少しだけ同情するぞっ。」
神前の話を聞き、俺は自分の耳を疑った。
え?
今鍋に草入れた?
え?
今フライパンに草入れた?
…どんな料理バトルになるんだ…。
つづく
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