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アルフラーデ王国連合と異世界勇者
ガトフ、行きますっ! その1
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「どうした?ガトフ。」
俺は岩の下で動けなくなっていたガトフを見下ろしながら、意地悪く尋ねる。
「あ…あの…。」
ガトフはうつ伏せの状態から首だけをひねって顔をこちらに向け、言い淀む。
「どうした?ガトフ。早く出てこいよ。」
俺はもう一度、さらに意地悪く、岩のシェルターから出てくるように促す。
「え…っと、そのぉ…。」
「動けないのか?」
「……。」
俺の指摘にガトフは無言で答える。つまり、図星だ。
まあ、わかっていたのだが。
「はぁぁぁ~。」
俺はわざとらしく大きなため息を吐き、やれやれといった様子で続ける。
「なんで動けないの?」
「その…スタミナ…。」
「ちゃんとさ、休めって言ったよね。」
「はい…。」
「さっきも止めたのに休憩しないで行っちゃったけどさ。」
「すいません…。」
俺に責められ、ガトフは更に涙目に。
あれ?なんだろう、涙目の女の子のゾクゾクする。
ふと、元の世界の学校のある教師を思い出す。
よくネチネチネチネチと女子生徒を詰問して泣かせたりしていたいたが、そういう性癖だったのか。
俺は頭を振り、新たな性癖の芽吹きを振り払う。
「とりあえず、コレ飲んで。」
俺は収納魔法で仕舞っていた強壮剤を取り出し、ガトフの口に流し込む。
「…苦い。」
「お前ねぇ、贅沢言ってんじゃないよ。で、どうだ?体は動くか?」
「はい、行けます!」
俺の問いかけに飛び跳ねるように立ち上がって答える。
「早くカシネさんを助けに行きましょう!」
「アイツは大丈夫だよ。」
「え?で、でも!あのエフタフと戦ってるんですよねっ?!」
「そうだよ、あのエフタフと戦ってるんだ。だから、邪魔しちゃダメなんだ。」
俺は自分に言い聞かせるように、ガトフを諭す。
「カシネにはカシネのやるべき事が、お前にはお前のやるべき事があるんだよ。」
「私に?」
ガトフは少し怪訝な顔をする。
「そうだ。これはな、俺からの卒業試験だよ。」
「!」
ーギュッー
「ヤりますっ!やらせてくださいっ!」
ガトフは拳を握りしめ、俺をまっすぐ見つめる。
「…いい顔だ。」
俺はにっこり笑うと、ガトフの手を取り、岩の上へ引き上げた。
ガトフを散乱する崩れた天井の上へ引き上げ、肩を抱き寄せる。
「ちょっ!ちょっ、あのっ!」
顔を赤くし焦るガトフを無視して俺は視線の先を指差す。
「見えるか?」
「!…扉っ!…ダンジョンボス部屋…ですか?」
「そうだ。あれを今からお前に攻略してもらう。」
「わかりましたっ!…あれ?」
「どうした?」
「あの…もしかして…私一人でですか?」
「そうだよ?」
「ええぇぇぇっっっっっ??!!」
さも当たり前のように答える俺に、ガトフが悲鳴で応える。
「なんだよ、テントを出て行く前までの威勢はどうしたんだよ?」
「そっ!それは…。」
これは少し、意地悪な質問だっただろうか。困るガトフを見て俺は少し笑うと、
「今のお前なら、この位の規模のダンジョンのボスなら一人で倒せる。大丈夫だ、俺を信じろ。」
「…何回も騙されましたけど…。」
「痛いトコを突くなぁ。でも、そういうコトじゃないのは、わかるだろ?」
「…。」
ガトフは無言で俯いているが、俺はかまわず続ける。
「確かに、今回お前はスタミナ切れで失敗して、不安になってると思う。」
「…はい。」
「でもな、失敗したままだと、出来なかったイメージが残って、次もうまく出来ないモンなんだよ。」
「…。」
俺の小さい子供を諭すように優しい声色に、ガトフが黙って頷く。
「よし、今のお前なら、絶対に大丈夫だっ!自信持って行ってこいっ!」
「はいっ!」
勢いよく顔を上げ、力一杯返事をする。
顔を上げたガトフの瞳には、やる気に満ちていた。
ボス部屋へ向かうガトフの背中を見つめながら、
大丈夫だという想いとは別に、俺は一抹の不安も感じていた。
つづく
俺は岩の下で動けなくなっていたガトフを見下ろしながら、意地悪く尋ねる。
「あ…あの…。」
ガトフはうつ伏せの状態から首だけをひねって顔をこちらに向け、言い淀む。
「どうした?ガトフ。早く出てこいよ。」
俺はもう一度、さらに意地悪く、岩のシェルターから出てくるように促す。
「え…っと、そのぉ…。」
「動けないのか?」
「……。」
俺の指摘にガトフは無言で答える。つまり、図星だ。
まあ、わかっていたのだが。
「はぁぁぁ~。」
俺はわざとらしく大きなため息を吐き、やれやれといった様子で続ける。
「なんで動けないの?」
「その…スタミナ…。」
「ちゃんとさ、休めって言ったよね。」
「はい…。」
「さっきも止めたのに休憩しないで行っちゃったけどさ。」
「すいません…。」
俺に責められ、ガトフは更に涙目に。
あれ?なんだろう、涙目の女の子のゾクゾクする。
ふと、元の世界の学校のある教師を思い出す。
よくネチネチネチネチと女子生徒を詰問して泣かせたりしていたいたが、そういう性癖だったのか。
俺は頭を振り、新たな性癖の芽吹きを振り払う。
「とりあえず、コレ飲んで。」
俺は収納魔法で仕舞っていた強壮剤を取り出し、ガトフの口に流し込む。
「…苦い。」
「お前ねぇ、贅沢言ってんじゃないよ。で、どうだ?体は動くか?」
「はい、行けます!」
俺の問いかけに飛び跳ねるように立ち上がって答える。
「早くカシネさんを助けに行きましょう!」
「アイツは大丈夫だよ。」
「え?で、でも!あのエフタフと戦ってるんですよねっ?!」
「そうだよ、あのエフタフと戦ってるんだ。だから、邪魔しちゃダメなんだ。」
俺は自分に言い聞かせるように、ガトフを諭す。
「カシネにはカシネのやるべき事が、お前にはお前のやるべき事があるんだよ。」
「私に?」
ガトフは少し怪訝な顔をする。
「そうだ。これはな、俺からの卒業試験だよ。」
「!」
ーギュッー
「ヤりますっ!やらせてくださいっ!」
ガトフは拳を握りしめ、俺をまっすぐ見つめる。
「…いい顔だ。」
俺はにっこり笑うと、ガトフの手を取り、岩の上へ引き上げた。
ガトフを散乱する崩れた天井の上へ引き上げ、肩を抱き寄せる。
「ちょっ!ちょっ、あのっ!」
顔を赤くし焦るガトフを無視して俺は視線の先を指差す。
「見えるか?」
「!…扉っ!…ダンジョンボス部屋…ですか?」
「そうだ。あれを今からお前に攻略してもらう。」
「わかりましたっ!…あれ?」
「どうした?」
「あの…もしかして…私一人でですか?」
「そうだよ?」
「ええぇぇぇっっっっっ??!!」
さも当たり前のように答える俺に、ガトフが悲鳴で応える。
「なんだよ、テントを出て行く前までの威勢はどうしたんだよ?」
「そっ!それは…。」
これは少し、意地悪な質問だっただろうか。困るガトフを見て俺は少し笑うと、
「今のお前なら、この位の規模のダンジョンのボスなら一人で倒せる。大丈夫だ、俺を信じろ。」
「…何回も騙されましたけど…。」
「痛いトコを突くなぁ。でも、そういうコトじゃないのは、わかるだろ?」
「…。」
ガトフは無言で俯いているが、俺はかまわず続ける。
「確かに、今回お前はスタミナ切れで失敗して、不安になってると思う。」
「…はい。」
「でもな、失敗したままだと、出来なかったイメージが残って、次もうまく出来ないモンなんだよ。」
「…。」
俺の小さい子供を諭すように優しい声色に、ガトフが黙って頷く。
「よし、今のお前なら、絶対に大丈夫だっ!自信持って行ってこいっ!」
「はいっ!」
勢いよく顔を上げ、力一杯返事をする。
顔を上げたガトフの瞳には、やる気に満ちていた。
ボス部屋へ向かうガトフの背中を見つめながら、
大丈夫だという想いとは別に、俺は一抹の不安も感じていた。
つづく
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