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アルフラーデ王国連合と異世界勇者

カシネvsエフタフ その2

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「お情け?お主…女子…か?」
「なっ?!僕のどこをどう見たら女に見えないんですかっ!」
エフタフに突拍子もない事を言われ、カシネもついムキになって応える。
「いや、人間や獣人族、魔族もだが、女子は皆、もっとこう、色々膨らんでおるだろう?」
「ええ、そうですね。それで?」
「お主、ひらひらじゃないか。」
「ひっ、ひらひらっ?!ひらひらって何だっ、それはっ!!」
「ははは、これは面白い。殺す前のお楽しみが増えたわ。
お主の四肢を圧し折り、その鎧を剥いぎ、お主の言が真か確かめてやろう!」
エフタフはイヤラシく下卑た笑みを浮かべる。

「今回はモータル王国の異世界人の始末が目的だったが…。ここまでされては、な。」
額の血を拭いながら、エフタフが立ち上がる。
「あの時は殺し損ねたが、ここで逢うたのも何かの縁。まずはお主から…お楽しみの後に殺してやろう。
ガトフと言ったか。あの娘はその跡だ。」
エフタフは舌なめずりすると、大斧を大上段に構える。
「ガトフさんが狙いだったのか…。」
「そうよ。ハヤトのように地上侵攻の邪魔になると困るからな。
成長する前に殺すことにしたのよ。
しかし、魔法は3系統使えるとは言え、痩せたガリガリの小娘が来ると聞いておったのに、
我々のような姿に変身するとは…正直驚いたわ。」
「?聞いた?誰にです?」

しばし沈黙が流れ、
「……少し、しゃべりすぎたか。冷静なつもりでおったが…。
そうでもないのかもしれんなっ!」
エフタフは大上段に構えた大斧を勢いよく振り下ろす。
カシネは後ろに飛び退くが、
「ぬぅんっ!」
エフタフの大斧は地面まで振り下ろされず空中で止まると、
エフタフの突進と共に斧頭が突き出された。
真後ろに飛び退く途中で未だ着地していないカシネは、このままでは大斧の突きを避けられない。
「ちぃっ!」
カシネは舌打ちすると、その突き出された斧頭に足を掛け、大斧の峰へ飛び乗る。
そのまま大斧の峰から柄へと走り抜け、エフタフの馬面目がけて刀を横薙ぎにっー
「ふぅんっ!!」
ーグワアァッ!ー
カシネを柄に乗せたまま、エフタフは大斧を振り上げる。
「うわっ?!」
勢いよく跳ね上げられた大斧から、カシネは空中高く放り投げられる。
「これでチョコマカ出来まいよっ!!!」
ーブゥゥゥンッッ!!ー
エフタフは空中のカシネ目がけて大斧を横薙ぎに振り抜く。
ただ、今までとは違い、刃先ではなく斧の腹を向けている。
それはまるで、巨大な鋼鉄のハエ叩きっ!

ーゴバアァァンッッッ!!!ー
「がはぁっ!」
強烈な衝撃がカシネの体全体を襲い、
ードゴッ!!ー
ダンジョンの壁まで弾き飛ばされ、容赦なく叩き付けられる。
「ふむ、潰れて斧に張り付くかと思うておったが、
思ったよりも頑丈だな。よく鍛えておる。」
「かっ!はっ!お、お前に褒められても、嬉しくないですよ…。」
感心するエフタフに、カシネは憎まれ口を返すが、そのダメージは大きく、
壁にもたれて立っているのがやっとだ。

「ふんっ!」
ーゴオォンッ!!ー
「!」
突如、エフタフがショルダータックルで突っ込んできた。
エフタフの巨躯とダンジョンの壁に挟まれたカシネは声も出せない。
ーミシミシッー
「が…あ…っ。」
さらに、無情にもエフタフはそのままカシネをダンジョンの壁に圧し付けていく。
ーバキッ!ミキッ!ー
「っ!」
「おお、骨の折れる音、感覚が直に聞こえるわ。」
エフタフは、カシネの骨を圧し潰す感覚を肌で感じ取り笑う。

「なかなか頑丈ではあったが…このまま圧し潰してやろう。」
ーごりっ!ー
「は…はっ…ぁ…。」
カシネは気管を圧迫され声も出せず、呼吸もうまくできない。
心臓を圧されているため、血の巡りも滞り、意識は薄れていく。
「これではお楽しみはムリそうだな…。
まぁ、お主のひしゃげた体で、我のマントでも作るとするかっ。」
ガトフは残念そうだが、カシネを圧し潰そうと、足に力を入れる。

ービキビキッ!ー
鋭い音がした瞬間、カシネが圧し付けられていた壁一面にヒビが入り、
ードゴオオォォォンンンッッッ!!!ー
轟音と共に壁が崩れ、二人は壁を隔てた隣の空間へなだれ込む。
「うおっ?!」
「!」
背後が無くなったカシネは力を振り絞り、体をねじって反転させると、エフタフの突進をいなす。
「ぐわっ!?」
エフタフは壁が無くなり、勢い余ってつんのめり、勢いよく転んでしまう。
「なんと無様なっ!」
あわてて立ち上がろうと地面に手を着き、四つん這いになった瞬間、
ーゴッ!!!ー
「ぉっ!」
鈍い痛みが脳天に突き刺さり、エフタフは声にならない声を上げる。
「お楽しみは不可能、いや、不能になりましたぁw」
臀部丸出しで四つん這いになっていたエフタフの会陰を、カシネは前蹴りで蹴り刺すと、
「もう一丁っw」
ーグチィッー
「~~~~っ!!!」
睾丸を思い切り足の甲で蹴り上げる。
「これは、潰れたんじゃないですかぁw?」
「がっ!ぐぉっ!おぉっ?!ほぁっ!」
エフタフは股間を押さえ、苦悶の声を上げ、もんどりうって辺りを転げまわる。
「僕にはわかりませんが、相当痛いらしいですねぇw
お・ん・な、の僕にはわかりませんけどw」

転げまわるエフタフを鼻で笑うと、カシネはその場にへたり込む。
「はは…壁が壊れなかったらヤバかったですよ…。」
カシネは呼吸を整えると、体のチェックにかかる。
『骨が何か所か折れてるけど、動けなくはない…か。ただ、スピードは落ちるなぁ…。』

「ぐおぉぉ…き、貴様っ…許さんぞぉ…。」
転げまわっていたエフタフが痛みに慣れたのか、股間を押さえながら立ち上がる。
「さて、コッチもしっかり休めましたし…。」
それを見たカシネも立ち上がり、
「そろそろ終わらせましょうかっ!」
エフタフと対峙し、刀を構え直した。


つづく
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