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アルフラーデ王国連合と異世界勇者

謁見 モータス国国王

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モートル王国王宮、[ホルタス宮殿]の謁見の間。
ここで俺たち3人はモータル王が来るのを、
片膝礼で待っている。
少々、待たされすぎな気が…という頃に、
「苦しゅうない、面を上げよ。」
頭上の王から声がかかる。
随分若い、いやむしろ幼い声に違和感を覚えながら、
モータル王との再会を楽しみに顔を上げる。

が、そこには、あのゴツゴツした偉丈夫の姿は無く、
キラキラ光る立派な黄金の玉座に子供メスガキが一人、
腰掛けているだけだった。
「此度は遠路はるばる、我が国の要請に応えての来訪、
誠に大義である。」
偉そうに玉座に踏ん反り返る子供の、
芝居掛かった大仰な物言いに思わず、
「いや、お前誰だよ?」

「ぶっ!無礼者っ!!」
「この不敬者を引っ立てろ!!」
玉座の周りに侍る重鎮らしき家臣たちが気色ばんで騒ぐ。
鎧姿の衛士たちも腰の剣に手をかける。
「ハヤト様、いかがいたします?」
チェーレが尋ねてくる。
「う~ん。」
「わーwこれは斬り合いですかね?」
「貴女も、恐ろしい事をさらっと言わないでください。」
あっけらかんとしたカシムを窘めながらも、スカートの中の暗器に手を伸ばすお前も十分怖いよ。

「鎮まれ。」
玉座の子供が一言。
あれほど騒いでいた家臣たちも、子供の鶴の一声に鎮まる。
「構わぬ。そなたの疑問はもっともだからな。」
「あー…ありがとうございます?」
俺はとりあえず礼を言い、頭を下げる。
「其方のデカチンに免じて、妾への不敬は不問としよう。」
子供がニヤリと笑いながら告げ、
謁見の間の皆が笑いをこらえているのがわかる。

「あのぉー。」
「ん?」
「俺と昨日、男子トイレで会いました?」
「はて、妾の可愛らしいこの顔を、
そうそう忘れる者はおらんのじゃがの?」
あー、やっぱりこの子供、
昨日トイレで俺のイチモツを笑った生意気なガキだ。
でも、なんでコイツが玉座に…。
「あれ?女の子なのに男子トイレに?」
カシムが空気を読まず尋ねる。
「ふん、妾の王宮で、妾がどこにいようと勝手じゃろう。」
一笑に付されたった。

「さて、早速じゃが我が国で召喚した勇者を紹介しよう。」
玉座に座る子供が家臣の方に目配せすると、
奥に引っ込んだ衛士が一人の少女を連れてきた。
「この者が我が国で召喚した勇者じゃ。」
俺の前に連れてこられたのは、
立派な装備に身を包んだ、やせたかなしい姿の少女だった。

「あ、あの…。」
少女が何か言おうとするが、
「この者、見た通りに貧相でな、とても魔物との戦いに役立つと思えぬ。」
玉座の子供は忌々しそうに少女を睨む。
勇者と呼ばれた少女を見ると、確かにとても戦えるようには見えない。
だが、それは最初に召喚された時の俺もそうだ。
なんなら俺は、そのまま捨てられそうになったほどだからな。
目の前で震えている貧相な少女に昔の自分を重ねる。

「其方にこの者を…。」
「私が、責任を持って鍛えてみせましょう。」
食い気味に答える俺に、子供は少したじろいだ。
「うむ、期待しておる。
では、妾は忙しいのでな。詳しい事はクサムに聞くとよい。
滞在中、其方に付けるゆえ、自由に使え。」
向こうの家臣の列に並ぶクサムが頭を下げる。
「は、ありがとうございます。」
彼が世話係とはありがたい。彼とは気が合いそうだからな。

子供は玉座から『よいしょ』と降りると、多くの家臣を引き連れ、
さっさと謁見の間を出て行く。
残された俺たちに、クサムが小走りで寄って来た。
「驚かれたでしょう?」
「そりゃそうだろ、どうなってんだよ?」
「ハヤト様。」
「あ、えっと、どうなってるんですか?」
俺は思わず普通に話してしまったが、
チェーレに睨まれ言葉遣いを正す。

「ははは、お気になさらず。
滞在中はハヤト殿の家臣と思って接してください。」
「そうか、ありがたい。
ではクサム殿、どうなってんだ?」
「とりあえず、お部屋へ戻りましょう。」
クサムに促され、俺たちは貴賓室へ向かう。

道中、勇者と呼ばれた少女を観察する。
モータル王やさっきの子供の事も気になるが、
それは部屋でクサムにゆっくり聞こう。
それよりも、まずはこっちだ。
異世界に召喚されてどれ位が経ったのか。
まだこの世界に馴れないようで、
常にビクビクして見え、目もキョロキョロと落ち着きがない。
一人で召喚されたんだろうか?
知らない世界に一人きり。
経験した俺にはわかるが、これは精神的にくる。
そのために食事が喉を通らないのか、それとも元からなのか、
非常に痩せて見える。
食事が与えられてない、とまでは考えたくないが…。

見ているだけでは埒が明かない。
意を決して、
「俺の名前はハヤト。
隣のオスル王国から貴女を鍛えるよう派遣された。
よろしくな。」
俺は歩きながら話しかける。
なるべく怖がらせないように、優しく、静かに。
少女は身構えたまま、
「…ガトフ…です。よろしく…。」
ガトフ…変わった名前だな。

「一人でこの世界へ?」
「…はい。」
「俺と同じだな…。心細かっただろうに…。」
「え?」
「俺もな、昔この世界に召喚されたんだ。ひとりぼっちでね。」
「そ、そうなんですね!」
少女の顔が少し、明るくなった気がする。
自分と同じ境遇の人間がいたことに安堵したのだろう。

もう少し打ち解けてから部屋に戻りたかったのだが、
貴賓室へ着いてしまった。


つづく
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