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ダンジョン攻略と4人の新人騎士

エピローグ 2

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「もう行かれるのですね…。」
エイクが名残惜しそうに見つめてくる。
そんな目で見ないでくれ、俺も後ろ髪を引かれる思いだよ。
「ああ、今回も勅命だからな。
一旦領地に帰って、スグにアルフラーデに発つ…わっ?!」
「側室の件、忘れないでくださいねっ♡」
突然引き寄せられ、耳元で囁かれる。
エイクのたわわな果実にチラリと目をやり、
「…善処します。」
「お願いしますw」

「私との約束もお忘れなく!」
ミラは俺の両手を握り、こちらも側室問題の念を押す。
「わ、わかってるから!落ち着いたら話し合おう、な?」
「はい!お待ちしております!」
ヤバい、気迫で押し切られそうだ。

ークイッー
裾を後ろから引っ張られる。
振り向くと、アルフリーヌが泣きそうな顔で裾を引いている。
「お前の家へ行く約束も、少し後にになるな。すまない。」
俺はアルフリーヌの小さな手を取り、腰を屈めて謝る。
「…泣いて師匠を困らせるほど、私子供ではございませんわw」
目に涙を溜めながら、精一杯の笑顔で返す。
なんて健気なんだっ!
「早くお帰りくださいませね?」
新婚のような会話に、思わず抱きしめてしまいそう…。

「変態。」
「ぐっ!」
そんな俺の動きに気付いたのか、
サスティが侮蔑込めた一言を浴びせる。
「そんなお子様まで守備範囲とは、団長たちが正しいんじゃねぇか。」
「…お前、ネコの被り物はどうした?」
「アンタら相手にゃ、もう不要だろ?」
そう言って、ニヤリと笑う。
「それより、さ。」
そう言うと、さっきとは違い今度はしおらしく、
「……ありがとな。」
「?」
「いや、アイツらにはもう礼を言ってたんだけど、
アンタにはまだだったからさ。」
「はは、初心者の指導は先達の義務だよ、気にするな。」
「違っ!そうじゃなくて!」
「なんだよ?」
「…その…敵前逃亡を団長に黙っててくれた事だよ…。」
「あぁ?なんの事だ?あれはお前が逃げたと見せかけて敵を油断させる作戦だろ?」
「おまっ?!何言って…いや、そう!そうなんだよ!作戦だよ!」
「ああ、俺も皆もすっかり騙されたぜっ!」
「ははは!そうだろ、そうだろ!」

「おい、ハヤト!話がある!」
「悪い、サスティ。ロイヒが呼んでる。じゃあな!頑張れよ!」
「あ…。」
一瞬、サスティは手を伸ばし俺を掴もうとするが、俺はそれに気づかず、
俺はサスティとの話を切り上げ、ロイヒとヴァルシの元へ向かう。
「……戻るって信じてくれて、ありがとな。」
小さくなる俺の背中に、サスティが呟いた。

「なんだ、ロイヒ、ヴァルシ。悪口なら聞かないぞ。」
「お前は何を言ってるんだ。」
「そうだぞ、わっ!お前…アナタの悪口など言ったこともない!ですわ!」
「親父さんの前だからって、ネコ被るなよ。」
「う、うるさい!」
「姉上、声が大きい。」
あ、向こうでロイヒ達の父親、カストラール卿が睨んでる。
あの偉丈夫に睨まれたら、俺でも怖い。
「お前らも大変なんだな。」
「わかってくれるか、ハヤト。」
「なんで打ち解けてるんだ!」

「で?何のようだよ?」
「う、うむ!大儀であった!」
ロイヒが腕を組み、ふんぞり返る。
「は?」
「姉上…。」
困ったように首を振るヴァルシが、
「つまり、今回のダンジョン攻略、大変助かった。
爵位持ちの魔族相手に新人が全員無事に帰ってこれたのもオマエの御蔭だ、
感謝する。」
そう言うと、ヴァルシが頭を下げる。
「お、おいおい、そこまで…。」
「ヴァルシ!お前こんなヤツに…!」
「姉上っ!」
「うぅ…。…助かった。……ありがとう。」
渋々ロイヒも頭を下げる。
「ロイヒまで、どうしたんだっ?!」
いつもの二人とのギャップに取り乱していると、

「娘たちの謝意、受けてはもらえなぬか?」
「?!」
俺は頭上からの声に驚き驚き振り返ると、
そこには大男のカストラール卿が立っていた。
なんだ、2m以上あるぞこの人!怖いんですけど!
「い、いや!受け入れるも何も!今回のは勅命でしたし!」
「それでも、二人は君に感謝しているのだ。
どうだろう、受け入れてもらえないか?」
「受けます!受け入れます!
むしろ、こちらこそありがとうございます!」
強面の大男に圧倒され、二人の謝意を受け入れると、
「そうか、感謝する。」
さっきまでの強面が破顔一笑、満面の笑みに変わる。
「よかったな、二人ともw」
「はい、お父様!」
強面の軍人だが、子煩悩な所もあるようだ。

「さ、お前たちは戻りなさい。私はハヤト殿と話がある。」
「それは…ハヤトのアルフラーデ王国派遣に関係するお話でしょうか?」
「うむ。近衛騎士団団長と言えども、
聞かれるワケにはいかん重大な話だ。」
「わかりました!」
「ハヤト、それではな。」
カストラール卿のただならぬ雰囲気に、
二人は会釈して離れていく。

二人の背中をぼんやり眺めていると、
「で、ハヤト殿。」
「なんでしょう?」
ーガシッー
信じられない怪力で肩を掴まれ、
「二人に何かしたかね??」
最初以上の迫力で圧迫面接される。
さっきまでの笑顔はどこいった?!

「い、いや!何も…。痛っ?!」
ーギリギリー
肩を掴む手に、さらに力が入る。
「2人ともハッキリとは言わんが……。
大侵攻の初戦で君と3人行方不明になり帰って来てから、
明らかに2人の態度がおかしい。
それまでは割りと好意的に君に接していたと思うが…。
あれ以降口を開けば君の悪口だ。」

ーミシミシー
肩を掴む手に、さらに力が入り。
俺の両肩の骨が軋む。
「いや、悪口とはいえ、
むしろ以前より二人から君の名前を聞く日々だ。」

気づけは俺はカストラール卿に肩を掴まれ、
そのまま持ち上げられている。
ヤバい、このおじさんヤバすぎるっ!
「二人の父親として、気になるのは当然だろう?
さぁ、何をしたのかね?ナニをしたのかねっ?!」

「ナニってなんだ?!何もナニも俺はっ…!」
ブンブン振られながら俺は必至で答える。
「ははは、頑丈だな、君はっ!さすが勇者というべきか!
だが、これはどうだねっ?!」
カストラールの手にさらに力が入り、
さらに激しく振り回された所で、

「ち、父上何をっ?!」

異変に気付いたヴァルシが駆け寄ってきた。
俺はカストラールがいきなり手を離したため、
地面に尻もちを着いて落下した。
「いや、今回の勅命についてご説明していただけだ。」
「そ、そうですか?とてもそうは見えませんでしたが…。」
「そ、それじゃ、俺は領地に帰ります!さようなら!」
今がチャンスと俺は素早く立ち上がると、
カストラールから離れる。

「あ!ハヤト殿っ?!話はまだっ!」
「師匠!お早い御戻りをっ!」
「ハヤト様!色よい御返事をっ!」
「!私も!私も待ってますから!!」
「気ぃつけてなっ!!」

「皆も元気でな!」
俺は4人に手を振り、
「最高の弟子だったぞ!!」
そして、転移魔方陣のあるギルド目指して駆け出す。


『ダンジョン攻略と4人の新人騎士』 ー完ー
『アルフラーデ王国連合と異世界勇者』へつづく
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