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第五章 聖龍王国の御姫様
その15 アクサナ憤慨す その1
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「お兄ちゃんカッコイイ!キレイ!ワタシが大きくなったら、お嫁さんになってあげる!」
「はいはい、ありがとな。でも、向こうで怖い顔したお姉さんが睨んでるぞ?」
レインズは自分の腰にしがみ付くレイシィに、通路の影から睨むアクサナとセレーテを教える。
「大丈夫、二人の次だから、第三夫人になってあげる!」
「…そりゃどうも」
一層強く抱き着いてくるレイシィに、レインズはタジタジだー。
「セレーテお姉ちゃん、待ってよぉ!」
「嫌だ!冗談じゃない!」
涙目で甲板を逃げ惑うセレーテと、それを追い回すレイシィ。
「モフモフ!お耳としっぽ、モフモフさせてよぉ!」
「もお勘弁してくれ!」
あれほど仲良くなりたがってレイシィを追っていたのがウソのように、
今はセレーテが逆に追われているー。
「アクサナちゃん!こっち、こっち!ちゃんとお姉ちゃんに付いて来て!」
「お、お姉ちゃん、待つのじゃー」
甲板の端、レイシィに促され彼女の後ろを駆けてゆくアクサナ。
立入禁止と書かれた手すりの隙間をスルリと抜けると、レイシィはマストを登り始める。
「ほらココ見て!この隙間を通るとマストに昇れるんだよ!」
「んなっ?!ソコは危険じゃ!近づくでない!」
レイシィが危険な場所に入って行くのを、アクサナが慌てて止めるー。
海獣を倒して以来、こんな日々が続いている。
レイシィはあれほど怖がっていたセレーテを、お姉ちゃんと呼んで追いかけ回している。
特に海獣を蹴飛ばしたレインズの事を今まで以上に気に入ったようで、
幼いながらも積極的なアプローチで、レインズをたじろがせているー。
「平和だ…」
雲一つない青空、どこまでも続く穏やかな大海原、そこを滑る様に進む大型船。
後方甲板のハンモックで、潮風に揺られるレインズ。
左目の痛みもすっかり治まり、優雅な船旅を楽しんでいた。
レイシィ達の声を遠くに聞きながら、ハンモックで揺られていると、
「解せぬ」
「うわっ?!」
突然枕元でアクサナの声がして、レインズは驚いた拍子にハンモックから落ちる。
「な、なんだよアクサナ、びっくりするだろ!」
「ワシは解せぬっ」
アクサナは憤懣やるかたないといった風でレインズに詰め寄る。
「何がだよ?」
「なんでセレーテがお姉ちゃんで、ワシがちゃん付けで妹扱いなんじゃ!」
「それは…」
レインズはアクサナの体を見て、言うのをやめる。
「なんじゃ、ワシの胸が小さいからかっ!
胸ならセレーテもさほど大きくはないじゃろう!」
「いやいや、胸じゃないだろ、背丈の問題だろ?」
「せ、背丈は仕方ないじゃろ!」
「じゃあ胸も仕方ないだろ…俺は小さくても気にしないよ」
そう言ってレインズはアクサナの肩に手を伸ばす。
が、アクサナはその手を払いのけ、
「それだけでないっ!毎日毎日主様にくっついてイチャイチャと!」
「イチャイチャってそんな…相手はまだ子供だぞ?」
「その子供相手にまんざらでもない風に見えるかの?」
「そんな事は…!」
「デレデレと鼻の下が伸びておるがの!」
「ぐぅ」
レインズは言葉に詰まる。
確かにレイシィはまだ幼さなく、年の頃は12、3歳位と言った所。
だが、とても可愛らしい美少女だ。
そんな美少女に迫られては、レインズとしてもイヤなワケがなく、どうしても頬が緩んでしまう。
「どうしたんだよ第一夫人、余裕ないじゃないか」
レインズは自分を睨み付ける愛しい幼な妻を抱き寄せる。
「ご、誤魔化そうとするでない!」
アクサナはレインズの腕の中で暴れるが、レインズはそれを無理やり抑え込む。
「くっ!主様、腕力が上がっとるなっ」
「はは、邪神に感謝だな」
アクサナもしばらくはレインズの腕の中で暴れていたが、いつしか抵抗を止め、彼の胸に頬寄せていた。
「落ち着いたか?」
ーコクリ…ー
アクサナは無言で頷く。
そして二人は、人気のない後部甲板で静かに抱き合った。
つづく
「はいはい、ありがとな。でも、向こうで怖い顔したお姉さんが睨んでるぞ?」
レインズは自分の腰にしがみ付くレイシィに、通路の影から睨むアクサナとセレーテを教える。
「大丈夫、二人の次だから、第三夫人になってあげる!」
「…そりゃどうも」
一層強く抱き着いてくるレイシィに、レインズはタジタジだー。
「セレーテお姉ちゃん、待ってよぉ!」
「嫌だ!冗談じゃない!」
涙目で甲板を逃げ惑うセレーテと、それを追い回すレイシィ。
「モフモフ!お耳としっぽ、モフモフさせてよぉ!」
「もお勘弁してくれ!」
あれほど仲良くなりたがってレイシィを追っていたのがウソのように、
今はセレーテが逆に追われているー。
「アクサナちゃん!こっち、こっち!ちゃんとお姉ちゃんに付いて来て!」
「お、お姉ちゃん、待つのじゃー」
甲板の端、レイシィに促され彼女の後ろを駆けてゆくアクサナ。
立入禁止と書かれた手すりの隙間をスルリと抜けると、レイシィはマストを登り始める。
「ほらココ見て!この隙間を通るとマストに昇れるんだよ!」
「んなっ?!ソコは危険じゃ!近づくでない!」
レイシィが危険な場所に入って行くのを、アクサナが慌てて止めるー。
海獣を倒して以来、こんな日々が続いている。
レイシィはあれほど怖がっていたセレーテを、お姉ちゃんと呼んで追いかけ回している。
特に海獣を蹴飛ばしたレインズの事を今まで以上に気に入ったようで、
幼いながらも積極的なアプローチで、レインズをたじろがせているー。
「平和だ…」
雲一つない青空、どこまでも続く穏やかな大海原、そこを滑る様に進む大型船。
後方甲板のハンモックで、潮風に揺られるレインズ。
左目の痛みもすっかり治まり、優雅な船旅を楽しんでいた。
レイシィ達の声を遠くに聞きながら、ハンモックで揺られていると、
「解せぬ」
「うわっ?!」
突然枕元でアクサナの声がして、レインズは驚いた拍子にハンモックから落ちる。
「な、なんだよアクサナ、びっくりするだろ!」
「ワシは解せぬっ」
アクサナは憤懣やるかたないといった風でレインズに詰め寄る。
「何がだよ?」
「なんでセレーテがお姉ちゃんで、ワシがちゃん付けで妹扱いなんじゃ!」
「それは…」
レインズはアクサナの体を見て、言うのをやめる。
「なんじゃ、ワシの胸が小さいからかっ!
胸ならセレーテもさほど大きくはないじゃろう!」
「いやいや、胸じゃないだろ、背丈の問題だろ?」
「せ、背丈は仕方ないじゃろ!」
「じゃあ胸も仕方ないだろ…俺は小さくても気にしないよ」
そう言ってレインズはアクサナの肩に手を伸ばす。
が、アクサナはその手を払いのけ、
「それだけでないっ!毎日毎日主様にくっついてイチャイチャと!」
「イチャイチャってそんな…相手はまだ子供だぞ?」
「その子供相手にまんざらでもない風に見えるかの?」
「そんな事は…!」
「デレデレと鼻の下が伸びておるがの!」
「ぐぅ」
レインズは言葉に詰まる。
確かにレイシィはまだ幼さなく、年の頃は12、3歳位と言った所。
だが、とても可愛らしい美少女だ。
そんな美少女に迫られては、レインズとしてもイヤなワケがなく、どうしても頬が緩んでしまう。
「どうしたんだよ第一夫人、余裕ないじゃないか」
レインズは自分を睨み付ける愛しい幼な妻を抱き寄せる。
「ご、誤魔化そうとするでない!」
アクサナはレインズの腕の中で暴れるが、レインズはそれを無理やり抑え込む。
「くっ!主様、腕力が上がっとるなっ」
「はは、邪神に感謝だな」
アクサナもしばらくはレインズの腕の中で暴れていたが、いつしか抵抗を止め、彼の胸に頬寄せていた。
「落ち着いたか?」
ーコクリ…ー
アクサナは無言で頷く。
そして二人は、人気のない後部甲板で静かに抱き合った。
つづく
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