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第四章 アクサナの里帰り

その4

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レインズ達の乗った馬車は巨大で堅牢な城門をくぐり、
魔王国の王都[サウール]へ。
城門から続く大通りを進む。

「広い大通りだな、王国のより広いか?」
「城壁がすでに王都より堅固ですよ。」
「それだけ外敵に怯えていたのじゃ。
マルワール王国とエメルヒス帝国が手を組んで攻めて来んとも限らんしな。」
「なるほど…。」

大通りには路面店だけでなく露店もあり、
人通りも多く賑わっているが、
馬車など用の車道と人用の歩道に分けられているため、混雑は起きない。
歩道の人々は王族用の馬車にアクサナが乗っているのに気付いた者は、
頭を下げたり手を振ったりしている。
それにアクサナは笑顔で手を振り返す。

「…お前も国民に慕われてるんだな。」
「なんじゃ、主様。当然じゃろう、
臣民に慕われぬ統治者は不幸であろうし、
その逆もまた、不幸じゃろうよ。」
「そうだよな…。」
「ほれ、王城の門が見えた、城はもうすぐじゃぞ。」
一同の視線はアクサナの視線の先へ向かう。

馬車は堀に架かる跳ね橋を進み、門をくぐり、
眼前に巨大な白亜の王城が姿を現す。
壁の大理石もだが、窓にはめられた窓ガラスもキラキラと美しい。

城に到着したレインズ一向は、多くの使用人に出迎えられ、
衛士に先導され王城の広い廊下を進む。
顔が映るほどに磨かれた廊下には、ふかふかの赤い絨毯が敷かれ、
隅々まで清掃が行き届きチリ一つない。

すれ違う使用人は皆感じが良く、笑顔のおじぎで一行を出迎える。

全てが行き届いた城内に、セレーテとアレクシィは恐縮しっぱなしだ。
「魔族のイメージが変わりますね…。
もっと野蛮で野卑な国だと思ってました。」
アレクシィがレインズの耳元で囁く。
「そうだな。魔王国に来た事がない、魔族と接点がない人族は、
魔族や獣人にそんなイメージを持ってるな。」
だが実際はどうだ。非常に洗練された文化は人族に勝るとも劣りはしない。

「なんじゃ、二人でコソコソと?」
「いや、いい城だなぁと。
使用人達も感じがいいし。」
「それは良かった。せっかく来てくれたんじゃ、
嫌な気持ちにはさせとうないからのぉ。」
レインズの賛辞にアクサナは上機嫌、と言うよりは誇らしげだ。

衛士に先導され辿り着いたのは大きな扉の前。
「え?ここって…っ!?」
見覚えのある扉に、レインズは狼狽える。

「マルワール王国バルク領より領主の御子息、
レインズ・ウィンパルト様とその御一行、
お越しになりました。」
先導役の衛士の声に扉の門番が頷くと、
うやうやしく扉を開ける。

「ぐぅっ!」
開かれた扉の隙間から恐ろしい程の魔力の潮流が、
レインズ目がけて溢れ、彼の全身に叩きつけられる。。

『アクサナの比じゃないっ!』
レインズは巨大スライム討伐の時のアクサナの魔力の渦を比較し、
その強大さに足がすくむ。

扉が開き切るとその先、
拾い部屋の最奥、10段ほどの階段の上に立派な椅子[玉座]と、
そこに腰掛ける巨体が目に入る。

「お、おい、いきなり玉座の間かよっ?」
「主様を待たせるような事、ワシらがするとでも思うたか?」
「いや、それでもいきなりはー…っ。」
「もう遅い、覚悟を決められよ。」
アクサナが悪戯っ子のように笑う。

「そ、そんな…。」
レインズは玉座の偉丈夫の鋭い眼光に射すくめられる。
『威圧感が凄い…。』
重い足を引きずり、なんとか玉座の前まで歩を進める。

「魔王国国王陛下、拝謁の御許しをいただき、
レインズ・ウィンパルト、只今罷り越しました。」
玉座の前で跪き、魔王…つまりアクサナの父親へ挨拶する。

「うむ、よくぞ参った。
レインズ殿とその一行、ゆっくりと滞在するがよい。
儂等魔族は、其方らを歓迎するぞ。」
「ははっ、ありがたきお言葉、ありがとうございます。」

魔王からレインズに向け放たれる魔力の圧に、
彼の足は震え、背中には冷や汗が流れる。
アレクシィに目をやると、
魔力を感じないハズの人族の彼女でさえ、
顔を強張らせている。

『マズイっ!』
セレーテに目をやると、

「す、すみませ…も…ダメ…。」
ーふらぁ~っー
魔力に耐性はあるが、これほどの魔力を浴びたのは初めてだったのだろう。
圧に絶え切れなかったセレーテが、
跪いたままふらつき、力なくその場に倒れる。

「セレーテっ!」
間一髪、倒れるセレーテをレインズが抱き止め、
硬い大理石の床に倒れるのを防ぐ。

「セ、セレーテ様っ?!」
玉座の間にアレクシィの悲鳴にも似た声が響いたー。

つづく
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