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第三章 獣隷王国と二人目の嫁

その22

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巨大な外輪船が、不釣り合いな粗末な港に入港…出来なかったので、
沖合に碇を下ろし、小型の船で入港する。
小型船には助けが間に合わなかった獣人達も乗せ、
埋葬してやる予定だ。

「すまなかったな、間に合わなくて…。」
レインズは港に並べられた獣人達の遺体に謝る。
『後で花くらい持って来よう。』

「ココが狼人国か…。」
レインズは辺りを見回す。
正直、街と言うより集落だ。

道が整備されてるワケでもなく、むき出しの土。
その両サイドにポツンポツンと掘っ立て小屋の様な家が建っている。
その道の先に、他より少し大きく立派な建物がある。
恐らく、族長の、セレーテの家だろう。

人々の服装は質素だ。
偶に上着とズボンが分かれている人もいるが…。
ほとんどは布に穴を開けて頭を通し、
紐で縛っただけの[貫頭衣]ってヤツだ。

また、皆かなり痩せ気味で、栄養状態はあまり良くなさそうだ。
衛生状況もよくなさそうで、
セレーテがいなかったら、鼻をつまんで歩いてただろう。

「…何か言えよ。」
「いや…のどかな所だな。」
村に充満する匂いに眉をひそめていたレインズは、
セレーテに小突かれ、精一杯のお世辞を言う。

「革命だ、王国打倒だなんだと威勢の良い事言ったって、
自分の国すらこの有様だ。」
セレーテは悲しそうに自嘲する。

「あ、セレーテ様だ!」
「おかえりなさい、セレーテ様。」
「おお、セレーテ様!今回は随分デカい船を!」
一瞬でセレーテの周りに人垣が出来る。

「ふーん、その割には随分人気者じゃないか。」
「茶化すなよ///」
「セレーテ様!これ、俺の畑で採れた野菜です!どうか皆さんで!」
一人の農民が痩せこけ、シナシナの野菜を差し出した。

「…コレはお前の家族の大切な食料だろう。
ありがとう、気持ちだけ受け取っておくよ。」
セレーテは農民の申し出を固辞し、民達に手を振ると先を急ぐ。

「…魔石を売った金、お前の国に回してもいいんだぞ?」
「はは、それをやっちゃったら、他の種族と争いになるよ。」
「そうか…そうだな…。」
「ありがとうな、考えてくれて。嬉しいよ。」
「…俺の領地も豊かじゃないからな…。
どうやったら領民に豊かな生活をさせてやれるか、そればかり考えるよ。
はは、お互い上に立つ者は辛いな。」
「なんだ、気づいてたのか?」
レインズの言葉にセレーテが驚く。

「ああ、船でな。将軍がお前が狼人国の族長の子供だって…。」
「情けないな…。同じ立場でもお前は領土のために収入を増やそうとしてるのに、
オレはコイツ等国民に何もしてやれない…。」

落ち込んでしまったセレーテを見かねて、
「そうだ!畑の収穫量を上げる方法があるんだがー…。」
「なにっ?!本当かっ!?」
「ああ、本当だ!アクサナの魔王国にも教えた方法でなー…。」
レインズは道すがら、セレーテに灰を使う農法を教えてやったー。

つづく
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