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高等部3年生

アリアがやりたいサプライズ

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「マイヤとサウロさんには内緒で、婚約パーティーを計画しない?」


この度、喜ばしい事にマイヤとサウロさんがお互いの親に報告し、正式に婚約した。
おめでとう! マイヤ!!

どうやらマイヤが学校を卒業次第、結婚する予定らしい。
報告を受けた際、マイヤは『サウロさんが心変わりしない内に今すぐにでも結婚したいわ』と言ってはいたけど。

マイヤの言いたい事もなんとなく分かるけど、恋愛に疎いサウロさんに心変わりはあり得ないだろう。
うん、きっとない。


とにかく、マイヤの恋が無事に実ったんだ!
できればサプライズで婚約パーティーを計画して、マイヤとサウロさんを盛大にお祝いしたい!!

……と、思った私は、セレスとルナを私の部屋(寮)へと呼び出した。
自分の気持ちをそのまま伝えると、2人(、特にセレス)は少しだけ呆れたように口を開いた。

「結婚まで、まだ2年もあるわよ?」
「婚約破棄もありえる」
「そうね。マイヤの本性にサウロさんが気づく可能性があるわね」

普段、気が合わないセレスとルナが意気投合している。

「いやいや、大丈夫! サウロさんは永遠に気づかない!!」
「アリアもなかなか言うわね」

感心するセレスに向かって慌てて訂正する。

「……じゃなかった! 気がついたとしても“マイヤが自分に心を許してくれた”と喜ぶと思う!!」

私も嬉しかったし。
自信たっぷりに告げると、セレスが軽く肩をすくめてみせた。

「アリアの気持ちは分かったけれど、一般的に婚約披露パーティーは本人たちが開くんじゃなくて?」

落ち着いた表情を浮かべたセレスが、品よく紅茶をすすっている。
その姿をじーっと見つめながら、心の中で一人そっと首を傾げた。

なんとなく気づいてはいたけど、私の家に泊まった日を境に、セレスがいつも通りに戻っている。

悩みが解決したのかな?
力になれなかった事については少し寂しい気持ちもあるけど、セレスが元気なら良かった。

「……アリア?」

セレスの言葉で、ハッと我に返る。

「ごめん。ええと、本人たち主催の婚約披露パーティーだと周りに気を遣うだろうし、純粋に楽しめないんじゃないかと思って」
「なるほどね。……まぁ、当人たちではなく、私達が開くというのも面白そうね」

私の熱意が伝わったのか、セレスが興味深そうに微笑んでいる。
ルナも「アリアが言うなら」と頷いてくれた。

よし! 2人が賛同してくれた!!
後はオーン達にも声を掛けて、サプライズパーティー開催だ!!



「──で、話は分かったが……誰を呼ぶんだ?」

ミネルが無表情のまま尋ねてくる。

今現在、ミネルの家にマイヤ以外の幼なじみとエレが集まっている。
もちろん、サプライズパーティーを計画する為に!!

……あっ! ルナがリーセさんも連れて来てくれたから、リーセさんもか。
マイヤはいないけど、みんなで集まるのはわりと久しぶりだなぁ。

実を言うと、みんなが揃った時、少しだけ胸のあたりに違和感を覚えた。

なんだっけ? この違和感……。随分と昔に感じた事があるような??
でも、その後は普通に戻ったから気のせいかも。


小さな引っ掛かりについては一旦忘れ、まずはミネルの質問に答える。

「ええとね。ここにいる人たちとサウロさんの親しい人だけ呼んで祝おうかと思ってる」

サウロさんの友人は、リーセさんが調べて声を掛けてくれる事になった。

職場の人たちについては、私が中等部の時にお世話になった調査チームのモハズさんに声を掛けてもらう事になっている。

何度も『サウロさんには内緒にしてくださいね』とお願いしたから、サウロさんにはバレないと思うけど……。

モハズさんは『仕事がら、(調査に行っていて)全員が参加する事は難しいと思うけど、参加できそう人に声を掛けるよー」と言ってくれた。


「いつ開くのがいいかな?」
「ああ。それだけど、2週間以内に開いた方がいいと思うよ」

すぐさま、リーセさんが私の疑問に答える。

……えっ! 
に、2週間以内!? 何も決まっていないのに早すぎる!!

「どうしてですか!?」
「サウロさん、2週間後には長期の調査に出るんだ」

な、なんと!!

「恐らく、半年以上は戻らない」

それも半年! 
せっかく、両思いになったばかりなのに!!

予想外の事態に私がショックを受けていると、エウロが焦った様子で事情を説明してくれた。

「マイヤと結婚をした後、長期の調査に出る事を避ける為に自分から志願したんだ」

そっか……。マイヤの事を考えての志願だったんだ。
良かった。……良かった? で合ってるよね??

エウロの言葉に、リーセさんが頷く。

「長期の調査へ向かう前に婚約パーティーをした方が、マイヤも安心なんじゃないかな?」

リーセさん、マイヤの気持ちを考えてくれてる!
確かに……みんなの前でお祝いすれば、より実感が湧くよね!!

……ん? 待って!?
2週間後の最終日は、マイヤとサウロさんの2人きりで過ごしてほしい。

そう考えると──

「実質、1週間後……来週には婚約パーティーをしないといけない……という事ですよね?」

恐る恐る私が尋ねると、リーセさんが肯定する代わりに苦笑している。


「──手分けして、準備をしよう」
「会場、衣装、料理……か?」

オーンが素早く話を切り替え、続いてミネルが準備に必要な項目を洗い出す。

「あっ! プレゼントも渡したい! ケーキも用意したい!!」

私がミネルの言葉につけ加える。

ミネルの顔が少し歪んだ。
『これ以上、仕事を増やすな!』と言った顔をしている。

「衣装は……やっぱりオーダーメイドよね? 間に合うかしら?」
「すぐにでも頼めば、何とか間に合うだろう」

少し焦りを見せているセレスに対し、ミネルが冷静に答える。

「……そうね。融通が利く店をいくつか知っているから、至急確認はするわ! 衣装は明日にでも私とエウロで選びに行くわね。エウロなら、サウロさんのサイズが分かるでしょう?」
「あ、ああ。そうだな」

テキパキと予定を立てるセレスに、エウロが少し驚きながらも同意を示す。

よし! セレスのやる気スイッチが入った!
主役2人の衣装はセレスとエウロに任せよう。

リーセさんには参加者を集めてもらうし……私は何をしようかな?
悩む私を気にする事もなく、ミネルは淡々と話を続けている。

「会場は……」
「ウィズのお家にしましょう!」

……ん? ウィズのお家??

声が聞こえてきた扉の方へと視線を動かすと、そこにはウィズちゃんが立っていた。
トコトコと可愛らしく歩きながら、私の横までやって来る。

「ウィズちゃん!」
「お久しぶりです。あーちゃんが来たと聞いて、挨拶しに来ました」

そうか! ここはミネルの家だから、愛しのウィズちゃんもいるんだ!!
相変わらず、可愛い……。

「装飾も含め、会場、料理は、兄様とウィズにお任せください。ただし、ケーキまでは大変なので、どなたかが用意してください」

……うん。
話している内容は、随分と大人っぽいけど。

「ウィズ、もっとも面倒な事を……」

ミネルからのクレームを無視しつつ、ウィズちゃんが屈託なく笑う。

「話は全て聞いていました」

えっ! 全て!? いつからいたの??

「ウィズが思うに、あーちゃんが2人のプレゼントを選ぶのがいいと思います」

……私が? 

私が返事をする前に、ウィズちゃんが他のみんなにも指示を出していく。
まるで小さなミネルを見ているようだ。

「2人が喜びそうなケーキについては、ルナさんとエレさんで準備をしてください」
「……僕もプレゼントを選ぼうと思ったんだけど、どうして(邪魔をするの)かな?」

にっこり笑ったエレが、ウィズちゃんに尋ねる。

「ルナさんは、選ぶセンスはありそうです。ただ人当たりがいい方がいないと、ルナさんだけでは準備できません。人当たりがいい方は、エレさんかなと……。ねっ? あーちゃん」

ウィズちゃん、エレの事をよく分かっていらっしゃる!!
笑顔のウィズちゃんに「うん、うん」と全力で頷く。

「そうだね! エレなら、間違いないと思うよ!!」
「……分かった。アリアの期待に応えれるよう……頑張るよ」

エレなら大丈夫だよ!
ところで、エレはOKだったけどルナは?

ルナの方を見ると、ウィズちゃんがすでにルナの近くへと移動していた。

ん? こちらには聞こえない声で何か話している??

「──分かった。エレとケーキを探す」
「決まりましたね」

あれ? なんか今の──ウィズちゃんのほくそ笑んだ顔がミネルに似ていたような……?
気のせいだよね??

「それで……ウィズの考えでは、私は何をすればいいのかな?」
「俺もだね」

表情を緩めたオーンと、対照的にほぼ無表情のカウイが、ウィズちゃんに確認している。

「お二人は、あーちゃんと一緒にプレゼントを選んでください」

オーンの目が見開いたと思ったら、穏やかに微笑んだ。

「なるほど。さすがミネルの妹だね。分かった。“3人”でプレゼントを選ぶよ」
「そうしようか」

オーンとカウイも同意し、ウィズちゃんの手腕で早くも担当が決まった!

ミネル……不満そうだけど、ウィズちゃんの指示だからかな?
何も言わないのが面白い。



その後、会場のイメージを決め、明日から担当毎に準備へと取り掛かる事になった。

みんなが賛成してくれて良かった!
明日からは大忙しだけど、マイヤやサウロさんが喜んでくれるといいなぁ。


帰り際、ウィズちゃんが「あーちゃん」と私に向かって手招きをしている。

どうしたのかな?
ウィズちゃんの傍まで行き、目線に合わせ、しゃがみ込む。

「装飾の準備は進めておくので、パーティーの前日、ウィズのお家に見に来てくれませんか?」
「見に行っていいの?」

ウィズちゃんがにっこりと笑う。

「他の方は当日までのお楽しみにしたいので、あーちゃん1人で来てねっ」

か、可愛い!

「分かったよ!」

ウィズちゃんと固い約束をし、その日はミネルの家を後にした。


それにしても……明日はオーン、カウイと3人でプレゼントを買いに行くのかぁ。
2人きりじゃないから、緊張はしない……大丈夫だよね?
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