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高等部2年生

打ち明ける決意(後編)

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──ここで、ジュリア登場!
ジュリアの目立ちたがりで、自己顕示欲の強い性格をも考慮した完璧なシナリオ。

仮にジメス上院議長の計画を知らなかったとしても、ジュリアの性格上、救世主と言われて否定をする事はないだろう。
むしろ救世主と崇められ、調子に乗ったに違いない。

みんなも私と同じ事を考えているのか、さっきより顔が歪んでいる。

「どうしようもない性格ね」

セレスがボソッと呟いた。


『ジュリアはちょうど魔法を封じ込められた時期に、救世主として現れました』

と、カリーナ元王妃は話していた。

これは私の勝手な予想だけど、本当は魔法が使えるタイミングで登場させる予定だったんじゃないかな?
詠唱せずに魔法を使う姿を見せれば、救世主の信憑性が増すもんね。

……そう考えると、微妙なタイミングで登場したんだな。

街の人たちの前に立ったジュリアが、力強く宣言をする。


『私はこの国の為にグモード王とカリーナ王妃を復活させます。けれど、暗殺されたグモード王の復活には時間が必要です……そこで、まずはカリーナ王妃を復活させます!!』


突拍子もない発言に、最初は半信半疑だった民衆。
ところが、宣言から数日後──カリーナ元王妃が街の人たちの前に姿を現した。

これによって街全体が大いに盛り上がり、ジュリアが“本物の救世主”だと信じ切ってしまった。
民衆の心を1つにまとめた所で、ジュリアが自分の魔法について説明したらしい。


『私は詠唱せず、魔法を使う事ができます』


驚きはしたものの、街の人たちはすぐにジュリアの言葉を信じた。
それほどまでにカリーナ元王妃の復活は大きかったに違いない。

話しながら、突然、ジュリアが悲しい表情を浮かべる。


『──ただ、今は魔法を使う事ができません。私の事を面白く思っていないサール国王が、 自分の部下である“アリア”という人物を使い、私の魔法を封じ込めたのです』


な、なんて事だ。
私はこの街において、悪の手先みたいな扱いになっているらしい。

オーンと訪れたお店で出会った店員さんが、私の名前を聞いて驚いたのも頷ける。
悪の手先がいきなり目の前に現れたら……驚くのも無理はない。

うーん……今後、この街で私が“アリア”という事は、内緒にしておいた方がよさそうだなぁ。
封じ込めた魔法を解く必要があるから殺されはしないだろうけど、危険な事には変わりないよね?

みんなも心配そうな表情で私を見ている。
結局、いつも心配を掛けてしまう。

カリーナ元王妃は、ジュリアが街に身を潜めている理由についても教えてくれた。

『救世主として現れたジュリアは、一部の民衆に『サール国王に命を狙われているので匿ってほしい』と告げ、そのままこの街へ住む事になりました』

あくまで‟サール国王は悪”だと言いたいわけだ。

『ただ、これは表向きの話です。本当の目的は学校で起こした問題が落ち着くまでの間、この街で身を隠すようジメスが指示したようです』

ああ、私を拉致して、幼なじみ達を脅迫した問題ね。

『ジュリアは当初、ジメスの計画全てを把握していたわけではなかったのだと思います』

単純に、人から尊敬されたり、興味を向けられるのが嬉しかったんだろうなぁ。

『ところが、身を隠している間にジュリアがジメスの計画を知ってしまったのです。話を聞いたジュリアは、国が自分ものになると喜んでいました』

うわぁー、喜びそうー。

『ジメスはジュリアが自分の計画を人に話すのを恐れ、今は人と関わらない暮らしをさせています』



「──これが未だにジュリアが表舞台に出てこない理由みたい。それと──」

少し間を置き、ジメス上院議長の執事ノレイさんについても話をする。

「ノレイさんは幼少の頃、家族が亡くなって路頭に迷っている所をジメス上院議長に助けられたみたい。恩を感じているからこそ、あそこまでジメス上院議長に尽くしてるのかもしれない、と言ってたよ」

正直なところ、その話を聞いた際は『助けた人物がたまたま《闇の魔法》を使えたなんて事がある!? 』と、違和感しかなかったけど。

大事な部分だけを話したつもりだけど、それでも随分と時間が掛かってしまった。
聞き終えたオーンが、何かを考えるように手を口元にあてている。

「この街の人たちは、近々グモード王が復活すると信じているんだね」
「う、うん、そうみたい」

落ち着いた表情をしているけど、オーンとしては複雑な心境だろうな……。

「この街の人間が行動に移していないのは、ジメス上院議長が止めているからか?」
「恐らく……」

ミネルの言葉に私が頷く。

私の話を聞き終え、各々が何かを考えるような表情を浮かべている。
そんな中、ミネルが言葉を選ぶように、ゆっくりと私に問いかけてきた。


「──アリアの話を聞いて、みんな同じことを疑問に思ったはずだ。 隠す理由もないから代表して聞くが、なぜカリーナ元王妃は“アリアの魔法”の事を知っていたんだ? そして、なぜアリアにだけ話そうと思ったんだ?」

ミネルからの質問に、エウロが今気がついたとばかりに目を見開いている。

「あっ! そうだよな!!」
「……例外がいたか」

呆れたように呟きながらも、ミネルの視線は私に固定されたまま動いていない。

「まぁ、いい。──で、どうしてだ?」


……やっぱり、そうだよね。
周りを見渡しながら、みんなの表情を順番に確認していく。

みんなに話したとして、私やカリーナ元王妃、ジュリアが転生者だって信じてくれるかな?
……みんなは私のこと、どう思うのかな?


これを機に、みんなとの関係が変わってしまったらどうしよう……と不安がよぎる。

気持ちは正直だな。
この事が不安だったからこそ、最初に話さなかったのかもしれない。

けれど、みんなが疑問に思うであろう事も予想はしていた。
避けては通れない事が分かっている以上、真実を伝えなくてはならない。


「信じてもらえるか分からないけど……私とジュリア……それにカリーナ元王妃は別な世界から来た転生者なんだ」
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