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高等部2年生

カリーナの回顧録 4/4

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──王が亡くなってから、29年後

孫のサールが結婚と同時に国王になったと耳にした。
息子は若い内に王位を譲り、隠居生活をしているらしい。

……あの子(息子)には、本当に悪い事をしてしまった。



──王が亡くなってから、32年後

ついに上院のトップが変わった!
ジーノの息子であるジメスが引き継いだらしい。

息子が跡を継いだ事でジーノが亡くなったのかと思ったけど、どうやら引退しただけらしい。

ジーノが生きている限り、油断はできない。
後もう少し、後もう少しの辛抱。



──王が亡くなってから、39年後

ジーノが亡くなった!
長かった……。本当に長い日々だった。

少しでも老いを感じる度、他者から生命エネルギーを買い取ってきた。
お陰で若さも保っている。

これで、ようやくグモード王を生き返らせる事ができる!!

……この時の私は、長い年月が経っていた事で油断していたのだろう。

身を置いていた場所が他国という事もあり、もう危険な事はないと安心しきっていた。
ところがある日、ジメスが私を探し出した。

父親のジーノから話を聞いていたらしく、私はそのままジメスに捕らえられてしまった。
監禁中、ジメスは自分の計画について私に語った。

「父が成しえなかった王制度を廃止し、私がこの国のトップに立つ!」

ジーノの顔に似たジメスがジッと私を見つめてくる。

「まずは、貴方は死んでいなかったという事にする。そして、貴方が望んだ通り、グモード王を復活させてあげよう!」

なんですって? 何を企んでるの!?

「格差をなくす取り組みをした王と王妃を崇める人間──特に一般人は未だに多いはずだ」

ジメスが声を上げ、楽しげに笑っている。
身震いするほどのおぞましい笑み。

「英雄的存在であるグモード王とカリーナ王妃が奇跡の復活を遂げる。さらには復活前にサール国王の悪い噂でも流しておけば、民衆は単純だ。 グモード王を正式な王にしたいと考えるはずだ」

迷う素振りすら見せる事なく、スラスラと流暢りゅうちょうにジメスが話し続ける。

「一般人を味方につけ、反乱を起こさせる!」
「そ、そんな事、グモード王が許すはずがないわ!」

捕らえられながらも、必死でジメスに反論する。

「所詮、操られる予定の王と王妃だ。いくらでも、こちらの好きなようにできる」

この男は私を、そしてグモード王を《闇の魔法》で操るつもりだ!!

「ノレイ、カリーナ王妃を“よろしく頼むぞ”」
「かしこまりました」

ノレイと呼ばれた人物が《闇の魔法》を唱える。

身動きを封じられた私は反抗する事すらできず、《闇の魔法》で操られてしまった。

闇に飲み込まれ、次第に自分の心がなくなっていくのが分かる。
思えば、グモード王が亡くなった瞬間から、私の心はすでに壊れていた。

操られたところで、今更なのかもしれない。
意識が遠のく中、今までの過ちや失敗、自分の罪について考える。

何十年もの間、グモード王を蘇らせる事ばかりを考えてきた。
そもそも国の改革を始めたのだって、グモード王を死なせない為だった。

けれど、私と違い、グモード王は常に国や民の事を一番に考え、懸命に頑張っていた。

グモード王は亡くなってしまった。
だけどもし──あの時、私が逃げずにジーノと戦っていたら、結果は違ったろうか。

グモード王は助けられなかったけれど、少なくとも彼の想いだけは守る事ができたのではないだろうか。

しかも今、私のせいでグモード王どころか、孫であるサールの命すらも危険に晒されてしまうかもしれない。

あぁ、 私はなんて大変な事をしてしまったのだろう!
操られて、ようやく自分のしてきた罪の重さを知るなんて!!

今になって、次から次へと後悔が溢れてくる。

私が出来る事は、もう何もない?
本当に何もない??


……いえ、きっと出来る事があるはず!

操られてはいるけれど、心の奥底に眠る私の意思はまだ生きている!
行動には移せなくても祈る事はできる!!

ここは私が作った世界。
祈れば、叶うかもしれない!!

私を消滅させ、ジメスに立ち向かう事の出来る新しい転生者が出てきてほしい!


遠い昔、グモード王に話した《聖の魔法》。
《聖の魔法》が使える転生者よ! どうか現れて!!!



──王が亡くなってから、42年後

《闇の魔法》に自由を奪われながらも、転生者が現れてほしいと毎日祈り続けた。

私の願いは届いたのかしら?
《聖の魔法》を使う転生者は現れたのかしら?

もし仮に現れていたとしても……1人だけではジメスに勝てないかもしれない。

そうだわ!

私がグモード王に話したもう1つの魔法。
詠唱しなくても魔法が使える転生者よ! どうか現れて!!!



──私の願いとは裏腹に、ジメスの計画は順調に進んでいく。

《癒しの魔法》を使い、何度かグモード王の復活を試みたものの、魔力が足りなくて失敗。

私は自分の意思に反し、魔力を奪う為に誘拐事件の手助けをしている。
ジメスは誘拐した人たちから魔力を奪い、自分や部下の魔力をどんどんと底上げしている。

それだけでは飽き足らず、ジメスはもっともっと仲間を増やす為に魔法更生院を襲わせた。

「協力するなら、今より魔力を増やしてあげよう」

魔法更生院にいるのは、元々、心に闇を抱えた犯罪者ばかりだ。
出られるだけでなく、魔力も増やせるとなれば、彼らは容易く計画に乗った。

そういえば、魔法更生院を襲った時……「本当に魔力を増やす事ができるのか試したい」と言った男がいた。
名前は忘れたけど、しばらくして見かけた際に「自分の父親で試した」と話していたような?

あの男は、どこへ行ったのだろう……?



「──カリーナ? 貴方はカリーナ……王妃なのですか!?」

グモード王の面影がある男性が、驚いた表情で私に尋ねている。

そのまま彼の後ろへと視線を動かす。
1人の女性が立っているのが見えた。


なぜだろう。初めて会う女性だけど、私には分かる。

同じ転生者だから? それとも……私が作った世界だから?
私が願って呼び寄せたから?


この子……このオーラは……!
あぁ! 私の祈りは届いていたのね!!


歓喜に震えながらも、男性の言葉にこくりと頷いた。


「私の知っている全てをお話します」
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