173 / 261
高等部2年生
ダブルデートかと思いきや2回目デート
しおりを挟む
──!?
「あっ、ミネルくんもかな?」
──!??
「な、なんで……」
「知ってるかって?」
こくんこくんと何度も頷く。
オーンの事は知られているけど、カウイやミネルの事まで知られているなんて!!
「カウイくんは分かりやすいし、ミネルくんとは2人で出掛けた話を聞いてたから(もっと言うなら、エウロくんの事も知ってるよ)」
そ、そうなんだ。
カウイが分かりやすいとうより、マイヤが鋭い気がするけど……これは相談するチャンスなのでは!?
意を決して、ずっと悩んでいた事を相談してみる。
「3人が私を好きという……夢みたいな事が起きてるんだけど」
私の言葉を聞き、マイヤがニヤニヤし始めた。
「3人はお互いに私の事を好きと言う事は知らないと思うんだ」
「…………」
一瞬マイヤが斜め上を見たのが気になるけど、話を続ける。
「その事を知ったら、3人の友人関係が崩れちゃうかと思うと、どういう態度を取ればいいのか困ってて」
自分から話し始めた事ではあるけど、何かこう……“いい女”発言をしてるようで妙に抵抗がある。
一通り話し終えたところで、マイヤが楽しげに口を開いた。
「アリアちゃんが心配するような事は、1つもないから大丈夫(なぜならアリアちゃん以外は、みんな知ってるから)」
マイヤ……私を気にさせまいと言ってくれてるのかな?
「それにしても……周りにかっこいい人が多いんだから、誰か1人くらい好きになってもおかしくないのに」
「それを言うなら、マイヤもじゃない?」
私がツッコむと、マイヤがぐっと口をつぐんだ。
「わ、私の場合は色々あったから、頭が回らなかったのよ」
ああ、ケイアさん(マイヤの母)の事か。
そういう意味だと、私もそうなのかもしれない。
私を好きになる事はないと思い込んでいたから、知らず知らずのうちに恋愛対象から外していたのかも。
「んー、もう面倒だから話すけど、オーンくん達はお互いにアリアちゃんが好きな事を知ってるよ(もっと言うならエウロくんも)」
えーーーー!!!
「だから、一切心配する必要はないよ」
マイヤが“知ってて当然”というように話している。
「アリアちゃんが幼なじみの誰かを好きになった時は、友人関係が壊れる可能性はあると思うけど(そもそも友人関係なのかも分からないけど)」
えっ!? えーーーー!!!
「その事を気にして、遠慮をするのだけは止めてあげてね」
穏やかに、それでいて少しだけ真剣な表情でマイヤが話す。
「(もう少しだけ、まだ誰も選んでほしくない気持ちもあるけど)みんなが真剣にアリアちゃんを想っている事を知っているから、時が来たら遠慮はせずに正直な気持ちを伝えてほしい」
……うん、そうだね。マイヤの言う通りだ。
「ありがとう、マイヤ」
マイヤの真摯な言葉に感謝し、お礼を伝える。
その途端、マイヤの表情が含みのある笑い方へと変わった。
「心配する事はないと思うよ。むしろ、アリアちゃんから積極的に誘った方がいいと思うよ?」
「な、なんで!?」
なるべく波風を立てたくないのに、私から誘うの!?
提案の意図が分からず慌てて問いただすと、マイヤが諭すように答える。
「みんなで一緒にいても、今までの関係と変わらないでしょう? 関係や意識を変える為に、アリアちゃんから行動に移すのはいい案だと思うけど」
な、なるほど。そうかもしれない。
「ところで、アリアちゃんは誰が好みの顔なの?」
……ん? 好みの顔?
みんなイケメンだから、あまり考えた事がなかったなぁ。
「マイヤはいるの?」
「顔だけなら、エウロくんかな。今日会うライリーくんも好みだけど」
偶然だけど、どちらも《風の魔法》を使う。
マイヤは爽やかな人が好みの顔なのかな?
「ただ頼りたいのはオーンくんみたいなタイプなんだよね」
マイヤの口調が徐々に盛り上がっている。
「将来性を考えるならミネルくんかな。将来、絶対にお金に困らないという保証があるから!」
……そっか。良かった。
自分の意志で色々考えれるようになったんだな。
安心する私を余所に、マイヤは活き活きと語り続けている。
「アリアちゃんに接する姿を見ると……甘えるならカウイくんかなぁ」
結局、盛り上がったマイヤの話をずっと聞いてる内に、目的地である“エルスターレ”へと着いた。
私的にも、マイヤに話す事で少しスッキリしたかも。
相談して良かったな。
“ヴェント”から降り、マイヤと一緒に待ち合わせ場所へと向かう。
数分と掛からずに目的地へ到着すると、そこには既にリーセさんとライリーさんが待っていた。
「お待たせしました」
2人の前でマイヤが丁寧に会釈をする。
「いえ、時間通りですよ。それに女性を待たせるわけにはいきませんから」
特に気にした様子を見せる事もなく、ライリーさんが笑顔で挨拶をしている。
マイヤに気を遣わせないスマートな返事。
第一印象(ではないけど)はとてもよい!!
それぞれが挨拶を終えると、ライリーさんが口を開いた。
「これから、どうしましょうか?」
ライリーさんの言葉にリーセさんが時計を見た。
「2人ずつ分かれようか。3時間後、ランチを食べ終えたぐらいのタイミングでここに集合して、残った時間は4人で出掛ける……というのはどうかな?」
──えっ!?
「いいですね。そうしましょう」
ライリーさんがリーセさんの提案に同意する。
「じゃあ、行こうか。アリア」
リーセさんが私の肩を抱く。
そして、ライリーさんとマイヤに軽く手を振ると、ゆっくり歩き始めた。
えっ? ええっ!?
……そもそも、マイヤが2人だけだと緊張するからダブルデートになったんだよね?
という事は、すぐ二手に分かれるのは困るよね!?
「あのリーセさん。ライリーさんに気を遣ったのかもしれませんが、マイヤが……」
「マイヤ? 大丈夫そうだけど?」
リーセさんがチラッと後ろに目を向ける。
……へっ!?
急いで後ろを振り返ると、マイヤがこちらに向かって笑顔で手を振っている。
……全く緊張しているようには見えない。
あの時の『緊張するの』と言ったマイヤはどこへいったの?
もしかして、私がいなくても良かったんじゃない!?
頭の中を疑問符だらけにしながら歩いていると、リーセさんが私の肩からそっと手を離した。
「さて、私たちは2回目のデートでも始めようか。アリアは“手”と“腕”どちらがいい?」
手と腕?
私が質問の意味について悩んでいると、リーセさんが笑った。
「そうだなぁ……この前は腕だったから、手にしようか。アリア、右手を出して?」
言われるがままに右手を出すと、リーセさんが私の手を優しく握った。
「よし、行こうか」
どこか嬉しそうにリーセさんが歩き出す。
リーセさんは私と手を繋いでる事など、微塵も気にしていない様子。
私の方はというと……さっきからドキドキしっぱなしなんですけど!?
繋いだ手を眺めつつ、思った事をそのまま声に出して尋ねる。
「リーセさんは、誰にでもこういう事をするんですか?」
隣を見上げると、リーセさんがきょとんとした顔をしている。
「“こういう事”というのは、手を繋いでる事かな?」
「は、はい」
戸惑いながらも返事をすると、少しだけ寂しそうにリーセさんが肩をすくめた。
「私が誰とでも手を繋ぐような男だと?」
──あ、しまった!
失礼な事を言っちゃった!!
「いえ! そういう風には思っていません!」
慌てて否定する私の姿に、リーセさんがクスッと笑ってみせた。
思ってはいないけど……そうではないとしたら、なんでだろう?
私の中で考えられる選択肢は2つ。
1番、私をルナ(妹)のように可愛がってくれている。
2番、もしかすると私の事が好き?
うーん。気に入ってくれてるとは思うけど……好き?
リーセさんがいつも余裕な表情をしているからかな?
……ピンと来ない。
「アリア、覚えておいて」
「はい?」
私の眼をジッと見つめると、リーセさんが優しく微笑んだ。
「私が手を繋いだり、腕を組んだりするのは、妹のルナとお付き合いしたいと思っている女性だけだよ」
ま、まさかの2番!? 本当に??
気になるけど、真実を確かめるのは……無理だ。
『リーセさんは、私の事が好きなんですか?』と、心の中では聞けるのに直接聞けない私。
私の動揺を知ってか知らずか、リーセさんが「ふふっ」と声を立てて笑った。
「さて、どこを見ようか」
何事もなかったかのようにリーセさんがお店を見渡している。
あまりにも普通に言うから、からかわれているのかな? とついつい疑ってしまう。
「……リーセさんが動揺する事って、あるんですか?」
「動揺? うーん……」
過去の出来事を思い出そうとしているのか、 リーセさんが頭を悩ませている。
すぐに出てこないという事は、今までそういった経験がないのかな?
「記憶にないという事は、ないのかもしれないね」
リーセさん自身も同じ結論に至ったらしい。
はにかんだような表情を見せた後、そっと話題を変えてきた。
「アリアは、どこか行きたい場所はある?」
えーと……あっ!
「ルナお気に入りのクッキーを買いましょうか」
私の提案にリーセさんが微笑む。
「そうだね。ありがとう」
色々な会話をしつつ、リーセさんとクッキーが売っているお店へと向かう。
すると、ふと思い出したようにリーセさんが口を開いた。
「以前“エルスターレ”に来た時、アリアに『ルナと笑顔が似ている』って言われたんだ」
……そういえば、言ったかも。
初めて見た表情だったから、覚えている。
「家族にすら言われた事のないセリフだったから嬉しくて。……その時に思ったんだ。ルナの提案に本気で乗ってもいいかもしれないって」
ルナの提案??
私の不思議そうな顔を見たリーセさんが、軽く頬を緩める。
「ルナには話してあるから、今度ルナに聞いてごらん」
「は、はぁ」
リーセさんの発言に首を傾げながらも、ルナお気に入りのクッキーのお店へと入り、買い物を済ませる。
そのまま他の買い物を続けていると、リーセさんが街中に飾られていた時計へと視線を動かした。
「そろそろお昼でも食べようか」
「そうですね。何を食べましょうか?」
「…………」
……あれ? リーセさんの返事がない。
見上げると、リーセさんがどこか遠くを眺めている。
疑問に思いつつ目線の先を追うと、ライリーさんが走っている姿が見えた。
──ライリーさん!?
必死に周りを見渡し、焦った表情をしている。
……明らかに様子がおかしい。
「ライリーさん、どうしたんでしょう?」
「……ライリーさんの所へ行こう」
リーセさんもライリーさんの様子がおかしいと思ったんだ!
急いでライリーさんの方へ向かうと、すぐに私たちに気づき、足早に近づいてきた。
「ライリーさん、何かあったんですか?」
私の質問に、ライリーさんが息を切らしながら答える。
「一緒に歩いていたはずのマイヤさんが……いなくなったんです!」
「あっ、ミネルくんもかな?」
──!??
「な、なんで……」
「知ってるかって?」
こくんこくんと何度も頷く。
オーンの事は知られているけど、カウイやミネルの事まで知られているなんて!!
「カウイくんは分かりやすいし、ミネルくんとは2人で出掛けた話を聞いてたから(もっと言うなら、エウロくんの事も知ってるよ)」
そ、そうなんだ。
カウイが分かりやすいとうより、マイヤが鋭い気がするけど……これは相談するチャンスなのでは!?
意を決して、ずっと悩んでいた事を相談してみる。
「3人が私を好きという……夢みたいな事が起きてるんだけど」
私の言葉を聞き、マイヤがニヤニヤし始めた。
「3人はお互いに私の事を好きと言う事は知らないと思うんだ」
「…………」
一瞬マイヤが斜め上を見たのが気になるけど、話を続ける。
「その事を知ったら、3人の友人関係が崩れちゃうかと思うと、どういう態度を取ればいいのか困ってて」
自分から話し始めた事ではあるけど、何かこう……“いい女”発言をしてるようで妙に抵抗がある。
一通り話し終えたところで、マイヤが楽しげに口を開いた。
「アリアちゃんが心配するような事は、1つもないから大丈夫(なぜならアリアちゃん以外は、みんな知ってるから)」
マイヤ……私を気にさせまいと言ってくれてるのかな?
「それにしても……周りにかっこいい人が多いんだから、誰か1人くらい好きになってもおかしくないのに」
「それを言うなら、マイヤもじゃない?」
私がツッコむと、マイヤがぐっと口をつぐんだ。
「わ、私の場合は色々あったから、頭が回らなかったのよ」
ああ、ケイアさん(マイヤの母)の事か。
そういう意味だと、私もそうなのかもしれない。
私を好きになる事はないと思い込んでいたから、知らず知らずのうちに恋愛対象から外していたのかも。
「んー、もう面倒だから話すけど、オーンくん達はお互いにアリアちゃんが好きな事を知ってるよ(もっと言うならエウロくんも)」
えーーーー!!!
「だから、一切心配する必要はないよ」
マイヤが“知ってて当然”というように話している。
「アリアちゃんが幼なじみの誰かを好きになった時は、友人関係が壊れる可能性はあると思うけど(そもそも友人関係なのかも分からないけど)」
えっ!? えーーーー!!!
「その事を気にして、遠慮をするのだけは止めてあげてね」
穏やかに、それでいて少しだけ真剣な表情でマイヤが話す。
「(もう少しだけ、まだ誰も選んでほしくない気持ちもあるけど)みんなが真剣にアリアちゃんを想っている事を知っているから、時が来たら遠慮はせずに正直な気持ちを伝えてほしい」
……うん、そうだね。マイヤの言う通りだ。
「ありがとう、マイヤ」
マイヤの真摯な言葉に感謝し、お礼を伝える。
その途端、マイヤの表情が含みのある笑い方へと変わった。
「心配する事はないと思うよ。むしろ、アリアちゃんから積極的に誘った方がいいと思うよ?」
「な、なんで!?」
なるべく波風を立てたくないのに、私から誘うの!?
提案の意図が分からず慌てて問いただすと、マイヤが諭すように答える。
「みんなで一緒にいても、今までの関係と変わらないでしょう? 関係や意識を変える為に、アリアちゃんから行動に移すのはいい案だと思うけど」
な、なるほど。そうかもしれない。
「ところで、アリアちゃんは誰が好みの顔なの?」
……ん? 好みの顔?
みんなイケメンだから、あまり考えた事がなかったなぁ。
「マイヤはいるの?」
「顔だけなら、エウロくんかな。今日会うライリーくんも好みだけど」
偶然だけど、どちらも《風の魔法》を使う。
マイヤは爽やかな人が好みの顔なのかな?
「ただ頼りたいのはオーンくんみたいなタイプなんだよね」
マイヤの口調が徐々に盛り上がっている。
「将来性を考えるならミネルくんかな。将来、絶対にお金に困らないという保証があるから!」
……そっか。良かった。
自分の意志で色々考えれるようになったんだな。
安心する私を余所に、マイヤは活き活きと語り続けている。
「アリアちゃんに接する姿を見ると……甘えるならカウイくんかなぁ」
結局、盛り上がったマイヤの話をずっと聞いてる内に、目的地である“エルスターレ”へと着いた。
私的にも、マイヤに話す事で少しスッキリしたかも。
相談して良かったな。
“ヴェント”から降り、マイヤと一緒に待ち合わせ場所へと向かう。
数分と掛からずに目的地へ到着すると、そこには既にリーセさんとライリーさんが待っていた。
「お待たせしました」
2人の前でマイヤが丁寧に会釈をする。
「いえ、時間通りですよ。それに女性を待たせるわけにはいきませんから」
特に気にした様子を見せる事もなく、ライリーさんが笑顔で挨拶をしている。
マイヤに気を遣わせないスマートな返事。
第一印象(ではないけど)はとてもよい!!
それぞれが挨拶を終えると、ライリーさんが口を開いた。
「これから、どうしましょうか?」
ライリーさんの言葉にリーセさんが時計を見た。
「2人ずつ分かれようか。3時間後、ランチを食べ終えたぐらいのタイミングでここに集合して、残った時間は4人で出掛ける……というのはどうかな?」
──えっ!?
「いいですね。そうしましょう」
ライリーさんがリーセさんの提案に同意する。
「じゃあ、行こうか。アリア」
リーセさんが私の肩を抱く。
そして、ライリーさんとマイヤに軽く手を振ると、ゆっくり歩き始めた。
えっ? ええっ!?
……そもそも、マイヤが2人だけだと緊張するからダブルデートになったんだよね?
という事は、すぐ二手に分かれるのは困るよね!?
「あのリーセさん。ライリーさんに気を遣ったのかもしれませんが、マイヤが……」
「マイヤ? 大丈夫そうだけど?」
リーセさんがチラッと後ろに目を向ける。
……へっ!?
急いで後ろを振り返ると、マイヤがこちらに向かって笑顔で手を振っている。
……全く緊張しているようには見えない。
あの時の『緊張するの』と言ったマイヤはどこへいったの?
もしかして、私がいなくても良かったんじゃない!?
頭の中を疑問符だらけにしながら歩いていると、リーセさんが私の肩からそっと手を離した。
「さて、私たちは2回目のデートでも始めようか。アリアは“手”と“腕”どちらがいい?」
手と腕?
私が質問の意味について悩んでいると、リーセさんが笑った。
「そうだなぁ……この前は腕だったから、手にしようか。アリア、右手を出して?」
言われるがままに右手を出すと、リーセさんが私の手を優しく握った。
「よし、行こうか」
どこか嬉しそうにリーセさんが歩き出す。
リーセさんは私と手を繋いでる事など、微塵も気にしていない様子。
私の方はというと……さっきからドキドキしっぱなしなんですけど!?
繋いだ手を眺めつつ、思った事をそのまま声に出して尋ねる。
「リーセさんは、誰にでもこういう事をするんですか?」
隣を見上げると、リーセさんがきょとんとした顔をしている。
「“こういう事”というのは、手を繋いでる事かな?」
「は、はい」
戸惑いながらも返事をすると、少しだけ寂しそうにリーセさんが肩をすくめた。
「私が誰とでも手を繋ぐような男だと?」
──あ、しまった!
失礼な事を言っちゃった!!
「いえ! そういう風には思っていません!」
慌てて否定する私の姿に、リーセさんがクスッと笑ってみせた。
思ってはいないけど……そうではないとしたら、なんでだろう?
私の中で考えられる選択肢は2つ。
1番、私をルナ(妹)のように可愛がってくれている。
2番、もしかすると私の事が好き?
うーん。気に入ってくれてるとは思うけど……好き?
リーセさんがいつも余裕な表情をしているからかな?
……ピンと来ない。
「アリア、覚えておいて」
「はい?」
私の眼をジッと見つめると、リーセさんが優しく微笑んだ。
「私が手を繋いだり、腕を組んだりするのは、妹のルナとお付き合いしたいと思っている女性だけだよ」
ま、まさかの2番!? 本当に??
気になるけど、真実を確かめるのは……無理だ。
『リーセさんは、私の事が好きなんですか?』と、心の中では聞けるのに直接聞けない私。
私の動揺を知ってか知らずか、リーセさんが「ふふっ」と声を立てて笑った。
「さて、どこを見ようか」
何事もなかったかのようにリーセさんがお店を見渡している。
あまりにも普通に言うから、からかわれているのかな? とついつい疑ってしまう。
「……リーセさんが動揺する事って、あるんですか?」
「動揺? うーん……」
過去の出来事を思い出そうとしているのか、 リーセさんが頭を悩ませている。
すぐに出てこないという事は、今までそういった経験がないのかな?
「記憶にないという事は、ないのかもしれないね」
リーセさん自身も同じ結論に至ったらしい。
はにかんだような表情を見せた後、そっと話題を変えてきた。
「アリアは、どこか行きたい場所はある?」
えーと……あっ!
「ルナお気に入りのクッキーを買いましょうか」
私の提案にリーセさんが微笑む。
「そうだね。ありがとう」
色々な会話をしつつ、リーセさんとクッキーが売っているお店へと向かう。
すると、ふと思い出したようにリーセさんが口を開いた。
「以前“エルスターレ”に来た時、アリアに『ルナと笑顔が似ている』って言われたんだ」
……そういえば、言ったかも。
初めて見た表情だったから、覚えている。
「家族にすら言われた事のないセリフだったから嬉しくて。……その時に思ったんだ。ルナの提案に本気で乗ってもいいかもしれないって」
ルナの提案??
私の不思議そうな顔を見たリーセさんが、軽く頬を緩める。
「ルナには話してあるから、今度ルナに聞いてごらん」
「は、はぁ」
リーセさんの発言に首を傾げながらも、ルナお気に入りのクッキーのお店へと入り、買い物を済ませる。
そのまま他の買い物を続けていると、リーセさんが街中に飾られていた時計へと視線を動かした。
「そろそろお昼でも食べようか」
「そうですね。何を食べましょうか?」
「…………」
……あれ? リーセさんの返事がない。
見上げると、リーセさんがどこか遠くを眺めている。
疑問に思いつつ目線の先を追うと、ライリーさんが走っている姿が見えた。
──ライリーさん!?
必死に周りを見渡し、焦った表情をしている。
……明らかに様子がおかしい。
「ライリーさん、どうしたんでしょう?」
「……ライリーさんの所へ行こう」
リーセさんもライリーさんの様子がおかしいと思ったんだ!
急いでライリーさんの方へ向かうと、すぐに私たちに気づき、足早に近づいてきた。
「ライリーさん、何かあったんですか?」
私の質問に、ライリーさんが息を切らしながら答える。
「一緒に歩いていたはずのマイヤさんが……いなくなったんです!」
0
お気に入りに追加
4,961
あなたにおすすめの小説
お前ら、何でスキルを1度しか習得しないんだ?ゴミスキルも回数次第で結構化けます
もる
ファンタジー
生まれも育ちも村人のゲインは15歳。武器と鎧の世界に憧れて、冒険者に成るべく街に向かうのだが、生きてるだけで金のかかる、街での暮らしが出来るのか?スキルだってタダじゃない。村人知識で頑張ります。
ひとまず週一更新しますがストック次第で不定期更新となります。
完結 お飾り正妃も都合よい側妃もお断りします!
音爽(ネソウ)
恋愛
正妃サハンナと側妃アルメス、互いに支え合い国の為に働く……なんて言うのは幻想だ。
頭の緩い正妃は遊び惚け、側妃にばかりしわ寄せがくる。
都合良く働くだけの側妃は疑問をもちはじめた、だがやがて心労が重なり不慮の事故で儚くなった。
「ああどうして私は幸せになれなかったのだろう」
断末魔に涙した彼女は……
私の婚約者が完璧過ぎて私にばかり批判が来る件について
下菊みこと
恋愛
家柄良し、顔良し、文武両道、そんな婚約者がいるせいで他の人たちに「なんであんな奴が」だの「顔しか取り柄がないくせに」だの言われる私。しかし困ったことに婚約者は私を溺愛しています。私を悪く言う人皆に制裁しようとする婚約者の暴走を止めるのに必死で嫌味なんていちいち気にしてられない!これはそんな私の日常の話。小説家になろう様でも掲載しています。
*途中から数話ほどGL要素入ります!苦手な方は読み飛ばしてください!
すみません、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ書き直してます。皆様がストレスなく読める感じになっているといいのですが…。
【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
ヒロインに転生したけど私貴方と婚約したくないのです
みぃ/現お仕事多忙中
恋愛
【メイン完結】
「マリア!お前とは婚約破棄をして、キャットユー子爵令嬢のリリィと婚約をする!!!」
夜会の中、突然響く私の名前
…………なぜ私のお名前が?
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
その場で思いついた処女作
設定?そんなもんは知らん←
あ、誤字脱字の報告や、言葉の間違いなどは受け付けております\(´°v°)/んぴッ
設定めっちゃくちゃなのは知ってるから
非難中傷は受け付けぬ⸜( ⌓̈ )⸝
7周目は嫌われでした〜別エンディングはバッドエンドで!〜
荒瀬ヤヒロ
恋愛
まただ。また戻った。今回で七回目だ。
第二王子アクセルが魔獣に襲われて命を落とすたびに過去に戻るルイゼル。
(今度はアクセルを死なせないわ!)
恋人であるアクセルを守るために頑張るけれど、いつも失敗して七回目のやり直し。
だけど、七回目の今回はいつもと様子が違っていて——
ハッピーエンドを目指すルイゼルの奮闘の行方は?
とびきりのクズに一目惚れし人生が変わった俺のこと
未瑠
BL
端正な容姿と圧倒的なオーラをもつタクトに一目惚れしたミコト。ただタクトは金にも女にも男にもだらしがないクズだった。それでも惹かれてしまうタクトに唐突に「付き合おう」と言われたミコト。付き合い出してもタクトはクズのまま。そして付き合って初めての誕生日にミコトは冷たい言葉で振られてしまう。
それなのにどうして連絡してくるの……?
迅英の後悔ルート
いちみやりょう
BL
こちらの小説は「僕はあなたに捨てられる日が来ることを知っていながらそれでもあなたに恋してた」の迅英の後悔ルートです。
この話だけでは多分よく分からないと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる