上 下
132 / 261
高等部 1年生

特訓、調査、たまに休んで、また特訓(後編)

しおりを挟む
安心したのも束の間、冷たい空気がお母様から流れているのを感じる。
そーっとお母様を見ると、氷の微笑とはまさにこのこと!!

「アリア、食後の運動をしましょう。早速、始めますよ」

完全にヤル気スイッチが入っている!

……お父様は??

「アリア」
「は、はい?」

なんか口元は笑ってるけど、眼が笑っていない。

「学校での同級生のやり取りに親が口を挟むことではない事は、重々理解しているつもりだよ」

は、はい。
お父様、怒ってらっしゃる??

「その代わり、私たち家族は全面的に協力するから、なんでも言いなさい」

おおっと。
お父様も謎スイッチが入っている!!


私って大切にされてるなぁ、ほんと。
理不尽な扱いを受けた事は多々あるけど、周りの人に恵まれてるからプラマイゼロ。
いや、むしろプラスかも!!


……あれ? だとしたら、ジュリアの事も調べてもらえるのでは??

「お父様、1つお願いが!!」
「何かな? なんでも言いなさい」

そのセリフは娘をダメ(我がまま)にしますよ、お父様。

「ジュリアの今まで起こった出来事、幼なじみたちとの仲など……分かる範囲でいいんです。経歴というより、日常生活について調べてもらえませんか?」

私のお願いが意外だったのか、お父様が首を傾げている。

「そんな事でいいのかい?」
「はい! 試合でのヒントになると思うんです」

不思議がってはいるものの『試合でのヒント』と聞いて、お父様が快く承諾してくれた。
良かった! きっと私が調べるよりも早く情報が手に入る!!


……と、喜べたのは一瞬だけ。
お母様の宣言通り、その日はみっちりと鍛えられ、他の事を考える余裕なんて全く起きなかった。



──そして、2日後。
やはり、お父様の仕事は早かった。

学校が終わって寮に戻ると、お父様から私宛に手紙が届いていた。


『ジュリア嬢の幼少期にメイドとして勤めていた方とお話ができました。詳しい内容を送ります』

さすがです! ありがとうございます!


『その方はジュリア嬢が産まれてから、12歳になるまで勤めていた方らしい。ジュリア嬢は、小さい頃から手も掛からない優秀で優しい子だったと嬉しそうに話していたよ』

うん、優秀は分かる。
ただ優しい? 優しさ度“2%未満”の人に見えたけど。家では態度が違うのかな??

実際、0歳~9歳までの内容は、当たり障りのない内容だった。
──問題は10歳からだった。


『ただ10歳の頃から急に人が変わり、別人のようになったと。優秀な所は変わっていなかったが、高慢で思いやりが足りない人になってしまったと嘆いていたよ』

それって……。


『別人のように変わる前か後かは分からないけど、ジュリア嬢が「ジュリアになった」とやけに興奮気味だったらしい。後にも先にもあんなに興奮しているジュリア嬢を見た事がなかったので、鮮明に覚えてますと話していた』

やっぱり! ジュリアは私と同じ転生者!! ……かもしれない。


『ジュリア嬢のご両親は娘が可愛かったようで、ジュリア嬢が気に入らないメイドはどんどん辞めさせられたと話していた。今回、話を聞いた女性も辞めさせられた一人だったらしい』

同じ転生者だとしたら、同類だと思われたくないくらいヒドイ人だな。


……という事は、ジュリアは隠しキャラ?
でも『ジュリアになった』と言っていたという事は“乙女ゲーム”を知ってるって事だよね??
なんで知ってるのに私たちの事を知らなかったんだろう?

『私がアリアです』って言っても信用していなかったし。
なんか決定的なものがないというか。上手くピースがはまらないんだよなぁ。
う~ん……色々と疑問は残るけど、まずは対決の事を考えなくては!



──その日から、私の特訓の日々が始まった。

学校が終わった後に特訓。
たまにマイヤと一緒に特訓。
週末はお母様との練習試合。
そしてまた特訓……。

……これって、“格ゲー”でした?? と勘違いするほどに特訓、特訓、また特訓の連続。

お母様といえば、普段は『私は戦えませーん』という顔をしてるのに……悔しいくらいに強かった。
躊躇ちゅうちょなく、魔法も使ってきたし。


ジュリアについては、空いた時間を利用して私の方でも色々と調べてみた。
とはいえ、残念ながら、お父様以上にジュリアの情報を得る事はできなかった。
モヤモヤは残るけど……しょうがない! と気持ちを切り替える事にした。


ちなみに、オーンの練習相手は、エレの手腕により無事見つける事ができた。
エレの予想通り、クラスメイトの従兄弟はユーテルさんとユーテルさんの弟だった。
協力を断られるかと思っていたら、どうやらユーテルさんの弟はユーテルさんと仲が悪いようで、勝つことを条件に了承してくれたらしい。

エレもオーンに《雷の魔法》を使える人を紹介した時「勝つのは当然ですから、いいですよね?」とプレッシャーを掛けていた。
オーンはオーンで「うん、大丈夫だよ」と余裕の笑みを返していた。

プレッシャーをプレッシャーとも思わない自信。
んー、オーン健在!!



そして、魔法祭も近づいてきたある日──試合順が決定した。

---------------------------------------

第1試合 《風の魔法》 エウロ vs ライリー

第2試合 《知恵の魔法》 ミネル vs ソフィー

第3試合 《癒しの魔法》 マイヤ VS ネヴェサ

第4試合 《火の魔法》 カウイ vs ヌワ

第5試合 《土&緑の魔法》 ルナ&セレス vs イリ&リイ

第6試合 《光の魔法 VS 雷の魔法》 オーン vs ユーテル

第7試合 《水の魔法》 アリア vs ジュリア
---------------------------------------


あれれ??

「私が最後……って、な、なんで??」

魔法が使えない私は一番最初だと思っていたんだけど。
一緒に試合順を見に来ていたマイヤも首を傾げている。

「それはですねー、ジュリアさんの強い意向があったからです!」

マイヤと一緒に後ろをぱっと振り向く。
あ! メロウさん! ……いつも突然現れるなぁ。

「くじ引きか何かで決めようと思ってたのですが、ジュリアさんが突然やって来て、『メインの私を一番最後にして』と言われちゃいました。断ろうかと思ったのですが……私個人としてもアリアが最後の方が面白いんじゃないかと思って承諾しちゃいましたぁ」

メロウさんが自分の言葉にケラケラ笑っている。
楽しそうだなぁ……と眺めていたら、急に笑うのを止めた。

「面白いことに関する勘はするどい方なので、きっといい試合になります」

そう言って、また笑いながら去って行った。

冗談なのか本気なのか分からない人だなぁ。
でも、今回の試合。家族、幼なじみ達、友人……と色々な人が協力してくれた。


──絶っ対に負けられない!!!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】騎士たちの監視対象になりました

ぴぃ
恋愛
異世界トリップしたヒロインが騎士や執事や貴族に愛されるお話。 *R18は告知無しです。 *複数プレイ有り。 *逆ハー *倫理感緩めです。 *作者の都合の良いように作っています。

男女比がおかしい世界にオタクが放り込まれました

かたつむり
恋愛
主人公の本条 まつりはある日目覚めたら男女比が40:1の世界に転生してしまっていた。 「日本」とは似てるようで違う世界。なんてったって私の推しキャラが存在してない。生きていけるのか????私。無理じゃね? 周りの溺愛具合にちょっぴり引きつつ、なんだかんだで楽しく過ごしたが、高校に入学するとそこには前世の推しキャラそっくりの男の子。まじかよやったぜ。 ※この作品の人物および設定は完全フィクションです ※特に内容に影響が無ければサイレント編集しています。 ※一応短編にはしていますがノープランなのでどうなるかわかりません。(2021/8/16 長編に変更しました。) ※処女作ですのでご指摘等頂けると幸いです。 ※作者の好みで出来ておりますのでご都合展開しかないと思われます。ご了承下さい。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

二度目の人生は異世界で溺愛されています

ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。 ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。 加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。 おまけに女性が少ない世界のため 夫をたくさん持つことになりー…… 周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

男女比崩壊世界で逆ハーレムを

クロウ
ファンタジー
いつからか女性が中々生まれなくなり、人口は徐々に減少する。 国は女児が生まれたら報告するようにと各地に知らせを出しているが、自身の配偶者にするためにと出生を報告しない事例も少なくない。 女性の誘拐、売買、監禁は厳しく取り締まられている。 地下に監禁されていた主人公を救ったのはフロムナード王国の最精鋭部隊と呼ばれる黒龍騎士団。 線の細い男、つまり細マッチョが好まれる世界で彼らのような日々身体を鍛えてムキムキな人はモテない。 しかし転生者たる主人公にはその好みには当てはまらないようで・・・・ 更新再開。頑張って更新します。

異世界転生先で溺愛されてます!

目玉焼きはソース
恋愛
異世界転生した18歳のエマが転生先で色々なタイプのイケメンたちから溺愛される話。 ・男性のみ美醜逆転した世界 ・一妻多夫制 ・一応R指定にしてます ⚠️一部、差別的表現・暴力的表現が入るかもしれません タグは追加していきます。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

処理中です...