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高等部 1年生
まずは敵情視察から(後編)
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マイヤの提案にエウロも「うんうん」と頷いている。
「そうだな。一緒にいれば、連携プレーとかも考えやすいよな」
「(その間、私はアリアちゃんと一緒に訓練するけど)うん、そうしたら勝てると思うな!」
エウロは純粋な意見として言ってるのが伝わってくる。
マイヤは……的確なアドバイスではあるんだけど、何かそれだけではないような??
当の本人であるセレスは……若干、いや、かなりの葛藤があるみたい。
しばらく沈黙した後、諦めたように口を開いた。
「……仕方がないわね。マイヤの助言というのが気に食わないけど、勝てない方が耐えられないもの。いいわね? ルナ?」
「……分かった」
おおー! これを機に仲良くなるんじゃない??
そうだとしたら、この対決も悪い事ばかりじゃないかも!!
興奮している私の横でマイヤが、小さい声でつぶやいた。
「甘いわよ、アリアちゃん。そう簡単にはいかないわよ」
……へっ!! マイヤって、私の心の中が読めるの!!?
マイヤの方を見ると『そうよ』と肯定でもするように微笑んでいる。
そんな中、話はどんどん進んでいく。
ミネルが険しい顔でカウイに説明をしている。
「カウイの相手“ヌワ”。この人物が……かなりのくせ者だ」
そうなの? 確か……熱血系の人だったよね!?
カウイも資料を見ている。
「試合になると人格が変わる……」
「そうみたいだ。普段は暑苦しそうな人物だが、試合になると……手加減をしない性格のようだ」
手加減しないって……試合なら普通じゃないの??
「試合になると歯止めがかからないようで、ケガ人も出た事があるらしい」
えっ! そういう意味!?
それって、危険人物なんじゃない??
カウイを見ると、驚くことも怯えることもなく、ただ静かにぽつりと言った。
「……よかった。その方がより鮮明にシミュレートできる」
いやいや、全然よくないよー!!
魔法祭のイベントだし、大きなケガとかはしないようメロウさん達が考えてくれるとは思う。
だけど、そんなことを聞いたら不安しかないよー!!
“ヌワ”さんの話で一気に空気が重くなる中、ミネルがマイヤを見る。
「マイヤの相手“ネヴェサ”だが……性格は穏やか。学校など公の場で武術や剣術の試合などはした事がないらしい」
そ、そうなの!?
じゃあ、なんで勝負を挑んだの?
「本当かどうかは分からないけどな」
マイヤが顎に指を当て、ミネルにお礼を伝える。
「ありがとう、ミネルくん。“ネヴェサ”さんは、きっと勝算があるから挑んだと思うの。私の方でも調べてみるね」
んー、“ネヴェサ”さん? 確かに口調は穏やかだった。
だけど、話してる内容は、穏やかには見えなかったけど、な。
……そもそも《癒しの魔法》の場合、魔法対決ってどうするの??
んー、謎だらけだ。
1人考え込んでいると…………なんか視線を感じる。
視線の先を見てみると、じーっとミネルが私を見ていた。
「次はアリアの対戦相手だ」
私が考え込んでたから、話すのを待ってくれてたのね。
ごめん、ミネル!!
「“ジュリア”は、魔法、剣術などの試合すべてに負けたことがないらしい」
おおっと。予想より、凄すぎ、強すぎ。
そりゃあ、あんな大口たたくわけだよ。
「アリアは……」
アリアは? 前のめりに話を聞く体制をとる。
「何かあれば、逃げろ。以上だ」
他のみんなも頷いている。
……以上? 『この部分を頑張って特訓しろ』的なアドバイスはないの!!?
私の顔を見たオーンが、すかさずフォローを入れる。
「アリアが負けると決めつけてるわけではなく、“ジュリア”さんは少し危険な雰囲気が見受けられた。だから、みんなもミネルの提案に賛成してるんだと思う」
危険な雰囲気?? 私は全く気がつかなかったけど……。
みんなは魔法が使えるから、何か気づくところがあったのかな??
ミネルが「次は……」と話を続ける。
「僕の相手“ソフィー”については、資料を読んでおいてくれ」
ん? なになに??
『別館では2番目の成績』『鍛えられた男性の身体が好き』
…………なるほど。
後半部分は置いといて、1番は??
資料の中には“ジュリア”の名前が書いてある。
別館で一番成績が良いのは“ジュリア”なんだ!!!
試合で負けたことがない上に成績も1番。
こ、これは、かなり気を引き締めてかからないとまずいかも。
改めて気合を入れ直し、最後の対戦相手の資料に目を通す。
さて、最後はっと。
……エウロか!!
みんな何も言わずにエウロへと目を向けた。
ミネルがゆっくりと説明し始める。
「エウロの相手は“ライリー”」
ああ! あの、ジェントルマン!!
「短時間だから見つからなかっただけなのかもしれないが、あまり参考になる情報がなかった」
そ、そうなんだ。
情報がないからかな? 一番、話が通じる人なんじゃないかと思ってきた。
「そ、そうか……としか言いようがないな」
エウロも返答に困っている。そりゃそうなるよね……。
いつの間にか昼休みも終わりへと近づき、ミネルが話をまとめる。
「まぁ、午前中しか時間がなかったから、情報としてはこんなものだろう」
いえいえ、十分すぎます。
なんせ資料には、まだまだ情報が記載されてるし。
特に私の対戦相手“ジュリア”は文武両道で、色々な賞を受賞しているすごい人のようだ。
賞の数だけで、資料が3枚にも渡っている。
「引き続き、情報を収集するのはもちろんのこと、向こうも僕たちの情報を調べてくるはずだ。勝率を上げる為には、情報にはない新しいスキルを身につける必要があるな」
新しいことかぁ。んー、そうだよねぇ。
みんなは新しい魔法を習得するとかになるのかな?
……私は??
『“催眠療法”を習得する』とか、かなり変わったスキルを学ばない事には割に合わない気がする。
いや、さすがにそれは違うか。
動揺のあまり、思わず一人ボケツッコミをしてしまったよ。
エウロもミネルに同意している。
「そうだな。各自で調べた情報は共有し合おう!」
昼休みが終わり、みんなに別れを告げて教室へと戻る。
今週末は、(身分違いの恋をしている)スレイさん、ナツラさんと会う約束をしている。
近況報告を聞くのもそうだけど、スレイさんが《光の魔法》を使えるからだ。
以前、オーンに試してもらった《光の魔法》。
弾かれた理由は、──未だに分かっていない。
そこで、別な人がやったら上手くいくのでは? と思い、ダメ元で相談してみたところ快諾してくれた。
これで弾かれたら……きっと誰がやっても弾かれる可能性が高いって事だよね?
その時は、潔くオーンが調べている結果を待つ事にしよう。
──そして週末、私は”ジュリア”について、新たな事実を知ることになる。
「そうだな。一緒にいれば、連携プレーとかも考えやすいよな」
「(その間、私はアリアちゃんと一緒に訓練するけど)うん、そうしたら勝てると思うな!」
エウロは純粋な意見として言ってるのが伝わってくる。
マイヤは……的確なアドバイスではあるんだけど、何かそれだけではないような??
当の本人であるセレスは……若干、いや、かなりの葛藤があるみたい。
しばらく沈黙した後、諦めたように口を開いた。
「……仕方がないわね。マイヤの助言というのが気に食わないけど、勝てない方が耐えられないもの。いいわね? ルナ?」
「……分かった」
おおー! これを機に仲良くなるんじゃない??
そうだとしたら、この対決も悪い事ばかりじゃないかも!!
興奮している私の横でマイヤが、小さい声でつぶやいた。
「甘いわよ、アリアちゃん。そう簡単にはいかないわよ」
……へっ!! マイヤって、私の心の中が読めるの!!?
マイヤの方を見ると『そうよ』と肯定でもするように微笑んでいる。
そんな中、話はどんどん進んでいく。
ミネルが険しい顔でカウイに説明をしている。
「カウイの相手“ヌワ”。この人物が……かなりのくせ者だ」
そうなの? 確か……熱血系の人だったよね!?
カウイも資料を見ている。
「試合になると人格が変わる……」
「そうみたいだ。普段は暑苦しそうな人物だが、試合になると……手加減をしない性格のようだ」
手加減しないって……試合なら普通じゃないの??
「試合になると歯止めがかからないようで、ケガ人も出た事があるらしい」
えっ! そういう意味!?
それって、危険人物なんじゃない??
カウイを見ると、驚くことも怯えることもなく、ただ静かにぽつりと言った。
「……よかった。その方がより鮮明にシミュレートできる」
いやいや、全然よくないよー!!
魔法祭のイベントだし、大きなケガとかはしないようメロウさん達が考えてくれるとは思う。
だけど、そんなことを聞いたら不安しかないよー!!
“ヌワ”さんの話で一気に空気が重くなる中、ミネルがマイヤを見る。
「マイヤの相手“ネヴェサ”だが……性格は穏やか。学校など公の場で武術や剣術の試合などはした事がないらしい」
そ、そうなの!?
じゃあ、なんで勝負を挑んだの?
「本当かどうかは分からないけどな」
マイヤが顎に指を当て、ミネルにお礼を伝える。
「ありがとう、ミネルくん。“ネヴェサ”さんは、きっと勝算があるから挑んだと思うの。私の方でも調べてみるね」
んー、“ネヴェサ”さん? 確かに口調は穏やかだった。
だけど、話してる内容は、穏やかには見えなかったけど、な。
……そもそも《癒しの魔法》の場合、魔法対決ってどうするの??
んー、謎だらけだ。
1人考え込んでいると…………なんか視線を感じる。
視線の先を見てみると、じーっとミネルが私を見ていた。
「次はアリアの対戦相手だ」
私が考え込んでたから、話すのを待ってくれてたのね。
ごめん、ミネル!!
「“ジュリア”は、魔法、剣術などの試合すべてに負けたことがないらしい」
おおっと。予想より、凄すぎ、強すぎ。
そりゃあ、あんな大口たたくわけだよ。
「アリアは……」
アリアは? 前のめりに話を聞く体制をとる。
「何かあれば、逃げろ。以上だ」
他のみんなも頷いている。
……以上? 『この部分を頑張って特訓しろ』的なアドバイスはないの!!?
私の顔を見たオーンが、すかさずフォローを入れる。
「アリアが負けると決めつけてるわけではなく、“ジュリア”さんは少し危険な雰囲気が見受けられた。だから、みんなもミネルの提案に賛成してるんだと思う」
危険な雰囲気?? 私は全く気がつかなかったけど……。
みんなは魔法が使えるから、何か気づくところがあったのかな??
ミネルが「次は……」と話を続ける。
「僕の相手“ソフィー”については、資料を読んでおいてくれ」
ん? なになに??
『別館では2番目の成績』『鍛えられた男性の身体が好き』
…………なるほど。
後半部分は置いといて、1番は??
資料の中には“ジュリア”の名前が書いてある。
別館で一番成績が良いのは“ジュリア”なんだ!!!
試合で負けたことがない上に成績も1番。
こ、これは、かなり気を引き締めてかからないとまずいかも。
改めて気合を入れ直し、最後の対戦相手の資料に目を通す。
さて、最後はっと。
……エウロか!!
みんな何も言わずにエウロへと目を向けた。
ミネルがゆっくりと説明し始める。
「エウロの相手は“ライリー”」
ああ! あの、ジェントルマン!!
「短時間だから見つからなかっただけなのかもしれないが、あまり参考になる情報がなかった」
そ、そうなんだ。
情報がないからかな? 一番、話が通じる人なんじゃないかと思ってきた。
「そ、そうか……としか言いようがないな」
エウロも返答に困っている。そりゃそうなるよね……。
いつの間にか昼休みも終わりへと近づき、ミネルが話をまとめる。
「まぁ、午前中しか時間がなかったから、情報としてはこんなものだろう」
いえいえ、十分すぎます。
なんせ資料には、まだまだ情報が記載されてるし。
特に私の対戦相手“ジュリア”は文武両道で、色々な賞を受賞しているすごい人のようだ。
賞の数だけで、資料が3枚にも渡っている。
「引き続き、情報を収集するのはもちろんのこと、向こうも僕たちの情報を調べてくるはずだ。勝率を上げる為には、情報にはない新しいスキルを身につける必要があるな」
新しいことかぁ。んー、そうだよねぇ。
みんなは新しい魔法を習得するとかになるのかな?
……私は??
『“催眠療法”を習得する』とか、かなり変わったスキルを学ばない事には割に合わない気がする。
いや、さすがにそれは違うか。
動揺のあまり、思わず一人ボケツッコミをしてしまったよ。
エウロもミネルに同意している。
「そうだな。各自で調べた情報は共有し合おう!」
昼休みが終わり、みんなに別れを告げて教室へと戻る。
今週末は、(身分違いの恋をしている)スレイさん、ナツラさんと会う約束をしている。
近況報告を聞くのもそうだけど、スレイさんが《光の魔法》を使えるからだ。
以前、オーンに試してもらった《光の魔法》。
弾かれた理由は、──未だに分かっていない。
そこで、別な人がやったら上手くいくのでは? と思い、ダメ元で相談してみたところ快諾してくれた。
これで弾かれたら……きっと誰がやっても弾かれる可能性が高いって事だよね?
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