上 下
113 / 261
高等部 1年生

ドキッとした宣戦布告(前編)

しおりを挟む
「あーちゃん!」

ウィズちゃんが私に駆け寄り、抱きついてくる。

愛くるしいウィズちゃんから、こんなに嬉しい歓迎がっ!!
出だしから、もう幸せっ!!!


ミネルから『ウィズが会いたがってる』と聞いていた事もあり、2人とは夏季休暇中に会う約束になっていた。
だけど、今の私が小さい子を連れてお出掛けするのは、さすがにリスクが高い。
色々と話し合った結果、外よりは安全なミネルの家で遊ぶ事になったのだ。


「あーちゃん、みてー」

ん? ウィズちゃんを見ると、手から“ナレッジ”が現れた。

──!!!

……ウィズちゃん。魔法が使えるようになったのね。
さらにミネルと同じ《知恵の魔法》。

「ウィズちゃん、すごいね! もう魔法が使えるんだ!!」

褒められた事が嬉しいのか、ウィズちゃんが屈託のない顔で笑っている。
すごいと思う反面、ちょっとだけ複雑な気持ち。ちょっとだけだよ?

後ろから、くくっと笑い声が聞こえてくる。
この笑い方は──ミネルだ。

「予想通りの展開になったな」
「くっ!」

悔しい!! けど本当の事なので、何も言い返せない。

「あーちゃん、あそぼう!」

そ、そうだ! 今日は愛しのウィズちゃんと思いっきり遊ぶんだった!

「何して遊ぶ?」
「うんとね、兄さまのお部屋で“取り調べごっこ”」
「“取り調べごっこ”?」

……とはなんぞや? 子供の遊びとは思えない不穏な名前だな。
訳が分からないまま了承し、ミネルの部屋へと移動した。

早速ウィズちゃんが、子供とは思えぬ仕切りをする。

「あーちゃんは私の前に座ってね。兄さまは~このテーブルから、ちょっとだけ離れた所に座っててね」

ミネルが部屋に置いてあるウィズちゃん用の椅子を持ってきている。
メイドさんとかに頼まず、自然に持ってくる所を見ると……いいお兄ちゃんなんだろうなぁ。
その光景を眺めていると、ついつい顔がにやけてしまう。

「なんだ?」
「いや~、なんでもない」

危ない、危ない。早々にミネルの機嫌を損ねるとこだった。

ウィズちゃんが椅子に座り、テーブルの上で手を組んだ。
……6歳児だよね??

「さっそく始めまーす。あーちゃんはウィズの質問に答えてください」
「は、はい?」

一体、何が始まるの?

「アリアさんは……」

突然、ウィズちゃんの口調が変わった。
ア、アリアさん!!?

「ウィズが好きですか?」
「もちろん! 大好きです」

急な質問に驚きつつも、反射的に答える。
もしや“取り調べごっこ”って、ウィズちゃんからの質問に私が答える遊びなのかな? 最近はこういう遊びが流行ってるの??

「兄さまは、好きですか?」

少し離れたソファに座っているミネルをチラッと見る。こちらのやり取りを気にする素振りのないまま本を読んでいる。

「うん! もちろん好きだよ」

嘘はいけないもんね。
正直に答えると、バサッと物が落ちる音がした。

「……すまない。手を滑らせた」

ミネルが下を向きながら、落とした本を拾っている。
何の音かと、ビックリした。その間にもウィズちゃんの質問は続く。

「結婚したい人はいますか?」
「け、結婚!?」
「はい。答えてください」

なんて冷静な6歳児!

「今はいないです……って、ウィズちゃんどうしたの? 婚約者でも出来るの?」
「“取り調べごっこ”中なので、アリアさんからの質問は受け付けません」

なんてドライな6歳児……。

その後も私の好みのタイプや頭のいい人は好きかなど、絶え間なく質問が続いた。
子供とは思えない語彙力ごいりょく。そして、この質問は何なんだろう??
……さすがに少し疲れてきたかも。

「ウィズ、そろそろ休憩だ。お昼にしよう」

気を利かせてくれたのかな? ミネルがウィズちゃんに声を掛けた。

「はぁい。あーちゃん、まだいてね?」

良かった! いつもの可愛いウィズちゃんに戻った!!



ミネルのお母さんであるメーテさんも交えて、私も一緒にお昼を食べさせてもらう事になった。
メーテさんがにこにこと笑っている。

「久しぶりにアリアちゃんと一緒にお昼が食べれて嬉しいわ」

相変わらず、メーテさんは嬉しい言葉を掛けてくれる人だなぁ。
本当にステキな人。

「いずれ、この光景が当たり前になれば嬉しいわね」

……ど、どういう意味??
不思議に思っていると、間髪入れずにミネルが声を上げた。

「お母様!」
「ふふ。ごめんなさいね」

??? ……さっぱり分からない。
謎の会話があったものの、その後は和やかな時間を過ごした。


お昼を食べ終えると、いきなりウィズちゃんが目をこすり出した。

「ウィズ、なんだか眠くなってきちゃったなぁ」
「あらあら、せっかくアリアちゃんが来てくれたのに。……そうだわ、アリアちゃん! ウィズが寝ている間、ミネルのお部屋でお話でもしてたらどうかしら?」

今のやり取り……違和感があるのは気のせいかな?
メーテさんの提案にミネルが少し呆れた表情でつぶやいた。

「なんだ、その三文芝居は……」

んっ? なになに!?

「あーちゃん、ウィズが目を覚ましたら遊ぼうね!」

ウィズちゃんが元気な声で言った。

「う、うん。分かったよ」

なんか眠くなさそうに見えるけど? 気のせい??

「はぁ……」

ミネルが大きなため息をついた。なんか疲れてる?
メーテさんが「そうそう」と思い出したようにミネルに声を掛ける。

「ミネル、いいわね? くれぐれも押し倒したりしたらダメよ?」

ミネルが飲んでいた紅茶を噴き出した。

「でも合意なら……いいわよ」

今度は私が飲んでいた紅茶を噴き出した。

メーテさんが口に手を当て「あらあら」と微笑んでる。
な、何を言い出すの!? 今日のメーテさんおかしくない!!?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】騎士たちの監視対象になりました

ぴぃ
恋愛
異世界トリップしたヒロインが騎士や執事や貴族に愛されるお話。 *R18は告知無しです。 *複数プレイ有り。 *逆ハー *倫理感緩めです。 *作者の都合の良いように作っています。

男女比がおかしい世界にオタクが放り込まれました

かたつむり
恋愛
主人公の本条 まつりはある日目覚めたら男女比が40:1の世界に転生してしまっていた。 「日本」とは似てるようで違う世界。なんてったって私の推しキャラが存在してない。生きていけるのか????私。無理じゃね? 周りの溺愛具合にちょっぴり引きつつ、なんだかんだで楽しく過ごしたが、高校に入学するとそこには前世の推しキャラそっくりの男の子。まじかよやったぜ。 ※この作品の人物および設定は完全フィクションです ※特に内容に影響が無ければサイレント編集しています。 ※一応短編にはしていますがノープランなのでどうなるかわかりません。(2021/8/16 長編に変更しました。) ※処女作ですのでご指摘等頂けると幸いです。 ※作者の好みで出来ておりますのでご都合展開しかないと思われます。ご了承下さい。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

二度目の人生は異世界で溺愛されています

ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。 ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。 加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。 おまけに女性が少ない世界のため 夫をたくさん持つことになりー…… 周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

男女比崩壊世界で逆ハーレムを

クロウ
ファンタジー
いつからか女性が中々生まれなくなり、人口は徐々に減少する。 国は女児が生まれたら報告するようにと各地に知らせを出しているが、自身の配偶者にするためにと出生を報告しない事例も少なくない。 女性の誘拐、売買、監禁は厳しく取り締まられている。 地下に監禁されていた主人公を救ったのはフロムナード王国の最精鋭部隊と呼ばれる黒龍騎士団。 線の細い男、つまり細マッチョが好まれる世界で彼らのような日々身体を鍛えてムキムキな人はモテない。 しかし転生者たる主人公にはその好みには当てはまらないようで・・・・ 更新再開。頑張って更新します。

異世界転生先で溺愛されてます!

目玉焼きはソース
恋愛
異世界転生した18歳のエマが転生先で色々なタイプのイケメンたちから溺愛される話。 ・男性のみ美醜逆転した世界 ・一妻多夫制 ・一応R指定にしてます ⚠️一部、差別的表現・暴力的表現が入るかもしれません タグは追加していきます。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

処理中です...