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高等部 1年生

高等部入学&寮生活スタート(前編)

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明日は高等部の入学式。
それと同時に寮での生活もスタートする。

この前、ルナの家に遊びに行った時、リーセさんから寮の話を聞く事ができた。

寮は、男子寮と女子寮で分かれている。

相部屋なのかな? と思っていたら、まさかの一人部屋。

さらに部屋も、お風呂付きの広い部屋らしい。
聞いた話から推測すると2人、いや、へたしたら4人部屋でもおかしくない広さのようだ。

さらに驚いたのは、お抱えのメイドを1人連れて来ていいという話。

ついに“この世界”で洗濯や掃除をする日が来たかぁ~、とのん気に考えていたんだけど……そんなはずはなかった。
どうやらこれまで通り、全てメイドさんがやってくれるらしい。

ご飯は部屋で食べてもよし。寮にあるレストランで食べてもよし。
そして、営業時間内であれば、学校にあるカフェテリアやレストランで食べてもよし!

……と、至れり尽くせりの寮らしい。

こんなに充実した学校や寮なら、そりゃかなり離れた広い場所じゃないと作れないよね。

明日からは寮生活という事もあり、エレが『ずっと会えないのは寂しい』って可愛い事を言うもんだから、週末は帰るという約束をした。
私もずっと一緒にいたエレに急に会えなくなるのは寂しいもんな。


……って、色々と考えてたら、もうこんな時間!!
明日に備えて、早く寝なきゃ!



そして、次の日。
出発前にお父様とお母様、エレと挨拶を交わす。

「アリアならきっと楽しい学校生活を送る事が出来ると思うから、何も心配してないよ。気をつけて行ってらっしゃい」

お父様が、いつもの優しい顔で微笑んだ。

「そうね。でも、私は少し心配よ。本当に無茶はしないでね」

……お母様にとって、私はいくつになっても心配な子なんだな。

「1年……長いけど、週末に会えるの楽しみにしてるね」

エレが寂しそうに微笑んだ。
そんな顔されると、行くのためらっちゃうよー!

エレをギュッと抱きしめ「ちゃんと会いに帰ってくるからね!」と誓った。
私を抱きしめ返し、エレが呟いた。

「うん。待ってるよ。もし約束を破ったら……」

ん? 破ったら??

「僕の“お願い”聞いてね」

私を見つめ、にっこり笑った。

なんだろう……? エレの“お願い”はいつも聞いてるつもりなんだけど、なぜか約束を破っちゃいけないと私の本能が告げている気がする。

「うん。必ず帰ってくる!」

改めてエレと約束し、私はメイドのサラと一緒に高等部へと向かった。



“ヴェント”で向かっている最中、ついて来てくれたサラにお礼を伝える。

「一緒に来てくれて、ありがとね」
「いえ、お嬢様のお世話ができるのは私しかいない! と思ってますから」

気合を入れるように、サラが胸の前で手をグッと握り締める。

「サラがいてくれて、すごく心強いよ!」
「そう言っていただけると光栄です!」

2人でにっこりと笑い合う。
この世界に来て初めて会った人がサラだったって思うと感慨深いなぁ。


サラと他愛もない話をしながら、“ヴェント”に乗って2時間。
……やっと着いた。

“テスタコーポ大会”の時にも来た事あったけど、こんなに遠かったっけ?
学校作りが忙しくて、次の年の“テスタコーポ大会”は参加しなかったから、いまいち覚えてないんだよなぁ。

“ヴェント”から降りると、座りっぱなしで凝り固まった体をグーンと伸ばす。

荷物を降ろし終えたサラが、私に声を掛けてきた。

「お荷物は私が部屋までお運びしますので、お嬢様は入学式の会場へ行ってくださいませ」
「ありがとう。助かるよ、サラ。よろしくね」

『よろしくね』とは言ったものの、実は入学式の会場の場所が分からない……。
人の流れに沿って歩けばいいのかな??

オロオロしていると、1人の上級生が声を掛けてくれた。

「アリアさん。さては、迷ってますね?」
「はい……って、えっと……?」

声を掛けてくれた男性を見る。

……なんか聞いた事がある“声”だけど、誰だっけ??
私に上級生の知り合いはいないはずだけど……。

戸惑う私を見て、男性がにっこりと笑った。

「なーんと! 優勝はアリア!! ……って言えば分かりますかー?」
「……もしかして、“テスタコーポ大会”の実況者、メ……ロウさん!?」
「正解でーす!」

 まさか、こんなところで出会えるとは! びっくり!!

大会中はテンションの高い声しか聞いてなかったから、顔を見たのは初めてかも。
メロウさんがまだ卒業してなかったって事にも驚いたけど。

「よく、私を知ってましたね」
「あははは。4年生でアリアさんは準優勝ですよ? その時の実況をしてたんですから! そりゃ、知らない方がおかしいですよー。ちなみに実況は下級生が行う決まりがあるのです。だから実況をした時は、高等部2年目だったのです!」

メロウさんがケラケラ笑いながら答えた。
相変わらず、明るい人だなぁ。

「あー、可笑しかった。さーてと、入学式の会場まで案内しますね」
「あ、ありがとうございます!」
「ちなみにアリアさん。“ヴェント”を止めた場所が悪かった! たくさん人がいますけど、皆さん上級生ですよ」

えっ! そうだったんだ!!
危ない、危ない。間違って、ついて行くとこだった。

「最後の最後で、アリアさんと一緒の学校生活を送れるのは楽しみですねー」
「そう言ってもらえると嬉しいです! メロウさんは来年卒業なんですね」
「はいー」
「そうなんですね。あっ! 私の方が後輩なんで、気軽に“アリア”って呼んでください」

メロウさんがにっこり笑い、頷いた。

「じゃあ、改めて。アリア! 入学おめでとうございます! ようこそ、高等部へ!!」

メロウさんが到着した入学式の会場まで案内してくれ「では、私は次の授業があるので。また!」と明るい笑顔で去っていった。

「ありがとうございますー!」

上級生の人に『入学おめでとう』と言われると、高等部にきたんだ! っていう実感が湧いてくるなぁ。

会場に入ると……おお! 人がたくさん!!
入学する生徒はもちろんのこと、先生方も集まっている。

中等部からの持ち上がりという事もあり、顔見知りの人も多い。

あと、もう1校だっけ? 2校だっけ?? も、高等部からは同じ学校に通うってセレスが言ってたな。
だから、こんなに人がいるんだ。

人数の多さに呆然と立ち尽くしていると、誰かが後ろから、私の頭をポンと置いた。

「アリア、おはよう。全然来ないから、もしや迷ってるのか!? って思ってた」

あっ、エウロだ。
当たりです! メロウさんがいなければ、迷うところでした。

「おはよう~。まさに危ないところだったんだよー。あれ? みんなは??」
「そういえば……どこにいるんだろうな?」

みんなと一緒にいたわけじゃなかったんだ。

……って、なんかチラチラ見られている。“この視線”久しぶりだ。
特に女性徒たちがエウロを見ている。

そっか。
エウロというか、幼なじみ達を知らない人たちが高等部にいるのか。
……また当分、人に見られる生活が始まるなぁ。

「いた!」

声とともに後ろから誰かがギュッと抱きついてきた。

「うわっ」
「ルナ! 離れなさい!!」

セレスだ!
ルナに怒っている? という事は、抱きついてるのはルナか!!

「探してた」
「ごめんね、ルナ。会場から遠い場所で“ヴェント”を降りちゃってね。遅れちゃったんだよねぇ」

それにしても、人生で初めて“バックハグ”をされたのが、ルナ(女性)とは……。
まぁ、懐いてくれてるルナが可愛いから、いっか。

セレスが怒りながら、ルナを引き剥がしている。

「気軽にできちゃうルナが羨ましいね」
「セレス、ルナは全く空気が読めないから、何を言っても無駄だぞ」

オーンとミネルも!
それにカウイとマイヤも一緒にやってきた。
改めて、みんなが揃う姿を見ると、迫力があるな。

全員が集まったタイミングで、ちょうど入学式が始まった。

ホントに到着したのギリギリだったんだ。危なかったぁ。
高等部の学長が舞台へと上がり、話し始める。

それにしても……結局、中等部では魔法を使えるようにならなかったな。
もう半分以上の人が使える事を考えると、そろそろ使えるんじゃないかって思ってるんだけど。

とはいえ、高等部は将来に向けて自分のやりたい事が中心の勉強になってくる。
この1年は、自分のやりたい事を真剣に考え始めないと。

短い期間だったけど、参加させてもらった調査チーム。
楽しそうだけど、多分、私のやりたい事とはちょっと違うんだよなぁ~。

そうだ。この前モハズさんから、『仕事復帰したよー。当分帰ってこないけど、戻ったら会おうねー』って連絡がきた。

復帰まで長かったけど、復帰できたって事は、安全が確約できたって事だよね。
不安を抱えながらの生活は大変だったと思うから、よかったぁ。

「アリアー」
「アリア! ちゃんと聞いてたの?」

気がつくと、ルナとセレスが私の目の前にいる。

……!!! なんという事でしょう。

考え事をしていたら、記念すべき入学式が終わっていた!
ついつい自分の世界に入ってしまう性格……直そう。
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