上 下
60 / 261
中等部 編

14歳、モハズさん+意外な人との再会(前編)

しおりを挟む
──モハズさんと会う約束の日

黒髪のウィッグをつけて変装したオーンと一緒に、モハズさんとの待ち合わせ場所へとやって来た。
もちろん、エレも一緒。

一般家庭の人たちが多く住んでいる町という事もあり、目立たないよう服装も控えめにした。
私個人としては、いつもこんな格好でいいんだけどなぁ。

広場の中心にある噴水の近くで待っていると、背後からいきなり声を掛けられた。

「わっ!」
「う、わぁぁあっ!!」

大声で驚かされ、思わず悲鳴を上げてしまう。
横にいたエレが声のした方へと勢いよく振り向き、私を庇うように構えた。

「ごめん、ごめん。そんなに驚くとは思わなくって~」

お腹を抱え、ケラケラと笑っているのは──モハズさん!

「アリア、久しぶりだね!」
「はい、 お久しぶりです! あれから1ヶ月経ちましたけど……元気そうですね、モハズさん」
「うん、元気、元気! もうさ、ずーーーっと雑用だから体力持て余してるよ~」

相変わらずで何より。
暇って聞いてたけど、本当だったんだなぁ。


……あれ? 
驚いてたから気づいてなかったけど、モハズさんの横にいる人って──

「ヨセさん!?」
「久しぶりだな、アリア」

な、なんでっ!?
予想外のヨセさん登場に驚いてると、その横でモハズさんも驚いている。

「ええぇぇー! 2人って知り合いだったの!?」
「あっ、はい。学校の行事に“テスタコーポ大会”というのがあるんですが、その時に知り合った方なんです。ヨセさん、覚えててくれたんですね」
「ああ。後にも先にもあんなに息の合ったチームワークを見た事はなかったし、1回でステージをクリアされたのも初めてだったから……よく覚えてるよ」

記憶をたどるように語りながら、ヨセさんがニコッと微笑む。
最初に会った時は、背も高いし、がっしりとした体格だから威圧感があったんだよね。

だけど、試合の後には私やエウロに向かって、今みたいに笑ってくれたんだよなぁ。

懐かしいぃ~!…… って、どうしてヨセさんがここに??
私が質問する前に、モハズさんが事情を説明してくれた。

「私さ、例の件で危険が及ぶかもしれないからって、雑用してるじゃない? その関係でヨセは私の警護をしてくれてるの」
「……そうだったんですね」

ヨセさんもゆっくりと頷く。

「ああ。学校を卒業して、今は憲兵の仕事をしてるんだ」

憲兵……うん、適職かも! 全く持って違和感なし!!
それにしてもスゴイ偶然……。人の縁ってすごいなぁ。

「ねぇ、アリア。ところで……」

モハズさんがオーンとエレをチラチラと見ている。

「ああ、すいません。紹介しますね。弟のエレです」
「初めまして、エレです。アリアがいつもお世話になっています」

エレが得意のエンジェルスマイルで挨拶する。

「~~っ! な、なんてキレイな顔してるのー!!!」

はい、これでもうモハズさんはエレの虜になった模様。

興奮気味にはしゃぐモハズさんに、続いてオーンを紹介する。
周囲にバレないよう、念のため、声の音量を下げる。

「モハズさん、気がついてないですよね? もう1人はオーンなんです」
「えーーっ! か、髪!! って、ん!? よくよく見ると、確かにオーンだねー!!」
「ご無沙汰してます、モハズさん。僕の存在が他の方にバレると大変な事になると思って、今日は変装してるんです。なので、今日はオーンではなく“オーノ”でお願いします」

“オーノ”という偽名での紹介が面白かったらしく、モハズさんはまたまたお腹を抱えて笑っていたけど、ちゃんと承諾してくれた。
もちろん、ヨセさんも承諾してくれた。

ひとしきり笑った後、モハズさんが「立ち話もなんだから……」と話を切り出した。

「とりあえず、お店にでも入る? それか、ここの広場に休憩できる場所があるんだけど、そこで話す?」
「……広場で話しましょうか」

広場の方が、お店より人も少なそうだし。

「オーケー! じゃあ、出店で飲み物でも買って話そうー!」

モハズさんが案内してくれた出店も広場の中にあった。
そこで飲み物を買うと、休憩できるスペースまで移動し、みんなで向かい合うように椅子へと腰を下ろす。

ただ、ヨセさんだけはモハズさんから少しだけ離れた場所に立っている。
あくまで警護として来てるから、距離を取ってくれてるんだろうな。

「モハズさん。ヨセさんが聞いても問題ない内容なので、一緒に聞いてもらってもいいですか?」
「私は構わないよー!」

モハズさんがヨセさんを呼び寄せる。
少しだけ戸惑った様子だったけど、ヨセさんはすぐに近くまで来てくれた。

「で、今日はどしたの??」
「実は……」

私は“学校を作ろう”としている事を、一から十まですべて説明した。

調査チームの力を借りて、学校を建てる土地を探してもらいたいこと。
学校に通う予定の子供たち、その親など一般の方たちにも手伝ってほしいと思っていること。

そして──

「その橋渡しをモハズさんにお願いしたいんです」

真摯に、自分の正直な気持ちを伝える。
聞き終えたモハズさんの表情は、喜びに満ち溢れているように見えた。

ヨセさんはどう思ったかな?

チラッと様子をうかがうも……表情からは何も読めない。
警護中だから表情を崩していないだけかもしれないけど……。

すると突然、モハズさんが私の手をギュッと握った。

「最高だよ! アリア!! ほんっとうに大好き!! 私に出来る事があれば何でも協力する! アリアからの頼みっていう事もあるけど、自分の為にも協力したい!!」
「ありがとうございます。そう言ってくれると嬉しいです!」

知り合いとはいえ、賛同してくれるかどうか不安だったから「協力したい」って言ってくれて本当に嬉しい!!

モハズさんにお礼を言い、せっかくなのでヨセさんにも聞いてみる。

「警護中だとは思いますが、良ければヨセさんのご意見もお聞きしたいです」
「そうだな……俺個人としては賛成だ。協力したいと思ったよ」
「ありがとうございます」

ヨセさんの言葉が気になったのか、オーンが反応した。

「ヨセさんは、他の方に協力を仰ぐのは難しいと思っていますか?」
「……ああ。同じ職場や学校に通っていた人に声を掛けたとしても、協力してくれるのはほんの僅かだろうとは思ってる」
「やはり、そうですか……」

ヨセさんの意見にモハズさんが「えっ? えっ? なんで??」と驚いてる。
オーンがモハズさんに理由を説明した。

「モハズさんはアリアの知り合いなので、やろうとしている事に協力的だと思うんですが……普通に考えて、一介の学生が言っても信じてもらえない内容だろうなとは思っていました」
「んー、なるほどねぇ。確かにアリアと知り合いじゃなかったらって考えたら、そんな夢物語みたいな話、信じなかったかも……」

そうだよねぇ。やっぱり“学校を作る”ところを見せて、信じてもらうしかないよなぁ。
その為にも、早急に学校を建てる場所を決めて、土地を手に入れるしかない!!

「モハズさん! とりあえず、学校を建てる場所を探したいと思います。調査チームでそういった事に詳しい方はいらっしゃいませんか?」

モハズさんが腕を組み、「んー」と考えだす。

「あっ! 先輩でいるいる。確か一昨日かな? 調査から帰ってきてるから会えるよ! すぐに会う?」
「はっ、はい! お願いします!!」

私の返事を聞いたモハズさんが「オーケー! ついてきて!」と言って、軽快に歩き出した。

は、早い! すごい行動力!!
私たちも急いで、モハズさんの後を追う。

「これから紹介する人は“ローさん”っていう人なんだけど、土地マニアでさ。『生きてる間に色んな土地を見てみたい』からって、調査チームに入った人なんだ」

土地マニア……前の世界にもそういう呼ばれ方をする人たちはいたけど、似たようなものかな?
世の中にはいろんな人がいるんだなぁ。

「調査チームにはさ、調査結果を報告する場所があるんだよね。ここから歩いて20分くらいのところかな? そこに行けば、ローさんに会えると思うよー。それと──」

前を進むモハズさんが、くるっと後ろを向き、私の方を見る。

「さっきの学校に通う子たちにも手伝ってほしいっていう話。私が通ってた学校なら紹介できると思うよ!」

得意げに笑うと、モハズさんは再び歩き始めた。

「本当ですか!?」
「うん。私の通ってた学校って、働く為に必要な知識を学ぶだけの学校だから、15歳で卒業なんだよね。だから、ほとんどの子が学校を卒業したら働くはずだよー」

まさに協力してほしいと思っている子たちがいる学校なんだ!

「ありがとうございます。学校を建てる場所が決まったら、ぜひ紹介してほしいです!」
「オーケー! まかせて!」

よかった。
上手くいくかは分からないけど、モハズさんのお陰で紹介はしてもらえそう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~

白金ひよこ
恋愛
 熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!  しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!  物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?

 殺陣を極めたおっさん、異世界に行く。村娘を救う。自由に生きて幸せをつかむ

熊吉(モノカキグマ)
ファンタジー
こんなアラフォーになりたい。そんな思いで書き始めた作品です。 以下、あらすじとなります。 ────────────────────────────────────────  令和の世に、[サムライ]と呼ばれた男がいた。  立花 源九郎。  [殺陣]のエキストラから主役へと上り詰め、主演作品を立て続けにヒットさせた男。  その名演は、三作目の主演作品の完成によって歴史に刻まれるはずだった。  しかし、流星のようにあらわれた男は、幻のように姿を消した。  撮影中の[事故]によって重傷を負い、役者生命を絶たれたのだ。  男は、[令和のサムライ]から1人の中年男性、田中 賢二へと戻り、交通警備員として細々と暮らしていた。  ささやかながらも、平穏な、小さな幸せも感じられる日々。  だが40歳の誕生日を迎えた日の夜、賢二は、想像もしなかった事態に巻き込まれ、再びその殺陣の技を振るうこととなる。  殺陣を極めたおっさんの異世界漫遊記、始まります! ※作者より  あらすじを最後まで読んでくださり、ありがとうございます。  熊吉(モノカキグマ)と申します。  本作は、カクヨムコン8への参加作品となります!  プロット未完成につき、更新も不定期となりますが、もし気に入っていただけましたら、高評価・ブックマーク等、よろしくお願いいたします。  また、作者ツイッター[https://twitter.com/whbtcats]にて、製作状況、おススメの作品、思ったことなど、呟いております。  ぜひ、おいで下さいませ。  どうぞ、熊吉と本作とを、よろしくお願い申し上げます! ※作者他作品紹介・こちらは小説家になろう様、カクヨム様にて公開中です。 [メイド・ルーシェのノルトハーフェン公国中興記]  偶然公爵家のメイドとなった少女が主人公の、近世ヨーロッパ風の世界を舞台とした作品です。  戦乱渦巻く大陸に、少年公爵とメイドが挑みます。 [イリス=オリヴィエ戦記]  大国の思惑に翻弄される祖国の空を守るべく戦う1人のパイロットが、いかに戦争と向き合い、戦い、生きていくか。  濃厚なミリタリー成分と共に書き上げた、100万文字越えの大長編です。  もしよろしければ、お手に取っていただけると嬉しいです!

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

異世界王女に転生したけど、貧乏生活から脱出できるのか

片上尚
ファンタジー
海の事故で命を落とした山田陽子は、女神ロミア様に頼まれて魔法がある世界のとある国、ファルメディアの第三王女アリスティアに転生! 悠々自適の贅沢王女生活やイケメン王子との結婚、もしくは現代知識で無双チートを夢見て目覚めてみると、待っていたのは3食草粥生活でした… アリスティアは現代知識を使って自国を豊かにできるのか? 痩せっぽっちの王女様奮闘記。

鬼神転生記~勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。~

月見酒
ファンタジー
高校に入ってから距離を置いていた幼馴染4人と3年ぶりに下校することになった主人公、朝霧和也たち5人は、突然異世界へと転移してしまった。 目が覚め、目の前に立つ王女が泣きながら頼み込んできた。 「どうか、この世界を救ってください、勇者様!」 突然のことに混乱するなか、正義感の強い和也の幼馴染4人は勇者として魔王を倒すことに。 和也も言い返せないまま、勇者として頑張ることに。 訓練でゴブリン討伐していた勇者たちだったがアクシデントが起き幼馴染をかばった和也は命を落としてしまう。 「俺の人生も……これで終わり……か。せめて……エルフとダークエルフに会ってみたかったな……」 だが気がつけば、和也は転生していた。元いた世界で大人気だったゲームのアバターの姿で!? ================================================ 一巻発売中です。

異世界に来ちゃったよ!?

いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。 しかし、現在森の中。 「とにきゃく、こころこぉ?」 から始まる異世界ストーリー 。 主人公は可愛いです! もふもふだってあります!! 語彙力は………………無いかもしれない…。 とにかく、異世界ファンタジー開幕です! ※不定期投稿です…本当に。 ※誤字・脱字があればお知らせ下さい (※印は鬱表現ありです)

聖女だけど、偽物にされたので隣国を栄えさせて見返します

陽炎氷柱
恋愛
同級生に生活をめちゃくちゃにされた聖川心白(ひじりかわこはく)は、よりによってその張本人と一緒に異世界召喚されてしまう。 「聖女はどちらだ」と尋ねてきた偉そうな人に、我先にと名乗り出した同級生は心白に偽物の烙印を押した。そればかりか同級生は異世界に身一つで心白を追放し、暗殺まで仕掛けてくる。 命からがら逃げた心白は宮廷魔導士と名乗る男に助けられるが、彼は心白こそが本物の聖女だと言う。へえ、じゃあ私は同級生のためにあんな目に遭わされたの? そうして復讐を誓った心白は少しずつ力をつけていき…………なぜか隣国の王宮に居た。どうして。

転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました

空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。 結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。 転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。 しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……! 「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」 農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。 「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」 ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)

処理中です...