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中等部 編
14歳、波乱の幕開け(2/4)
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「──っ、アリア!!」
テントの入り口から誰かが飛び込んでくる。
この声は……オーンだ!!
オーンがモハズさんの手を掴み、私の首から力ずくで引き剥がした。
邪魔が入った事に腹を立てたのか、モハズさんが「邪魔、邪魔、邪魔」と低い声で叫びながら、次はオーンへと飛び掛かる。
攻撃をかわすと、オーンは素早い動きでモハズさんの喉の下あたりに掌底を入れた。
モハズさんが仰け反り、バランスを崩したところを狙って、今度は首に“トン”と手刀を入れる。
オーンの反撃によってモハズさんは気絶したらしく、私の横に倒れたまま動かなくなった。
気を失っている事を確認すると、オーンは半分崩れ掛けたテントを縛っていた紐をほどき、その紐でモハズさんの手足を縛りつけた。
「これで目を覚ましても大丈夫、と。……アリア! 大丈夫!?」
呆然としていた私はオーンの言葉で、ハッと意識を取り戻した。
途端に、“助かった”という安心感と“死んでいたかもしれない”という恐怖で、自然と涙が溢れ出し、体がガクガクと震え始める。
自分の意思に反して、全く震えが止まらない。
それを見たオーンが私をギュッと抱き寄せ「もう大丈夫だから。大丈夫だから」と繰り返し頭をなでた。
オーンが叫んだ事で他のメンバーも起きたらしく、遅れて私たちのところへとやってきた。
テントは完全に崩れてしまい、モハズさんは気絶した状態で縛られている。
その惨状を見たサウロさんが声を張り上げた。
「な、何が起きたんだ!!?」
オーンが私を抱き寄せたまま、サウロさんの質問に答える。
「経緯は分かりませんが、僕が駆けつけた時、モハズさんがアリアを襲い……殺そうとしてました」
「なんだって! モ、モハズが!? アリア! 何があったんだ?」
「サウロさん、すいません。アリアが落ち着くまで待ってくれませんか? 首を……首を絞められて混乱していると思うんです」
オーンが私を驚かせないようにと、静かな声で説明をしてくれている。
ずっと「大丈夫」と頭をなで続けてくれたからか、本当に少しずつではあるけれど落ち着いてきた。
サウロさんが驚愕しつつも、冷静にオーンと会話を続けている。
「なんでこんな事に……」
「これはあくまで予測なんですが……僕は“嫌な気配”を感じて目が覚めたんです。気になってテントの外に出たら、その“嫌な気配”はどんどんと強くなっていきました。より強い気配を感じる方へと目を向けた時、一瞬でしたが、倒れ込んで苦しそうな顔をしたアリアが見えたんです」
私が必死にテントから出ようとした時だ。
オーンはあの瞬間を見逃す事なく、助けに来てくれてたんだ。
「ただ事じゃないと思い、急いでアリアのテントに入ったらモハズさんがアリアを襲っていたんです」
「そうだったのか……」
「はい。そこで考えたんですが、なぜ僕だけが“嫌な気配”に気がついたか……」
説明しようとするオーンの服の袖を軽く引っ張る。
できれば私もちゃんと話を聞きたい。
「オーン……ありがとう。もう大丈夫。私にも聞かせて」
「……分かったけど、無理はしないで」
私はこくんと頷き、オーンの横に腰を下ろした。
「改めて、なぜ僕だけが“嫌な気配”に気がついたか……ここからは僕の推測になります。僕は皆さんご存知の通り《光の魔法》が使えます。《光の魔法》は《闇の魔法》にかけられた人を浄化する事もできるので、僕だけが《闇の魔法》に気づく事ができたのではないか? と思っています」
「なるほどな」
サウロさんや他のメンバーも、頷きながらオーンの説明に耳を傾けている。
「ただ《闇の魔法》を使って人を操る行為は、《禁断の魔法》になります。禁断という事もあり、僕は今まで《闇の魔法》で操られている人を見た事がありません。なので、この考えはあくまで推測に過ぎないのです」
「今回の調査チームは若いメンバーが集まっている。その為、この中で《闇の魔法》に直接ふれた経験のある人間が1人もいない。推測を立証しようにも、確認するすべがないんだ……」
どうすればいいか、 サウロさんは色々と考えているようだ。
そんな中、オーンが1つの提案を持ちかけた。
「《闇の魔法》を浄化させる魔法、使った事はないですが、試してみてもいいですか?」
「モハズやお前に危険は?」
「危険はありません。……ただ使った事がないので、仮にモハズさんが《闇の魔法》に操られていたとしても、僕の魔法で全て浄化する事ができたのかどうか分からないんです」
つまり、魔法が成功したとしても、今のモハズさんとそのまま旅をするのは危険って事か……。
「そうか。それでも試してもらえるか?」
「分かりました」
オーンとサウロさんがモハズさんの縛られている方へと近づいていく。
他のみんなと少し離れた場所で見守っていると、ちょうど目を覚ましたモハズさんが縛られながらも暴れ始めた。
サウロさんがすぐに「ビアン!」と叫ぶ。
ビアンさんが急いでモハズさんの元へと走り、サウロさんと一緒に押さえつけた。
「今の内にやってくれ」
「は、はい!」
オーンがモハズさんに向かって両手をかざす。
すると、手のひらがパァッと輝き出し、その光がモハズさんの体を包み込んだ。
テントの入り口から誰かが飛び込んでくる。
この声は……オーンだ!!
オーンがモハズさんの手を掴み、私の首から力ずくで引き剥がした。
邪魔が入った事に腹を立てたのか、モハズさんが「邪魔、邪魔、邪魔」と低い声で叫びながら、次はオーンへと飛び掛かる。
攻撃をかわすと、オーンは素早い動きでモハズさんの喉の下あたりに掌底を入れた。
モハズさんが仰け反り、バランスを崩したところを狙って、今度は首に“トン”と手刀を入れる。
オーンの反撃によってモハズさんは気絶したらしく、私の横に倒れたまま動かなくなった。
気を失っている事を確認すると、オーンは半分崩れ掛けたテントを縛っていた紐をほどき、その紐でモハズさんの手足を縛りつけた。
「これで目を覚ましても大丈夫、と。……アリア! 大丈夫!?」
呆然としていた私はオーンの言葉で、ハッと意識を取り戻した。
途端に、“助かった”という安心感と“死んでいたかもしれない”という恐怖で、自然と涙が溢れ出し、体がガクガクと震え始める。
自分の意思に反して、全く震えが止まらない。
それを見たオーンが私をギュッと抱き寄せ「もう大丈夫だから。大丈夫だから」と繰り返し頭をなでた。
オーンが叫んだ事で他のメンバーも起きたらしく、遅れて私たちのところへとやってきた。
テントは完全に崩れてしまい、モハズさんは気絶した状態で縛られている。
その惨状を見たサウロさんが声を張り上げた。
「な、何が起きたんだ!!?」
オーンが私を抱き寄せたまま、サウロさんの質問に答える。
「経緯は分かりませんが、僕が駆けつけた時、モハズさんがアリアを襲い……殺そうとしてました」
「なんだって! モ、モハズが!? アリア! 何があったんだ?」
「サウロさん、すいません。アリアが落ち着くまで待ってくれませんか? 首を……首を絞められて混乱していると思うんです」
オーンが私を驚かせないようにと、静かな声で説明をしてくれている。
ずっと「大丈夫」と頭をなで続けてくれたからか、本当に少しずつではあるけれど落ち着いてきた。
サウロさんが驚愕しつつも、冷静にオーンと会話を続けている。
「なんでこんな事に……」
「これはあくまで予測なんですが……僕は“嫌な気配”を感じて目が覚めたんです。気になってテントの外に出たら、その“嫌な気配”はどんどんと強くなっていきました。より強い気配を感じる方へと目を向けた時、一瞬でしたが、倒れ込んで苦しそうな顔をしたアリアが見えたんです」
私が必死にテントから出ようとした時だ。
オーンはあの瞬間を見逃す事なく、助けに来てくれてたんだ。
「ただ事じゃないと思い、急いでアリアのテントに入ったらモハズさんがアリアを襲っていたんです」
「そうだったのか……」
「はい。そこで考えたんですが、なぜ僕だけが“嫌な気配”に気がついたか……」
説明しようとするオーンの服の袖を軽く引っ張る。
できれば私もちゃんと話を聞きたい。
「オーン……ありがとう。もう大丈夫。私にも聞かせて」
「……分かったけど、無理はしないで」
私はこくんと頷き、オーンの横に腰を下ろした。
「改めて、なぜ僕だけが“嫌な気配”に気がついたか……ここからは僕の推測になります。僕は皆さんご存知の通り《光の魔法》が使えます。《光の魔法》は《闇の魔法》にかけられた人を浄化する事もできるので、僕だけが《闇の魔法》に気づく事ができたのではないか? と思っています」
「なるほどな」
サウロさんや他のメンバーも、頷きながらオーンの説明に耳を傾けている。
「ただ《闇の魔法》を使って人を操る行為は、《禁断の魔法》になります。禁断という事もあり、僕は今まで《闇の魔法》で操られている人を見た事がありません。なので、この考えはあくまで推測に過ぎないのです」
「今回の調査チームは若いメンバーが集まっている。その為、この中で《闇の魔法》に直接ふれた経験のある人間が1人もいない。推測を立証しようにも、確認するすべがないんだ……」
どうすればいいか、 サウロさんは色々と考えているようだ。
そんな中、オーンが1つの提案を持ちかけた。
「《闇の魔法》を浄化させる魔法、使った事はないですが、試してみてもいいですか?」
「モハズやお前に危険は?」
「危険はありません。……ただ使った事がないので、仮にモハズさんが《闇の魔法》に操られていたとしても、僕の魔法で全て浄化する事ができたのかどうか分からないんです」
つまり、魔法が成功したとしても、今のモハズさんとそのまま旅をするのは危険って事か……。
「そうか。それでも試してもらえるか?」
「分かりました」
オーンとサウロさんがモハズさんの縛られている方へと近づいていく。
他のみんなと少し離れた場所で見守っていると、ちょうど目を覚ましたモハズさんが縛られながらも暴れ始めた。
サウロさんがすぐに「ビアン!」と叫ぶ。
ビアンさんが急いでモハズさんの元へと走り、サウロさんと一緒に押さえつけた。
「今の内にやってくれ」
「は、はい!」
オーンがモハズさんに向かって両手をかざす。
すると、手のひらがパァッと輝き出し、その光がモハズさんの体を包み込んだ。
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