2 / 27
凍て付いた夜
しおりを挟む
12月に入って生徒会の年内の業務も終業式のみとなった。 生徒たちの不安定な状態はピークになるが、今年は一年生執行委員を風紀の応援に出す余裕が出来た。 その所為で夕麿にも寮への道のみだが、毎日、誰かが付くようになった。
「降り出しそうな空ですね? 急ぎませんか、生徒会長?」
同じ2年生の風紀委員が、夕麿を振り返って言う。
頷きながら仄暗い空を見上げた。 ここのところ見えている宵の明星も、雨雲に隠れて見えない。夕麿は心がざわめくのを感じていた。
…………また、雨が降る
渦巻く闇が心にわき上がり身体まで重苦しい。 風紀委員に誘われて踏み出した一歩が辛い。 寮への道を進むうちに、ポツポツと空が泣き出した。
「生徒会長?」
夕麿が立ち止まって、空を見上げたまま動かなくなった。 風紀委員は委員長である貴之から、雨の時には特に注意をするように言われてい彼には板倉 正己のかけた暗示の後遺症で、雨になると夕麿の様子が変わる…とだけ、伝えられていたのである。
「失礼します、生徒会長!」
彼は夕麿の手を取って足早に歩き出した。 夕麿は抗わずに手を引かれるままに無言で無表情について来る。
夕麿の身分から言っても手を握るなど普段なら絶対に許されないであろう。 夕麿は余程気を許さない限り、他者に触れられるのを嫌う傾向があり、それは同級生ならば当たり前に知っている事だったましてや、今や皇家の貴種の伴侶なのだ。 気軽に触れて良い相手ではないだがあのままにしていると何かとんでもない事態になりそうで、ともかく今は雨を避けなければそれだけを考える事にした。
風紀委員は一般生徒で特待生寮に入る事は出来ない。 辿り着いたものの入口のセキュリティーで戸惑っていると、夕麿が当たり前のように解除して中に入って行った。
「あ…あの、生徒会長?」
夕麿は振り返りもせずに寮の中に姿を消した。
「参ったなあ…どうしょう? まあ、寮までは無事に送った訳だし…まあいいかな?」
彼はすっかり濡れてしまった制服を見て、慌てて自分の部屋のある一般生徒寮へと駆け出した。
「武さま、また雨です」
貴之に言われて武は武道館の窓から空を見た。鞄に駆け寄って携帯を出し、夕麿の携帯にコールする。発信音はしているが繋がらない。その向こうで貴之が、風紀委員会に問い合わせている。
何度コールしても夕麿は出ない。
「武さま、会長は出られませんか?」
「うん…」
「一応、寮にお送りしたそうですが」
「そう。また、マナーにしてピアノ弾いてるのかな?夢中になるとピアノの音以外、殆ど耳に入らないから」
風紀委員が送ったなら大丈夫だろうと、胸にわき上がった不安を否定した。
「本日はもう、おやめになられますか?」
「う~ん…あと2回しか稽古出来ないし…もう少しお願いします、貴之先輩」
「承知しました」
貴之は強い。多分手加減してくれている筈なのに、手首を軽く掴まれるとあっさりと投げられる。同じようにやってもびくともしない。
武道には基本になる立ち方がある。これで立つと少々の力で突いてもその身体が揺らぐ事すらない特に合気道は相手の気を読んでその力を利用する。鍛練が進めば触れずに相手を退けられるし、害意を持って近付く者をある程度見分けられる。
柔道はどうしてもその性質上、体型が変化する。空手は手に独特の胼胝が出来る。合気道ではそういう変化がない…と言うのも夕麿が承諾した理由だった。確かに皇家の貴種には似つかわしくはないかもしれない。
小柄でどちらかと言うと可愛い系の武には似合わないとは思う。
夕麿の妙な拘りに苦笑すら覚えたが、体型から判断してもその性格からしても、武には合気道が良いと判断したのも確かである。教えてみると素直な性格の武は、乾いた砂がすぐさま水を吸収するように、合気道の精神を身に付けていく。こちらの動きに対する反応が愕然と上がって来ているのだ。護身術としてでなく武道として、本格的に学べば相当の使い手になるだろう。教える側としても面白いという感覚が出て来た。今までも風紀委員になった生徒に、簡単な対処法として教えた事はあったが、ここまでの相手にはあった事がない。
武は昨年と今年の夕麿のピアノの音の違いを聞き分けたり、生徒会室で紛失物を誰よりも的確に発見したり、皇家の霊感のようなものを発揮する事がある。
痛い……頭が割れるように痛い……触れようとするがその手が動かない。無理に動かそうとすると、擦れたような痛みと圧迫感を感じる。
「やっとお目覚めか?」
その声にようやく意識が浮上して重い目蓋を開けた。
「!!」
目の前の男と自分の状態に息を呑んだ。全裸で腕は縛られてベッドに固定されている。下肢は開かれ男の身体が間にあった。
「多々良…正恒…」
恐怖に掠れる声で唸るように言うと、激しい音と共に衝撃を受けてぐらりと視界が揺れた。口の中に血の味が広がる。どうやら頬を強く打たれたらしい。
「恩師を呼び捨てとは良い度胸だな、夕麿?」
「…誰が…恩師ですか…教え子を酷い目に…遭わせたあなたには…相応しくありません」
「けッ、デカくなったのは図体だけじゃなく、態度もか?」
「生憎…あれから、4年も経過…してますから」
激しい頭痛は治まらない。自分に何が起こったのか……確か…ドアのセキュリティー・ロックを解除して開けた瞬間、頭に衝撃を受けて意識が途切れた。
「随分と乱暴ですね…」
「そうでもしないとな昔はチビだったから押さえ込むのは簡単だったんだかなぁ」
「それは生憎さま。
で…何をなさりに来たんです、多々良先生?」
再び衝撃が視界を揺らす。相手を刺激してはいけない…というマニュアルをこの男相手だけは守りたくない。さもないと恐怖に叫び出しそうになる。
「この状況で憎まれ口を叩くとはたいしたもんだな」
「お誉めいただいて光栄です…」
再び衝撃。
「顔はやめていただけませんか、泣くお方がおりますので」
「皇家の貴種か?」
「よくご存知で」
「お前がそっち側になるとはな。昔はなかなか泣き顔も喘ぎ声も可愛いかったのに」
「……あの後、声変わりしましたから」
多々良の手が身体を撫で回す不快さに肌が粟立つ。気持ちが悪い。この手の与える愛撫に溺れた事など、存在しなかった幻のように感じる一方で、これがまぎれもない事実であるのも頭は理解している。
「あなたを、手引きしたのは横井ですね」
「まあな」
最初から何となく不快感を覚える男だった。だから警戒して出来るだけ武に近付けないように心配りをしていた。それでも自分の甘さを後悔する。
「ちなみにここのあちこちに、盗聴器を仕掛けてある。なかなか垂涎ものだったぜ、夜毎の睦言は」
「それはまた悪趣味な…」
武の可愛いい声を聴かれたかと思うと怒りに身が震える。
「噂じゃあ全然ダメになって、まるっきりお綺麗な生活だって聞いてたのに、なかなかお熱い夜で驚いたぜ?」
「今でもダメですよ、あなたのお陰で。板倉 正己で確認されたのではなかったのですか?受け入れる方は近頃試していませんのでわかりませんが、少なくとも私は一人にしか反応しません」
こんな会話は時間稼ぎにしかならない。だがこのままでは武が帰って来てしまう。
「さて、薬を使ってもそれは言えるかな?」
「ッ…卑怯な!」
「親切心さ。どうせヤられるなら、気持ちイイ方がよくはないか?」
淡い緑色の液体が入った注射器が、これ見よがしに突き付けられた。
「天国を味合わせてやるぜ、夕麿」
夕麿の顔にはっきりと怯えが浮かんだ。苦痛の中で陵辱される方がどれほど良いだろう?自分は暴力を受けているとまだ感じられる。正気を保っていられる。だが催淫剤は心まで麻痺させる。与えられる快楽に溺れて貪る事しか出来なくなる。夕麿自身は使われた経験はない。だが武が司に使われた時に抱いたから状態はわかっていた。性的経験が皆無だった武が、生まれて初めての行為にどのように溺れたのか。初めての挿入の痛みすら快感となり、恐怖も羞恥も抱いてはいなかった。想う相手の腕の中で見せるならばまだ救いはある。
「痛ッ…ああッ!」
針を身体に突き立てられ薬剤を注入される不快さに歯を食いしばる。
「すぐに効いてくる。
まあ、その前に無理やりっていうのもそそるな」
無理やりに脚を折り曲げられ、普段、武との行為に使用しているジェルが蕾に塗られた悲鳴を上げてもがくが、しっかりと押さえ付けられていた。蕾に熱を持ったモノが触れたと思った次の瞬間、一気に突き入れられる。
「ぐッ…ああああッ!」
あの事件以来、誰にも蹂躙されていない蕾は、固く閉じて無理やりの挿入に、引き裂かれるような痛みを伴って男のモノを受け入れた。
痛みと圧迫感に内股が痙攣する。
喉が鳴り涙が溢れ落ちた。
身体よりも心の痛みの方が大きかった。
「ああ…許して…下さい…武…」
絶望が夕麿の心を満たしてい愛しい面影が頭を過ぎった瞬間、心臓が大きく跳ねた。言い知れぬ熱が全身を包む。
「あッ…イヤ…ああッ…!!」
抗えない懊悩が身を焦がし始めた……
武と貴之が寮への帰路についた時には、既に雨は止んだ後だった。降り出した時間からは2時間程が過ぎていた。
武は先程からずっと夕麿の携帯に、コールを続けているがやはり出ない。
「貴之先輩、おかしい…雨は止んだのに夕麿が出ない」
「急ぎましょう」
雨が降り出した時に戻れば良かった。武も貴之も同じ気持ちだった。寮の建物に飛び込み、エレベーターで上がる。特別室へのオートロックを通過した途端、武が立ち止まった。
「武さま?」
武は両腕で自分を抱くようにし、身震いしながら言った。
「やだ…何かここ、ぞわぞわする…」
貴之は小声で動かないように言って、特別室の扉の前に行く。足元を見回すと扉の際に赤黒いものが落ちていた。屈み込んで指でなぞると、半乾きのそれが指にべっとりと着いた。血だ。
目の隅で何かが光った。手を伸ばして拾い上げて、叫びそうになる声を必死で噛み殺した。落ちていたのは生徒会長が付ける記章だった。夕麿に何かあったのは間違いない。貴之は何か問いたげな武に黙るように合図して自分の部屋へ招き入れた。
「貴之先輩…何が…あったの?」
武の声が震えていた。
「これが落ちていました」
記章を見せた。
「生徒会長の記章!?」
「よろしいですか、武さま?特別室の様子を確認して来ます。どうかここでお待ち下さい。あちらの扉はセキュリティーの為に、ロックが解除されると中に知らせるシステムなのはご存知ですね?」
「じゃあ…どうやって?」
貴之は特別室側の壁に近付くと、壁の一部を指先で数回叩いた。するとその部分が音もなく開いて、中から番号を入力するタイプのロックが現れた。
「これ…」
「義勝たちの部屋も同じシステムになっております」
貴之は答えながら自室のセキュリティー・カードをリーダーに読ませ暗証番号を入力した。壁に見えていた場所に人が一人通れるくらいの大きさで開いた。覗き込むとその向こうに階段が見えた。
「ここは武さまのお部屋に繋がっています。良いですね?ここにいらして下さい。あなたが不用意に動かれると、夕麿さまを危険にさらす可能性があります」
武は息を呑んで頷いた。本当は貴之を押しのけて飛び込んで行きたい。だが無謀だとわかっているから、貴之の言葉に今は従う。先程、廊下で感じた感覚が心の中で警報を鳴らしていた。
貴之はすぐに戻って来た。 表情は強張り真っ青な顔で。すぐさま抜け道を閉じて携帯を手にした。
「義勝、今どこにいる?………わかった。 非常事態だ、すぐそっちへ行く。……ああ、事情はそっちで」
電話を切ると武にもう一度言う。
「すぐに戻ります。 ここにいて下さい」
貴之は武をソファに座らせて、急ぎ足で部屋を出て行き、しばらくして雅久と共に戻って来た。
「武さま、あなたに危険な事をお願いしなければなりません」
「うん、何でも言って。夕麿を助けられるなら何だってする」
「良いですか、普通に何も気付かないふりをして、玄関扉から入って下さい。 何があっても何をご覧になっても、抵抗をしないで俺と義勝を待って下さい。タイミングを計って飛び込みますが…チャンスは一度しかありません」
「わかった」
「雅久、私が入って3分後に武さまを」
「わかりました」
雅久は時計を見つめて頷いた。 貴之は義勝に電話をかけて告げた。
「今からだ」 と。
貴之が入って抜け道は閉じられた。 雅久は武を抱き締めたままで時計を見つめている。
3分経過した。
武は鞄を手に深呼吸して貴之の部屋を出た。自分たちの部屋の扉の前に立ってもう一度深呼吸をしてから、セキュリティー・ロックを解除した。中は静まり返っていた。 靴を脱いでリビングのドアを開ける。
「ただいま。あれ、夕麿?」
リビングのソファに夕麿の鞄が、投げ出すように置かれていた。
「夕麿、上?」
螺旋階段を上がると背後から抱き締められた。
「…横井…」
「おとなしくなさった方がよろしいですよ、武さま。さもないと、あの男は夕麿さまに何をするかわかりませんから」
横井の言う【あの男】が誰を指すのか、それは聞き返さなくてもわかる。
「お前が…手引きしたのか…夕麿はどこだ…」
「おとなしく従って下されば、すぐに会わせて差し上げます」
横井はそう言うと、武の腕を後ろに回して、粘着テープを巻いて拘束した。
「夕麿さまは寝室ですよ。さあ、参りましょう」
左肩を掴まれて寝室へと歩かされる。
心臓が早鐘のように鳴っていた。
どれほどの時間が経過したのか。
どれほどイかされたのか。
体内で荒れ狂う欲望が、意識を混濁させたのは最初だけだった。すぐに意識は明確なのに、身体の懊悩はおさまらないと言う、最も屈辱的な状態に陥った。
縛られた両手は既に感覚がない。喘がされ続けて声も掠れて来た。
多々良はただイかせる事に飽きて、今は夕麿のモノを根元で戒めて、身悶える様を愉しんでいた。
苦しい……
挫けそうな心と闘うだけで、体力が消耗していく。首を動かすと頭に痛みが走る。皮肉な事にその痛みが、夕麿が懊悩に屈服するのをトドメる役目をしている。だが同時に意識が朦朧とするのも、その痛みの原因らしい怪我だとも感じていた髪や頭の下のシーツの感触から、出血しているらしい。
幾ら何でもそろそろ武が帰って来る時間になっている筈だ。横井の姿がないところを見ると、どこかで待ち伏せているに違いない。どうか異変に気付いて欲しい。武だけは…守りたい。歯を噛み締めて考える。武にどうすれば危害が及ばずにすむのか…そんな事を考えていると、また頬を打たれた。
「痛ッ…」
「何を考えてる?まだそんな余裕があるのか。たいしたもんだな、夕麿」
何か言い返してやろうと睨み返した瞬間、欲望にぷっくりと勃ち上がっている乳首に、荒々しく爪をたてられ仰け反って戦慄いた。
「ひィ…あッあッ…」
痛みに遠退いていた懊悩が、再び燃え上がり始めた。多々良はニヤリと笑い、抽挿を激しくする。
「ああッ…いィ…くあッ…」
嬌声が止められない。
肉壁は貪欲に快楽を求めて収縮して絡み付き、出口のない官能を次々と生み出していく。余りの快感に意識が再び混濁して、ただ貪るだけの状態に夕麿を追い込んで行った。多々良は夕麿が乱れる様を声をあげて、嗤いながら陵辱し続けていた。
開いた扉から飛び出して来たのは、嗤い声と悲鳴のような嬌声だった。思わず立ち竦む武を、横井が突き飛ばすように室内へと入らせた。
寝室の無惨な光景に武は小さく悲鳴を上げた。
多々良はそれに気付いて動きを止め、強過ぎる官能に翻弄されている夕麿の頬を打った。
「あッ痛ッ…!」
「夕麿、お前の可愛い武さまがお帰りになったぜ」
「た…け…る…?」
混濁した意識は言葉の意味をすぐには理解出来ないでいた。
「!?
武…!」
「夕麿…!」
悲痛な声で呼ばれ夕麿はもがいた。
「往生際の悪いおとなしくしろ、夕麿!」
激しい音を立てて夕麿が頬を打たれた。
「やめろ!」
ベッドの上の夕麿は目を覆いたくなるような惨い姿だった。幾度も叩かれたり殴られた顔は腫れ上がり、何ヶ所も内出血を起こしていた。口からも鼻からも血が流れ、頭部の傷からの出血は髪を濡らしシーツを紅く染め、放出した体液が腹と胸に飛び散り望まぬ快楽の跡を示していた。
武はベッドサイドのテーブルに置かれた注射器を見て全てを理解した。
「卑怯者…」
口惜しさに歯軋りする武に、多々良は下卑た嗤い声を上げ、意味有り気に夕麿に向き直った。
「さあて、たっぷりと見てもらうんだ、夕麿。昔の男に犯されて、イくところをな!」
根元を戒めていた革紐が解かれ、打ち付けるような激しい抽挿が再開されると、散々に吐精を焦らされていた身体は一溜まりもなかった。体内で出口を求めて渦巻いていた欲望が、一気に燃え上がる。
「ひィッ…やめ…イヤ…武…見ないで…ああッ…ああッ…!!」
縛られた両手が軋むのすら忘れて、大きく仰け反って絶頂に身体が痙攣した。その激しさに残った体力を根こそぎ使い果たしたのか、夕麿はぐったりと意識を手放した。
多々良も夕麿の絶頂に引きずられるように吐精した。
その瞬間、武の部屋からは貴之が、夕麿の部屋からは義勝が飛び出して来た。貴之は多々良を夕麿から引き離すようにして投げ飛ばし、義勝は驚いた横井を武が突き飛ばしたのをねじ上げた。
「夕麿!」
義勝にテープを剥がしてもらって、ベッドに駆け寄り抱き起こそうとした。
「武、落ち着け!無闇に揺するな、頭を怪我してる。すぐに都市警察と救急隊が来る」
「待って…このままじゃ…」
両手を解いて身体を綺麗に拭いて、下肢だけでもと衣類を着せた。
義勝はその間に夕麿の傷の応急処置をする。
貴之は縛り上げた二人を階下に引きずり下ろした。
義勝は意識のない夕麿に呟いた。
「すまない…もっと早く飛び込みたかったんだが…イった時に力が抜けて、どんな人間も隙が出来る。あのタイミングしかなかったんだ…」
「義勝先輩…俺、六条 詠美が執拗に夕麿を狙ったのか、わかった気がする。夕麿を死なせるか、心を壊したかったんだろうと思う」
「…コンプレックスか…夕麿の母親に対する…?」
それなりの事情があったのかもしれないが、夕麿には何の罪も責任もない。
武はそれが許せなかった。
高等部の寮は大騒ぎになった。
事もあろうか、一番セキュリティーが完全な筈の特別室で、事件が発生し生徒会長が救急搬送されたのだ。
都市警察には貴之が、救急車には武と雅久が乗り込んだ。義勝は生徒会執行委員を全員呼び集め、騒動の鎮静の指揮を執った。生徒たちには特別室の雑用を行っていた者が手引きし窃盗に入った。しかし夕麿に発見されて暴行に及び、逃走をしようとしたところを帰って来た武たちに取り押さえられた。
そのように説明した。
夕麿の状態が気になりながらも、副会長として彼に代わって事態を収拾させなければならない。祈るような気持ちで、義勝は高等部に残っていた。
夕麿の傷は二針縫う重傷であったが断層撮影などの結果、脳には影響がない事がわかった。顔の内出血は痣として定着するのを防ぐ為、血液の吸入処置がとられた後、湿布があてられた。意識は処置の最中に回復し、落ち着いて治療を受けているように思えた。
脳に異常がないとわかると、武が次に心配したのは手だった。自分の時のように長期間麻痺すると、ピアノ奏者である夕麿には大きなダメージになる。病室のベッドに横たわる夕麿が、指先を動かすのをじっと見守った。しばらくして夕麿が安堵の溜息を漏らしたのを見て武も肩の力を抜いた。
気が抜けたら涙が溢れて来た。
「夕麿…夕麿…ごめんなさい…ごめんなさい…」
雨が降り始めた時に感じた感覚を、信じて寮に戻っていれば、夕麿がこんな目にあわなかった。後悔が心を満たす。夕麿の不安定さを知っていながら、自分の事を優先した。
「泣かないで下さい、武」
夕麿の指先が武の髪を撫ですぐに離れた。
武が顔上げて何かを言おうとすると、病室のドアがノックされて、雅久と貴之が入って来た。
「会長、退院許可が出ました」
「ありがとう、雅久」
その言葉に武が慌てた。
「ダメだよ、帰るなんて!」
「高等部中が大変な騒ぎになっているそうです。武、私は生徒会長として、騒動を収める為に帰らなければなりません」
そう答えると夕麿は、貴之が手渡した制服に着替え始めたそこにいたのは歴代の生徒会長の中でも、屈指の有能さと言われる夕麿の姿だった。
「わかった、でも無理はしないで?」
「武君、会長が寮に戻られるだけで、騒動は半ば鎮静化すると思います」
傷の痛みに耐えながら病院を出て、夕麿は学院が用意した車で武たちと寮へ向かった。
生徒たちは頭部に包帯を巻いた夕麿を見て悲鳴を上げたが、しっかりとした足取りで特待生寮に入るのを見て、ホッと胸をなで下ろして自室に帰り始めた。
その喧騒の中でそっと、武は貴之に耳打ちした。
「貴之先輩にお願いがあります」
「何でしょうか?」
「後でメールします」
「承知しました」
二人は何事もなかった顔でエレベーターに乗る。扉が閉まり、エレベーターが動き出した途端、気が抜けたのか夕麿がふらついた。慌てて武が支える。リビングのソファに取り敢えず座ると、雅久と貴之は部屋を辞した。
「シャワーを浴びたい」
夕麿の言葉に頷いた。拭っただけの状態では気持ちが悪いだろう。
「頭にかけないようにしないと…手の包帯は解くね」
夕麿の白い手首には、くっきりと縛られた跡がついていた。
「手、俺みたいな状態にならなくて良かった」
労るるように口付けると、夕麿がビクッと身を震わせた。
「後でちゃんと巻き直すからね。
さあ、行こう」
「武…お願いがあります」
「何?」
「私を…離縁して下さい…」
「そんなお願いは聞けない。
ほら、バスルームに行くよ」
いつになく命令口調な言葉ははっきりとした怒気を帯びて、有無を言わせずに夕麿をバスルームに連れて行って、先に夕麿の衣類を剥いで自分も脱いだ戸惑う夕麿を立たせて、シャワーの温度を調節して、ゆっくりとかけていく。
「武…自分で出来ます」
「煩い!」
バスルームに反響する武の怒声に言葉を失う。地中海産の海綿にボディーシャンプーを泡立たせて、夕麿の身体を洗っていく。陵辱された跡が散らばる身体を、愛する者に晒すのは辛い。だが今の武には抗えない。瞳を潤ませて唇を噛み締めている顔が、武の今の気持ちをすべて物語っていた。
「夕麿、壁に手をついて」
「武…それだけは…」
「誰が夕麿の身体拭いたと思ってるの?指で出したけど、不十分だよね?」
「お願いです…それだけは…許して…」
「お願いは聞かないって言ったよね、さっき?それとも俺に命令させたいの?」
皇家の貴種としての命令それは千年以上に亘って仕えて来た貴族の血に、遺伝子レベルで刷り込まれたとしか言いようがない絶対的なものであった。武はそれを通常嫌う。彼には人を人と思わない行為に感じているからだった。
武にしてもただの八つ当たりだとわかってはいた。抑えようのない怒りが沸々と心の中で渦巻いている。夕麿を傷付ける者は、絶対に許さない。必ずこの報いは受けさせる。
だがそれを夕麿には知らせたくない。
それに…少々乱暴に強制的な態度でいないと、今の夕麿は全てを投げ出してしまう。それだけは防ぎたかった。
「どうするの、夕麿?」
震えながら背をむけて壁に手をつく。
「腰を突き出して」
「ああ……」
羞恥の声を漏らすのを無視して、湯をかけながら蕾に指を挿れた。
「くッ…」
声を噛み殺し首を振る。湯が体内に入って来る。
「あ…イヤ…」
体内を掻き回す指に、一層羞恥がわき上がる。湯に混じって残滓が、内股を伝い落ちる感触が気持ち悪い。だが今、自分の中で蠢くのは、愛する武の指なのだと。夕麿は啜り泣きながら懸命に耐えた。
「綺麗になったよ」
その言葉に膝が力を失って、床に座ってしまう。
「出るよ」
差し出された手に縋って立ち、パウダールームに出ても武は夕麿にバスローブを着せ、リビングの包帯を手に寝室へ上がる。誰が整えたのか、先程の事が嘘だったかのように痕跡が全て片付けられていた。武は夕麿をベッドに座らせると、頭部の包帯が濡れていないのを確認してから手の包帯を巻いた。
「武…私の話を聞いて下さい…」
「夕麿は誓ったよね?俺の側にずっといるって」
夕麿の肩を押して、ベッドに横たわらせ、覆い被さった。
「破ったらどうするって、俺は言った?忘れたわけじゃないよね?」
バスローブの紐が抜かれ、裸体が露わになる。
「今、お仕置きが欲しいわけ?」
こんな…武は知らない。今の武はいつもの穏やかな少年の顔をしていなかった。そこにあるのは、一人の男の顔。
初めて見る顔だった。
「出来ればもっと後にしようと思ってたんだけど、夕麿が馬鹿な事を言うから」
傷付いた口腔をいたわるような、優しい口付けをして、武は夕麿を真っ直ぐに見つめた。
「消してあげるよ、あんな奴の痕跡なんか」
「武…?」
「今から夕麿を抱く」
その言葉に夕麿は息を呑んだ。
「イヤ?」
「抱いて…下さい…」
思ってもみない事だった。
頬のガーゼを指先がなぞる。
「俺の夕麿の綺麗な顔を…」
呻くような掠れた声は、愛する者を傷付けられた傷みの声。夕麿は武の背に腕を回して囁いた。
「武…武…怖かった…狂うかと…思いました」
「うん、よく頑張ったね、夕麿」
抱き返すと夕麿は安堵と欲望の入り混じった吐息を吐いた。
もちろん、武には初めての行為である。抱かれる方も夕麿しか知らない。いつもどのように自分が愛されているのかを、懸命に辿りながらになる。
「夕麿…夕麿の中…柔らかくて熱くて…気持ちいい…」
「武…あなたも…熱い…!」
その夜遅くに隣室の良岑 貴之は、武から一通のメールを受け取った。
武の逆襲の合図だった。
「降り出しそうな空ですね? 急ぎませんか、生徒会長?」
同じ2年生の風紀委員が、夕麿を振り返って言う。
頷きながら仄暗い空を見上げた。 ここのところ見えている宵の明星も、雨雲に隠れて見えない。夕麿は心がざわめくのを感じていた。
…………また、雨が降る
渦巻く闇が心にわき上がり身体まで重苦しい。 風紀委員に誘われて踏み出した一歩が辛い。 寮への道を進むうちに、ポツポツと空が泣き出した。
「生徒会長?」
夕麿が立ち止まって、空を見上げたまま動かなくなった。 風紀委員は委員長である貴之から、雨の時には特に注意をするように言われてい彼には板倉 正己のかけた暗示の後遺症で、雨になると夕麿の様子が変わる…とだけ、伝えられていたのである。
「失礼します、生徒会長!」
彼は夕麿の手を取って足早に歩き出した。 夕麿は抗わずに手を引かれるままに無言で無表情について来る。
夕麿の身分から言っても手を握るなど普段なら絶対に許されないであろう。 夕麿は余程気を許さない限り、他者に触れられるのを嫌う傾向があり、それは同級生ならば当たり前に知っている事だったましてや、今や皇家の貴種の伴侶なのだ。 気軽に触れて良い相手ではないだがあのままにしていると何かとんでもない事態になりそうで、ともかく今は雨を避けなければそれだけを考える事にした。
風紀委員は一般生徒で特待生寮に入る事は出来ない。 辿り着いたものの入口のセキュリティーで戸惑っていると、夕麿が当たり前のように解除して中に入って行った。
「あ…あの、生徒会長?」
夕麿は振り返りもせずに寮の中に姿を消した。
「参ったなあ…どうしょう? まあ、寮までは無事に送った訳だし…まあいいかな?」
彼はすっかり濡れてしまった制服を見て、慌てて自分の部屋のある一般生徒寮へと駆け出した。
「武さま、また雨です」
貴之に言われて武は武道館の窓から空を見た。鞄に駆け寄って携帯を出し、夕麿の携帯にコールする。発信音はしているが繋がらない。その向こうで貴之が、風紀委員会に問い合わせている。
何度コールしても夕麿は出ない。
「武さま、会長は出られませんか?」
「うん…」
「一応、寮にお送りしたそうですが」
「そう。また、マナーにしてピアノ弾いてるのかな?夢中になるとピアノの音以外、殆ど耳に入らないから」
風紀委員が送ったなら大丈夫だろうと、胸にわき上がった不安を否定した。
「本日はもう、おやめになられますか?」
「う~ん…あと2回しか稽古出来ないし…もう少しお願いします、貴之先輩」
「承知しました」
貴之は強い。多分手加減してくれている筈なのに、手首を軽く掴まれるとあっさりと投げられる。同じようにやってもびくともしない。
武道には基本になる立ち方がある。これで立つと少々の力で突いてもその身体が揺らぐ事すらない特に合気道は相手の気を読んでその力を利用する。鍛練が進めば触れずに相手を退けられるし、害意を持って近付く者をある程度見分けられる。
柔道はどうしてもその性質上、体型が変化する。空手は手に独特の胼胝が出来る。合気道ではそういう変化がない…と言うのも夕麿が承諾した理由だった。確かに皇家の貴種には似つかわしくはないかもしれない。
小柄でどちらかと言うと可愛い系の武には似合わないとは思う。
夕麿の妙な拘りに苦笑すら覚えたが、体型から判断してもその性格からしても、武には合気道が良いと判断したのも確かである。教えてみると素直な性格の武は、乾いた砂がすぐさま水を吸収するように、合気道の精神を身に付けていく。こちらの動きに対する反応が愕然と上がって来ているのだ。護身術としてでなく武道として、本格的に学べば相当の使い手になるだろう。教える側としても面白いという感覚が出て来た。今までも風紀委員になった生徒に、簡単な対処法として教えた事はあったが、ここまでの相手にはあった事がない。
武は昨年と今年の夕麿のピアノの音の違いを聞き分けたり、生徒会室で紛失物を誰よりも的確に発見したり、皇家の霊感のようなものを発揮する事がある。
痛い……頭が割れるように痛い……触れようとするがその手が動かない。無理に動かそうとすると、擦れたような痛みと圧迫感を感じる。
「やっとお目覚めか?」
その声にようやく意識が浮上して重い目蓋を開けた。
「!!」
目の前の男と自分の状態に息を呑んだ。全裸で腕は縛られてベッドに固定されている。下肢は開かれ男の身体が間にあった。
「多々良…正恒…」
恐怖に掠れる声で唸るように言うと、激しい音と共に衝撃を受けてぐらりと視界が揺れた。口の中に血の味が広がる。どうやら頬を強く打たれたらしい。
「恩師を呼び捨てとは良い度胸だな、夕麿?」
「…誰が…恩師ですか…教え子を酷い目に…遭わせたあなたには…相応しくありません」
「けッ、デカくなったのは図体だけじゃなく、態度もか?」
「生憎…あれから、4年も経過…してますから」
激しい頭痛は治まらない。自分に何が起こったのか……確か…ドアのセキュリティー・ロックを解除して開けた瞬間、頭に衝撃を受けて意識が途切れた。
「随分と乱暴ですね…」
「そうでもしないとな昔はチビだったから押さえ込むのは簡単だったんだかなぁ」
「それは生憎さま。
で…何をなさりに来たんです、多々良先生?」
再び衝撃が視界を揺らす。相手を刺激してはいけない…というマニュアルをこの男相手だけは守りたくない。さもないと恐怖に叫び出しそうになる。
「この状況で憎まれ口を叩くとはたいしたもんだな」
「お誉めいただいて光栄です…」
再び衝撃。
「顔はやめていただけませんか、泣くお方がおりますので」
「皇家の貴種か?」
「よくご存知で」
「お前がそっち側になるとはな。昔はなかなか泣き顔も喘ぎ声も可愛いかったのに」
「……あの後、声変わりしましたから」
多々良の手が身体を撫で回す不快さに肌が粟立つ。気持ちが悪い。この手の与える愛撫に溺れた事など、存在しなかった幻のように感じる一方で、これがまぎれもない事実であるのも頭は理解している。
「あなたを、手引きしたのは横井ですね」
「まあな」
最初から何となく不快感を覚える男だった。だから警戒して出来るだけ武に近付けないように心配りをしていた。それでも自分の甘さを後悔する。
「ちなみにここのあちこちに、盗聴器を仕掛けてある。なかなか垂涎ものだったぜ、夜毎の睦言は」
「それはまた悪趣味な…」
武の可愛いい声を聴かれたかと思うと怒りに身が震える。
「噂じゃあ全然ダメになって、まるっきりお綺麗な生活だって聞いてたのに、なかなかお熱い夜で驚いたぜ?」
「今でもダメですよ、あなたのお陰で。板倉 正己で確認されたのではなかったのですか?受け入れる方は近頃試していませんのでわかりませんが、少なくとも私は一人にしか反応しません」
こんな会話は時間稼ぎにしかならない。だがこのままでは武が帰って来てしまう。
「さて、薬を使ってもそれは言えるかな?」
「ッ…卑怯な!」
「親切心さ。どうせヤられるなら、気持ちイイ方がよくはないか?」
淡い緑色の液体が入った注射器が、これ見よがしに突き付けられた。
「天国を味合わせてやるぜ、夕麿」
夕麿の顔にはっきりと怯えが浮かんだ。苦痛の中で陵辱される方がどれほど良いだろう?自分は暴力を受けているとまだ感じられる。正気を保っていられる。だが催淫剤は心まで麻痺させる。与えられる快楽に溺れて貪る事しか出来なくなる。夕麿自身は使われた経験はない。だが武が司に使われた時に抱いたから状態はわかっていた。性的経験が皆無だった武が、生まれて初めての行為にどのように溺れたのか。初めての挿入の痛みすら快感となり、恐怖も羞恥も抱いてはいなかった。想う相手の腕の中で見せるならばまだ救いはある。
「痛ッ…ああッ!」
針を身体に突き立てられ薬剤を注入される不快さに歯を食いしばる。
「すぐに効いてくる。
まあ、その前に無理やりっていうのもそそるな」
無理やりに脚を折り曲げられ、普段、武との行為に使用しているジェルが蕾に塗られた悲鳴を上げてもがくが、しっかりと押さえ付けられていた。蕾に熱を持ったモノが触れたと思った次の瞬間、一気に突き入れられる。
「ぐッ…ああああッ!」
あの事件以来、誰にも蹂躙されていない蕾は、固く閉じて無理やりの挿入に、引き裂かれるような痛みを伴って男のモノを受け入れた。
痛みと圧迫感に内股が痙攣する。
喉が鳴り涙が溢れ落ちた。
身体よりも心の痛みの方が大きかった。
「ああ…許して…下さい…武…」
絶望が夕麿の心を満たしてい愛しい面影が頭を過ぎった瞬間、心臓が大きく跳ねた。言い知れぬ熱が全身を包む。
「あッ…イヤ…ああッ…!!」
抗えない懊悩が身を焦がし始めた……
武と貴之が寮への帰路についた時には、既に雨は止んだ後だった。降り出した時間からは2時間程が過ぎていた。
武は先程からずっと夕麿の携帯に、コールを続けているがやはり出ない。
「貴之先輩、おかしい…雨は止んだのに夕麿が出ない」
「急ぎましょう」
雨が降り出した時に戻れば良かった。武も貴之も同じ気持ちだった。寮の建物に飛び込み、エレベーターで上がる。特別室へのオートロックを通過した途端、武が立ち止まった。
「武さま?」
武は両腕で自分を抱くようにし、身震いしながら言った。
「やだ…何かここ、ぞわぞわする…」
貴之は小声で動かないように言って、特別室の扉の前に行く。足元を見回すと扉の際に赤黒いものが落ちていた。屈み込んで指でなぞると、半乾きのそれが指にべっとりと着いた。血だ。
目の隅で何かが光った。手を伸ばして拾い上げて、叫びそうになる声を必死で噛み殺した。落ちていたのは生徒会長が付ける記章だった。夕麿に何かあったのは間違いない。貴之は何か問いたげな武に黙るように合図して自分の部屋へ招き入れた。
「貴之先輩…何が…あったの?」
武の声が震えていた。
「これが落ちていました」
記章を見せた。
「生徒会長の記章!?」
「よろしいですか、武さま?特別室の様子を確認して来ます。どうかここでお待ち下さい。あちらの扉はセキュリティーの為に、ロックが解除されると中に知らせるシステムなのはご存知ですね?」
「じゃあ…どうやって?」
貴之は特別室側の壁に近付くと、壁の一部を指先で数回叩いた。するとその部分が音もなく開いて、中から番号を入力するタイプのロックが現れた。
「これ…」
「義勝たちの部屋も同じシステムになっております」
貴之は答えながら自室のセキュリティー・カードをリーダーに読ませ暗証番号を入力した。壁に見えていた場所に人が一人通れるくらいの大きさで開いた。覗き込むとその向こうに階段が見えた。
「ここは武さまのお部屋に繋がっています。良いですね?ここにいらして下さい。あなたが不用意に動かれると、夕麿さまを危険にさらす可能性があります」
武は息を呑んで頷いた。本当は貴之を押しのけて飛び込んで行きたい。だが無謀だとわかっているから、貴之の言葉に今は従う。先程、廊下で感じた感覚が心の中で警報を鳴らしていた。
貴之はすぐに戻って来た。 表情は強張り真っ青な顔で。すぐさま抜け道を閉じて携帯を手にした。
「義勝、今どこにいる?………わかった。 非常事態だ、すぐそっちへ行く。……ああ、事情はそっちで」
電話を切ると武にもう一度言う。
「すぐに戻ります。 ここにいて下さい」
貴之は武をソファに座らせて、急ぎ足で部屋を出て行き、しばらくして雅久と共に戻って来た。
「武さま、あなたに危険な事をお願いしなければなりません」
「うん、何でも言って。夕麿を助けられるなら何だってする」
「良いですか、普通に何も気付かないふりをして、玄関扉から入って下さい。 何があっても何をご覧になっても、抵抗をしないで俺と義勝を待って下さい。タイミングを計って飛び込みますが…チャンスは一度しかありません」
「わかった」
「雅久、私が入って3分後に武さまを」
「わかりました」
雅久は時計を見つめて頷いた。 貴之は義勝に電話をかけて告げた。
「今からだ」 と。
貴之が入って抜け道は閉じられた。 雅久は武を抱き締めたままで時計を見つめている。
3分経過した。
武は鞄を手に深呼吸して貴之の部屋を出た。自分たちの部屋の扉の前に立ってもう一度深呼吸をしてから、セキュリティー・ロックを解除した。中は静まり返っていた。 靴を脱いでリビングのドアを開ける。
「ただいま。あれ、夕麿?」
リビングのソファに夕麿の鞄が、投げ出すように置かれていた。
「夕麿、上?」
螺旋階段を上がると背後から抱き締められた。
「…横井…」
「おとなしくなさった方がよろしいですよ、武さま。さもないと、あの男は夕麿さまに何をするかわかりませんから」
横井の言う【あの男】が誰を指すのか、それは聞き返さなくてもわかる。
「お前が…手引きしたのか…夕麿はどこだ…」
「おとなしく従って下されば、すぐに会わせて差し上げます」
横井はそう言うと、武の腕を後ろに回して、粘着テープを巻いて拘束した。
「夕麿さまは寝室ですよ。さあ、参りましょう」
左肩を掴まれて寝室へと歩かされる。
心臓が早鐘のように鳴っていた。
どれほどの時間が経過したのか。
どれほどイかされたのか。
体内で荒れ狂う欲望が、意識を混濁させたのは最初だけだった。すぐに意識は明確なのに、身体の懊悩はおさまらないと言う、最も屈辱的な状態に陥った。
縛られた両手は既に感覚がない。喘がされ続けて声も掠れて来た。
多々良はただイかせる事に飽きて、今は夕麿のモノを根元で戒めて、身悶える様を愉しんでいた。
苦しい……
挫けそうな心と闘うだけで、体力が消耗していく。首を動かすと頭に痛みが走る。皮肉な事にその痛みが、夕麿が懊悩に屈服するのをトドメる役目をしている。だが同時に意識が朦朧とするのも、その痛みの原因らしい怪我だとも感じていた髪や頭の下のシーツの感触から、出血しているらしい。
幾ら何でもそろそろ武が帰って来る時間になっている筈だ。横井の姿がないところを見ると、どこかで待ち伏せているに違いない。どうか異変に気付いて欲しい。武だけは…守りたい。歯を噛み締めて考える。武にどうすれば危害が及ばずにすむのか…そんな事を考えていると、また頬を打たれた。
「痛ッ…」
「何を考えてる?まだそんな余裕があるのか。たいしたもんだな、夕麿」
何か言い返してやろうと睨み返した瞬間、欲望にぷっくりと勃ち上がっている乳首に、荒々しく爪をたてられ仰け反って戦慄いた。
「ひィ…あッあッ…」
痛みに遠退いていた懊悩が、再び燃え上がり始めた。多々良はニヤリと笑い、抽挿を激しくする。
「ああッ…いィ…くあッ…」
嬌声が止められない。
肉壁は貪欲に快楽を求めて収縮して絡み付き、出口のない官能を次々と生み出していく。余りの快感に意識が再び混濁して、ただ貪るだけの状態に夕麿を追い込んで行った。多々良は夕麿が乱れる様を声をあげて、嗤いながら陵辱し続けていた。
開いた扉から飛び出して来たのは、嗤い声と悲鳴のような嬌声だった。思わず立ち竦む武を、横井が突き飛ばすように室内へと入らせた。
寝室の無惨な光景に武は小さく悲鳴を上げた。
多々良はそれに気付いて動きを止め、強過ぎる官能に翻弄されている夕麿の頬を打った。
「あッ痛ッ…!」
「夕麿、お前の可愛い武さまがお帰りになったぜ」
「た…け…る…?」
混濁した意識は言葉の意味をすぐには理解出来ないでいた。
「!?
武…!」
「夕麿…!」
悲痛な声で呼ばれ夕麿はもがいた。
「往生際の悪いおとなしくしろ、夕麿!」
激しい音を立てて夕麿が頬を打たれた。
「やめろ!」
ベッドの上の夕麿は目を覆いたくなるような惨い姿だった。幾度も叩かれたり殴られた顔は腫れ上がり、何ヶ所も内出血を起こしていた。口からも鼻からも血が流れ、頭部の傷からの出血は髪を濡らしシーツを紅く染め、放出した体液が腹と胸に飛び散り望まぬ快楽の跡を示していた。
武はベッドサイドのテーブルに置かれた注射器を見て全てを理解した。
「卑怯者…」
口惜しさに歯軋りする武に、多々良は下卑た嗤い声を上げ、意味有り気に夕麿に向き直った。
「さあて、たっぷりと見てもらうんだ、夕麿。昔の男に犯されて、イくところをな!」
根元を戒めていた革紐が解かれ、打ち付けるような激しい抽挿が再開されると、散々に吐精を焦らされていた身体は一溜まりもなかった。体内で出口を求めて渦巻いていた欲望が、一気に燃え上がる。
「ひィッ…やめ…イヤ…武…見ないで…ああッ…ああッ…!!」
縛られた両手が軋むのすら忘れて、大きく仰け反って絶頂に身体が痙攣した。その激しさに残った体力を根こそぎ使い果たしたのか、夕麿はぐったりと意識を手放した。
多々良も夕麿の絶頂に引きずられるように吐精した。
その瞬間、武の部屋からは貴之が、夕麿の部屋からは義勝が飛び出して来た。貴之は多々良を夕麿から引き離すようにして投げ飛ばし、義勝は驚いた横井を武が突き飛ばしたのをねじ上げた。
「夕麿!」
義勝にテープを剥がしてもらって、ベッドに駆け寄り抱き起こそうとした。
「武、落ち着け!無闇に揺するな、頭を怪我してる。すぐに都市警察と救急隊が来る」
「待って…このままじゃ…」
両手を解いて身体を綺麗に拭いて、下肢だけでもと衣類を着せた。
義勝はその間に夕麿の傷の応急処置をする。
貴之は縛り上げた二人を階下に引きずり下ろした。
義勝は意識のない夕麿に呟いた。
「すまない…もっと早く飛び込みたかったんだが…イった時に力が抜けて、どんな人間も隙が出来る。あのタイミングしかなかったんだ…」
「義勝先輩…俺、六条 詠美が執拗に夕麿を狙ったのか、わかった気がする。夕麿を死なせるか、心を壊したかったんだろうと思う」
「…コンプレックスか…夕麿の母親に対する…?」
それなりの事情があったのかもしれないが、夕麿には何の罪も責任もない。
武はそれが許せなかった。
高等部の寮は大騒ぎになった。
事もあろうか、一番セキュリティーが完全な筈の特別室で、事件が発生し生徒会長が救急搬送されたのだ。
都市警察には貴之が、救急車には武と雅久が乗り込んだ。義勝は生徒会執行委員を全員呼び集め、騒動の鎮静の指揮を執った。生徒たちには特別室の雑用を行っていた者が手引きし窃盗に入った。しかし夕麿に発見されて暴行に及び、逃走をしようとしたところを帰って来た武たちに取り押さえられた。
そのように説明した。
夕麿の状態が気になりながらも、副会長として彼に代わって事態を収拾させなければならない。祈るような気持ちで、義勝は高等部に残っていた。
夕麿の傷は二針縫う重傷であったが断層撮影などの結果、脳には影響がない事がわかった。顔の内出血は痣として定着するのを防ぐ為、血液の吸入処置がとられた後、湿布があてられた。意識は処置の最中に回復し、落ち着いて治療を受けているように思えた。
脳に異常がないとわかると、武が次に心配したのは手だった。自分の時のように長期間麻痺すると、ピアノ奏者である夕麿には大きなダメージになる。病室のベッドに横たわる夕麿が、指先を動かすのをじっと見守った。しばらくして夕麿が安堵の溜息を漏らしたのを見て武も肩の力を抜いた。
気が抜けたら涙が溢れて来た。
「夕麿…夕麿…ごめんなさい…ごめんなさい…」
雨が降り始めた時に感じた感覚を、信じて寮に戻っていれば、夕麿がこんな目にあわなかった。後悔が心を満たす。夕麿の不安定さを知っていながら、自分の事を優先した。
「泣かないで下さい、武」
夕麿の指先が武の髪を撫ですぐに離れた。
武が顔上げて何かを言おうとすると、病室のドアがノックされて、雅久と貴之が入って来た。
「会長、退院許可が出ました」
「ありがとう、雅久」
その言葉に武が慌てた。
「ダメだよ、帰るなんて!」
「高等部中が大変な騒ぎになっているそうです。武、私は生徒会長として、騒動を収める為に帰らなければなりません」
そう答えると夕麿は、貴之が手渡した制服に着替え始めたそこにいたのは歴代の生徒会長の中でも、屈指の有能さと言われる夕麿の姿だった。
「わかった、でも無理はしないで?」
「武君、会長が寮に戻られるだけで、騒動は半ば鎮静化すると思います」
傷の痛みに耐えながら病院を出て、夕麿は学院が用意した車で武たちと寮へ向かった。
生徒たちは頭部に包帯を巻いた夕麿を見て悲鳴を上げたが、しっかりとした足取りで特待生寮に入るのを見て、ホッと胸をなで下ろして自室に帰り始めた。
その喧騒の中でそっと、武は貴之に耳打ちした。
「貴之先輩にお願いがあります」
「何でしょうか?」
「後でメールします」
「承知しました」
二人は何事もなかった顔でエレベーターに乗る。扉が閉まり、エレベーターが動き出した途端、気が抜けたのか夕麿がふらついた。慌てて武が支える。リビングのソファに取り敢えず座ると、雅久と貴之は部屋を辞した。
「シャワーを浴びたい」
夕麿の言葉に頷いた。拭っただけの状態では気持ちが悪いだろう。
「頭にかけないようにしないと…手の包帯は解くね」
夕麿の白い手首には、くっきりと縛られた跡がついていた。
「手、俺みたいな状態にならなくて良かった」
労るるように口付けると、夕麿がビクッと身を震わせた。
「後でちゃんと巻き直すからね。
さあ、行こう」
「武…お願いがあります」
「何?」
「私を…離縁して下さい…」
「そんなお願いは聞けない。
ほら、バスルームに行くよ」
いつになく命令口調な言葉ははっきりとした怒気を帯びて、有無を言わせずに夕麿をバスルームに連れて行って、先に夕麿の衣類を剥いで自分も脱いだ戸惑う夕麿を立たせて、シャワーの温度を調節して、ゆっくりとかけていく。
「武…自分で出来ます」
「煩い!」
バスルームに反響する武の怒声に言葉を失う。地中海産の海綿にボディーシャンプーを泡立たせて、夕麿の身体を洗っていく。陵辱された跡が散らばる身体を、愛する者に晒すのは辛い。だが今の武には抗えない。瞳を潤ませて唇を噛み締めている顔が、武の今の気持ちをすべて物語っていた。
「夕麿、壁に手をついて」
「武…それだけは…」
「誰が夕麿の身体拭いたと思ってるの?指で出したけど、不十分だよね?」
「お願いです…それだけは…許して…」
「お願いは聞かないって言ったよね、さっき?それとも俺に命令させたいの?」
皇家の貴種としての命令それは千年以上に亘って仕えて来た貴族の血に、遺伝子レベルで刷り込まれたとしか言いようがない絶対的なものであった。武はそれを通常嫌う。彼には人を人と思わない行為に感じているからだった。
武にしてもただの八つ当たりだとわかってはいた。抑えようのない怒りが沸々と心の中で渦巻いている。夕麿を傷付ける者は、絶対に許さない。必ずこの報いは受けさせる。
だがそれを夕麿には知らせたくない。
それに…少々乱暴に強制的な態度でいないと、今の夕麿は全てを投げ出してしまう。それだけは防ぎたかった。
「どうするの、夕麿?」
震えながら背をむけて壁に手をつく。
「腰を突き出して」
「ああ……」
羞恥の声を漏らすのを無視して、湯をかけながら蕾に指を挿れた。
「くッ…」
声を噛み殺し首を振る。湯が体内に入って来る。
「あ…イヤ…」
体内を掻き回す指に、一層羞恥がわき上がる。湯に混じって残滓が、内股を伝い落ちる感触が気持ち悪い。だが今、自分の中で蠢くのは、愛する武の指なのだと。夕麿は啜り泣きながら懸命に耐えた。
「綺麗になったよ」
その言葉に膝が力を失って、床に座ってしまう。
「出るよ」
差し出された手に縋って立ち、パウダールームに出ても武は夕麿にバスローブを着せ、リビングの包帯を手に寝室へ上がる。誰が整えたのか、先程の事が嘘だったかのように痕跡が全て片付けられていた。武は夕麿をベッドに座らせると、頭部の包帯が濡れていないのを確認してから手の包帯を巻いた。
「武…私の話を聞いて下さい…」
「夕麿は誓ったよね?俺の側にずっといるって」
夕麿の肩を押して、ベッドに横たわらせ、覆い被さった。
「破ったらどうするって、俺は言った?忘れたわけじゃないよね?」
バスローブの紐が抜かれ、裸体が露わになる。
「今、お仕置きが欲しいわけ?」
こんな…武は知らない。今の武はいつもの穏やかな少年の顔をしていなかった。そこにあるのは、一人の男の顔。
初めて見る顔だった。
「出来ればもっと後にしようと思ってたんだけど、夕麿が馬鹿な事を言うから」
傷付いた口腔をいたわるような、優しい口付けをして、武は夕麿を真っ直ぐに見つめた。
「消してあげるよ、あんな奴の痕跡なんか」
「武…?」
「今から夕麿を抱く」
その言葉に夕麿は息を呑んだ。
「イヤ?」
「抱いて…下さい…」
思ってもみない事だった。
頬のガーゼを指先がなぞる。
「俺の夕麿の綺麗な顔を…」
呻くような掠れた声は、愛する者を傷付けられた傷みの声。夕麿は武の背に腕を回して囁いた。
「武…武…怖かった…狂うかと…思いました」
「うん、よく頑張ったね、夕麿」
抱き返すと夕麿は安堵と欲望の入り混じった吐息を吐いた。
もちろん、武には初めての行為である。抱かれる方も夕麿しか知らない。いつもどのように自分が愛されているのかを、懸命に辿りながらになる。
「夕麿…夕麿の中…柔らかくて熱くて…気持ちいい…」
「武…あなたも…熱い…!」
その夜遅くに隣室の良岑 貴之は、武から一通のメールを受け取った。
武の逆襲の合図だった。
0
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説
肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?
こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。
自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。
ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?
学園と夜の街での鬼ごっこ――標的は白の皇帝――
天海みつき
BL
族の総長と副総長の恋の話。
アルビノの主人公――聖月はかつて黒いキャップを被って目元を隠しつつ、夜の街を駆け喧嘩に明け暮れ、いつしか"皇帝"と呼ばれるように。しかし、ある日突然、姿を晦ました。
その後、街では聖月は死んだという噂が蔓延していた。しかし、彼の族――Nukesは実際に遺体を見ていないと、その捜索を止めていなかった。
「どうしようかなぁ。……そぉだ。俺を見つけて御覧。そしたら捕まってあげる。これはゲームだよ。俺と君たちとの、ね」
学園と夜の街を巻き込んだ、追いかけっこが始まった。
族、学園、などと言っていますが全く知識がないため完全に想像です。何でも許せる方のみご覧下さい。
何とか完結までこぎつけました……!番外編を投稿完了しました。楽しんでいただけたら幸いです。
蓬莱皇国物語Ⅵ~浮舟
翡翠
BL
下河辺 行長から̪紫霄学院高等部の特別室の住人が現れたという知らせがあった。入学式に向かう武たち。
一方、新たな特別室の住人である薫の乳兄弟である御影 朔耶は、入学式に突然現れた彼らっを警戒する。彼と彼の弟たちはずっと薫を守って来たのだった。
自分と同じく薫を学院都市の外に出すと武は宣言し、寄り添っていた朔耶の人生も大きく動き出す。
同時に再び、武の周辺に不穏な動きが復活する。
紫霄学院に隠された更なる『闇』が、新たな仲間をも巻き込んでいく。
翻弄される彼らはまるで水面を漂う『浮舟』のよう。
オトナの玩具
希京
BL
12歳のカオルは塾に行く途中、自転車がパンクしてしまい、立ち往生しているとき車から女に声をかけられる。
塾まで送ると言ってカオルを車に乗せた女は人身売買組織の人間だった。
売られてしまったカオルは薬漬けにされて快楽を与えられているうちに親や教師に怒られるという強迫観念がだんだん消えて自我が無くなっていく。
プロデューサーの勃起した乳首が気になって打ち合わせに集中できない件~試される俺らの理性~【LINE形式】
あぐたまんづめ
BL
4人の人気アイドル『JEWEL』はプロデューサーのケンちゃんに恋してる。だけどケンちゃんは童貞で鈍感なので4人のアプローチに全く気づかない。思春期の女子のように恋心を隠していた4人だったが、ある日そんな関係が崩れる事件が。それはメンバーの一人のLINEから始まった。
【登場人物】
★研磨…29歳。通称ケンちゃん。JEWELのプロデューサー兼マネージャー。自分よりJEWELを最優先に考える。仕事一筋だったので恋愛にかなり疎い。童貞。
★ハリー…20歳。JEWELの天然担当。容姿端麗で売れっ子モデル。外人で日本語を勉強中。思ったことは直球で言う。
★柘榴(ざくろ)…19歳。JEWELのまとめ役。しっかり者で大人びているが、メンバーの最年少。文武両道な大学生。ケンちゃんとは義兄弟。けっこう甘えたがりで寂しがり屋。役者としての才能を開花させていく。
★琥珀(こはく)…22歳。JEWELのチャラ男。ヤクザの息子。女たらしでホストをしていた。ダンスが一番得意。
★紫水(しすい)…25歳。JEWELのお色気担当。歩く18禁。天才子役として名をはせていたが、色々とやらかして転落人生に。その後はゲイ向けAVのネコ役として活躍していた。爽やかだが腹黒い。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる