上 下
52 / 117
第12章

第3話

しおりを挟む
竹内の言葉通り、飯塚さんの追跡に本部はかかりきりになってしまった。

換気ダクトの出力を最大値に設定して、籠もった湿気を外に出す。

サーバーは入れ替えることが決定した。

それだけでも大きな損害を出している。

コンビニは営業停止の張り紙をして、店舗用アンドロイドをお掃除片付けロボに書き換えた。

時間はもう、夜9時をまわっている。

ここにはもういない、飯塚さんといづみの人形も動いていた。

「飯塚さん!」

俺はそれに向かって、大声を上げる。

「はい。なんでしょうか」

『飯塚』と名札のついているアンドロイドは、搭載されたAIで返事を返す。

「いつからこんなことを!」

「つい先ほどです。片付けを優先するようにしています」

「何を考えてんだよ」

「すみません、申し訳ございません」

「……本当に、何考えてんだよ……」

俺はそのロボットの肩に手をかけた。

触れた感触も、人の肩と変わらない。

「申し訳ございません。私にはそれに対する答えを、持ち合わせておりません」

鼻水をすする。

なんだよその答え……。

「答えなんかないさ。あるとしたら、さっさと片付けを終わらせることだ。重人、ちょっとこっち来い」

竹内は支部のメインディスプレイを操作した。

「飯塚さんの電波ジャックは全国放送だった。あの破壊された噴水はすでに民間レベルで特定されている」

ネットは騒然としていた。

破壊された噴水の残骸画像が、世界中にあふれる。

「これ、横浜方面の公園だ」

横浜といっても、ずいぶんと田舎の山奥だ。

人気もなかったのだろう。

特定されるまでに、しばらく時間がかかっている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

NPCが俺の嫁~リアルに連れ帰る為に攻略す~

ゆる弥
SF
親友に誘われたVRMMOゲーム現天獄《げんてんごく》というゲームの中で俺は運命の人を見つける。 それは現地人(NPC)だった。 その子にいい所を見せるべく活躍し、そして最終目標はゲームクリアの報酬による願い事をなんでも一つ叶えてくれるというもの。 「人が作ったVR空間のNPCと結婚なんて出来るわけねーだろ!?」 「誰が不可能だと決めたんだ!? 俺はネムさんと結婚すると決めた!」 こんなヤバいやつの話。

宇宙人へのレポート

廣瀬純一
SF
宇宙人に体を入れ替えられた大学生の男女の話

もうダメだ。俺の人生詰んでいる。

静馬⭐︎GTR
SF
 『私小説』と、『機動兵士』的小説がゴッチャになっている小説です。百話完結だけは、約束できます。     (アメブロ「なつかしゲームブック館」にて投稿されております)

トモコパラドクス

武者走走九郎or大橋むつお
SF
姉と言うのは年上ときまったものですが、友子の場合はちょっと……かなり違います。

悠久の機甲歩兵

竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。 ※現在毎日更新中

宇宙戦艦三笠

武者走走九郎or大橋むつお
SF
ブンケン(横須賀文化研究部)は廃部と決定され、部室を軽音に明け渡すことになった。 黎明の横須賀港には静かに記念艦三笠が鎮座している。 奇跡の三毛猫が現れ、ブンケンと三笠の物語が始まろうとしている。

ヒトの世界にて

ぽぽたむ
SF
「Astronaut Peace Hope Seek……それが貴方(お主)の名前なのよ?(なんじゃろ?)」 西暦2132年、人々は道徳のタガが外れた戦争をしていた。 その時代の技術を全て集めたロボットが作られたがそのロボットは戦争に出ること無く封印された。 そのロボットが目覚めると世界は中世時代の様なファンタジーの世界になっており…… SFとファンタジー、その他諸々をごった煮にした冒険物語になります。 ありきたりだけどあまりに混ぜすぎた世界観でのお話です。 どうぞお楽しみ下さい。

Night Sky

九十九光
SF
20XX年、世界人口の96%が超能力ユニゾンを持っている世界。この物語は、一人の少年が、笑顔、幸せを追求する物語。すべてのボカロPに感謝。モバスペBOOKとの二重投稿。

処理中です...