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第37章

第2話

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俺はコントロールステーションゾーンに、無線LANのアンテナを置いた。

それで準備は完了。

ロボットの自律化、自動化を推奨している大会本部の意向で、手動マシンは最初っから技術点で不利だ。

そんなことも、マシンを作り終わった後から知った。

「吉永、出来たぞ」

銀色の、真っ直ぐなレールが戦場に敷かれた。

俺はそこに、戦闘マシンを置く。

スターティングゾーンに戻った。

「準備、出来ました」

審査員のチェックが始まり、すぐに白旗が揚がる。

「では、競技を始めます」

主席審査員が合図を出した。

「用意、スタート!」

下段中央に飛び出した的に、一発目を当てる。

あとは俺の動体視力と、マシン性能の問題だった。

山崎とさんざんやりあったおかげで、マシンの反応速度は分かっている。

ボタンを押したタイミングと、発射のタイムラグも体に染みついた。

上段右の的が上がる。

俺は静かにそれをスルーして、下段の的に集中する。

下段右端と左端が同時に上がった。

スティックを倒して、右に寄せる。

撃ち抜いた瞬間、すぐに左へ向かった。

マシンが倒れてしまわないよう、ギリギリまでタイヤの回転数を上げている。

よほど乱暴にしなければ、レールから外れることもない。

中央位置を示すわずかな抵抗を乗り越え、左端に向かった。

十分余裕はある。

左の的を撃ち抜いた瞬間、もう一度左端と上段右があがった。

一つ一つを丁寧に積み重ねていけば、勝利は得られるはずだった。

反応速度の限界ギリギリで撃った弾が、的を外した。

発射のタイミングが早すぎて、中央の位置まで戻り切っていなのに、撃ったのが原因だ。

左端の的が上がる。

中央から右よりのスタートが、仇になった。

左端にマシンを寄せても間に合わない。

対応の仕方は分かっている。

次の的を見送って、冷静に中央から再スタートさせればいい。

俺がマシンを中央に戻そうとした時、左端と中央の的が同時に上がった。

どっちを狙おうかと迷うその一瞬で、再び全てが狂い始める。

撃ち出した弾は、的と的の間をすり抜けた。

自分の反応速度と、マシンとのタイムラグにイラ立ち始める。

思うようになるはずのものが、思うようにならない。

どうしてこんなにもトロいのか、どうして俺の指示に素直に従わないのか、俺の何が気にくわないんだ、俺の何が悪い、何がいけない!
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