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第36章
第6話
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順調な滑り出し。
一本目の的を、予定通り撃ち抜く。
体育館のつるつるとした床の上で、小さなマシンは戦っていた。
鹿島たちの、この半年間の分身だ。
丁寧に、かつ正確に、マシンは的を撃ち抜く。
6点目が入った。
カツンと勢いよく的に当たってはね返った弾は、その繊細なマシンを直撃した。
そのとたん、マシンの的中率が、一気に落ちる。
ほんのわずかなズレが、全てを狂わせた。
ずれた位置情報を修正するプログラムを積んでいなかったのか、マシンはずれた場所から、弾を吐き出し続ける。
この大会では、リトライは認められていない。
ついにマシンは、センサーで的の位置も拾えなくなったのか、完全に動きを止めてしまった。
審査員席のタイムカウンターだけが、無残に突き進んでゆく。
永遠に続くかと思われた瞬間に、甲高い笛が鳴り響いた。
「終了! 撤収をお願いします」
どうすることも出来なかった。
たったの2分、120秒間の勝負。
鹿島たちの半年に、俺たちは何の手出しをすることも許されない。
撤収時間をオーバーすることも、失格の対象となっていた。
鹿島はそこに置かれたマシンを抱き上げると、1人審判席に向かって頭を下げる。
「ありがとうございました!」
温かい拍手が、それはそれはとても温かく優しい微笑みが、辺りを包んでいた。
鹿島は泣いていた。
だけどすぐにそれを振り払って、にっこりと微笑む。
次のチームにその場所を譲って、会場の外へ出た。
それに合わせて、仲間たちも移動する。
彼らは鹿島たち3人に、何と言っているんだろう。
一本目の的を、予定通り撃ち抜く。
体育館のつるつるとした床の上で、小さなマシンは戦っていた。
鹿島たちの、この半年間の分身だ。
丁寧に、かつ正確に、マシンは的を撃ち抜く。
6点目が入った。
カツンと勢いよく的に当たってはね返った弾は、その繊細なマシンを直撃した。
そのとたん、マシンの的中率が、一気に落ちる。
ほんのわずかなズレが、全てを狂わせた。
ずれた位置情報を修正するプログラムを積んでいなかったのか、マシンはずれた場所から、弾を吐き出し続ける。
この大会では、リトライは認められていない。
ついにマシンは、センサーで的の位置も拾えなくなったのか、完全に動きを止めてしまった。
審査員席のタイムカウンターだけが、無残に突き進んでゆく。
永遠に続くかと思われた瞬間に、甲高い笛が鳴り響いた。
「終了! 撤収をお願いします」
どうすることも出来なかった。
たったの2分、120秒間の勝負。
鹿島たちの半年に、俺たちは何の手出しをすることも許されない。
撤収時間をオーバーすることも、失格の対象となっていた。
鹿島はそこに置かれたマシンを抱き上げると、1人審判席に向かって頭を下げる。
「ありがとうございました!」
温かい拍手が、それはそれはとても温かく優しい微笑みが、辺りを包んでいた。
鹿島は泣いていた。
だけどすぐにそれを振り払って、にっこりと微笑む。
次のチームにその場所を譲って、会場の外へ出た。
それに合わせて、仲間たちも移動する。
彼らは鹿島たち3人に、何と言っているんだろう。
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