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第8章
第1話
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生徒会書記のはーちゃんとしーちゃんに見てもらいながら、最後の書類を整える。
設立許可証と人員名簿、施設使用許可書とそれに関する合意書に、学校のルールは守るという同意書などなど……。
「あぁ! 面倒くせぇ!」
「もも、ここが最後の難関よ」
はーとしーがいてくれなかったら、本当に何にもなってなかったと思う。
あたしが二人の指示通りにあれこれ書き物をしている間に、いっちーは必要なハンコをあちこち走り回ってもらってきてくれた。
「ねぇ、まだ終わんないの?」
「ももの書き間違いが多すぎるから。やり直しの手間さえなければ、もうちょっと……ね」
はーちゃんの言葉にぐうの音も出ない。
「デジタル対応……」
「早く出来るといいよねー」
しーちゃんは出来上がった書類をチェックしている。
「うん。これでいいんじゃない。しめきりギリギリで、よく間に合ったわね」
いっちーと同時に、ようやく安堵のため息をつく。
「ありがとう二人とも。助かった」
生徒会室から職員室へ向かう。
書類の窓口になっているのは、あの堀川だ。
「先生、書類揃いました」
散らかった机を前に、眼鏡の奥からあたしたちを見上げる。
堀川は無表情のままそれを受け取った。
「そ。じゃ、見せてもらうわね」
全く興味ない仕草丸出しで順番にそれをめくる。
そのままバサリと机に投げ出した。
「で?」
「で? なんすか」
堀川の言葉に、あたしたちは首をかしげる。
「書類は揃ってるようね。だけど、これは顧問の小田先生から提出してもらわないと」
「そうなんですか?」
「普通そうでしょ」
大量に積まれた何かのプリントの山の上に、あたしたちの書類は再び放り投げられる。
「だって、あんたたちは小田先生に主任顧問をお願いしたんだから」
堀川はペン先でボリボリと頭を掻くと、こっちには全くの無関心な状態のまま、自分の仕事を始めてしまった。
落ち着きのない職員室のざわめきの中で、あたしたちはぽつんと取り残されている。
仕方なく投げ捨てられたそれを手に取った。
「じゃ、小田先生にお願いしてきます」
職員室を出る。
その瞬間、いっちーは舌を鳴らした。
「ちっ、なにあの態度」
「まぁまぁ。だから小田っちに頼んだんだし」
放課後の体育科準備室は、部活指導に抜けた先生たちばかりで閑散としていた。
どこを見渡しても誰一人見当たらない。
「すみませーん」
空っぽの部屋に何を言っても返事はない。
当たり前か。
「えー、どうするいっちー」
「どうするも何も……」
小田っちの机はどこだっけ。
誰もいない準備室におずおずと入っていくと、ひょいと机の下から青白い顔が飛び出した。
「うわっ!」
細木だ。
「お、お前ら……。こん、こんあなところで、何やってんだ……」
この細木というのは、男性の新米体育教師だ。
共学化に合わせて採用されたとか何とかいう噂はあるけど、とにかく女子高生が怖くて仕方がない。
「小田先生は?」
「い、いませんけど!」
そんな青ざめた顔でブルブル震えながらにらみつけられても、こっちだって困る。
ここへ来てもう二、三年にはなると思うのに、未だにうちらには慣れないようだ。
「いや、いないと困るんだけど……」
細木は正面のホワイトボードを指さした。
綴じ紐でぶら下げられたメモ用紙の束が見える。
「メモ。して残せば。しらんけど」
「……」
あたしたちは、まだ遠く机の向こうにしゃがみ込んだままの細木を見下ろす。
じっと観察していたら、その姿は再びゆっくりと机の下に消えていった。
「なにあれ」
「さぁ」
不思議な生き物もいたもんだ。
だけどまぁこんなところに、いつまでもいるわけにもいかない。
設立許可証と人員名簿、施設使用許可書とそれに関する合意書に、学校のルールは守るという同意書などなど……。
「あぁ! 面倒くせぇ!」
「もも、ここが最後の難関よ」
はーとしーがいてくれなかったら、本当に何にもなってなかったと思う。
あたしが二人の指示通りにあれこれ書き物をしている間に、いっちーは必要なハンコをあちこち走り回ってもらってきてくれた。
「ねぇ、まだ終わんないの?」
「ももの書き間違いが多すぎるから。やり直しの手間さえなければ、もうちょっと……ね」
はーちゃんの言葉にぐうの音も出ない。
「デジタル対応……」
「早く出来るといいよねー」
しーちゃんは出来上がった書類をチェックしている。
「うん。これでいいんじゃない。しめきりギリギリで、よく間に合ったわね」
いっちーと同時に、ようやく安堵のため息をつく。
「ありがとう二人とも。助かった」
生徒会室から職員室へ向かう。
書類の窓口になっているのは、あの堀川だ。
「先生、書類揃いました」
散らかった机を前に、眼鏡の奥からあたしたちを見上げる。
堀川は無表情のままそれを受け取った。
「そ。じゃ、見せてもらうわね」
全く興味ない仕草丸出しで順番にそれをめくる。
そのままバサリと机に投げ出した。
「で?」
「で? なんすか」
堀川の言葉に、あたしたちは首をかしげる。
「書類は揃ってるようね。だけど、これは顧問の小田先生から提出してもらわないと」
「そうなんですか?」
「普通そうでしょ」
大量に積まれた何かのプリントの山の上に、あたしたちの書類は再び放り投げられる。
「だって、あんたたちは小田先生に主任顧問をお願いしたんだから」
堀川はペン先でボリボリと頭を掻くと、こっちには全くの無関心な状態のまま、自分の仕事を始めてしまった。
落ち着きのない職員室のざわめきの中で、あたしたちはぽつんと取り残されている。
仕方なく投げ捨てられたそれを手に取った。
「じゃ、小田先生にお願いしてきます」
職員室を出る。
その瞬間、いっちーは舌を鳴らした。
「ちっ、なにあの態度」
「まぁまぁ。だから小田っちに頼んだんだし」
放課後の体育科準備室は、部活指導に抜けた先生たちばかりで閑散としていた。
どこを見渡しても誰一人見当たらない。
「すみませーん」
空っぽの部屋に何を言っても返事はない。
当たり前か。
「えー、どうするいっちー」
「どうするも何も……」
小田っちの机はどこだっけ。
誰もいない準備室におずおずと入っていくと、ひょいと机の下から青白い顔が飛び出した。
「うわっ!」
細木だ。
「お、お前ら……。こん、こんあなところで、何やってんだ……」
この細木というのは、男性の新米体育教師だ。
共学化に合わせて採用されたとか何とかいう噂はあるけど、とにかく女子高生が怖くて仕方がない。
「小田先生は?」
「い、いませんけど!」
そんな青ざめた顔でブルブル震えながらにらみつけられても、こっちだって困る。
ここへ来てもう二、三年にはなると思うのに、未だにうちらには慣れないようだ。
「いや、いないと困るんだけど……」
細木は正面のホワイトボードを指さした。
綴じ紐でぶら下げられたメモ用紙の束が見える。
「メモ。して残せば。しらんけど」
「……」
あたしたちは、まだ遠く机の向こうにしゃがみ込んだままの細木を見下ろす。
じっと観察していたら、その姿は再びゆっくりと机の下に消えていった。
「なにあれ」
「さぁ」
不思議な生き物もいたもんだ。
だけどまぁこんなところに、いつまでもいるわけにもいかない。
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