上 下
20 / 20

第20話

しおりを挟む
ピンクの柱問題が過去のこととなってから、数年が過ぎた。

いまはもう、それにおびえるヒトもコトもない。

「一般相対性理論では時間を限定しておらず、反転が成り立つ。いま現代においてブラックホールの存在が認められているのならば、同じ法則に従ってホワイトホールの存在を否定することは難しい。あの現象は、一過性のホワイトホール現象が地球に近いどこかで起きた影響を受けていたのではないか。『実在する』と結論づけるための予測と実証、この実証の部分が推論の域をでない限り、この証明は難しく……」

高校卒業後、就職しようかと思っていたのに、急に大学へ行きたくなった。

どうにも分からないことをそのままにしておくのは、苦手だったらしい。

「ただ、時間は不可逆的であるという難題が未だ残されており、その点において実証実験の……」

授業とは、寝るものではなくちゃんと聞くものだと、大学へ来て初めて知ったと言ったら、高校までの先生に怒られるかな。

大学の構内は、そこだけが別世界のよう。

門をくぐれば広がる世界は、外の世界とは完全なる異世界で、先生は証明がされていないと怒られるかもしれないけど、私はこの空間だけは、外界の時間を飛び越えていると思う。

「ゴメン、待った?」

ベンチに座っていた私に、そう声をかける。

「時間が可逆的だと言われたら、どうする?」

「……。どうもしない」

「どうして?」

「『いま』しかどうせ見ていないから」

「いましか見てないの?」

そう言うと、彼はじっと見下ろした。

「『いま』における未来と過去って、言った方がいい?」

「あぁ、なるほどね。納得」

手を伸ばす。

伸ばした手はすぐに白い手に触れて、ぎゅっとつながれる。

きっとこれも、永遠に変わらない普遍の法則。

「すきにすればいいさ」

晴れ渡る青い空のまぶしさに、私は目を細めた。





【完】
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

くろぼし少年スポーツ団

紅葉
ライト文芸
甲子園で選抜高校野球を観戦した幸太は、自分も野球を始めることを決意する。勉強もスポーツも平凡な幸太は、甲子園を夢に見、かつて全国制覇を成したことで有名な地域の少年野球クラブに入る、幸太のチームメイトは親も子も個性的で……。

もしもしお時間いいですか?

ベアりんぐ
ライト文芸
 日常の中に漠然とした不安を抱えていた中学1年の智樹は、誰か知らない人との繋がりを求めて、深夜に知らない番号へと電話をしていた……そんな中、繋がった同い年の少女ハルと毎日通話をしていると、ハルがある提案をした……。  2人の繋がりの中にある感情を、1人の視点から紡いでいく物語の果てに、一体彼らは何をみるのか。彼らの想いはどこへ向かっていくのか。彼の数年間を、見えないレールに乗せて——。 ※こちらカクヨム、小説家になろう、Nola、PageMekuでも掲載しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

QA高校ラジオの一刻

upruru
ライト文芸
初めまして。upruruです。初めての小説投稿です。ジャンルは、コメディです。異世界に飛ばされてバトルを繰り広げる事も無ければ、主人公が理由もなく何故か最強キャラという事もありません。登場人物は、ちょっと個性的というだけの普通の人間です。そんな人達が繰り広げる戯れを、友人集団を観察している感覚でお付き合いして頂ければ幸いです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

亡き少女のためのベルガマスク

二階堂シア
青春
春若 杏梨(はるわか あんり)は聖ヴェリーヌ高等学校音楽科ピアノ専攻の1年生。 彼女はある日を境に、人前でピアノが弾けなくなってしまった。 風紀の厳しい高校で、髪を金色に染めて校則を破る杏梨は、クラスでも浮いている存在だ。 何度注意しても全く聞き入れる様子のない杏梨に業を煮やした教師は、彼女に『一ヶ月礼拝堂で祈りを捧げる』よう反省を促す。 仕方なく訪れた礼拝堂の告解室には、謎の男がいて……? 互いに顔は見ずに会話を交わすだけの、一ヶ月限定の不思議な関係が始まる。 これは、彼女の『再生』と彼の『贖罪』の物語。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

処理中です...