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九節
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夜の町は人通りが少ないとはいえ、入りくんだ通りに身を隠す場所も多い。
「くっそ、何故逃げた!」
あのまま大人しくしていれば話しが早かったものを、どうしてこんなに手間をかけさせやがる。
とことん面倒くさい奴だ。
数人の男がまとまって走る足音が聞こえる。
俺はとっさに身を隠した。
何を話しているのかまでは聞こえないが、集まった男たちは二人ずつの組みになると、そこから四方に散っていく。
月星丸を探しているのは、俺だけではない。
やみくもに探し回っても、見つからないことは分かっている。
俺が奴を騙して万屋へ連れて行ったことで、敵方とつるんでいると思われたかもしれぬ。
そう思うと、俺の姿を見かけたところで、向こうから近寄ってくる公算も低い。
行く当てもない子どもが、駆け込むとするならどこだ?
立ち止まって、息を整える。
町中を走り回る複数の足音に、ピリピリと耳をそばだてながら、俺はゆっくりと歩き出した。
あいつらが見つけるも一瞬先に、俺がみつければよい。
辺りににらみをきかせながら、慎重に町中を進む。
やがてたどり着いた橋の上で、万屋に月星丸を迎えに来ていた男の姿を見つけた。
これを逃す手はない。
「これはこれは、お探ししていた坊ちゃんを無事に届け終えて、一息ついたというところですかな?」
男は俺を振り返った。
その視線が、俺の思惑を探っている。
「まぁそういったところだ。そなたは?」
「ちょいと探し物をしていてね、見つけたと思ったら逃げていきやがったもんで、また振り出しでさぁ」
「そいつはお気の毒だな」
男は視線をはずした。
十分な間合いを取れる位置で、俺は立ち止まる。
「ところで、あんたらの探しているものは、なんだ」
「そんなものはない。もう見つかった」
俺はゆっくりと刀を引き抜く。
「ならばそいつを、ちょいと見せてもらおうか」
切っ先を向けて、正眼に構えた。
それを見ても、男は微動だにしない。
「悪いが今は手元になくてね」
「そいつは納得いかねぇなぁ!」
俺は男に斬りかかった。
抜かれた相手の刀は、予想よりわずかに早く強い。
俺は後ろに飛び退いた。
男に動揺や焦りの色は見られない。
「そなたが何者なのかはここでは詮索いたさん。だがこれ以上首を突っ込むとなると、話しは別だ」
男は中段に構えた。
俺はそれよりもわずかに剣先を下げる。
「どこのお坊ちゃんだか知らねぇが、なにも命までとることはあるまい。俺に預けてくれれば、あんたらに迷惑はかけねぇって言ってるんだ」
男が踏み込んだ。
上から斬りかかってくるのを、しっかりと受け止める。
「捨ておけ、そなたの人生に関わりのないことだ」
「もちろんそれは承知の上だ」
力で押しのける。
再びぶつかった二本の刃が、視線の間で火花を散らした。
「だけどまぁ、一度でも知っちまったもんはなかったことには出来ねぇだろう? あんまり人が死ぬところは、見たくねぇよなぁ」
ギリギリと刃と刃がかみ合う。
少しでも接点がずれれば、すぐに斬られる。
「そなたの相手をしている場合ではない」
「そんなさみしいこと、言うもんじゃねぇだろ?」
押しのけられるその手前で、後ろに飛び退く。
振り上げられた刀の下をくぐり抜け、背後に回る。
もう一度中段で向かい合った。
「これ以上邪魔立てすると、本気で許さん」
「望むところだ」
俺が刀を振り上げた、その時だった。
「葉山さま! 月星丸さまが見つかりました!」
斬りつける俺の刃の切っ先を、葉山と呼ばれた男はひらりとかわす。
「案内しろ」
「こちらです」
葉山は刀を鞘に収めた。
「おいコラ待て! まだ勝負はついてねぇぞ!」
月星丸確保の一報を受けてか、周囲に葉山の手下が集まってきた。
「そいつの相手はお前らに任す。手強いぞ、気をつけろ」
男の言葉を合図に、五本の刀が一斉に抜かれた。
その隙に、葉山は案内の男と走り出す。
「待て! 待てって言ってんだろこの野郎!」
斬りかかってくる仲間を、さっと二人ほど斬り倒す。
振り返った残りの三人は、刀を構えてはいるものの完全に及び腰だ。
「くそっ」
ここでこいつらの相手をしていれば、本当に月星丸が捕まってしまう。
俺は刀を鞘に収めた。
それを見た手下が叫ぶ。
「卑怯者! 神妙に勝負いたせ!」
「うるせぇ、お前らの相手にはならねぇよ!」
葉山の走り去った方向に向かって走り出す。
あいつに捕まる前に何とかしなければ。
夜廻りの笛が聞こえる。
あまり騒ぎを大きくしたくないのは、あいつらも同じはずだ。
二人組のお侍の姿が、今夜はやけに多い気がする。
声をひそめ辺りに鋭く目を光らせている様子は、いつもの遊び人どもの酔い歩きとは違う、異様な風景だ。
走りながらどれだけ耳をすませても、もめ事や騒ぎのような喧噪の気配はない。
葉山は本当に月星丸を見つけたのか?
それとも、すでに捕らえたか?
逃げ足の素早い奴だ。
どこかにうまく身を隠していれば助かるのだが。
立ち止まった四辻の中央でぐるりと辺りを見渡す。
夜の町はしんと静まりかえっていた。
今この瞬間にも、月星丸の命が危ういというのに。
気持ちだけが焦るばかりで、一向に埒が明かない。
俺は腕を組むと、ゆっくりと歩き出した。
葉山の手先なのか、時折角に立つお侍が俺をギロリとにらみつける。
俺は酒に酔ってふらふらと町をさまようふりをしながら、月星丸の姿を探していた。
依頼の仕事が終われば、その後は深入りしないのが鉄則だ。
確かに俺にしたところで、奴を追いかけて得することは何もない。
辻に立つ侍が俺を見ている。
立ち止まりはしない。
俺はただ歩いている。
万屋から受けた仕事は、月星丸を探すことであった。
その仕事は終わったのだ。
その後のことは気にすることはない。
あいつは自分が殺されると分かっていたから、帰りたくなかったのか。
逃げ回っていた奴の行動に、今なら何もかも合点がいく。
月星丸は、自分の身の置き場を求めてさまよっていたのだ。
俺は夜空を見上げた。
月星丸という妙にキラキラした名のわりには、今宵は雲に隠れて何も見えない。
途切れた切れ間から、わずかな星が見えるだけだ。
きっともう、葉山とかいう男に捕まったに違いない。
だとすれば、今頃はもうこの世の者ではないだろう。
どこの誰だか素姓は分からぬままであったが、もしかしたらその方がよかったのかもしれない。
俺は頭を激しく左右に振った。
もう考えるのはよそう。
萬平の言う通り、案じたところで何がどうなるわけでもない。
夜道を歩く。
いつもは静かな江戸の町が、今夜は落ち着きがない。
無数の足音と叫び声が、聞こえないはずの頭に響く。
「くそっ、あの野郎どこに逃げた」
夜道を急ぐお侍の姿を見かける。
ひそひそと人目を気にして交わしている言葉の数々。
その声をたどりながら俺は夜道を歩く。
彼らのささやき声に導かれるようにやってきたのは、花街の近くだった。
この辺りは夜でも人の出入りが多く通りも明るい。
「やぁ、あんたまだいたのか」
妖光漂う町へと続く門の前に立っていたのは、葉山だった。
「そんな格好のままで遊びに来るなんて、えらい度胸だな」
この男は、裃姿の正装だ。
「女郎になんぞ興味はねぇ」
そう言うと、葉山はゆるりと柱に背を預けた。
「一仕事終わったんでね、帰る前に一杯くらいひっかけて帰ろうと思っただけだ。用がないなら、あんたもどうだ?」
「あの女をどうした」
葉山は笑った。
「裏家業の仕事人が、女に入れあげてちゃぁざまぁねぇな」
「殺ったのか」
「知らねーよ」
だるそうにうつむいて、にやりと笑った。
「仕事が終われば後のことは知らんぷりだ。そうだろ?」
「あんた、あの女の家の者じゃないのか」
この男は、何もかもに全く興味がないような顔をしている。
「おまえ、本当に何も知らないんだな。ま、だからいいのかも知れねぇな。気楽なご身分ってやつだ、うらやましいよ」
葉山はくるりと背を向けた。
「じゃあな、後のことは知らん。俺の仕事は終わった。それだけだ」
花街の巨大な門をくぐり、喧噪の中に消えていく。
「くそっ」
月星丸は、どうなった?
葉山の下っ端らしきお侍も、そこに何人か来ていた。
そいつらを引っ張りだして吐かせるには、ここでは人の目が多すぎる。
「あ、お侍さま、先ほどは失礼いたしました!」
にっこにこの笑顔で、つい先ほど囲まれ、斬り合いを繰り広げたばかりの一人に揉み手で近寄る。
「いやーご苦労さまでした。今から一杯っすか? いいっすねぇ」
俺は懐から銭を取り出すと、両方の手の平にのせて神妙に差し出した。
「ま、これでどうか一杯やっておくんなせぇ」
三人の侍は、少しためらった様子を見せたが、それをしっかりと受け取った。
「さっきの坊ちゃんは、どう始末なさったんですか?」
「おい、『坊ちゃん』はどうしたかだってよ」
侍たちは笑った。
俺も一緒に笑う。
「これそこの浪人、物騒なことを申す出ない。あの方は我々がきちんとしかるべき所におくり届ける手配になっておる。案ずるな」
「あぁ、左様でございましたか。それは大変申し訳ないのでございますが、こちらにもこちらの事情ってもんがございまして」
俺はクイと、顎の先で町の暗がりを指した。
「ちょっとお伺いしたいことがあるんですがね、いかがなもんでございましょう」
「お前にもお前なりの事情があるってことか」
ゴクリと唾を飲む音が聞こえる。
男たちは俺の顔色を窺いながらも、急に声をひそめ、仲間内だけで話しているフリを始めた。
「そういえば、あの坊ちゃんの見張りには誰を立てたっけ」
「葉山さまが指名した男だよ」
「三つ先の通りの馬屋の裏小屋だったよな」
「後で様子を見に行ってやるか」
「そうだな。あいつだけでは頼りない」
「どうする?」
「まぁ腹ごしらえが先だ」
「なるほど、それからでもよかろう」
男の一人がちらりと見上げる。
「じゃあ、そういうことで我々に話せることは何もない。早急に去られよ」
「あぁ、お邪魔して申し訳ございませんでしたね」
素直過ぎる言動に苦笑いしつつも、俺は教えられた馬小屋へと急ぐ。
家人が主人の娘を売ってどうする。
そうじゃなきゃ暗がりに連れ込んで一発ぐらい殴ってやってもよかったが、今はそんなことをしている場合ではない。
花街から離れたとたんに、静けさと宵闇が戻ってくる。
小さな用水路沿いの風車小屋が、その馬屋の裏小屋だった。
見張りらしき男が、道の外で眠りこけている。
俺は小屋の中をのぞき込んだ。
敷き藁やら大工道具みたいなものを保管してある倉庫だった。
そこに人の姿はない。
裏の戸がわずかに開いている。
「おい、起きろ!」
俺は門番の男を揺り起こした。
「中の坊ちゃんはどうした?」
男は本当に眠っていたのか、目をこすって起き上がる。
「んぁ? なんだお前」
「誰か来なかったのか? 捕らえた男はどうした?」
見張りのはずの男は、どうも頭がすっきりしていない。
「どうもこうもねぇよ、中に入ってるだろ」
まだ寝ぼけているのか、ぐずぐずとして動こうとしないばかりか、もう一度眠りにつこうとしている始末だ。
「このどこに捕らえてあると言うのだ、言ってみろ!」
俺は扉を開けた。
もぬけの空だ。
その様子を見て、男はようやく事態を飲み込んだらしい。
「あれ? どこへ逃げやがった!」
俺は部屋の中央の柱に近寄り、月星丸の痕跡を調べる。
「この柱に結びつけてあったのか?」
「は? 何いってんだ、そんなこと葉山さまがするわけねぇ」
「騒がれないように、さるぐつわとかは?」
「お前は誰と勘違いしてるんだ? そんな乱暴するわけがないだろう」
その言葉に、俺の脳みそは混乱を始める。
「月星丸を捜してたんじゃないのか?」
「しーっ、お前さん声がでけぇよ」
男はびくびくと回りを見渡した。
「あー逃げられちまったのかなぁ、どうしよう。また叱られる」
「裏口のかんぬきは?」
「は? そんなもんがこの小屋にあるわけねぇ」
俺は痛む頭を抱えてため息をつく。
これじゃあまるで、逃がしてやったようなもんだ。
「あのお嬢ちゃんは、どこへ行った」
「あんたも雇われ人か?」
どうしてあの葉山という男は、こんな無能な男を意味のない見張りに立てたのだろう。
「俺に葉山さまの考えは分かんねぇよ。あのお人は性格がはっきりしていて、計算高いお方だからな。自分の分に合わないことは絶対になさらねぇ」
男は両腕を組んで一人で感心している。
「ま、あんたにもまだ汚い仕事が残ってんだろ。しょうがねぇよな、上手いことやんな」
俺はその男に背中を叩かれ、なぜか励まされた。
「下っ端仕事は、辛ぇよな」
俺が小屋を出ようとすると、男は手を振って見送ってくれる。
この男は、月星丸に逃げられたことを何とも思っていないのだろうか?
とりあえず、月星丸が捕らえられていたはずの小屋の裏口に立って辺りを見渡す。
ちっ、こんなことなら、さっきの葉山とやらと一緒に飲んでた方が、マシだったかもしれねぇな。
月星丸が一度捕らえられて、また逃げ出したとしたら、どこへ逃げる?
普通は反対方向だよなぁ。
俺は後ろを振り返った。
ここからでも、花街の空だけは明るく瞬いているのが見える。
俺はその光に背を向けて歩き出した。
「おやこれは、こんなところでお会いするとは」
俺に声をかけてきたのは、提灯を手にした萬平だった。
酒のにおいがする。
「寄り合いでもあったのか」
「まぁそういうところでございます」
「あの子どもをみかけなかったか?」
「あの子どもとは?」
ほろ酔いの萬平がとぼける。
彼はくすりと笑った。
「さて、もうあなたには関係のないことでございましょう。私は知りませんよ。あなたも早く帰ってお休みなさい」
萬平はふらふらと歩き出した。
「依頼の仕事に深入りするなんて、この家業には御法度ですよ」
そんなことは言われなくても分かってるさ。
俺は舌を打ち鳴らす。
だけどどうしても気になっちまうもんは、仕方ねぇだろ。
月星丸の明るい笑顔と、迎えが来た時の表情をなくした固い面を思い出す。
例えどんな人間だったとしても、にこにこ笑って暮らしてる方がいいに決まってるよなぁ。
大金を積んで捜し出し、殺すのかと思えば、簡単に逃がす。
何がしたいのか分からない。
迎えに来た葉山は月星丸の家の者ではないということか?
もしあの男がそうでないとすれば、本当の依頼主は誰だ?
夜道をふらふらと彷徨う。
花街から離れるにつれ、ますます夜は静かに深くなっていく。
この辺りまでが限界か。
俺は町の外れに広がる原野をながめた。
もしかしたら、長屋に戻っているかもしれない。
俺にはもう、そう願うよりほかになかった。
くるりと背を向けて、また町の中心に向かって歩き出す。
ふいに闇夜を駆け抜ける足音が聞こえた。
俺は表通りに飛び出す。
ばったりと鉢合ったのは、河原で月星丸を斬り殺そうとしていた輩の一人だった。
「お前、あの坊ちゃんをどうした!」
俺が叫ぶと、男は立ち止まった。
「は? 坊ちゃん? おめぇさん、アレを坊ちゃんだと思ってんのか?」
俺はスラリと刀を抜いた。
「男に化けた女だ。そうと知っての所行か」
とたんに男は焦ったように、両手を胸の前で激しく振った。
「おいおい、勘弁してくれよ。あんたはどちら側に雇われたんだい? どっちに転んだって、そんなムキになるような話しでもないだろ」
この男は、どうやらある程度の事情には詳しいらしい。
俺は刀を鞘に収める。
「殺ったのか」
「まだだよ。あんたに邪魔されたんじゃねぇか」
男は呆れたようにため息をついた。
「まぁ、商売的にはこうやって逃げてくれた方が、儲かるのかもしれないけどな」
俺が横目でにらむと、男は肩をすくめた。
「もう適当なこと言って、誤魔化しとくのが一番かもな。俺もそろそろ引き上げようかと思ってた頃だ」
男は歩き出す。
俺も後に続いた。
「誰に雇われた」
「お前さん、正気か?」
男は腕を組み、俺を下から上へと見渡した。
「ははん、あんた、何にも知らされないでこの仕事を受けてんな」
「俺は誰からも仕事として受けてない」
とたんに男は、プッと吹き出して笑った。
「じゃあなんだ、人助けのつもりか? それともあのお嬢ちゃんに入れあげたか?」
男は笑い転げた。
「やめとけ、あんなお嬢さんはてめぇとは身分も家柄も違いすぎるよ。変な夢を見る前にさっさとあきらめな」
俺が立ち止まると、男は慌てて飛び退く。
「おおっと。こんなくだらない仕事で刀傷でももらってちゃあ、世話ないや。じゃあな、お前さんもあんまり深入りしてねぇで、さっさとキリをつけておいた方が、身の為だぜ」
足早に男は立ち去る。
そんなこと、お前らなんかに言われなくても重々承知の上ってもんだ。
俺はため息をつく。
関わるな、か、確かにそうだ。
そのままふらふらと町を彷徨い続けていたことに、俺は日が昇るのを見て気がついた。
疲れた足を引きずって、俺は万屋へと向かった。
「くっそ、何故逃げた!」
あのまま大人しくしていれば話しが早かったものを、どうしてこんなに手間をかけさせやがる。
とことん面倒くさい奴だ。
数人の男がまとまって走る足音が聞こえる。
俺はとっさに身を隠した。
何を話しているのかまでは聞こえないが、集まった男たちは二人ずつの組みになると、そこから四方に散っていく。
月星丸を探しているのは、俺だけではない。
やみくもに探し回っても、見つからないことは分かっている。
俺が奴を騙して万屋へ連れて行ったことで、敵方とつるんでいると思われたかもしれぬ。
そう思うと、俺の姿を見かけたところで、向こうから近寄ってくる公算も低い。
行く当てもない子どもが、駆け込むとするならどこだ?
立ち止まって、息を整える。
町中を走り回る複数の足音に、ピリピリと耳をそばだてながら、俺はゆっくりと歩き出した。
あいつらが見つけるも一瞬先に、俺がみつければよい。
辺りににらみをきかせながら、慎重に町中を進む。
やがてたどり着いた橋の上で、万屋に月星丸を迎えに来ていた男の姿を見つけた。
これを逃す手はない。
「これはこれは、お探ししていた坊ちゃんを無事に届け終えて、一息ついたというところですかな?」
男は俺を振り返った。
その視線が、俺の思惑を探っている。
「まぁそういったところだ。そなたは?」
「ちょいと探し物をしていてね、見つけたと思ったら逃げていきやがったもんで、また振り出しでさぁ」
「そいつはお気の毒だな」
男は視線をはずした。
十分な間合いを取れる位置で、俺は立ち止まる。
「ところで、あんたらの探しているものは、なんだ」
「そんなものはない。もう見つかった」
俺はゆっくりと刀を引き抜く。
「ならばそいつを、ちょいと見せてもらおうか」
切っ先を向けて、正眼に構えた。
それを見ても、男は微動だにしない。
「悪いが今は手元になくてね」
「そいつは納得いかねぇなぁ!」
俺は男に斬りかかった。
抜かれた相手の刀は、予想よりわずかに早く強い。
俺は後ろに飛び退いた。
男に動揺や焦りの色は見られない。
「そなたが何者なのかはここでは詮索いたさん。だがこれ以上首を突っ込むとなると、話しは別だ」
男は中段に構えた。
俺はそれよりもわずかに剣先を下げる。
「どこのお坊ちゃんだか知らねぇが、なにも命までとることはあるまい。俺に預けてくれれば、あんたらに迷惑はかけねぇって言ってるんだ」
男が踏み込んだ。
上から斬りかかってくるのを、しっかりと受け止める。
「捨ておけ、そなたの人生に関わりのないことだ」
「もちろんそれは承知の上だ」
力で押しのける。
再びぶつかった二本の刃が、視線の間で火花を散らした。
「だけどまぁ、一度でも知っちまったもんはなかったことには出来ねぇだろう? あんまり人が死ぬところは、見たくねぇよなぁ」
ギリギリと刃と刃がかみ合う。
少しでも接点がずれれば、すぐに斬られる。
「そなたの相手をしている場合ではない」
「そんなさみしいこと、言うもんじゃねぇだろ?」
押しのけられるその手前で、後ろに飛び退く。
振り上げられた刀の下をくぐり抜け、背後に回る。
もう一度中段で向かい合った。
「これ以上邪魔立てすると、本気で許さん」
「望むところだ」
俺が刀を振り上げた、その時だった。
「葉山さま! 月星丸さまが見つかりました!」
斬りつける俺の刃の切っ先を、葉山と呼ばれた男はひらりとかわす。
「案内しろ」
「こちらです」
葉山は刀を鞘に収めた。
「おいコラ待て! まだ勝負はついてねぇぞ!」
月星丸確保の一報を受けてか、周囲に葉山の手下が集まってきた。
「そいつの相手はお前らに任す。手強いぞ、気をつけろ」
男の言葉を合図に、五本の刀が一斉に抜かれた。
その隙に、葉山は案内の男と走り出す。
「待て! 待てって言ってんだろこの野郎!」
斬りかかってくる仲間を、さっと二人ほど斬り倒す。
振り返った残りの三人は、刀を構えてはいるものの完全に及び腰だ。
「くそっ」
ここでこいつらの相手をしていれば、本当に月星丸が捕まってしまう。
俺は刀を鞘に収めた。
それを見た手下が叫ぶ。
「卑怯者! 神妙に勝負いたせ!」
「うるせぇ、お前らの相手にはならねぇよ!」
葉山の走り去った方向に向かって走り出す。
あいつに捕まる前に何とかしなければ。
夜廻りの笛が聞こえる。
あまり騒ぎを大きくしたくないのは、あいつらも同じはずだ。
二人組のお侍の姿が、今夜はやけに多い気がする。
声をひそめ辺りに鋭く目を光らせている様子は、いつもの遊び人どもの酔い歩きとは違う、異様な風景だ。
走りながらどれだけ耳をすませても、もめ事や騒ぎのような喧噪の気配はない。
葉山は本当に月星丸を見つけたのか?
それとも、すでに捕らえたか?
逃げ足の素早い奴だ。
どこかにうまく身を隠していれば助かるのだが。
立ち止まった四辻の中央でぐるりと辺りを見渡す。
夜の町はしんと静まりかえっていた。
今この瞬間にも、月星丸の命が危ういというのに。
気持ちだけが焦るばかりで、一向に埒が明かない。
俺は腕を組むと、ゆっくりと歩き出した。
葉山の手先なのか、時折角に立つお侍が俺をギロリとにらみつける。
俺は酒に酔ってふらふらと町をさまようふりをしながら、月星丸の姿を探していた。
依頼の仕事が終われば、その後は深入りしないのが鉄則だ。
確かに俺にしたところで、奴を追いかけて得することは何もない。
辻に立つ侍が俺を見ている。
立ち止まりはしない。
俺はただ歩いている。
万屋から受けた仕事は、月星丸を探すことであった。
その仕事は終わったのだ。
その後のことは気にすることはない。
あいつは自分が殺されると分かっていたから、帰りたくなかったのか。
逃げ回っていた奴の行動に、今なら何もかも合点がいく。
月星丸は、自分の身の置き場を求めてさまよっていたのだ。
俺は夜空を見上げた。
月星丸という妙にキラキラした名のわりには、今宵は雲に隠れて何も見えない。
途切れた切れ間から、わずかな星が見えるだけだ。
きっともう、葉山とかいう男に捕まったに違いない。
だとすれば、今頃はもうこの世の者ではないだろう。
どこの誰だか素姓は分からぬままであったが、もしかしたらその方がよかったのかもしれない。
俺は頭を激しく左右に振った。
もう考えるのはよそう。
萬平の言う通り、案じたところで何がどうなるわけでもない。
夜道を歩く。
いつもは静かな江戸の町が、今夜は落ち着きがない。
無数の足音と叫び声が、聞こえないはずの頭に響く。
「くそっ、あの野郎どこに逃げた」
夜道を急ぐお侍の姿を見かける。
ひそひそと人目を気にして交わしている言葉の数々。
その声をたどりながら俺は夜道を歩く。
彼らのささやき声に導かれるようにやってきたのは、花街の近くだった。
この辺りは夜でも人の出入りが多く通りも明るい。
「やぁ、あんたまだいたのか」
妖光漂う町へと続く門の前に立っていたのは、葉山だった。
「そんな格好のままで遊びに来るなんて、えらい度胸だな」
この男は、裃姿の正装だ。
「女郎になんぞ興味はねぇ」
そう言うと、葉山はゆるりと柱に背を預けた。
「一仕事終わったんでね、帰る前に一杯くらいひっかけて帰ろうと思っただけだ。用がないなら、あんたもどうだ?」
「あの女をどうした」
葉山は笑った。
「裏家業の仕事人が、女に入れあげてちゃぁざまぁねぇな」
「殺ったのか」
「知らねーよ」
だるそうにうつむいて、にやりと笑った。
「仕事が終われば後のことは知らんぷりだ。そうだろ?」
「あんた、あの女の家の者じゃないのか」
この男は、何もかもに全く興味がないような顔をしている。
「おまえ、本当に何も知らないんだな。ま、だからいいのかも知れねぇな。気楽なご身分ってやつだ、うらやましいよ」
葉山はくるりと背を向けた。
「じゃあな、後のことは知らん。俺の仕事は終わった。それだけだ」
花街の巨大な門をくぐり、喧噪の中に消えていく。
「くそっ」
月星丸は、どうなった?
葉山の下っ端らしきお侍も、そこに何人か来ていた。
そいつらを引っ張りだして吐かせるには、ここでは人の目が多すぎる。
「あ、お侍さま、先ほどは失礼いたしました!」
にっこにこの笑顔で、つい先ほど囲まれ、斬り合いを繰り広げたばかりの一人に揉み手で近寄る。
「いやーご苦労さまでした。今から一杯っすか? いいっすねぇ」
俺は懐から銭を取り出すと、両方の手の平にのせて神妙に差し出した。
「ま、これでどうか一杯やっておくんなせぇ」
三人の侍は、少しためらった様子を見せたが、それをしっかりと受け取った。
「さっきの坊ちゃんは、どう始末なさったんですか?」
「おい、『坊ちゃん』はどうしたかだってよ」
侍たちは笑った。
俺も一緒に笑う。
「これそこの浪人、物騒なことを申す出ない。あの方は我々がきちんとしかるべき所におくり届ける手配になっておる。案ずるな」
「あぁ、左様でございましたか。それは大変申し訳ないのでございますが、こちらにもこちらの事情ってもんがございまして」
俺はクイと、顎の先で町の暗がりを指した。
「ちょっとお伺いしたいことがあるんですがね、いかがなもんでございましょう」
「お前にもお前なりの事情があるってことか」
ゴクリと唾を飲む音が聞こえる。
男たちは俺の顔色を窺いながらも、急に声をひそめ、仲間内だけで話しているフリを始めた。
「そういえば、あの坊ちゃんの見張りには誰を立てたっけ」
「葉山さまが指名した男だよ」
「三つ先の通りの馬屋の裏小屋だったよな」
「後で様子を見に行ってやるか」
「そうだな。あいつだけでは頼りない」
「どうする?」
「まぁ腹ごしらえが先だ」
「なるほど、それからでもよかろう」
男の一人がちらりと見上げる。
「じゃあ、そういうことで我々に話せることは何もない。早急に去られよ」
「あぁ、お邪魔して申し訳ございませんでしたね」
素直過ぎる言動に苦笑いしつつも、俺は教えられた馬小屋へと急ぐ。
家人が主人の娘を売ってどうする。
そうじゃなきゃ暗がりに連れ込んで一発ぐらい殴ってやってもよかったが、今はそんなことをしている場合ではない。
花街から離れたとたんに、静けさと宵闇が戻ってくる。
小さな用水路沿いの風車小屋が、その馬屋の裏小屋だった。
見張りらしき男が、道の外で眠りこけている。
俺は小屋の中をのぞき込んだ。
敷き藁やら大工道具みたいなものを保管してある倉庫だった。
そこに人の姿はない。
裏の戸がわずかに開いている。
「おい、起きろ!」
俺は門番の男を揺り起こした。
「中の坊ちゃんはどうした?」
男は本当に眠っていたのか、目をこすって起き上がる。
「んぁ? なんだお前」
「誰か来なかったのか? 捕らえた男はどうした?」
見張りのはずの男は、どうも頭がすっきりしていない。
「どうもこうもねぇよ、中に入ってるだろ」
まだ寝ぼけているのか、ぐずぐずとして動こうとしないばかりか、もう一度眠りにつこうとしている始末だ。
「このどこに捕らえてあると言うのだ、言ってみろ!」
俺は扉を開けた。
もぬけの空だ。
その様子を見て、男はようやく事態を飲み込んだらしい。
「あれ? どこへ逃げやがった!」
俺は部屋の中央の柱に近寄り、月星丸の痕跡を調べる。
「この柱に結びつけてあったのか?」
「は? 何いってんだ、そんなこと葉山さまがするわけねぇ」
「騒がれないように、さるぐつわとかは?」
「お前は誰と勘違いしてるんだ? そんな乱暴するわけがないだろう」
その言葉に、俺の脳みそは混乱を始める。
「月星丸を捜してたんじゃないのか?」
「しーっ、お前さん声がでけぇよ」
男はびくびくと回りを見渡した。
「あー逃げられちまったのかなぁ、どうしよう。また叱られる」
「裏口のかんぬきは?」
「は? そんなもんがこの小屋にあるわけねぇ」
俺は痛む頭を抱えてため息をつく。
これじゃあまるで、逃がしてやったようなもんだ。
「あのお嬢ちゃんは、どこへ行った」
「あんたも雇われ人か?」
どうしてあの葉山という男は、こんな無能な男を意味のない見張りに立てたのだろう。
「俺に葉山さまの考えは分かんねぇよ。あのお人は性格がはっきりしていて、計算高いお方だからな。自分の分に合わないことは絶対になさらねぇ」
男は両腕を組んで一人で感心している。
「ま、あんたにもまだ汚い仕事が残ってんだろ。しょうがねぇよな、上手いことやんな」
俺はその男に背中を叩かれ、なぜか励まされた。
「下っ端仕事は、辛ぇよな」
俺が小屋を出ようとすると、男は手を振って見送ってくれる。
この男は、月星丸に逃げられたことを何とも思っていないのだろうか?
とりあえず、月星丸が捕らえられていたはずの小屋の裏口に立って辺りを見渡す。
ちっ、こんなことなら、さっきの葉山とやらと一緒に飲んでた方が、マシだったかもしれねぇな。
月星丸が一度捕らえられて、また逃げ出したとしたら、どこへ逃げる?
普通は反対方向だよなぁ。
俺は後ろを振り返った。
ここからでも、花街の空だけは明るく瞬いているのが見える。
俺はその光に背を向けて歩き出した。
「おやこれは、こんなところでお会いするとは」
俺に声をかけてきたのは、提灯を手にした萬平だった。
酒のにおいがする。
「寄り合いでもあったのか」
「まぁそういうところでございます」
「あの子どもをみかけなかったか?」
「あの子どもとは?」
ほろ酔いの萬平がとぼける。
彼はくすりと笑った。
「さて、もうあなたには関係のないことでございましょう。私は知りませんよ。あなたも早く帰ってお休みなさい」
萬平はふらふらと歩き出した。
「依頼の仕事に深入りするなんて、この家業には御法度ですよ」
そんなことは言われなくても分かってるさ。
俺は舌を打ち鳴らす。
だけどどうしても気になっちまうもんは、仕方ねぇだろ。
月星丸の明るい笑顔と、迎えが来た時の表情をなくした固い面を思い出す。
例えどんな人間だったとしても、にこにこ笑って暮らしてる方がいいに決まってるよなぁ。
大金を積んで捜し出し、殺すのかと思えば、簡単に逃がす。
何がしたいのか分からない。
迎えに来た葉山は月星丸の家の者ではないということか?
もしあの男がそうでないとすれば、本当の依頼主は誰だ?
夜道をふらふらと彷徨う。
花街から離れるにつれ、ますます夜は静かに深くなっていく。
この辺りまでが限界か。
俺は町の外れに広がる原野をながめた。
もしかしたら、長屋に戻っているかもしれない。
俺にはもう、そう願うよりほかになかった。
くるりと背を向けて、また町の中心に向かって歩き出す。
ふいに闇夜を駆け抜ける足音が聞こえた。
俺は表通りに飛び出す。
ばったりと鉢合ったのは、河原で月星丸を斬り殺そうとしていた輩の一人だった。
「お前、あの坊ちゃんをどうした!」
俺が叫ぶと、男は立ち止まった。
「は? 坊ちゃん? おめぇさん、アレを坊ちゃんだと思ってんのか?」
俺はスラリと刀を抜いた。
「男に化けた女だ。そうと知っての所行か」
とたんに男は焦ったように、両手を胸の前で激しく振った。
「おいおい、勘弁してくれよ。あんたはどちら側に雇われたんだい? どっちに転んだって、そんなムキになるような話しでもないだろ」
この男は、どうやらある程度の事情には詳しいらしい。
俺は刀を鞘に収める。
「殺ったのか」
「まだだよ。あんたに邪魔されたんじゃねぇか」
男は呆れたようにため息をついた。
「まぁ、商売的にはこうやって逃げてくれた方が、儲かるのかもしれないけどな」
俺が横目でにらむと、男は肩をすくめた。
「もう適当なこと言って、誤魔化しとくのが一番かもな。俺もそろそろ引き上げようかと思ってた頃だ」
男は歩き出す。
俺も後に続いた。
「誰に雇われた」
「お前さん、正気か?」
男は腕を組み、俺を下から上へと見渡した。
「ははん、あんた、何にも知らされないでこの仕事を受けてんな」
「俺は誰からも仕事として受けてない」
とたんに男は、プッと吹き出して笑った。
「じゃあなんだ、人助けのつもりか? それともあのお嬢ちゃんに入れあげたか?」
男は笑い転げた。
「やめとけ、あんなお嬢さんはてめぇとは身分も家柄も違いすぎるよ。変な夢を見る前にさっさとあきらめな」
俺が立ち止まると、男は慌てて飛び退く。
「おおっと。こんなくだらない仕事で刀傷でももらってちゃあ、世話ないや。じゃあな、お前さんもあんまり深入りしてねぇで、さっさとキリをつけておいた方が、身の為だぜ」
足早に男は立ち去る。
そんなこと、お前らなんかに言われなくても重々承知の上ってもんだ。
俺はため息をつく。
関わるな、か、確かにそうだ。
そのままふらふらと町を彷徨い続けていたことに、俺は日が昇るのを見て気がついた。
疲れた足を引きずって、俺は万屋へと向かった。
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