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第二章 初夏
劫火 前
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深夜だと言うのに現場周辺は騒然とし、締め出しを食らったマスコミの人や見物人も道に出ていた。
赤色灯を焚いた警察車両が何台も停まっている。私達もその列に加わって、車を停めた。
連絡からまだ一時間経っていない。深夜だから道が空いており、移動は順調だった。
到着したマンションは十五階建てで、築年数こそ嵩んでいるが、立地を考えると販売開始時はそこそこの値がしただろうと思われた。エレベーターは一基、敷地内に駐車場あり、駅徒歩七分。最寄り駅は、石川と秦野が待ち合わせをした南千住である。
エントランスのディスプレイでは住人向けのお知らせがスライド上映されていた。二十四時間対応の管理会社の連絡先、同じく二十四時間使えるゴミ捨て場のマナーについて、ほかにはエントランスでのボール遊び禁止。いかにも生活に密着した場だ。
現場の部屋は鑑識の人たちがまだ作業をしているところで、私たちはそれを邪魔しないようにそうっと行動することを求められた。
秦野の死因はやはり絞殺だった。下半身が刃物で滅多刺しにされているが、出血の状況からそれは死後にやられたもののようだ。腹部には文字が書かれていたが、なんと書かれているか判読できなかった。一度書いたものを、上から手でこすってぐしゃぐしゃにしたらしい。
検出された指紋は、大至急で照合中。
ぐったりした顔の管理会社の社員が、エントランスで、警察の質問に辟易した口調で受け答えしていた。
その人にカメラの映像データを提出してもらい、確認の準備をしていると、十五階の現場の人に呼びだされた。室内に残されていた端末のことで確認してほしいことがあるとのことだ。
「端末は俺が確認してくる。三小田は、カメラを確認しろ」
指示をしながらも、神前さんは気が急いているのか、エレベーターの方へ走っていった。最上階の十五階が、秦野の部屋のある階だ。
彼が急ぐ気持ちはわかった。まだ駒田は近くにいるかもしれない。今足取りがつかめたら、捕まえられる可能性もある。
私は、まず十五階の廊下の映像を見た。
とくに分析プログラムに頼らずとも、出入りの人数が限られるマンションの、さらに特定の人物しか出入りしない階の映像の確認は、さほど時間がかからない。
秦野は一番奥の角部屋に住んでいる。
そこへ、午後八時過ぎに警察官が尋ねてきて、しばらくして帰っていった。
その後、九時半ころに男がやってきて、鍵をあけて部屋に入っていった。秦野だ。
画像を拡大して補正すると、死体の写真と同じ顔だ。表情はだいぶ違って、ふてぶてしくしぶとそうな印象だった。
それから一時間半ほどで、訪問者があった。
小さめのダンボールを抱えた宅配業者のような出で立ちの男だ。ジャンパーを着て、つば付きの帽子を目深に被っている。帽子のせいで顔は見えなかった。
彼はドアが開くと、顔を出した秦野に何かを押し当てるような仕草をした。秦野がその場で膝を折る。その顔面に膝を叩き込んだ男は、ドアの中に悶絶する秦野を素早く引っ張り込んだ。
閉まったドアが再び開いたのは、約一時間後だった。男が出てきて、エレベーターに向かって歩いていく。帽子はなくなっていた。
顔を拡大して熟視し、確信する。駒田だ。頬が腫れている。さらに、右足を引きずっているように見える。秦野を襲ったとき、負傷したか。
一階のエレベーター前の映像に切り替えた。男が十五階でエレベーターに乗り込んだ時間から再生する。足を引きずりながら男はエレベーターを降り、エントラスの方へ向かって歩く。
今度はエントランスの映像を再生する。駒田はなかなか姿を見せない。
映像内の時間が十分もしない間に、制服警官が管理会社の社員とともに、エントランスからエレベーターの方へ歩いていった。
ほんとうに入れ違いだったんだ。
行き着いた手がかりに、頭の端がしびれる。駒田は警察が来たことに気づいて別ルートから逃走したのか。
端末を切り替え、十五階にいる神前さんに電話した。
「神前さん、映像確認しました。宅配業者を装った駒田が、秦野の部屋に踏み込んでいます。足と顔の負傷を確認しました。エントランスを通らずに逃走したようです」
慌てて、早口になってしまった。
『負傷の件はこっちでも聞いた。手当てしたようだ。血の着いたタオルやズボンが捨てられていた。クローゼットが物色された形跡もある。不審車両の目撃情報がないから、徒歩での逃走も視野に入れることになる。そう遠くへ行けないはずだ。服装や顔の写真を共有しろ、すぐに』
「はい」
短く返事をして、私は通話を切った。
全速力でなるべく鮮明になるように画像を調整して、共有にアップする。焦りで喉がひりついた。
「ねえ、あんたも警察?」
しゃがれた女声が飛んできた。私の手元を後ろから覗き込むようにして、初老の女性が立っていた。彼女は上下を灰色のスウェットで固め、足にはサンダルを履いていた。赤く染めたばさついた髪は肩ほどで断ち切られている。手には大きなゴミ袋を持っていた。このマンションの住人だろう。
私はさっと手元の端末を引き寄せて、胸に抱え込んだ。
端末は、正面から見ないと像が結べないよう加工されているが、それでも勝手に覗き込まれていい気はしない。
「はい、そうですが……」
距離をとろうとして一歩下がると、彼女は逆に一歩詰めてきた。
「あたし、十五階に住んでるんだけど、奥の部屋、何があったの?」
居住者とは言え、現場周辺をうろつかれては困る。誰かこの女性を連れて行ってくれと目で探すが、タイミング悪く対応できそうな人がいなかった。
「もしかして、奥の部屋の男がまたなにかやらかしたの? ほら、何年か前も聞き込みにきたのよ、警察が。児童買春したんでしょ。止めてほしいわよね、そういう物騒な人に部屋売るの。迷惑よ」
話を聞きたくてゴミ出しを理由にここに来たんだろうな。それで話しかけやすそうな私をターゲットにしたのか。自分の威圧感のない顔が憎い。神前さん、これは配置ミスですよ! いや、私がちゃんと対応すればいいだけの話だな。
「申し訳ありませんが、お部屋に戻っていただけますか。後ほど、担当が伺いますから」
むっとした顔をして、女性は私を睨んだ。
「うちに聞き込み来るなら、昼にしてね。これから寝たんじゃあ、朝には起きられないもの」
「あ、ちょっと」
私が制止する声を無視して、女性は歩いていってしまう。うろうろされてはまずい。
彼女は、エントランスとエレベーターの間にあるドアの前で立ち止まった。そこもオートロックのようだ。中からは出られるけど、外からは鍵がないと入れない仕様だと思う。
ここから犯人が出ていったのだろうか。
「触らないでください」
忠告は一瞬遅く、彼女はむんずとドアノブを掴み、ドアを開けてしまった。あちゃあと、私は頭を抱えた。
なおも彼女はずんずん歩いて、隣接している駐車場の裏にある小屋の前で立ち止まった。小屋のドアの前には、住民専用ゴミ捨て場と張り紙してある。
こんなときに、電話がかかってきた。神前さん、タイミング悪い!
「はい三小田ですすみません取り込んでるので折り返します」
早口で言ったが、彼はもっと早口だった。私の言葉を声量と滑舌で押し切ってくる。
『三小田、敷地の前で張っていた担当の話だと、ここに到着してからの出入りは、確実に全部見ていたそうだ。裏手の柵は高くて負傷者が乗り越えられる代物じゃない。いいか、駒田はまだ敷地内にいる可能性がある。慎重に――』
「へっ」
変な声がでたのは、神前さんの言葉の意味を一拍遅れで理解したのと、女性が小屋のドアノブを下に降ろしたからだ。彼女の肘が引かれる前に、外開きのドアが勢いよく開いた。
驚愕に、女性が大きく口を開けた。
のけぞる彼女に向かって、ドアの内側から手が伸びる。
私は、無意識のうちに女性を突き飛ばしていた。
体勢を崩し肩を思いっきりドアにぶつけ、がんっと大きな音がした。強い力で顎に掴みかかられ、反射で抵抗する。
大きくて分厚い、男の手だ。鉄の臭いが鼻をつく。
「いっ……」
灼熱感が右半身に走って、怯む。瞬時には、どこが痛んだか判断がつかなかった。
その隙に口を塞がれ後ろに回り込まれ、腕を掻い込まれた。
首筋に荒く熱い息が当たる。
絹を裂くような悲鳴がこだました。私のではない。眼前で盛大に尻もちをついた女性が、サンダルの片一方を投げ出して叫んでいる。
私は、痛みに目がくらみ動けなかった。そうでなくても、喉元になにか冷たいものを押し当てられて、本能的に身がすくんでいた。
自分の呼吸音がうるさくなってきて、女性の悲鳴が聞こえなくなった。きんという耳鳴りもする。
凶器を突きつけられたまま、がっと襟の後ろを掴まれ一気に引き下ろされた。ジャケットの前をとめていたボタンが弾ける。
引き下ろされたジャケットを手首に巻き付けられ、完全に両腕を封じられてしまった。
海外の人質事件の実例で、ボトムスを降ろされて足枷にされてる映像を思い出した。あれだけはやめて。同僚の前で身ぐるみ剥がされたら立ち直れない。なんて見当違いなことを思う。すべて命あっての物種だというのに。
恐る恐る自分の体を見下ろすと、やはり刃物が鎖骨あたりに当てられていた。その下の右腕と右脇腹が真っ赤に染まっている。
膝から力が抜けそう。唇を噛んで耐える。昨日――もう一昨日かな――は、たらふく肉を食べたし、今日は血が増えているから大丈夫。きっと。たぶん。……たぶん。
ふらついた足がなにかを踏んづけた。ジャケットに入れていた警察手帳だった。なぜかそれで、ふっと耳鳴りが去っていった。
赤色灯を焚いた警察車両が何台も停まっている。私達もその列に加わって、車を停めた。
連絡からまだ一時間経っていない。深夜だから道が空いており、移動は順調だった。
到着したマンションは十五階建てで、築年数こそ嵩んでいるが、立地を考えると販売開始時はそこそこの値がしただろうと思われた。エレベーターは一基、敷地内に駐車場あり、駅徒歩七分。最寄り駅は、石川と秦野が待ち合わせをした南千住である。
エントランスのディスプレイでは住人向けのお知らせがスライド上映されていた。二十四時間対応の管理会社の連絡先、同じく二十四時間使えるゴミ捨て場のマナーについて、ほかにはエントランスでのボール遊び禁止。いかにも生活に密着した場だ。
現場の部屋は鑑識の人たちがまだ作業をしているところで、私たちはそれを邪魔しないようにそうっと行動することを求められた。
秦野の死因はやはり絞殺だった。下半身が刃物で滅多刺しにされているが、出血の状況からそれは死後にやられたもののようだ。腹部には文字が書かれていたが、なんと書かれているか判読できなかった。一度書いたものを、上から手でこすってぐしゃぐしゃにしたらしい。
検出された指紋は、大至急で照合中。
ぐったりした顔の管理会社の社員が、エントランスで、警察の質問に辟易した口調で受け答えしていた。
その人にカメラの映像データを提出してもらい、確認の準備をしていると、十五階の現場の人に呼びだされた。室内に残されていた端末のことで確認してほしいことがあるとのことだ。
「端末は俺が確認してくる。三小田は、カメラを確認しろ」
指示をしながらも、神前さんは気が急いているのか、エレベーターの方へ走っていった。最上階の十五階が、秦野の部屋のある階だ。
彼が急ぐ気持ちはわかった。まだ駒田は近くにいるかもしれない。今足取りがつかめたら、捕まえられる可能性もある。
私は、まず十五階の廊下の映像を見た。
とくに分析プログラムに頼らずとも、出入りの人数が限られるマンションの、さらに特定の人物しか出入りしない階の映像の確認は、さほど時間がかからない。
秦野は一番奥の角部屋に住んでいる。
そこへ、午後八時過ぎに警察官が尋ねてきて、しばらくして帰っていった。
その後、九時半ころに男がやってきて、鍵をあけて部屋に入っていった。秦野だ。
画像を拡大して補正すると、死体の写真と同じ顔だ。表情はだいぶ違って、ふてぶてしくしぶとそうな印象だった。
それから一時間半ほどで、訪問者があった。
小さめのダンボールを抱えた宅配業者のような出で立ちの男だ。ジャンパーを着て、つば付きの帽子を目深に被っている。帽子のせいで顔は見えなかった。
彼はドアが開くと、顔を出した秦野に何かを押し当てるような仕草をした。秦野がその場で膝を折る。その顔面に膝を叩き込んだ男は、ドアの中に悶絶する秦野を素早く引っ張り込んだ。
閉まったドアが再び開いたのは、約一時間後だった。男が出てきて、エレベーターに向かって歩いていく。帽子はなくなっていた。
顔を拡大して熟視し、確信する。駒田だ。頬が腫れている。さらに、右足を引きずっているように見える。秦野を襲ったとき、負傷したか。
一階のエレベーター前の映像に切り替えた。男が十五階でエレベーターに乗り込んだ時間から再生する。足を引きずりながら男はエレベーターを降り、エントラスの方へ向かって歩く。
今度はエントランスの映像を再生する。駒田はなかなか姿を見せない。
映像内の時間が十分もしない間に、制服警官が管理会社の社員とともに、エントランスからエレベーターの方へ歩いていった。
ほんとうに入れ違いだったんだ。
行き着いた手がかりに、頭の端がしびれる。駒田は警察が来たことに気づいて別ルートから逃走したのか。
端末を切り替え、十五階にいる神前さんに電話した。
「神前さん、映像確認しました。宅配業者を装った駒田が、秦野の部屋に踏み込んでいます。足と顔の負傷を確認しました。エントランスを通らずに逃走したようです」
慌てて、早口になってしまった。
『負傷の件はこっちでも聞いた。手当てしたようだ。血の着いたタオルやズボンが捨てられていた。クローゼットが物色された形跡もある。不審車両の目撃情報がないから、徒歩での逃走も視野に入れることになる。そう遠くへ行けないはずだ。服装や顔の写真を共有しろ、すぐに』
「はい」
短く返事をして、私は通話を切った。
全速力でなるべく鮮明になるように画像を調整して、共有にアップする。焦りで喉がひりついた。
「ねえ、あんたも警察?」
しゃがれた女声が飛んできた。私の手元を後ろから覗き込むようにして、初老の女性が立っていた。彼女は上下を灰色のスウェットで固め、足にはサンダルを履いていた。赤く染めたばさついた髪は肩ほどで断ち切られている。手には大きなゴミ袋を持っていた。このマンションの住人だろう。
私はさっと手元の端末を引き寄せて、胸に抱え込んだ。
端末は、正面から見ないと像が結べないよう加工されているが、それでも勝手に覗き込まれていい気はしない。
「はい、そうですが……」
距離をとろうとして一歩下がると、彼女は逆に一歩詰めてきた。
「あたし、十五階に住んでるんだけど、奥の部屋、何があったの?」
居住者とは言え、現場周辺をうろつかれては困る。誰かこの女性を連れて行ってくれと目で探すが、タイミング悪く対応できそうな人がいなかった。
「もしかして、奥の部屋の男がまたなにかやらかしたの? ほら、何年か前も聞き込みにきたのよ、警察が。児童買春したんでしょ。止めてほしいわよね、そういう物騒な人に部屋売るの。迷惑よ」
話を聞きたくてゴミ出しを理由にここに来たんだろうな。それで話しかけやすそうな私をターゲットにしたのか。自分の威圧感のない顔が憎い。神前さん、これは配置ミスですよ! いや、私がちゃんと対応すればいいだけの話だな。
「申し訳ありませんが、お部屋に戻っていただけますか。後ほど、担当が伺いますから」
むっとした顔をして、女性は私を睨んだ。
「うちに聞き込み来るなら、昼にしてね。これから寝たんじゃあ、朝には起きられないもの」
「あ、ちょっと」
私が制止する声を無視して、女性は歩いていってしまう。うろうろされてはまずい。
彼女は、エントランスとエレベーターの間にあるドアの前で立ち止まった。そこもオートロックのようだ。中からは出られるけど、外からは鍵がないと入れない仕様だと思う。
ここから犯人が出ていったのだろうか。
「触らないでください」
忠告は一瞬遅く、彼女はむんずとドアノブを掴み、ドアを開けてしまった。あちゃあと、私は頭を抱えた。
なおも彼女はずんずん歩いて、隣接している駐車場の裏にある小屋の前で立ち止まった。小屋のドアの前には、住民専用ゴミ捨て場と張り紙してある。
こんなときに、電話がかかってきた。神前さん、タイミング悪い!
「はい三小田ですすみません取り込んでるので折り返します」
早口で言ったが、彼はもっと早口だった。私の言葉を声量と滑舌で押し切ってくる。
『三小田、敷地の前で張っていた担当の話だと、ここに到着してからの出入りは、確実に全部見ていたそうだ。裏手の柵は高くて負傷者が乗り越えられる代物じゃない。いいか、駒田はまだ敷地内にいる可能性がある。慎重に――』
「へっ」
変な声がでたのは、神前さんの言葉の意味を一拍遅れで理解したのと、女性が小屋のドアノブを下に降ろしたからだ。彼女の肘が引かれる前に、外開きのドアが勢いよく開いた。
驚愕に、女性が大きく口を開けた。
のけぞる彼女に向かって、ドアの内側から手が伸びる。
私は、無意識のうちに女性を突き飛ばしていた。
体勢を崩し肩を思いっきりドアにぶつけ、がんっと大きな音がした。強い力で顎に掴みかかられ、反射で抵抗する。
大きくて分厚い、男の手だ。鉄の臭いが鼻をつく。
「いっ……」
灼熱感が右半身に走って、怯む。瞬時には、どこが痛んだか判断がつかなかった。
その隙に口を塞がれ後ろに回り込まれ、腕を掻い込まれた。
首筋に荒く熱い息が当たる。
絹を裂くような悲鳴がこだました。私のではない。眼前で盛大に尻もちをついた女性が、サンダルの片一方を投げ出して叫んでいる。
私は、痛みに目がくらみ動けなかった。そうでなくても、喉元になにか冷たいものを押し当てられて、本能的に身がすくんでいた。
自分の呼吸音がうるさくなってきて、女性の悲鳴が聞こえなくなった。きんという耳鳴りもする。
凶器を突きつけられたまま、がっと襟の後ろを掴まれ一気に引き下ろされた。ジャケットの前をとめていたボタンが弾ける。
引き下ろされたジャケットを手首に巻き付けられ、完全に両腕を封じられてしまった。
海外の人質事件の実例で、ボトムスを降ろされて足枷にされてる映像を思い出した。あれだけはやめて。同僚の前で身ぐるみ剥がされたら立ち直れない。なんて見当違いなことを思う。すべて命あっての物種だというのに。
恐る恐る自分の体を見下ろすと、やはり刃物が鎖骨あたりに当てられていた。その下の右腕と右脇腹が真っ赤に染まっている。
膝から力が抜けそう。唇を噛んで耐える。昨日――もう一昨日かな――は、たらふく肉を食べたし、今日は血が増えているから大丈夫。きっと。たぶん。……たぶん。
ふらついた足がなにかを踏んづけた。ジャケットに入れていた警察手帳だった。なぜかそれで、ふっと耳鳴りが去っていった。
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