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「んん……!!」

 痛みでぼんやりしている膣のなか、男根が震えている。ぷは、と唇を離して、イオは力なくヨシカを見上げた。顔の横に腕を突いている彼は、ちょっとだけ息を乱している。

「あぃ……いた……」

 小さな痛みを伴ってヨシカのものが抜けていった。
 鼠径部の感覚がおかしい。膣にはまだ異物が残っているような違和感がある。イオは太ももをすり合わせた。膣口から血と精液の混じり合ったものがこぼれ出ている。ワンピースのスカートは勝手にずり上がっていたから無事だが、シーツが汚れてしまった。

「ごめんなさい、ヨシカ、シーツが……」
「構わない。それより、服を脱いだほうがいい。汚れたら困るだろう」
「あ、大丈夫です。シャワーを貸してください。あとはタオルも」
「シャワー? これから汗をかくのに必要ないだろう」
「ちょっと、待ってくださ……ひああ!」

 ヨシカがてきぱきと裸になるので、イオは手で顔を覆わざるを得なかった。反射だ。
 指の隙間からちらっと見ただけでも、全然体つきが違うのはわかった。直線的で、骨と筋肉の形がよくわかる。膝や肘ははっきりと骨のつくりが見て取れた。
 服を完全に床に放り出し、ヨシカが口の端を上げた。

「することをしておいて、いまさら何を恥ずかしがっているんだかわからない。興味深い反応だ」
「そ、そういう問題じゃ、やっ、だめ!」

 無理矢理ワンピースを剥ぎ取られて、絹の靴下だけになってしまう。靴下を見たヨシカは一瞬考え込むような顔をしたが「まあ、またの機会に」と謎の一言を残し、つま先を引っ張ってイオを完全な裸にした。
 イオはなぜ腕は二本しかないのかと嘆きながら、胸と股間を隠して小さくなる。

「検査であれだけ触ったし観察したのに、恥ずかしがるのか」
「そうです、もうじゅうぶん触ったし見たでしょう? 目的は果たしましたよね!」

 にじり寄ってくるヨシカに腕を突き出して接近をこばむ。彼の男性器はまた勃起していて、先程までアレが自分の身体に入っていたのかと思うといたたまれない。
 残念ながら、腕の長さ比べはヨシカに軍配が上がった。腕力も、手の大きさもだ。片手で両手首をひょいとひとまとめにされたかと思うと、くるりと身体を反転させられて、背中から抱き込まれた。硬い胸が背中に当たる。そのまま、ふたりでシーツに倒れ込んだ。

「きゃあっ」

 密着されると、お尻に彼のものが当たってしまう。逃げようと引いた腰を抱え込まれ、無遠慮な指が腫れぼったくなっている粘膜の谷に触れてきた。

「あっ……はぁあ……」

 ヨシカの指は、痛む膣口を慎重に避け、敏感な粘膜をそっと撫でていく。
 耳たぶを後ろから甘噛みされると、途端に身体の力が抜けてしまった。

「二年してすっかり成長したかと思ったら、まだだな。イオ、君にはもう、明確な役割も義務もない。だから生殖のためだけの存在ではない。それを教えてやろう」

 膣口から新たに溢れ出てきたものを、陰核に優しく揉み込まれる。下腹部がきゅうきゅうと切なく疼くその愛撫に思考を放棄しそうになりながらも、イオはなんとか言葉を発した。

「んは、……あ、ヨシカ、またするんですか……? 痛いから、ちょっと、休みたいです……」
「大丈夫、挿入はしない」

 そういったものの、彼の男性器が粘膜の谷に当てられた。とっくに、先程と同じ大きさに成長している。

「はあんっ! あっ、……あ、ああ」

 膣口からこぼれているものをまとわりつかせた男性器が、陰核をこすりあげた。ヨシカの指が再び充血しだした小さな肉の粒の包皮をくるりと剥く。
 イオの腰が跳ねた。

「あはっ、……あ、だめ、です……これ、ん……また、わたし、……っあ」
「なぜだめだ」
「だって、っ、きもち、い……また、あれが……っああ」
「生殖行為のためだけに性交するわけじゃないと、君だって知ってるだろう」
「でも、っひ、……っこ、困りますっ……!」
「さっきも言ったが、君が泣いたり困ったりすると、つい、嗜虐心がくすぐられる」
「い、意地悪! そんなの、ひどいっ、やぁんっ」

 どうやら、ヨシカは笑ったらしい。耳元で吐息が震えて、首筋に口づけされた。温かく柔らかなものがうなじをぬろりと這っている。ぞくぞく、四肢が脱力するような寒気に襲われ、イオは白い身体を小さく震わせた。

「脚をしっかり閉じてくれ」

 腹が立っているのに、どうして自分はヨシカの言葉に従ってしまうのだろう。誘導されるがままに肘をついて上半身を起こした。振り返り、苦しい角度でキスをする。脚の間を、熱い杭が行き来している。まとわりつく互いの体液が潤滑剤になって、ぬるぬると滑るように粘膜を刺激する。しびれるような甘い疼きが途切れなくやってきて、気を抜くと脚が開いてしまう。

 ヨシカの舌で、舌の裏をくすぐられるのが気持ちいい。もっとして、と懸命に口を開いてねだる。言葉にしなくても、彼はそれを察して応えてくれた。
 濡れた指が、臍の下から上がってきて、赤く尖った乳首をきゅっとつまんだ。腰の奥にくすぶる熱がひときわ重く揺れ、絶頂の訪れを予感させる。

 いつの間にか、イオは自分から熱くなった粘膜を押し当てるように、腰を動かしていた。はしたないと思っても、満たされない切なさを抑えきれない。

「あ、ぁ、……もう、だめ……あはぁ……っあ、だめ、なの……っ」
「イオ」

 ヨシカはなぜ今、切ない声で名前を呼ぶんだろう。シーツを掴んで震えている手を上から握ってくれるのか。
 胸がきゅうっと疼いたとき、腹で密度を上げていた熱の塊が、ぱちんと弾けた。

 声にならない声をあげ、イオは身を震わせる。体が硬直するような大きな快楽の波がゆっくりと引いていき、ヨシカに抱きしめられてそっとシーツに寝かされた。
 後ろから回されて、胸の前で交差してなお余裕のある長い腕が、イオの肩をゆっくりと叩く。その一定のリズムと、背中に感じる体温とを味わいながら、イオは快楽のさざなみにゆったりと揺蕩っていた。

「不思議です、わたし、今すごく……」
「すごく?」

 満たされていてちょっとだけ疲れている。胸の奥が甘く疼いて、ずっとこうしていたいような気持ち。自分の知っている単語で、最も意味合いの近いものを当てはめた。

「すごく、しあわせ、かもしれません」
「かもしれないとは曖昧な。どうしてそう感じる?」

 そろりと腕の中で体を回して振り返ると、大好きな苦味のある笑顔のヨシカがいた。口づけをする。彼の笑顔と口づけは、胸を満たす温かなものに甘さを加えてくれた。

「いつもヨシカはどうして、なぜ、ばかり。わたしよりそういうことに詳しいんだから、たまには自分で考えてみたらどうです」

 言いたいことだけ言って、噛み付くようにキスをする。唇同士を押し当てながら、ヨシカが器用に喉の奥で笑っていたが、それもやがて水音だけになる。

 イオは、太ももに当たる未だ衰える兆しのない彼の高ぶりに手を添えた。どうするのが正しいかはわからないけれど、どうしたいのかはじゅうぶん伝わったらしい。ヨシカの手が上から包み込んで、教えてくれる。彼はもう片方の手を伸ばし、まだときおり絶頂の余韻に震えるイオの媚肉に触れてきた。

「あ、やぁ……またぁ……っ」

 ヨシカの手を止めようと伸ばした指が、逆に絡め取られて、自分の充血した陰核に添わされる。さしたる抵抗もできないまま、イオは自分の手淫に腰をくねらせることになった。
 右手に触れる彼の熱は、いつ破裂してもおかしくないように思えた。
 目を伏せていたヨシカが、はあ、と切なげなため息をついた。どうして、自分まで切なくなるのか。わからないが、どうしてもいいたいことがあって、イオは唇を懸命に動かした。

「わたし、ヨシカのことが、好きです、だからっ……」

 そのさきが肝心なのに、さっきの意趣返しのように口づけで言葉を封じられてしまう。それでもよかった。たぶん、ヨシカはわかっている。

 舌で口の中を慰め合いながら、互いに熱を高めあって。
 イオが目の眩む絶頂を迎えて鼻にかかった声をあげたとき、ヨシカも一瞬息を呑み込み、熱いものを小さな手と白い太ももに吐き出した。

 イオは疲労感に抗えず、まぶたを閉じる。心地よいさざなみにうとうとしていると、頬や額に口づけされる感触があった。
 胸に満ちるものがとろりと甘く苦くなり、彼女は目をつぶったまま微笑んだ。
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