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第二十九話
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食事をしたあとの二人は、街中を散歩しながら今後の訓練予定について話し合っていた。
「それじゃあ、基本的に週末の三連休の初日に一緒に訓練をして、あとの二日は自由行動ってことでいいかな?」
「そうですね。都合が悪い時は事前に連絡をして調整ということでお願いします。私も訓練して、強くなったら冒険者登録したいです!」
アレクシスが冒険者として活躍している話を聞いて、彼女も興味を持ち、自分でも登録したいという考えが生まれていた。
しかし、自分とアレクシスの力の差を理解しているため、強くなったらという前置きをつけていた。
「そうしたら、僕とパーティを組んで一緒に依頼をこなしていこう! 組んだらパーティ名とかも決めたいね! 他にも仲間がいるといいかもしれないけど……」
アレクシスはリーゼリアと共にモンスターに立ち向かうことや、一緒にダンジョンに潜ることなどを夢見て盛り上がっているが、ふと視線を彼女に向けると口をあけて驚いている。
「あれ? 嫌だった? まあ、リーゼだったら色々なところから誘いが来るだろうから、別に冒険者になったからといって僕と組まなければいけないということもないんだけど……むしろ、他の熟練の人や貴族の人と組んだほうがためになるかもしれないし……」
リーゼリアから反応がなかったため、アレクシスは徐々に弱気になって断られた場合でも、他にも色々選択肢があることを口にしていく。
「い、いえいえ! ち、違います! むしろお師匠様ほどの方であれば私なんかと組まなくても、引く手あまたかと思って……私と組んでもらえるんですか?」
今度はリーゼリアが自信なく、恐る恐るお伺いをたてる。
「もっちろんだよ! リーゼは僕の一番の友達だからね! やっぱり気心しれた相手と組んだほうが、戦いの最中に背中を預けられるし戦いのクセなんかも理解しやすいからね!」
「一番の友達……はい、お願いします!」
最も尊敬している人物から一番の友達と呼ばれたことが嬉しく、リーゼリアは思わず手を前にだして握手を求めていた。
一瞬キョトンした表情になるアレクシスだったが、すぐに意味を理解して彼女の手をとる。
「うん、よろしくね」
まるで告白のオッケーを出すようだなと心の中で思いながらも、アレクシスは笑顔で彼女と握手をかわした。
その様子を建物の陰から見ている者がいた。
「ぬおおお、あやつお嬢様の手をなれなれしく握りおってええええ!」
悔しげにギリギリと歯ぎしりしながらにらみつけているのは、今回の外出でリーゼリアのお供をしていた護衛の騎士だった。
大柄な彼は建物に隠れていても目立つ存在であり、道行く街の人々から注目を浴びていた。
「アレクシス君……リーゼリアさん……」
それとは別に、木の陰から二人のことを見つめている女の子の姿があった。
アレクシスはなんとなくこちらの視線に気づいてはいたが、敵意がこもっていないため気にしないことにしていた。
その視線の主の正体は、次の休日にわかることとなる。
「さて、それじゃあ今日もここで訓練しよう」
「はい!」
先週同様二人の姿は魔法演習場の前にいた。教師の許可はとっており、鍵も前回同様借りてきていた。
鍵を開けて中に入って電気をつけていると、後からもう一人女子生徒が入ってくる。
「あれ? えっと君は確か同じクラスの……」
アレクシスは彼女に見覚えがあったが、名前が出てこない。
「ユリアさん、ですよね?」
リーゼリアは彼女のことを覚えており、愛称で呼ぶ。
「は、はい。ユリアはユリアニックといいます、です。見てのとおり、猫の獣人、です」
緊張しているのか、胸元を押さえている彼女はおどおどしながら自己紹介をする。
同年代のアレクシス、リーゼリアと比べても小柄な彼女は俯きながら話すため、より小さく見える。
「ユリアよろしく! 僕はアレクシス。アレクでいいよ」
「それでは私も……リーゼリアです。リーゼと呼んで下さい。ユリアさんよろしくお願いします」
二人とも他のクラスメイトとのかかわりが少なかったため、改めてユリアに自己紹介をする。
「アレクくん、リーゼさん、よろしく、です」
ユリアニックはペコリと頭を下げる。互いに自己紹介をしたことで、少しだが打ち解けた様子を見せる。
「さて、お互いの名前を改めて知ったところで……ユリアはどうしたの? 僕たちに何か用事があって来たんだと思うけど……?」
アレクシスの質問にユリアニックはビクリと身体を振るわせて、しかし顔をあげて何か決意した様子で二人に視線を向ける。
「あ、あの! お、お二人はこうやって訓練をしているんですよね?」
ユリアニックは先週も二人がここにやってきていたのを見かけていた。
そして、街で二人が話をしているのもたまたまではあったが聞いていた。
リーゼリアはアレクシスのことをお師匠様と呼んで、師事をあおいでいる。
十分な成績を残しているリーゼリアが、他者に教えを受けているのを見て、自分もこのままではダメだと奮い立たせていた。
「そう、だね。僕が少しリーゼに指導をしている形になるかな? まあ、同じ年齢の僕が教えられることなんてたかがしれているけどね」
アレクシスは肩を竦めながら苦笑する。
「えっと、その、私はちょっと他より劣っている部分があるので、なんとかそこを改善できないかとアレク君に教えてもらっているんです」
第三者がいるため、お師匠様とは呼ばずにアレク君と呼んでいた。
「あ、あの、ユ、ユリアも!」
どもりながらも一生懸命な様子のユリアニックはそこまで口にして言葉が止まる。
しかし、アレクシスはただ頷くだけで、決して急かさずに彼女の言葉を待つことにする。
リーゼリアもアレクシスの判断に任せることにしており、余計な口は挟まずに待っている。
「ううう、リ、ユリアも、教えてほしい……! です!」
しばらく待っている、ユリアニックはなんとか言いたいことを振り絞って口にした。
覚悟を決めて、恥ずかしさや、断られるかもしれない恐怖心を乗り越えて思いを伝えてきた彼女を見てアレクシスは笑顔でゆっくりと頷いた。
「うん、ユリアは何か悩んでいるんだね。それはもしかしたら魔力なのかもしれない、魔眼のことなのかもしれない、勉強のことかもしれない。で、一人ではその問題を乗り越えられないと思って僕のところまで来たんだね?」
アレクシスはユリアニックの表情と言葉から、彼女が何か問題を抱えていると察して質問する。
「うぅ、そのとおり、です。ユ、ユリアは……」
次のステップとしては自分の悩みを口にすることであると彼女もわかっていたが、いざ自分のことを話すとなるとここでも躊躇してしまう。
「……知っているかもしれないけど、僕の右目はなんの力もない普通の目なんだ。で、左の眼は……」
アレクシスはそう言いながら眼帯を外して左の魔眼をあらわにする。
「白紙の魔眼なんだ。この魔眼であることに僕はなんの不満もないけど、知っている人は馬鹿にすると思う」
自分の欠点と思われる場所を、なんの抵抗もなく見せていく。
「……私は、とある貴族の家の出ですが一番ランクの低い普通の水の魔眼です」
リーゼリアは自分の眼に魔力を込めて、うっすらと光らせる。
「この魔眼であるがゆえに、家族からは出来損ないだと言われて、Sクラスになれなかったことも落ちこぼれだと言われています」
彼女もユリアニックが話しやすいように、自分の抱えている問題点を口にする。
「あっ……」
二人が自分のことを話してくれたのはユリアニックが少しでも話しやすいようにしていてくれるのだと思ったため、自分も向き合わないとと考え胸の前で拳を握る。
「ユリアは猫の獣人と言いましたが、実はその、ハーフなん、です。母は猫の獣人で父は人なん、です」
一見してはわからないが、ユリアニックは一般的な獣人ではなく半分は人族の血が流れていた。
「なるほど……獣人は基本的に身体能力が高い。でも、ハーフになると獣人のソレには及ばない。加えて獣人は魔力の扱いが苦手だからハーフは獣人の血が流れているせいでそれもうまくいかない」
アレクシスは自分の知識の中にある獣人とハーフの情報から、ユリアニックの悩みをつかみ取っていた。
「す、すごい、です。ハーフだと言っただけなのに、そこまでわかるなんて!」
「ふふっ、そりゃそうですよ! なにせお師匠様ですからね!」
アレクシスのことを褒められたため、リーゼリアは得意げな顔で胸を張っていた。
「いや、僕のことなのになんでリーゼが……それにお師匠様って……」
「あっ!」
思わず名前でなく呼んでしまったことに、リーゼリアは口に慌てて手を当てる。
「ふ、うふふっ、二人ともすごい人なのに、楽しい人、です」
ユリアニックは二人の様子を見て楽しそうに微笑んでいた。
「それじゃあ、基本的に週末の三連休の初日に一緒に訓練をして、あとの二日は自由行動ってことでいいかな?」
「そうですね。都合が悪い時は事前に連絡をして調整ということでお願いします。私も訓練して、強くなったら冒険者登録したいです!」
アレクシスが冒険者として活躍している話を聞いて、彼女も興味を持ち、自分でも登録したいという考えが生まれていた。
しかし、自分とアレクシスの力の差を理解しているため、強くなったらという前置きをつけていた。
「そうしたら、僕とパーティを組んで一緒に依頼をこなしていこう! 組んだらパーティ名とかも決めたいね! 他にも仲間がいるといいかもしれないけど……」
アレクシスはリーゼリアと共にモンスターに立ち向かうことや、一緒にダンジョンに潜ることなどを夢見て盛り上がっているが、ふと視線を彼女に向けると口をあけて驚いている。
「あれ? 嫌だった? まあ、リーゼだったら色々なところから誘いが来るだろうから、別に冒険者になったからといって僕と組まなければいけないということもないんだけど……むしろ、他の熟練の人や貴族の人と組んだほうがためになるかもしれないし……」
リーゼリアから反応がなかったため、アレクシスは徐々に弱気になって断られた場合でも、他にも色々選択肢があることを口にしていく。
「い、いえいえ! ち、違います! むしろお師匠様ほどの方であれば私なんかと組まなくても、引く手あまたかと思って……私と組んでもらえるんですか?」
今度はリーゼリアが自信なく、恐る恐るお伺いをたてる。
「もっちろんだよ! リーゼは僕の一番の友達だからね! やっぱり気心しれた相手と組んだほうが、戦いの最中に背中を預けられるし戦いのクセなんかも理解しやすいからね!」
「一番の友達……はい、お願いします!」
最も尊敬している人物から一番の友達と呼ばれたことが嬉しく、リーゼリアは思わず手を前にだして握手を求めていた。
一瞬キョトンした表情になるアレクシスだったが、すぐに意味を理解して彼女の手をとる。
「うん、よろしくね」
まるで告白のオッケーを出すようだなと心の中で思いながらも、アレクシスは笑顔で彼女と握手をかわした。
その様子を建物の陰から見ている者がいた。
「ぬおおお、あやつお嬢様の手をなれなれしく握りおってええええ!」
悔しげにギリギリと歯ぎしりしながらにらみつけているのは、今回の外出でリーゼリアのお供をしていた護衛の騎士だった。
大柄な彼は建物に隠れていても目立つ存在であり、道行く街の人々から注目を浴びていた。
「アレクシス君……リーゼリアさん……」
それとは別に、木の陰から二人のことを見つめている女の子の姿があった。
アレクシスはなんとなくこちらの視線に気づいてはいたが、敵意がこもっていないため気にしないことにしていた。
その視線の主の正体は、次の休日にわかることとなる。
「さて、それじゃあ今日もここで訓練しよう」
「はい!」
先週同様二人の姿は魔法演習場の前にいた。教師の許可はとっており、鍵も前回同様借りてきていた。
鍵を開けて中に入って電気をつけていると、後からもう一人女子生徒が入ってくる。
「あれ? えっと君は確か同じクラスの……」
アレクシスは彼女に見覚えがあったが、名前が出てこない。
「ユリアさん、ですよね?」
リーゼリアは彼女のことを覚えており、愛称で呼ぶ。
「は、はい。ユリアはユリアニックといいます、です。見てのとおり、猫の獣人、です」
緊張しているのか、胸元を押さえている彼女はおどおどしながら自己紹介をする。
同年代のアレクシス、リーゼリアと比べても小柄な彼女は俯きながら話すため、より小さく見える。
「ユリアよろしく! 僕はアレクシス。アレクでいいよ」
「それでは私も……リーゼリアです。リーゼと呼んで下さい。ユリアさんよろしくお願いします」
二人とも他のクラスメイトとのかかわりが少なかったため、改めてユリアに自己紹介をする。
「アレクくん、リーゼさん、よろしく、です」
ユリアニックはペコリと頭を下げる。互いに自己紹介をしたことで、少しだが打ち解けた様子を見せる。
「さて、お互いの名前を改めて知ったところで……ユリアはどうしたの? 僕たちに何か用事があって来たんだと思うけど……?」
アレクシスの質問にユリアニックはビクリと身体を振るわせて、しかし顔をあげて何か決意した様子で二人に視線を向ける。
「あ、あの! お、お二人はこうやって訓練をしているんですよね?」
ユリアニックは先週も二人がここにやってきていたのを見かけていた。
そして、街で二人が話をしているのもたまたまではあったが聞いていた。
リーゼリアはアレクシスのことをお師匠様と呼んで、師事をあおいでいる。
十分な成績を残しているリーゼリアが、他者に教えを受けているのを見て、自分もこのままではダメだと奮い立たせていた。
「そう、だね。僕が少しリーゼに指導をしている形になるかな? まあ、同じ年齢の僕が教えられることなんてたかがしれているけどね」
アレクシスは肩を竦めながら苦笑する。
「えっと、その、私はちょっと他より劣っている部分があるので、なんとかそこを改善できないかとアレク君に教えてもらっているんです」
第三者がいるため、お師匠様とは呼ばずにアレク君と呼んでいた。
「あ、あの、ユ、ユリアも!」
どもりながらも一生懸命な様子のユリアニックはそこまで口にして言葉が止まる。
しかし、アレクシスはただ頷くだけで、決して急かさずに彼女の言葉を待つことにする。
リーゼリアもアレクシスの判断に任せることにしており、余計な口は挟まずに待っている。
「ううう、リ、ユリアも、教えてほしい……! です!」
しばらく待っている、ユリアニックはなんとか言いたいことを振り絞って口にした。
覚悟を決めて、恥ずかしさや、断られるかもしれない恐怖心を乗り越えて思いを伝えてきた彼女を見てアレクシスは笑顔でゆっくりと頷いた。
「うん、ユリアは何か悩んでいるんだね。それはもしかしたら魔力なのかもしれない、魔眼のことなのかもしれない、勉強のことかもしれない。で、一人ではその問題を乗り越えられないと思って僕のところまで来たんだね?」
アレクシスはユリアニックの表情と言葉から、彼女が何か問題を抱えていると察して質問する。
「うぅ、そのとおり、です。ユ、ユリアは……」
次のステップとしては自分の悩みを口にすることであると彼女もわかっていたが、いざ自分のことを話すとなるとここでも躊躇してしまう。
「……知っているかもしれないけど、僕の右目はなんの力もない普通の目なんだ。で、左の眼は……」
アレクシスはそう言いながら眼帯を外して左の魔眼をあらわにする。
「白紙の魔眼なんだ。この魔眼であることに僕はなんの不満もないけど、知っている人は馬鹿にすると思う」
自分の欠点と思われる場所を、なんの抵抗もなく見せていく。
「……私は、とある貴族の家の出ですが一番ランクの低い普通の水の魔眼です」
リーゼリアは自分の眼に魔力を込めて、うっすらと光らせる。
「この魔眼であるがゆえに、家族からは出来損ないだと言われて、Sクラスになれなかったことも落ちこぼれだと言われています」
彼女もユリアニックが話しやすいように、自分の抱えている問題点を口にする。
「あっ……」
二人が自分のことを話してくれたのはユリアニックが少しでも話しやすいようにしていてくれるのだと思ったため、自分も向き合わないとと考え胸の前で拳を握る。
「ユリアは猫の獣人と言いましたが、実はその、ハーフなん、です。母は猫の獣人で父は人なん、です」
一見してはわからないが、ユリアニックは一般的な獣人ではなく半分は人族の血が流れていた。
「なるほど……獣人は基本的に身体能力が高い。でも、ハーフになると獣人のソレには及ばない。加えて獣人は魔力の扱いが苦手だからハーフは獣人の血が流れているせいでそれもうまくいかない」
アレクシスは自分の知識の中にある獣人とハーフの情報から、ユリアニックの悩みをつかみ取っていた。
「す、すごい、です。ハーフだと言っただけなのに、そこまでわかるなんて!」
「ふふっ、そりゃそうですよ! なにせお師匠様ですからね!」
アレクシスのことを褒められたため、リーゼリアは得意げな顔で胸を張っていた。
「いや、僕のことなのになんでリーゼが……それにお師匠様って……」
「あっ!」
思わず名前でなく呼んでしまったことに、リーゼリアは口に慌てて手を当てる。
「ふ、うふふっ、二人ともすごい人なのに、楽しい人、です」
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