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第四話
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アレクシスが自分の秘密をニコラスとルイザに明かしてからの六年間は、アレクシスを鍛え上げるために、ニコラスとルイザは人脈を生かし、時間を費やしてくれた。
最初の数年間はアレクシスに、より多くの魔眼を見てもらうことを最優先にした。
ニコラスとルイザは冒険者時代の仲間たちを家まで呼んで、様々な魔眼をアレクシスに見せた。
まずは属性魔眼。
火と風の魔眼はニコラスとルイザのものを既に身に着けている。
その他に属性魔眼として土、水、雷、光、闇などをニコラスたちの仲間に見せてもらい、習得していく。
さらには個別性の高い肉体強化系の魔眼などを持つ仲間もいたため、全員に集まってもらって一つでも多くの魔眼を身に着けられるようにした。
「この子すごいな……まさか白紙の魔眼にこんな力があるなんて……」
今回遠くから来てもらう者もおり、アレクシスがちゃんと説明をして協力してもらいたいと話した為、全員アレクシスの力を説明し納得してもらってから眼の力を見せてもらっていた。
それゆえに、アレクシスが見せた魔眼の力を使っていることに驚きの声をあげる。
「ふふん、我々の息子だからな! 特別なのも当然のことだ!」
「うふふっ、あなたったら。そんなに本当のことばかり言ったらアレクシスも照れてしまいますよ」
親バカ二人はアレクシスが褒められたことに気を良くして、更に自分たちもアレクシスのことを褒めたたえている。
こんなやりとりも、昔の二人のことを知っている旧友たちからすれば微笑ましく映っており、ちゃんと親をしているんだなと笑顔で見ていた。
次の数年間は実戦訓練に移っていき、各種魔眼の使い方を身体に覚えさせていく。
ただ魔眼が使えるというだけでは戦いの中で効果的に使うことはできない。
それでは小さいころから自身の魔眼と親しんでいる同世代の子どもと差ができてしまう。
「やあ!」
「いいわよ!」
魔法関連はルイザと共に。
「せい!」
「いいぞ! もっと踏み込むんだ!」
肉体を使う時はニコラスと一緒に練習していた。
二人は熟練の冒険者であり、アレクシスに力の使い方を指導する先生として最適だった。
そして、アレクシス自身もその指導を次々に吸収して自分のものしていく。
全ての魔眼において熟練レベルになってきたところで、今度は戦いの中での有効な使い方の習得が始まった。何度も模擬戦闘が行われて、アレクシスは実戦の中で戦い方を身に着けていく。
そして、その集大成ともいえる最後の摸擬戦闘が今行われようとしていた。
「さあ来い!」
木剣を構えたニコラスとの戦闘訓練。
ニコラスは紅蓮の魔眼とその剣技によって冒険者として結果を残してきた。
そのことが騎士爵として、一代限りではあるが貴族の地位をもらう理由となった。
――肉体強化の魔眼起動――
対して、アレクシスは年齢差、体格差を埋めるために自らの肉体を魔眼によって強化していく。
この状況にいたって、力の差を小さくすることができる。
「いくよ……!」
アレクシスは木剣を右手に持って、思い切り地面を蹴った。
ニコラスは走ってくるアレクシスの姿を予想していた。
これまでの何回、何十回という戦闘において、全てのパターンで走って距離を詰めるところから始めていた。そのため今回もそうだというのが彼の予想だった。
しかし、アレクシスは地面を蹴って、一気に前方へと跳躍していた。
このことによって一瞬で距離が詰められる。
「なっ、そんな動きを!?」
何度も訓練を行ってきたアレクシスとニコラスは互いの動きを熟知している。
しかしアレクシスがここでいつもと異なる動きを見せたことで、いつもと違う流れになる、と思われた。
「だが、それくらいなら!」
それでもニコラスは熟練の冒険者である。
だから動揺を無理やり抑え込んで、木剣でアレクシスを迎撃しようと一瞬で判断する。
「なにっ!?」
しかし、ニコラスはそれ以上に驚かされることになった。
ニコラスが一瞬で判断したのと同時に、アレクシスもニコラスの動きを読み取って迎撃されると感じ取った瞬間、木剣をニコラスに向かって投げつけていた。
剣が勢い良く顔に向かってきたため、ニコラスは自らの木剣で撃ち落とす。
ニコラスが視線をアレクシスがいたはずの場所に戻すと、そこに彼の姿はなかった。
「どこにいった?」
ニコラスはキョロキョロとアレクシスの姿を探す。
「──ここだよ」
その声はニコラスの右側から聞こえた。
ニコラスが右側に顔を向けた時には、すでにアレクシスは拳を放つ準備に入っている。
「せやああああああ!」
気合のこもった声とともに、全力の一撃がニコラスの右腹部に向かって繰り出された。
「ぬおおおお!」
右腹部に力を入れて筋肉を固くすることで、少しでもダメージの軽減を狙う。
ドカンという大きな音とともにニコラスは数歩吹き飛ばされるが、なんとか気合で立て直して倒れることだけは回避した。
「うっぐ、はあはあ……す、すごいな。さすが我が息子、アレクだ……がふっ」
そう言うと、ニコラスは膝をついて右わき腹を擦っている。
「と、父様! だ、大丈夫ですか? ごめんなさい……つい本気で」
アレクシスは心配そうにニコラスへと駆け寄り、今にも泣きそうな表情で頭を下げる。
「い、いいんだ。気にしなくて大丈夫だ。まず父さんは強い、そして鍛えてあるからこれくらいなら耐えられる。それより……アレクシス、強くなったな。いつもと違う動き出し、そして武器を投げるという虚を突く動き、加えて本命は拳による一撃。どれもこれも読むことができなかった、その戦いのセンスには父さんも舌をまいたぞ」
腹部のダメージは強い。
しかし、その痛みをニコラスは嬉しく感じていた。
そしてニコラスはアレクシスの戦いぶりを褒めながら頭を撫でた。
父に認められることは、アレクシスにとって何よりも嬉しいことであり、ぱあっと破顔する。
「父様、ありがとう! でも、この戦い方ができたのも父様と母様が友達をたくさん呼んで、色々な戦い方を見せてくれたからだよ!」
それはお世辞でもなんでもなく、アレクシスは心から思っていることを口にしていた。
アレクシスの魔眼はまだ本人も気づいていないが、魔眼に魔力を込めながら見た動きは自らの経験にすることができる。
名をはせた冒険者であるニコラスとルイザの友達ともなれば、誰もが実力者である。
魔眼の力を使いこなすだけでなく、魔眼を使わない戦い方においてもそれぞれが多くのパターンを持っており、そのいくつかを組み合わせたのがアレクシスの先ほどの戦い方であった。
「なるほど、あの戦い方はあいつらの……それにしても、組み合わせを考えたのも実行したのもアレクだ。もっと自信を持っていいんだぞ!」
そう言うと、ニコラスは再度アレクシスの頭を、今度は先ほどよりも力強くワシワシと撫でる。
「うん、ありがとう!」
アレクシスも今度は素直に褒めてくれたことを受け入れる。
自分の力よりも、信頼する父が褒めてくれるという事実が大事だった。
「父様、立てる?」
ニコラスがいつまでも膝をついていたため、アクレシスが手を差し伸べる。
「ありが……っ、いたた」
手を取ろうとするニコラスはまだ右わき腹が痛むため、手を取れずに再び同じ態勢に戻ってしまう。
「ふう、少し休ませもらおう。しばらくすれば痛みもひくだろう」
痛みのため、額に汗をにじませながらニコラスは大きく息を吐いた。
最初の数年間はアレクシスに、より多くの魔眼を見てもらうことを最優先にした。
ニコラスとルイザは冒険者時代の仲間たちを家まで呼んで、様々な魔眼をアレクシスに見せた。
まずは属性魔眼。
火と風の魔眼はニコラスとルイザのものを既に身に着けている。
その他に属性魔眼として土、水、雷、光、闇などをニコラスたちの仲間に見せてもらい、習得していく。
さらには個別性の高い肉体強化系の魔眼などを持つ仲間もいたため、全員に集まってもらって一つでも多くの魔眼を身に着けられるようにした。
「この子すごいな……まさか白紙の魔眼にこんな力があるなんて……」
今回遠くから来てもらう者もおり、アレクシスがちゃんと説明をして協力してもらいたいと話した為、全員アレクシスの力を説明し納得してもらってから眼の力を見せてもらっていた。
それゆえに、アレクシスが見せた魔眼の力を使っていることに驚きの声をあげる。
「ふふん、我々の息子だからな! 特別なのも当然のことだ!」
「うふふっ、あなたったら。そんなに本当のことばかり言ったらアレクシスも照れてしまいますよ」
親バカ二人はアレクシスが褒められたことに気を良くして、更に自分たちもアレクシスのことを褒めたたえている。
こんなやりとりも、昔の二人のことを知っている旧友たちからすれば微笑ましく映っており、ちゃんと親をしているんだなと笑顔で見ていた。
次の数年間は実戦訓練に移っていき、各種魔眼の使い方を身体に覚えさせていく。
ただ魔眼が使えるというだけでは戦いの中で効果的に使うことはできない。
それでは小さいころから自身の魔眼と親しんでいる同世代の子どもと差ができてしまう。
「やあ!」
「いいわよ!」
魔法関連はルイザと共に。
「せい!」
「いいぞ! もっと踏み込むんだ!」
肉体を使う時はニコラスと一緒に練習していた。
二人は熟練の冒険者であり、アレクシスに力の使い方を指導する先生として最適だった。
そして、アレクシス自身もその指導を次々に吸収して自分のものしていく。
全ての魔眼において熟練レベルになってきたところで、今度は戦いの中での有効な使い方の習得が始まった。何度も模擬戦闘が行われて、アレクシスは実戦の中で戦い方を身に着けていく。
そして、その集大成ともいえる最後の摸擬戦闘が今行われようとしていた。
「さあ来い!」
木剣を構えたニコラスとの戦闘訓練。
ニコラスは紅蓮の魔眼とその剣技によって冒険者として結果を残してきた。
そのことが騎士爵として、一代限りではあるが貴族の地位をもらう理由となった。
――肉体強化の魔眼起動――
対して、アレクシスは年齢差、体格差を埋めるために自らの肉体を魔眼によって強化していく。
この状況にいたって、力の差を小さくすることができる。
「いくよ……!」
アレクシスは木剣を右手に持って、思い切り地面を蹴った。
ニコラスは走ってくるアレクシスの姿を予想していた。
これまでの何回、何十回という戦闘において、全てのパターンで走って距離を詰めるところから始めていた。そのため今回もそうだというのが彼の予想だった。
しかし、アレクシスは地面を蹴って、一気に前方へと跳躍していた。
このことによって一瞬で距離が詰められる。
「なっ、そんな動きを!?」
何度も訓練を行ってきたアレクシスとニコラスは互いの動きを熟知している。
しかしアレクシスがここでいつもと異なる動きを見せたことで、いつもと違う流れになる、と思われた。
「だが、それくらいなら!」
それでもニコラスは熟練の冒険者である。
だから動揺を無理やり抑え込んで、木剣でアレクシスを迎撃しようと一瞬で判断する。
「なにっ!?」
しかし、ニコラスはそれ以上に驚かされることになった。
ニコラスが一瞬で判断したのと同時に、アレクシスもニコラスの動きを読み取って迎撃されると感じ取った瞬間、木剣をニコラスに向かって投げつけていた。
剣が勢い良く顔に向かってきたため、ニコラスは自らの木剣で撃ち落とす。
ニコラスが視線をアレクシスがいたはずの場所に戻すと、そこに彼の姿はなかった。
「どこにいった?」
ニコラスはキョロキョロとアレクシスの姿を探す。
「──ここだよ」
その声はニコラスの右側から聞こえた。
ニコラスが右側に顔を向けた時には、すでにアレクシスは拳を放つ準備に入っている。
「せやああああああ!」
気合のこもった声とともに、全力の一撃がニコラスの右腹部に向かって繰り出された。
「ぬおおおお!」
右腹部に力を入れて筋肉を固くすることで、少しでもダメージの軽減を狙う。
ドカンという大きな音とともにニコラスは数歩吹き飛ばされるが、なんとか気合で立て直して倒れることだけは回避した。
「うっぐ、はあはあ……す、すごいな。さすが我が息子、アレクだ……がふっ」
そう言うと、ニコラスは膝をついて右わき腹を擦っている。
「と、父様! だ、大丈夫ですか? ごめんなさい……つい本気で」
アレクシスは心配そうにニコラスへと駆け寄り、今にも泣きそうな表情で頭を下げる。
「い、いいんだ。気にしなくて大丈夫だ。まず父さんは強い、そして鍛えてあるからこれくらいなら耐えられる。それより……アレクシス、強くなったな。いつもと違う動き出し、そして武器を投げるという虚を突く動き、加えて本命は拳による一撃。どれもこれも読むことができなかった、その戦いのセンスには父さんも舌をまいたぞ」
腹部のダメージは強い。
しかし、その痛みをニコラスは嬉しく感じていた。
そしてニコラスはアレクシスの戦いぶりを褒めながら頭を撫でた。
父に認められることは、アレクシスにとって何よりも嬉しいことであり、ぱあっと破顔する。
「父様、ありがとう! でも、この戦い方ができたのも父様と母様が友達をたくさん呼んで、色々な戦い方を見せてくれたからだよ!」
それはお世辞でもなんでもなく、アレクシスは心から思っていることを口にしていた。
アレクシスの魔眼はまだ本人も気づいていないが、魔眼に魔力を込めながら見た動きは自らの経験にすることができる。
名をはせた冒険者であるニコラスとルイザの友達ともなれば、誰もが実力者である。
魔眼の力を使いこなすだけでなく、魔眼を使わない戦い方においてもそれぞれが多くのパターンを持っており、そのいくつかを組み合わせたのがアレクシスの先ほどの戦い方であった。
「なるほど、あの戦い方はあいつらの……それにしても、組み合わせを考えたのも実行したのもアレクだ。もっと自信を持っていいんだぞ!」
そう言うと、ニコラスは再度アレクシスの頭を、今度は先ほどよりも力強くワシワシと撫でる。
「うん、ありがとう!」
アレクシスも今度は素直に褒めてくれたことを受け入れる。
自分の力よりも、信頼する父が褒めてくれるという事実が大事だった。
「父様、立てる?」
ニコラスがいつまでも膝をついていたため、アクレシスが手を差し伸べる。
「ありが……っ、いたた」
手を取ろうとするニコラスはまだ右わき腹が痛むため、手を取れずに再び同じ態勢に戻ってしまう。
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