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第百二十話
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ヤマトたち一行はグレデルフェントに神話装備を預けると、彼に一旦別れを告げて、塔移動の魔法を使って一瞬で塔の頂上にやってきていた。
新たな目標が決まった彼らを後押しするように空は青々と晴れ渡り、心地よい風が吹いていた。
「さあ、魔導船を呼び出そう――“コールマジックシップ”!」
期待に胸を膨らませたヤマトが腕輪を装着し、空高く呼びかけると、空にぴっと一筋の切れ目が入り、そこからぬるりと魔導船が現れる。これは魔道具の力で動く船であり、最大で十人まで乗り込むことができるものだった。
「わああっ! すごい、すごい! ヤマト、すごいよ! 本当に魔導船だよっ!」
目の前に現れた魔導船に、ユイナのテンションは最高潮に上がっていた。飛び跳ねるようにヤマトに抱き着いて喜びを露わにしている。
「確かにこれは、すごいです……」
『うーむ、私が大きくなればみんなを乗せて飛べるのだが……』
空に浮かぶ船をルクスは呆然とした様子で魅入る。その隣を浮遊するガルプは、今回も父のようにみなを乗せて飛べない自分を不甲斐なく感じていた。これまではあまり気にしていなかったが、改めてもっと早く大きくなりたいとガルプは思っていた。
「さあ、みんな乗ってくれ。操作方法は確か操舵室にいけばわかるはずだから、まずは動かし方を確認しよう。それが終わったら――いよいよ旅立ちだ!」
いち早く船に乗り込んだヤマトの宣言にみんなが頷き、どんどん船に乗っていく。
船の中は外観どおりのつくりではなく、中に入ると空間魔法で広げられた船室がある。
それを見たユイナは一層興奮が増し、手を引くようにルクスとガルプを連れてともに船内の探索を開始していた。
最後に乗り込んだエクリプスはくわりとあくびをすると、早々に甲板でごろりと寝に入っている。
「みんな楽しそうで何よりだ――えっと、これが操作方法か」
一方で柔らかな笑みを浮かべたヤマトは一人、操舵室に向かい、説明書を確認して操作方法を学んでいた。
しばらく操作方法をみていくと、ゲームのようにシンプルなものであることがわかり、なおかつ船自体は相当に頑丈なつくりであるため、そうそう壊れるものではないとわかる。魔導船の腕輪とこの魔導船はリンクしているようで、すでにヤマトが所有者として登録されていた。
「うん、とりあえずなんでも試して覚えていこう……えーっと、艦内放送はこれか」
パラパラと一通り説明書を確認したヤマトが操舵室の中を見回し、放送ボタンを押すと、スイッチが入ったように艦内にうっすらとノイズ音が流れる。
『――あーあー、聞こえてるかな? ヤマトだけど、そろそろ出発するからみんな動いても大丈夫なように何かにつかまってほしい』
船内を見て回っていたユイナたちは突如船の中に流れたヤマトの声に驚くが、すぐに指示に従ったユイナ、ルクス、ガルプが柱などにつかまっていく。エクリプスはヤマトのことを信頼しきっているせいか、一度尻尾を揺らしたのみだった。
『それじゃあ、出発!』
ヤマトのかけ声とともに、魔導船がゆっくりと浮上していくのを船の中にいる全員が感じていた。
最初の一瞬は浮遊感があったものの、そこからは滑らかな動きへと変化した。
そして、塔の上から浮上した船は滑るように空を飛んでいく。
スピードは黄龍の時ほどに出ているが、感じる風は自動発動の魔法障壁で緩和されている。
「うわあ、すっごーい! 風が気持ちいーよ!」
もうつかまらなくてよさそうだと判断したユイナは駆け足で甲板へと移動すると、大きく腕を広げて向かい風を感じていた。
『――ユイナ、とりあえず次は『青虎の住処』に向かおう。最初の目標はルクスの召喚獣集めだ!』
「おーっ!」
ユイナの声がヤマトのもとまで届いているかはわからなかったが、彼女は元気よくヤマトの言葉に返事をしていた。
ヤマトの操縦で向かうは、世界の東に位置する大陸――東方大陸ワノコクだった。
ワノコクとは、名前から予想できるとおり和の国――つまり昔の日本をモデルにしている大陸である。
建物は江戸の街並みを彷彿とさせるデザインであり、そこに住む人たちは街並みに合わせたのか和装を好む。
周囲には火山もいくつかあるため、温泉が多く湧き、風呂文化の最先端をいっている。
食事も和食が中心であり、それを楽しむためだけにこの地に住まう者もいるという。
マップを確認しながら東方へと向かう魔導船。
説明書片手に操縦していたヤマトは、途中で自動航行機能を発見するやいなや、目的地を設定して自分も船内の探索に向かっていた。
ワノコクまでは相当距離があるため、全て手動であればかなりの時間をヤマトが操縦しなければいけない。
そのため、自動航行機能を発見できたのは僥倖であると言えた。
一通り探索を終えると、全員が中央の作戦室のような場所に集まる。
「ここからなら、モニタを操作して外の景色を確認することができるんだ。あとは、交代で休憩をとって外に何か異変がないか順番に見ていこう」
パネルのようなものを操作するヤマト。モニタには空高く飛んでいるおかげか前方に障害物等はなく、下の方に小さく島々が見えるくらいだった。
だが恐らくこの世界で魔導船を使っているのはヤマトたちだけであるため、空飛ぶ船を異常なものと捉えて敵対するものもいるかもしれない。それゆえに外部の確認任務が必要だった。
「どんな順番で休むか、どれくらいの時間で交代するかを決めていこう――っ!?」
モニタから目を離し、話を進めようとするヤマト。しかし、次の瞬間、急にその言葉が遮られることとなる。
ドーンという音と共に魔導船が大きく揺れたからだ。
「い、一体何があったんだ!?」
慌てたように振り返ったヤマトはパネルを操作して室内のモニタを隅々まで確認していく。
そこには何やら影が映っていたが、それがなんなのかはわからなかった。
「……直接見るしかないか!」
ここでじっとしていても埒が明かないとヤマトは飛び出すように甲板に向かう。
影のあった場所に到着すると、先に飛び出していたユイナとルクスとガルプ、そして甲板にいたエクリプスの姿があった。
一同は驚きと戸惑いの表情で上を見上げている。
「なんなんだ? ……っ」
すぐさま追いついたヤマトもつられるように上を見ると、そこには巨大な顔のようなものがあった。
その顔に見覚えのあったヤマトの顔が驚愕に染まる。
「こ、これは――黒鳳凰!?」
底の見えない黒い炎を身にまとった鳳凰。黄龍や青虎と並ぶ神獣と呼ばれるクラスのモンスターである。彼らはそうそう簡単に人前に姿を現すものではないため、この場に現れたのは異常事態だった。
『貴様らが黄龍を打ち破ったという者たちか。ふむ、そこにいるはやつの息子……ならばまちがいないだろう』
ゆっくりと口を開いた黒鳳凰は興味深そうな声音でそう言いながらじっとヤマトたちを見ている。少しのんびりとした口調ではあるが、覇気を感じられる悠然さがあった。
基本的に黒鳳凰は温和な性格をしているため、今回のように魔導船にとりつくようなことはしないはずである。
しかし、目の前にいる黒鳳凰はヤマトたちを敵視していると言ってもいいような目で見ていた。
「黒鳳凰、なぜ我々の船をせき止めているのですか?」
片方の足で魔導船の進行を止めている黒鳳凰に、失礼のないように気をつけつつヤマトが質問を投げかける。魔導船は黒鳳凰の足が食い込みながらも特に壊れている様子はない。
『なあに、別段とってくおうというわけではない。ただ先日黄龍のもとを訪ねた時に、人に倒されたと聞いたものでな? どんな者かと確認に来ただけだ……ふむ、なかなか面白い面構えだ。我の住処へと案内するからついてこい』
黒鳳凰はそれだけいうと、ゆっくりと船から離れて飛んでいく。まるでついてくるのが当たり前のように振り返る様子もない。
「……ヤマト、どうする?」
「どうするといっても、行かなきゃなんだろうね。まあ、いつか会わなければと思っていたからいんだけど……まさかこんなかたちで接触してくるとは思わなかった。とりあえず、俺は戻って操縦するからユイナたちは船に異常がないかを確認しておいてくれるかな」
硬い表情のユイナは確認するようにヤマトに問いかける。思わぬ来訪者に肩を竦めつつヤマトはそう言うと、走って操舵室まで移動する。すぐに移動しなければ、待ってくれていない黒鳳凰を見失ってしまうと考えたためだった。
ヤマト:剣聖LV745、大魔導士LV622、聖銃剣士LV541
ユイナ:弓聖LV723、聖女LV627、聖強化士LV582、銃士LV492、森の巫女LV487
エクリプス:聖馬LV672
ルクス:聖槍士LV656、サモナーLV599
ガルプ:黄竜LV226
新たな目標が決まった彼らを後押しするように空は青々と晴れ渡り、心地よい風が吹いていた。
「さあ、魔導船を呼び出そう――“コールマジックシップ”!」
期待に胸を膨らませたヤマトが腕輪を装着し、空高く呼びかけると、空にぴっと一筋の切れ目が入り、そこからぬるりと魔導船が現れる。これは魔道具の力で動く船であり、最大で十人まで乗り込むことができるものだった。
「わああっ! すごい、すごい! ヤマト、すごいよ! 本当に魔導船だよっ!」
目の前に現れた魔導船に、ユイナのテンションは最高潮に上がっていた。飛び跳ねるようにヤマトに抱き着いて喜びを露わにしている。
「確かにこれは、すごいです……」
『うーむ、私が大きくなればみんなを乗せて飛べるのだが……』
空に浮かぶ船をルクスは呆然とした様子で魅入る。その隣を浮遊するガルプは、今回も父のようにみなを乗せて飛べない自分を不甲斐なく感じていた。これまではあまり気にしていなかったが、改めてもっと早く大きくなりたいとガルプは思っていた。
「さあ、みんな乗ってくれ。操作方法は確か操舵室にいけばわかるはずだから、まずは動かし方を確認しよう。それが終わったら――いよいよ旅立ちだ!」
いち早く船に乗り込んだヤマトの宣言にみんなが頷き、どんどん船に乗っていく。
船の中は外観どおりのつくりではなく、中に入ると空間魔法で広げられた船室がある。
それを見たユイナは一層興奮が増し、手を引くようにルクスとガルプを連れてともに船内の探索を開始していた。
最後に乗り込んだエクリプスはくわりとあくびをすると、早々に甲板でごろりと寝に入っている。
「みんな楽しそうで何よりだ――えっと、これが操作方法か」
一方で柔らかな笑みを浮かべたヤマトは一人、操舵室に向かい、説明書を確認して操作方法を学んでいた。
しばらく操作方法をみていくと、ゲームのようにシンプルなものであることがわかり、なおかつ船自体は相当に頑丈なつくりであるため、そうそう壊れるものではないとわかる。魔導船の腕輪とこの魔導船はリンクしているようで、すでにヤマトが所有者として登録されていた。
「うん、とりあえずなんでも試して覚えていこう……えーっと、艦内放送はこれか」
パラパラと一通り説明書を確認したヤマトが操舵室の中を見回し、放送ボタンを押すと、スイッチが入ったように艦内にうっすらとノイズ音が流れる。
『――あーあー、聞こえてるかな? ヤマトだけど、そろそろ出発するからみんな動いても大丈夫なように何かにつかまってほしい』
船内を見て回っていたユイナたちは突如船の中に流れたヤマトの声に驚くが、すぐに指示に従ったユイナ、ルクス、ガルプが柱などにつかまっていく。エクリプスはヤマトのことを信頼しきっているせいか、一度尻尾を揺らしたのみだった。
『それじゃあ、出発!』
ヤマトのかけ声とともに、魔導船がゆっくりと浮上していくのを船の中にいる全員が感じていた。
最初の一瞬は浮遊感があったものの、そこからは滑らかな動きへと変化した。
そして、塔の上から浮上した船は滑るように空を飛んでいく。
スピードは黄龍の時ほどに出ているが、感じる風は自動発動の魔法障壁で緩和されている。
「うわあ、すっごーい! 風が気持ちいーよ!」
もうつかまらなくてよさそうだと判断したユイナは駆け足で甲板へと移動すると、大きく腕を広げて向かい風を感じていた。
『――ユイナ、とりあえず次は『青虎の住処』に向かおう。最初の目標はルクスの召喚獣集めだ!』
「おーっ!」
ユイナの声がヤマトのもとまで届いているかはわからなかったが、彼女は元気よくヤマトの言葉に返事をしていた。
ヤマトの操縦で向かうは、世界の東に位置する大陸――東方大陸ワノコクだった。
ワノコクとは、名前から予想できるとおり和の国――つまり昔の日本をモデルにしている大陸である。
建物は江戸の街並みを彷彿とさせるデザインであり、そこに住む人たちは街並みに合わせたのか和装を好む。
周囲には火山もいくつかあるため、温泉が多く湧き、風呂文化の最先端をいっている。
食事も和食が中心であり、それを楽しむためだけにこの地に住まう者もいるという。
マップを確認しながら東方へと向かう魔導船。
説明書片手に操縦していたヤマトは、途中で自動航行機能を発見するやいなや、目的地を設定して自分も船内の探索に向かっていた。
ワノコクまでは相当距離があるため、全て手動であればかなりの時間をヤマトが操縦しなければいけない。
そのため、自動航行機能を発見できたのは僥倖であると言えた。
一通り探索を終えると、全員が中央の作戦室のような場所に集まる。
「ここからなら、モニタを操作して外の景色を確認することができるんだ。あとは、交代で休憩をとって外に何か異変がないか順番に見ていこう」
パネルのようなものを操作するヤマト。モニタには空高く飛んでいるおかげか前方に障害物等はなく、下の方に小さく島々が見えるくらいだった。
だが恐らくこの世界で魔導船を使っているのはヤマトたちだけであるため、空飛ぶ船を異常なものと捉えて敵対するものもいるかもしれない。それゆえに外部の確認任務が必要だった。
「どんな順番で休むか、どれくらいの時間で交代するかを決めていこう――っ!?」
モニタから目を離し、話を進めようとするヤマト。しかし、次の瞬間、急にその言葉が遮られることとなる。
ドーンという音と共に魔導船が大きく揺れたからだ。
「い、一体何があったんだ!?」
慌てたように振り返ったヤマトはパネルを操作して室内のモニタを隅々まで確認していく。
そこには何やら影が映っていたが、それがなんなのかはわからなかった。
「……直接見るしかないか!」
ここでじっとしていても埒が明かないとヤマトは飛び出すように甲板に向かう。
影のあった場所に到着すると、先に飛び出していたユイナとルクスとガルプ、そして甲板にいたエクリプスの姿があった。
一同は驚きと戸惑いの表情で上を見上げている。
「なんなんだ? ……っ」
すぐさま追いついたヤマトもつられるように上を見ると、そこには巨大な顔のようなものがあった。
その顔に見覚えのあったヤマトの顔が驚愕に染まる。
「こ、これは――黒鳳凰!?」
底の見えない黒い炎を身にまとった鳳凰。黄龍や青虎と並ぶ神獣と呼ばれるクラスのモンスターである。彼らはそうそう簡単に人前に姿を現すものではないため、この場に現れたのは異常事態だった。
『貴様らが黄龍を打ち破ったという者たちか。ふむ、そこにいるはやつの息子……ならばまちがいないだろう』
ゆっくりと口を開いた黒鳳凰は興味深そうな声音でそう言いながらじっとヤマトたちを見ている。少しのんびりとした口調ではあるが、覇気を感じられる悠然さがあった。
基本的に黒鳳凰は温和な性格をしているため、今回のように魔導船にとりつくようなことはしないはずである。
しかし、目の前にいる黒鳳凰はヤマトたちを敵視していると言ってもいいような目で見ていた。
「黒鳳凰、なぜ我々の船をせき止めているのですか?」
片方の足で魔導船の進行を止めている黒鳳凰に、失礼のないように気をつけつつヤマトが質問を投げかける。魔導船は黒鳳凰の足が食い込みながらも特に壊れている様子はない。
『なあに、別段とってくおうというわけではない。ただ先日黄龍のもとを訪ねた時に、人に倒されたと聞いたものでな? どんな者かと確認に来ただけだ……ふむ、なかなか面白い面構えだ。我の住処へと案内するからついてこい』
黒鳳凰はそれだけいうと、ゆっくりと船から離れて飛んでいく。まるでついてくるのが当たり前のように振り返る様子もない。
「……ヤマト、どうする?」
「どうするといっても、行かなきゃなんだろうね。まあ、いつか会わなければと思っていたからいんだけど……まさかこんなかたちで接触してくるとは思わなかった。とりあえず、俺は戻って操縦するからユイナたちは船に異常がないかを確認しておいてくれるかな」
硬い表情のユイナは確認するようにヤマトに問いかける。思わぬ来訪者に肩を竦めつつヤマトはそう言うと、走って操舵室まで移動する。すぐに移動しなければ、待ってくれていない黒鳳凰を見失ってしまうと考えたためだった。
ヤマト:剣聖LV745、大魔導士LV622、聖銃剣士LV541
ユイナ:弓聖LV723、聖女LV627、聖強化士LV582、銃士LV492、森の巫女LV487
エクリプス:聖馬LV672
ルクス:聖槍士LV656、サモナーLV599
ガルプ:黄竜LV226
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