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第八十話
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器用に二足歩行するルクスを先頭にまず三人が向かったのは、一階にある広間。
ここの部屋はヤマトたちがゆっくりと過ごせるように意識して作った場所。
お気に入りのテーブル、ゆったりとしたふかふかのソファ、天井にはダンジョンでレアドロップするシャンデリアなどが飾られている。壁際には本棚も設置してあり、ゲーム時代とは違ってインテリアとしてだけでなく、中にある本を手に取って読むこともできた。
それから一階の各部屋をチェックしていくと、数日掃除をしていない程度の様子で、多少埃がたまっていただけだった。外程の損傷は見られない。
「一階はあんまり変化がないようだね。二階は……」
「ご主人様、ご主人様、二階は私が見てきますのでお二人は地下へどうぞ!」
二階にあるのは三人の寝室と大きな応接室、そして客間がいくつかあるだけなので、一階を見る限り、恐らく二階でも目新しいものはないと思われた。
「わかった、頼んだよ」
そして、地下には二人が収納しておいた様々なアイテムがある。重要度でいえば、各段に地下のほうが高いと思われるためのルクスの進言だった。
感謝の気持ちを込めてヤマトは優しくその頭を撫でると、ルクスは嬉しそうに目を細め、尻尾を揺らす。
「ルクス、またあとでゆっくり話そうね!」
「はいですっ!」
NPCであったルクスと色々話せることをもふもふ好きのユイナは心から楽しみにしており、きゅっと肉球のある手を握る。
ルクスも嬉しそうに笑顔でユイナに返事を返した。
二手に分かれてヤマトたちは地下に向かっていく。独特の少しひんやりとした空気が漂う。
「さて、どうなってるかな?」
ギギギと重厚な扉が音をたてて開かれていく。
中からは足元からふわりと埃が漂ってくる。それを吸い込まないように思わずヤマトたちは口元を押さえた。
アイテム類は、触れることで何か効果を発揮するものもあるため、家の管理を頼まれていたルクスも立ち入らないようにしている。
そのため、ヤマトとユイナが入らない限り、空気の入れ替えも行われない。
「ごほごほ……あー、これはすごいなあ。前は扉にアクセスしてアイテムの出し入れだけだったけど、これだけ雑多に物が並べられているのは壮観というか、やる気が一気に失われるというか……ははっ……」
咳交じりに中を見たヤマトは頬を引くつかせて乾いた笑いだ。
灯りの魔道具をつけると中は武器、防具、アクセサリ、道具類などなど様々なアイテムがところせましと並べられていた。ここは本当に倉庫としての存在であり、アイテムボックスのような時間停止機能はついていない。
「とりあえず掃除……の前に少しずるをしようかな。ユイナはアクセサリと道具類をお願い、俺は武器と防具をアイテムボックスに入れてくからさ」
埃のたまった地下室を掃除するために、埃対策の布を口元に巻き、まずはアイテム類を片付けることから始めていく。
「おっけー! ほいほいほいっとー」
びしっと敬礼もどきをしたユイナはヤマトの指示の通り、次々にアイテムを格納していく。
「さて、こっちも入れていくか」
ヤマトも自分の担当のアイテムをしまっていく。とりあえず、どれが何ということは確認せずにしまっていく二人だったが、それでもなぜここにあるのか? と思うようなものも格納されていた。
それから一時間ほど経過したところで埃をあちこちにつけつつも二人は作業を終えて倉庫から出ていく。
「お疲れさまでしたっ」
そこにはルクスが掃除道具を携えて待機していた。
「あーっ、ルクスー! 二階はどうだったー?」
ユイナは疲れて出たところに可愛らしいルクスの出迎えがあり、とろけるような笑顔になっていた。
「二階は問題ありませんでした! お二人も帰られてすぐに作業に入りましたからお疲れでしょう。一階の広間のほうにお茶とお菓子を用意しておきましたので、お寛ぎ下さいませ! 地下室は私のほうで掃除をしておきますのでっ」
優しく気遣うルクスの言葉でようやく自分たちが疲れていることに気づいた二人は彼の提案を受け入れることにする。
「それじゃあルクス、掃除を頼んだよ。本当にありがとう」
「ルクス、ありがとうね!」
穏やかに微笑む二人が広間に向かったのを確認すると、ルクスは掃除用の服の袖を捲り、気合をいれて地下室の掃除にとりかかっていった。
一階のソファに隣り合わせで腰かけ、ルクスの用意してくれたお茶とお菓子片手にゆっくり休む二人。
「いやあ、ルクスがいるとは思わなかったなあ。一応家の管理NPCって設定だけど、俺たちのこともちゃんと覚えていたし、あんなにリアルに反応してくれるとなると、なんか嬉しいね」
ヤマトもただのNPCではなくなったルクスの存在を喜んでおり、笑顔になっていた。
「うん、いいよねえ。気も利くし、可愛いし、いい感じ!」
数少ない二人のことを知っている人物――神であるポセイドンとミノス。そして森林の民の長老。
いずれも二人よりも上の存在。もしくは彼らを敬う人物だけであるため、対等に話すことができない。
しかしルクスは主従関係があるものの、互いに信頼があるため、素直に会話ができる相手である。
そのため、ルクスと話せることを二人とも楽しみにしていた。
「それにしても、ルクスはすごいなあ。俺たちが地下で片づけをしている間に、部屋の掃除をしておいてくれたみたいだ」
ぐるりと周囲を見渡したヤマトはテーブルも床も綺麗になっていることに気づいていた。
「その上、こんな美味しい紅茶をいれてくれて、お菓子まで用意してるなんて……なんてできた使い魔なのー!?」
きゃっきゃとはしゃぐユイナはルクスが用意してくれたお茶とお菓子に感動しているようだった。ルクス手製のそれらは温かい懐かしさのあるほっとする味だった。
「俺たちが家に入ったのと同時に目覚めたということは、ルクスの存在は俺たちと紐づいているのかもしれないね」
このあたりにヤマトはゲーム的な感覚を感じていた。
「そうだ、ルクスが戻ってくるまでの間にさっき収納したアイテムの確認をしておこうか。今の装備よりも強力なものが結構あると思うんだよね」
思い出したようにアイテムボックスの中身を確認し始めるヤマト。
二人の装備は現在の特別なジョブを手に入れた際のものであり、この家の地下にあった倉庫にはゲーム時代、高難易度コンテンツに挑戦する際に装備していたものが大量に格納されていた。
「そうだね、もっと強い敵と戦うには装備を整えないとだもんね!」
そうして、ルクスのお茶とお菓子で元気を取り戻した二人は装備やアイテムの確認をしていく。
ヤマト:剣聖LV207、大魔導士LV203
ユイナ:弓聖LV204、聖女LV193、聖強化士LV67
エクリプス:聖馬LV133
ここの部屋はヤマトたちがゆっくりと過ごせるように意識して作った場所。
お気に入りのテーブル、ゆったりとしたふかふかのソファ、天井にはダンジョンでレアドロップするシャンデリアなどが飾られている。壁際には本棚も設置してあり、ゲーム時代とは違ってインテリアとしてだけでなく、中にある本を手に取って読むこともできた。
それから一階の各部屋をチェックしていくと、数日掃除をしていない程度の様子で、多少埃がたまっていただけだった。外程の損傷は見られない。
「一階はあんまり変化がないようだね。二階は……」
「ご主人様、ご主人様、二階は私が見てきますのでお二人は地下へどうぞ!」
二階にあるのは三人の寝室と大きな応接室、そして客間がいくつかあるだけなので、一階を見る限り、恐らく二階でも目新しいものはないと思われた。
「わかった、頼んだよ」
そして、地下には二人が収納しておいた様々なアイテムがある。重要度でいえば、各段に地下のほうが高いと思われるためのルクスの進言だった。
感謝の気持ちを込めてヤマトは優しくその頭を撫でると、ルクスは嬉しそうに目を細め、尻尾を揺らす。
「ルクス、またあとでゆっくり話そうね!」
「はいですっ!」
NPCであったルクスと色々話せることをもふもふ好きのユイナは心から楽しみにしており、きゅっと肉球のある手を握る。
ルクスも嬉しそうに笑顔でユイナに返事を返した。
二手に分かれてヤマトたちは地下に向かっていく。独特の少しひんやりとした空気が漂う。
「さて、どうなってるかな?」
ギギギと重厚な扉が音をたてて開かれていく。
中からは足元からふわりと埃が漂ってくる。それを吸い込まないように思わずヤマトたちは口元を押さえた。
アイテム類は、触れることで何か効果を発揮するものもあるため、家の管理を頼まれていたルクスも立ち入らないようにしている。
そのため、ヤマトとユイナが入らない限り、空気の入れ替えも行われない。
「ごほごほ……あー、これはすごいなあ。前は扉にアクセスしてアイテムの出し入れだけだったけど、これだけ雑多に物が並べられているのは壮観というか、やる気が一気に失われるというか……ははっ……」
咳交じりに中を見たヤマトは頬を引くつかせて乾いた笑いだ。
灯りの魔道具をつけると中は武器、防具、アクセサリ、道具類などなど様々なアイテムがところせましと並べられていた。ここは本当に倉庫としての存在であり、アイテムボックスのような時間停止機能はついていない。
「とりあえず掃除……の前に少しずるをしようかな。ユイナはアクセサリと道具類をお願い、俺は武器と防具をアイテムボックスに入れてくからさ」
埃のたまった地下室を掃除するために、埃対策の布を口元に巻き、まずはアイテム類を片付けることから始めていく。
「おっけー! ほいほいほいっとー」
びしっと敬礼もどきをしたユイナはヤマトの指示の通り、次々にアイテムを格納していく。
「さて、こっちも入れていくか」
ヤマトも自分の担当のアイテムをしまっていく。とりあえず、どれが何ということは確認せずにしまっていく二人だったが、それでもなぜここにあるのか? と思うようなものも格納されていた。
それから一時間ほど経過したところで埃をあちこちにつけつつも二人は作業を終えて倉庫から出ていく。
「お疲れさまでしたっ」
そこにはルクスが掃除道具を携えて待機していた。
「あーっ、ルクスー! 二階はどうだったー?」
ユイナは疲れて出たところに可愛らしいルクスの出迎えがあり、とろけるような笑顔になっていた。
「二階は問題ありませんでした! お二人も帰られてすぐに作業に入りましたからお疲れでしょう。一階の広間のほうにお茶とお菓子を用意しておきましたので、お寛ぎ下さいませ! 地下室は私のほうで掃除をしておきますのでっ」
優しく気遣うルクスの言葉でようやく自分たちが疲れていることに気づいた二人は彼の提案を受け入れることにする。
「それじゃあルクス、掃除を頼んだよ。本当にありがとう」
「ルクス、ありがとうね!」
穏やかに微笑む二人が広間に向かったのを確認すると、ルクスは掃除用の服の袖を捲り、気合をいれて地下室の掃除にとりかかっていった。
一階のソファに隣り合わせで腰かけ、ルクスの用意してくれたお茶とお菓子片手にゆっくり休む二人。
「いやあ、ルクスがいるとは思わなかったなあ。一応家の管理NPCって設定だけど、俺たちのこともちゃんと覚えていたし、あんなにリアルに反応してくれるとなると、なんか嬉しいね」
ヤマトもただのNPCではなくなったルクスの存在を喜んでおり、笑顔になっていた。
「うん、いいよねえ。気も利くし、可愛いし、いい感じ!」
数少ない二人のことを知っている人物――神であるポセイドンとミノス。そして森林の民の長老。
いずれも二人よりも上の存在。もしくは彼らを敬う人物だけであるため、対等に話すことができない。
しかしルクスは主従関係があるものの、互いに信頼があるため、素直に会話ができる相手である。
そのため、ルクスと話せることを二人とも楽しみにしていた。
「それにしても、ルクスはすごいなあ。俺たちが地下で片づけをしている間に、部屋の掃除をしておいてくれたみたいだ」
ぐるりと周囲を見渡したヤマトはテーブルも床も綺麗になっていることに気づいていた。
「その上、こんな美味しい紅茶をいれてくれて、お菓子まで用意してるなんて……なんてできた使い魔なのー!?」
きゃっきゃとはしゃぐユイナはルクスが用意してくれたお茶とお菓子に感動しているようだった。ルクス手製のそれらは温かい懐かしさのあるほっとする味だった。
「俺たちが家に入ったのと同時に目覚めたということは、ルクスの存在は俺たちと紐づいているのかもしれないね」
このあたりにヤマトはゲーム的な感覚を感じていた。
「そうだ、ルクスが戻ってくるまでの間にさっき収納したアイテムの確認をしておこうか。今の装備よりも強力なものが結構あると思うんだよね」
思い出したようにアイテムボックスの中身を確認し始めるヤマト。
二人の装備は現在の特別なジョブを手に入れた際のものであり、この家の地下にあった倉庫にはゲーム時代、高難易度コンテンツに挑戦する際に装備していたものが大量に格納されていた。
「そうだね、もっと強い敵と戦うには装備を整えないとだもんね!」
そうして、ルクスのお茶とお菓子で元気を取り戻した二人は装備やアイテムの確認をしていく。
ヤマト:剣聖LV207、大魔導士LV203
ユイナ:弓聖LV204、聖女LV193、聖強化士LV67
エクリプス:聖馬LV133
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