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第三十話
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洞窟というだけあってじめっとして薄暗いが、壁には光るコケのようなものがそこかしこに張り付いており、明るさはある程度確保されていた。
「これくらいの明るさなら、モンスターが出てきても把握できるね」
「だね、でも油断は禁物だよ」
道中は記憶にあるものと変わりがないため、二人の足取りに迷いがない。ボコボコとした壁面と自然に作られたであろう曲がりくねった道が洞窟内に広がる。
彼らはゲーム時代に見づらい場所から攻撃されるという経験をしているため、周囲に注意をはらいながら進んでいく。
そして開かれたホールのような場所になると、天井はまるで星がちりばめられているかのように光り輝いていた。
「わー! 綺麗だねえ」
昼間に瞬く星々。それはとても幻想的な風景であり、天井を見上げたユイナは感動していた。先ほどまで控えめに後ろについて行っていた彼女が初めて先を歩くように一歩前に出る。
「確かに綺麗だ――でもまずはあいつらの相手をしないと……」
だが厳しい表情のヤマトの視線は天井ではなく、ホール内に向いていた。そこにはレベル40以上のモンスターが十体程度闊歩していたからだ。
いまのヤマトのレベルが剣士39、魔術士30であり、ユイナは弓士34、回復士20であるため、明らかに格上のモンスター。
モンスターの名前はシルバーティーグル。銀色の毛並みの虎型のモンスター。四足により素早い動き、そして鋭い牙と爪による攻撃をしてくる。さらに、口から吐く炎のブレスが特徴だった。
「さてさて、それじゃあやりますか」
「はーい!」
しかし、二人とも強敵とは思っておらず、ただレベル上げのための経験値として見ていた。
まずはユイナが雨のように矢を放っていく。特殊な技ではないが、それはさながら、天井に浮かぶ星々が降り注いでいるようでもあった。
この際にユイナが注意した点としては、放つ矢の色は黒いものにすること。明るい色ではモンスターの目に映り、避けられてしまうからだ。
二人の存在に気づいていないシルバーティーグルたちはユイナの矢を身体に受けてしまう。もちろんこの程度で倒せる相手ではなかったが、奇襲としては十分な効果をあげており、混乱に陥られせることに成功していた。
「“アイスバレット”!」
ヤマトは、モンスターとの距離を詰めながら氷の第二クラス魔法を放っていく。
魔法は第一クラスから始まり、第クラス二、第三クラスと数値があがるごとにその威力をあげていく。
魔術士レベル30を超えたヤマトは、第二クラス魔法を使えるようになっていた。
氷の弾丸がヤマトの手から生み出され、モンスターに向かっていく。ヤマトの魔力は常人よりも強いため、通常のアイスバレットよりも強力な魔法になっていた。
一般的な冒険者の魔術士が使えば、弾丸の数はよくて五発程度。これは、属性が炎になっても風になってもほぼ同程度の数の弾丸である。
「ギャウウウウ!」
しかし、ヤマトが放った弾丸の数は二十を超えていた。広く放たれたそれは多くのシルバーティーグルに着弾し、苦痛の叫び声を上げさせていた。
対するシルバーティーグルの数は、十二体。そのうち矢と魔法によって行動を無効化できたのは半分以下の五体程度。矢によって動きを止めて、氷の魔法によって足などを凍りつかせることでその動きを制限させていた。
「でもそれで十分! “ファストショット”!」
動きがとれなくなった相手に好戦的な笑みを浮かべたユイナがスキルを放っていく。それはまっすぐにシルバーティーグルの頭部に向かっていた。
「ガアア!」
そんなものが効いてたまるかと、シルバーティーグルは威嚇するように大きく口を開けながら腕を振り下ろして矢を撃ち落とす。しかし、これはあくまでも囮だった。
実は先ほどユイナはほぼ同時に二射放っている。一本目の矢に隠れるように、二本目の矢を放つ。
これは、ゲーム時代にあった高等技術だ。通常は次の用意をするのにもたついてしまうため、この方法をとれるのは極一部の人間だけだった。
その技術にはシルバーティーグルも驚き、避ける暇もなく二射目の矢を目や頭部に受けてしまう。
大ダメージを与えることには成功したが、しかしこれも止めにまでは至らない。それをフォローするのがヤマトの役目だった。
モンスターの群れに向かって走り出しながらアイスバレットを連発して相手の動きを制限していき、更には剣による近接攻撃でユイナがダメージを与えたモンスターに止めをさしていく。
この一連の流れに一切の無駄はない。
二人はアイコンタクトすらかわしていなかったが、互いが互いの次にとる行動を予測して動いているからこそのスムーズさだった。
「“フレイムバレット”! “エアバレット”!」
更に、使えるのは氷だけだと思われていたヤマトだったが、炎や風の第二クラス魔法も放っていく。炎を吐くシルバーティーグルだったが、自らがその炎を受けるのは嫌であるらしく、大きな動きで避けている。
そして、風の魔法は放たれる速度が速く、また肉眼で捉えにくいため、避けること叶わず、風の弾丸がモンスターたちに突き刺さっていく。
たった二人――しかし多種多様な攻撃を繰り出してくるヤマトとユイナにシルバーティーグルたちは翻弄され、次々と倒されていった。
唯一無傷でいるのは、一体だけレベルが高いレベル50のシルバーティーグルの親玉――名前をシルバーティーグルボスという。
そのままの名前だったが、ヤマトたちよりもレベルが高く、通常のシルバーティーグルをも上回るボスの存在はヤマトたちがここを通り抜けるための最大の障害になっていた。
「これで――よし! ヤマト、あとはそのボスだけだよ!」
鋭く放った矢でユイナが最後の一体を倒したのを確認してから声をかける。
「うん! 今のでお互いレベルが上がったから、ほんの少しだけどヤツとのレベル差が縮まっているはずだ――本気でいこう!」
ヤマトたちの引き締まった表情を見て、シルバーティーグルボスはその身を赤くして怒りをあらわにしていた。
ヤマト:剣士LV41、魔術士LV34
ユイナ:弓士LV37、回復士LV22
エクリプス:馬LV15
「これくらいの明るさなら、モンスターが出てきても把握できるね」
「だね、でも油断は禁物だよ」
道中は記憶にあるものと変わりがないため、二人の足取りに迷いがない。ボコボコとした壁面と自然に作られたであろう曲がりくねった道が洞窟内に広がる。
彼らはゲーム時代に見づらい場所から攻撃されるという経験をしているため、周囲に注意をはらいながら進んでいく。
そして開かれたホールのような場所になると、天井はまるで星がちりばめられているかのように光り輝いていた。
「わー! 綺麗だねえ」
昼間に瞬く星々。それはとても幻想的な風景であり、天井を見上げたユイナは感動していた。先ほどまで控えめに後ろについて行っていた彼女が初めて先を歩くように一歩前に出る。
「確かに綺麗だ――でもまずはあいつらの相手をしないと……」
だが厳しい表情のヤマトの視線は天井ではなく、ホール内に向いていた。そこにはレベル40以上のモンスターが十体程度闊歩していたからだ。
いまのヤマトのレベルが剣士39、魔術士30であり、ユイナは弓士34、回復士20であるため、明らかに格上のモンスター。
モンスターの名前はシルバーティーグル。銀色の毛並みの虎型のモンスター。四足により素早い動き、そして鋭い牙と爪による攻撃をしてくる。さらに、口から吐く炎のブレスが特徴だった。
「さてさて、それじゃあやりますか」
「はーい!」
しかし、二人とも強敵とは思っておらず、ただレベル上げのための経験値として見ていた。
まずはユイナが雨のように矢を放っていく。特殊な技ではないが、それはさながら、天井に浮かぶ星々が降り注いでいるようでもあった。
この際にユイナが注意した点としては、放つ矢の色は黒いものにすること。明るい色ではモンスターの目に映り、避けられてしまうからだ。
二人の存在に気づいていないシルバーティーグルたちはユイナの矢を身体に受けてしまう。もちろんこの程度で倒せる相手ではなかったが、奇襲としては十分な効果をあげており、混乱に陥られせることに成功していた。
「“アイスバレット”!」
ヤマトは、モンスターとの距離を詰めながら氷の第二クラス魔法を放っていく。
魔法は第一クラスから始まり、第クラス二、第三クラスと数値があがるごとにその威力をあげていく。
魔術士レベル30を超えたヤマトは、第二クラス魔法を使えるようになっていた。
氷の弾丸がヤマトの手から生み出され、モンスターに向かっていく。ヤマトの魔力は常人よりも強いため、通常のアイスバレットよりも強力な魔法になっていた。
一般的な冒険者の魔術士が使えば、弾丸の数はよくて五発程度。これは、属性が炎になっても風になってもほぼ同程度の数の弾丸である。
「ギャウウウウ!」
しかし、ヤマトが放った弾丸の数は二十を超えていた。広く放たれたそれは多くのシルバーティーグルに着弾し、苦痛の叫び声を上げさせていた。
対するシルバーティーグルの数は、十二体。そのうち矢と魔法によって行動を無効化できたのは半分以下の五体程度。矢によって動きを止めて、氷の魔法によって足などを凍りつかせることでその動きを制限させていた。
「でもそれで十分! “ファストショット”!」
動きがとれなくなった相手に好戦的な笑みを浮かべたユイナがスキルを放っていく。それはまっすぐにシルバーティーグルの頭部に向かっていた。
「ガアア!」
そんなものが効いてたまるかと、シルバーティーグルは威嚇するように大きく口を開けながら腕を振り下ろして矢を撃ち落とす。しかし、これはあくまでも囮だった。
実は先ほどユイナはほぼ同時に二射放っている。一本目の矢に隠れるように、二本目の矢を放つ。
これは、ゲーム時代にあった高等技術だ。通常は次の用意をするのにもたついてしまうため、この方法をとれるのは極一部の人間だけだった。
その技術にはシルバーティーグルも驚き、避ける暇もなく二射目の矢を目や頭部に受けてしまう。
大ダメージを与えることには成功したが、しかしこれも止めにまでは至らない。それをフォローするのがヤマトの役目だった。
モンスターの群れに向かって走り出しながらアイスバレットを連発して相手の動きを制限していき、更には剣による近接攻撃でユイナがダメージを与えたモンスターに止めをさしていく。
この一連の流れに一切の無駄はない。
二人はアイコンタクトすらかわしていなかったが、互いが互いの次にとる行動を予測して動いているからこそのスムーズさだった。
「“フレイムバレット”! “エアバレット”!」
更に、使えるのは氷だけだと思われていたヤマトだったが、炎や風の第二クラス魔法も放っていく。炎を吐くシルバーティーグルだったが、自らがその炎を受けるのは嫌であるらしく、大きな動きで避けている。
そして、風の魔法は放たれる速度が速く、また肉眼で捉えにくいため、避けること叶わず、風の弾丸がモンスターたちに突き刺さっていく。
たった二人――しかし多種多様な攻撃を繰り出してくるヤマトとユイナにシルバーティーグルたちは翻弄され、次々と倒されていった。
唯一無傷でいるのは、一体だけレベルが高いレベル50のシルバーティーグルの親玉――名前をシルバーティーグルボスという。
そのままの名前だったが、ヤマトたちよりもレベルが高く、通常のシルバーティーグルをも上回るボスの存在はヤマトたちがここを通り抜けるための最大の障害になっていた。
「これで――よし! ヤマト、あとはそのボスだけだよ!」
鋭く放った矢でユイナが最後の一体を倒したのを確認してから声をかける。
「うん! 今のでお互いレベルが上がったから、ほんの少しだけどヤツとのレベル差が縮まっているはずだ――本気でいこう!」
ヤマトたちの引き締まった表情を見て、シルバーティーグルボスはその身を赤くして怒りをあらわにしていた。
ヤマト:剣士LV41、魔術士LV34
ユイナ:弓士LV37、回復士LV22
エクリプス:馬LV15
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