24 / 48
24 事の発端《Side.黒魔女天使》
しおりを挟む人は、目に見えないものに怯える。
人は、得体の知れないものを恐れる。
暗闇 幽霊 病原菌
様々なものに恐れおののき、忌み嫌ってきた。
『人間が想像できることは、人間が必ず実現できる』フランスの作家、ジュール・ヴェルヌの名言である。
近年科学の発達により、次第にその原理が明らかとされてきた。
一方で、科学では未だ解明されていない、謎がある事も明らかである。
呪いも、その一つ。
黒魔術 言霊 祟り
様々な手段で災厄をもたらしている。
だがそれは、呪いによるものかも知れないし、単なる偶然なのかも知れない。
真実は闇の中である。
人は、目に見えないものに怯える。
人は、得体の知れないものを恐れる。
しかし、もし、それが見えたなら……
【私の名前は、北野 姫(きたの ひめ)
17歳。
身長155センチ。
髪型は、胸まであるロング。
好きな事は、ビー玉集め。
特徴は、呪われています。
幼い頃から私の周囲では、何かと良くないことが起こりました。
友達の鉛筆が無くなったり、私と歩いていた友達の目の前に、お店の看板が落ちてきて怪我をしそうになったり。
小さい事から大きな事まで、それこそ毎日起こりました。
そして、15歳の誕生日。
友達が次々と怪我をしたり、病気になりました。
一週間後、学校に行くと、クラスで出席したのは、私一人でした。
その日を境に、周囲の私を見る目が変わりました。
みんな私のことを、魔女と呼ぶようになりました。
そして、私自身にも変化が訪れました。
私の周りに何かが居るのが、分かるようになりました。
仄暗い何かが、ウゾウゾと、まとわり憑いているのが見えるのです。
それは触手のように伸びる仄暗いモノで、その輪郭は妖しい紫色に、ぼんやりと光っていました。
手を伸ばしても触れる事は出来ません。お風呂で洗い流そうとしても無理でした。
ある日、学校の階段で先生とすれ違った時、そのウゾウゾが先生の足に触れた途端、先生は足を滑らせ階段から転げ落ちました。
恐ろしくなった私は、その場から逃げ出しました。
人を傷つけてしまう自分のことが怖くなり、登校拒否になりました。
人と会わなければ誰も傷付けない。もう誰も傷つけたくないと思いました。
両親に連れられ、お祓いにも行きましたが、誰も取り除く事はできませんでした。
私は引き籠り、ネットでウゾウゾの事を調べました。ウゾウゾが何なのか、そしてその原因は?
何日も検索を続けましたが、一件もヒットしませんでした。
次第に私はネットゲームをしたり、ネット動画を見たり、ネット三昧になって行きました。
特に、ネット小説の異世界ものにハマりました。
「私もこんな世界に行けたらなぁ……人生やり直せるのに」
ベッドの上で体育座りをして、毎日妄想していました。
そんなある日、いつものようにパソコンを覗き込むと、ネットが騒ついていました。
隕石。流星群。宇宙人の地球侵略。世紀末。
様々な危険なワードで盛り上がっていました。
中でも興味を引かれたのが、
『一生に一度の流星群、貴方の願いが叶うかも』
「まさかね……でも流れ星がたくさん流れたら、どれかが願い事を聞いてくれるかも。家から見れるかな?やっぱり高い所が良いよね……よし!」
私は意を決して、外に出ることにしました】
19時25分
目立つ事が嫌なヒメは、父親の黒いコートを着た。
「ちょっと長いなぁ」
御守りとして、お気に入りのビー玉が数十個入ったショルダーバッグを、肩からかけて家を出た。
「ヒメはマジックバッグを装備した…なんちゃって…良し行こう!」
家の裏手にちょっとした山がある。
歩いて登れば20分で頂上に着く小さな山。
そこには、古い崩れかけた鳥居が四つあるだけ。
山の麓、階段の中腹、階段の頂上、そして少し先の何もない、草木の生えている原っぱの前に一つの計四箇所。
そしてそこは、必ず幽霊が出るという心霊スポットである。
以前は人気のスポットだったが、その場を訪れた人たちには、必ず良くない事が起こるという噂が一人歩きし、今では誰も近付かなくなった。
「私には丁度いい場所だなぁ」
目の前のコンビニを曲がれば山の麓の入り口なのだが、そこに座っていたガラの悪い男達が、ヒメを見るなり近寄ってきた。
「あれれ?こんな日にそんな格好して暑くない?」
「一緒に流星群見ない?」
「飯奢るから、コンビニおにぎり」
「可愛いね~。今日イチだよ」
(ダメ。近付かないで)
「そんなとこ突っ立ってないでさぁ~。こっちにおいでよ」
そうして一人の男がヒメに手を伸ばした時、ヒメの後ろから仄暗い何かがウゾウゾ動きだし男の手に触れた。
すると男は、弾かれる様に体を捻り尻餅を突いた。
「イッテェ~」
「えぇ!?そっちでいくの?仕方ねぇなぁ…今、ぶつかったよね?」
「こいつ倒れたよ~。ねぇ聞いてる?」
(それ以上近付いたらダメ)
ヒメはうつ向いた。
「人にぶつかっといて何だその態度は!?」
「シカトですか~?慰謝料払えよ」
仄暗い何かがウゾウゾと動き始めた。
ヒメは顔を上げると、真面目そうな男が近付いて来るのが見えた。
その真面目そうな男にも、ウゾウゾが伸びようとしていた。
「来ないで!」
ヒメは咄嗟に声を上げていた。
しかし彼はピタリと動きを止めて、正義感と書かれた瞳でヒメを見ていた。
「早く逃げて!」
(お願いします)
「何やってるんだ!」
案の定そう言うと、真面目そうな男が近付いてきた。
それを見たレスラーのような男が、金髪に支持を出した。
「あいつ邪魔だな。追い払え」
「はい」
金髪の男は、短く返事をしてナイフを取り出した。
「何だお前?怪我してぇのか?」
金髪は走り出し、真面目そうな男は傘を振りかぶった。しかし傘の重さで、フラついてるように見える。
(ダサい)
ヒメは不謹慎にもそう思ってしまった。
「しまった!」
真面目そうな男が声を上げた。
(危ない!)
「そこまでだ!」
ナイフで刺される。そう思った時、コンビニの自動ドアが開き、中からビニール袋を被った背の高い男が出てきた。
「え?」
時が凍りついた。
「悪は許さん!」
(ダッサ!)
ヒメは思わず口に出すところだった。
しかし、その後はとても格好よかった。
ビニール袋さえ被っていなければ…
瞬く間に、ビニール袋を被った変な男が、ガラの悪い連中をやっつけた。
「覚えてろ!」
その中の一人が、泣きそうな声を出した後、仲間を連れて尻尾を巻いて逃げて行った。
(忘れたくても忘れられない。ビニール袋を被って『アクは許さん』って…正義のヒーロー、ビニール仮面か)
「ダサい…」
「ビニールしか無かったんだから仕方ないだろ!」
ビニール仮面が、突然声を荒げた。
(ヤバっ!声に出てた!?)
「い、いや、あの、さっきの捨て台詞がダサいって言ったんですけど…何かすみません」
「あ~ね…はは…怪我してない?」
(ホッ、良かった。誤魔化せた)
安心したのも束の間、ヒメの肩越しに仄暗い何かが、ウゾウゾと動き始めた。
(いけない!この人たちにも触れてしまう)
「助けに来なくて良かったのに。早く何処か行って」
ヒメを助けた二人の男たちは、動きを止めてキョトンとしていた。
(……助けて貰ってこの言い方はダメだね。ちゃんと説明しないと)
「私は呪われてるんです…魔女なんです。私に関わると良くない事が起こるんです。だから早く離れて下さい。」
「「へ?」」
再び真面目そうな男は、驚愕の表情をしている。ビニール仮面については、覗き穴から見える目が、怒りで真っ赤に燃え上がっているようだった。
(そうだよね……魔女って言われても、普通信じないよね)
その時突然、ウゾウゾが、いつもより激しく動き出した。
(ダメ!早く離れないと)
「助けていただいて、ありがとうございました」
(何かおかしい!こんな動きは初めて!)
ウゾウゾがヒメを囲み始めた。
そして、慌てて周囲を見回しているヒメを、みるみるうちに包み込んで行く。
「どうぞ」
真面目そうな男が、突然傘を渡してきた。
ヒメは驚いた。
ウゾウゾが、彼に触っていたのだ。
(遅かった…)
彼も不幸にしてしまった。
(ごめんなさい)
受け取った傘はそっと傘立てに返した。
「だよね」
真面目そうな男は残念そうに呟いた。
ビニール仮面を見ると、彼にもウゾウゾが触っていた。
(彼も……ごめんなさい)
そしてウゾウゾは二人の体を登って行った。
二人の姿は真っ黒に包まれて見えなくなった。
ふと上を見ると大きな何かが、目の前に迫っていた。
(まさか!お願い!助けて!)
「こりゃ詰んだわ」
「隕石?」
二人の声を聞いた後、視界が真っ白になった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
日本は異世界で平和に過ごしたいようです。
Koutan
ファンタジー
2020年、日本各地で震度5強の揺れを観測した。
これにより、日本は海外との一切の通信が取れなくなった。
その後、自衛隊機や、民間機の報告により、地球とは全く異なる世界に日本が転移したことが判明する。
そこで日本は資源の枯渇などを回避するために諸外国との交流を図ろうとするが...
この作品では自衛隊が主に活躍します。流血要素を含むため、苦手な方は、ブラウザバックをして他の方々の良い作品を見に行くんだ!
ちなみにご意見ご感想等でご指摘いただければ修正させていただく思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
"小説家になろう"にも掲載中。
"小説家になろう"に掲載している本文をそのまま掲載しております。
こころ・ぽかぽか 〜お金以外の僕の価値〜
かんこ
BL
親のギャンブル代を稼ぐため身体を売らされていた奏、
ある日、両親は奏を迎えにホテルに来る途中交通事故で他界。
親の友達だからと渋々参加した葬式で奏と斗真は出会う。
斗真から安心感を知るが裏切られることを恐れ前に進めない。
もどかしいけど支えたい。
そんな恋愛ストーリー。
登場人物
福田 奏(ふくだ かなで) 11歳
両親がギャンブルにハマり金を稼ぐため毎日身体を売って生活していた。
虐待を受けていた。
対人恐怖症
身長:132cm
髪は肩にかかるくらいの長さ、色白、目が大きくて女の子に間違えるくらい可愛い顔立ち。髪と目が少し茶色。
向井 斗真(むかい とうま)26歳
職業はプログラマー
一人暮らし
高2の時、2歳の奏とは会ったことがあったがそれ以降会っていなかった。
身長:178cm
細身、髪は短めでダークブラウン。
小林 透(こばやし とおる)26歳
精神科医
斗真とは高校の時からの友達
身長:175cm
向井 直人(むかい なおと)
斗真の父
向井 美香(むかい みか)
斗真の母
向井 杏美(むかい あみ)17歳
斗真の妹
登場人物はまだ増える予定です。
その都度紹介していきます。
―異質― 激突の編/日本国の〝隊〟 その異世界を掻き回す重金奏――
EPIC
SF
日本国の戦闘団、護衛隊群、そして戦闘機と飛行場基地。続々異世界へ――
とある別の歴史を歩んだ世界。
その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。
第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる――
大規模な演習の最中に異常現象に巻き込まれ、未知なる世界へと飛ばされてしまった、日本国陸隊の有事官〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟と、各職種混成の約1個中隊。
そこは、剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する世界であった。
そんな世界で手探りでの調査に乗り出した日本国隊。時に異世界の人々と交流し、時に救い、時には脅威となる存在と苛烈な戦いを繰り広げ、潜り抜けて来た。
そんな彼らの元へ、陸隊の戦闘団。海隊の護衛艦船。航空隊の戦闘機から果ては航空基地までもが、続々と転移合流して来る。
そしてそれを狙い図ったかのように、異世界の各地で不穏な動きが見え始める。
果たして日本国隊は、そして異世界はいかなる道をたどるのか。
未知なる地で、日本国隊と、未知なる力が激突する――
注意事項(1 当お話は第2部となります。ですがここから読み始めても差して支障は無いかと思います、きっと、たぶん、メイビー。
注意事項(2 このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。
注意事項(3 部隊単位で続々転移して来る形式の転移物となります。
注意事項(4 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。かなりなんでも有りです。
注意事項(5 小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。
異世界列島
黒酢
ファンタジー
【速報】日本列島、異世界へ!資源・食糧・法律etc……何もかもが足りない非常事態に、現代文明崩壊のタイムリミットは約1年!?そんな詰んじゃった状態の列島に差した一筋の光明―――新大陸の発見。だが……異世界の大陸には厄介な生物。有り難くない〝宗教〟に〝覇権主義国〟と、問題の火種がハーレム状態。手足を縛られた(憲法の話)日本は、この覇権主義の世界に平和と安寧をもたらすことができるのか!?今ここに……日本国民及び在留外国人―――総勢1億3000万人―――を乗せた列島の奮闘が始まる…… 始まってしまった!!
■【毎日投稿】2019.2.27~3.1
毎日投稿ができず申し訳ありません。今日から三日間、大量投稿を致します。
今後の予定(3日間で計14話投稿予定)
2.27 20時、21時、22時、23時
2.28 7時、8時、12時、16時、21時、23時
3.1 7時、12時、16時、21時
■なろう版とサブタイトルが異なる話もありますが、その内容は同じです。なお、一部修正をしております。また、改稿が前後しており、修正ができていない話も含まれております。ご了承ください。
自衛官のスキル【正当防衛】はモンスターにも適用される 〜縛りがエグい異世界行軍〜
鹿
ファンタジー
海上自衛隊の隊員、鏡 善士(かがみ ぜんじ)は、ひょんなことから異世界へ転移されることになった。ゲーム好きの善士は、剣と魔法のファンタジーな世界、いわゆるゲームの世界に行けると期待する。しかし転移された先で待っていたのは、縛りだらけの世界だった……
平和国家異世界へ―日本の受難―
あずき
ファンタジー
平和国家、日本。 東アジアの島国であるこの国は、厳しさを増す安全保障環境に対応するため、 政府は戦闘機搭載型護衛艦、DDV-712「しなの」を開発した。 「しなの」は第八護衛隊群に配属され、領海の警備を行なうことに。
それから数年後の2035年、8月。
日本は異世界に転移した。
帝国主義のはびこるこの世界で、日本は生き残れるのか。
総勢1200億人を抱えた国家サバイバルが今、始まる――
何番煎じ蚊もわからない日本転移小説です。
質問などは感想に書いていただけると、返信します。
毎日投稿します。
異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが
おっぱいもみもみ怪人
ファンタジー
敵の攻撃によって拾った戦車ごと異世界へと飛ばされた自衛隊員の二人。
そこでは、不老の肉体と特殊な能力を得て、魔獣と呼ばれる怪物退治をするハメに。
更には奴隷を買って、遠い宇宙で戦車を強化して、どうにか帰ろうと悪戦苦闘するのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる